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アジトへの潜入13
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それをサラザ達も食い入るように見つめる。
彼女達の反応に気を良くしたのか、ミレイニは得意気になって説明する。
「この指輪は別の場所からこの場所に転送できるトレジャーアイテム『リング・オブ・ゲート』だし。これがあれば、いつでもどこでも思い通りの場所に、テイムしているモンスターの召喚が可能だし。ちなみに、戦闘用アイテムじゃないから、制約にも引っかからない。あたしの固有スキルはテイムする時しか固有スキルは発動されないんだし。だから、召喚の際はこの指輪を使えば何の問題もない……こんなの初歩の初歩、常識だし。こんなことも知らないなんて、素人も素人。そんな奴はもう、もぐりとしか――」
自慢げに胸を張って話しているミレイニの頬をエリエが思い切り引っ張る。
「――あんたの固有スキルの事なんて、私達が知ってるわけないでしょ!? ほら、謝んなさい。ごめんなさいって!!」
「ほえんあはい! ほえんあはい!!」
瞳を潤ませながら謝るミレイニの頬をむっとしながら引っ張っているエリエ。
ミレイニの偉そうな態度が相当気に障ったのか、なかなかエリエも手を離そうとしない。その様子を見兼ねたサラザが声を掛けた。
「エリー。そんな事いいから」
「ああ、そうだった!」
エリエは思い出したようにミレイニの頬から手を放すと、レイニール達の方へと向かって歩き出す。
レイニールとガーベラは押し問答を止め、互いに顔を睨み合っている。そんな2人の側にいくと、エリエは大きくため息をついた。
「それで、決着は着いたの?」
その声に反応してレイニールが叫ぶ。
「決着もなにも……こいつが、一歩も引かんのじゃ!」
「あたり前だろ? ここはタフネスである私か、サラザがタゲ役になる方が安定して――」
「――だから、我輩はお前達とは違うと、何度も言ってるのじゃ!!」
再び言い争いを始めるレイニール達に、エリエは頭を抱えている。
レイニールもガーベラもどちらも負けん気が強い性格らしく。これ以上、何か言って止めようものなら火に油を注ぐ結果にしかならない。これは自然と沈静化するのを待つしかなさそうだ――。
そんな状況でその横から、今度はミレイニが口を挟んできた。
「あたし、あたしに任せるし! アレキサンダーとギルガメシュのすご~い技を見せてあげるし!」
エリエは大きなため息をつくと手で顔を覆って天を仰いだ。
それもそうだろう。もう結構な時間、敵の本拠点の階段で立ち往生している。にも拘わらず、作戦は一向にまとまらない。
そんな中、エリエの脳裏にふとエミルとデイビッドの顔がチラつく。
(――こんな時、デイビッドやエミル姉がいてくれたら……)
そんなことを考えながら、まとまりに欠けるメンバー達を見つめていた。
だが、いつまでもここに留まっているわけにもいかない。
確かにミレイニの言う通り、移動速度の最も速い炎帝レオネルとミレイニのペアを行かせるのが正解かもしれない。
しかし、彼女は元ダークブレットのメンバーであり。しかも、裏切る裏切らないに関わらず。頭の出来は左程いい方ではないようだ。
おそらく。突撃を掛けて速攻で追い込まれ助けを求めながら、泣き喚く彼女の姿が目に見えるようだ……。
レイニールを先に行かせても。レイニールもレイニールで攻撃力はあるものの、あまり頭の方は良くない。
いや。それ以前に人間状態ならまだしも、ドラゴン状態に戻れば、その重量に耐えかね地面が陥没する恐れも捨てきれない。
エリエは考えを巡らせていたが、一向に打開策になりそうなものは浮かばない。
(……こんな時。こんな時あいつなら……)
瞼を閉じてもしもデイビッドなら、この状況をどう打開するかを考える。
こういう時。デイビッドなら、なんらかの意見を出してくれるに違いない。
その時、エリエの脳裏にデイビッドが、レイニールの背中から飛び降りていった最後の姿が浮かぶ。
(そうだ! あいつなら、自分が囮役になってでも血路を開く!!)
エリエは覚悟を決めたように瞼を開くと、皆に向かって叫んだ。
「皆! 私が先に突入する。その後サラザ達、オカマイスターに突入してもらって、最後にミレイニ、レイニールの年少コンビに行ってもらうわ!」
エリエがそう言い放つと、レイニールは彼女の提案が不満なのか、それに異を唱えた。
「ええい。ちょっと待つのじゃ! 我輩はお前達より年上じゃぞ!? それに上に居るのが氷雪系のドラゴンならば、我輩が突入して――」
「――だめよ。あなたがドラゴンの姿に戻れば、城の床が抜ける恐れがある! レイニールはそのままの姿で、できうる限りのサポート。いいわね!」
彼女の勢いに押され、レイニールは思わず口籠ると。
「うぅ……仕方ないのじゃ」
っと、珍しく素直に引き下がる。
エリエは決意に満ちた眼差しで、階段の先に開いた次の階への入り口を見つめ叫んだ。
「必ず皆生き残って、星を連れて帰るよ!」
『おー!』
その場に居た全員が声を合わせてそう叫ぶと、再び次の部屋に向かい歩き出す。
入り口の前でエリエを戦闘に部屋の中を覗くと、中にはミレイニの言った通り、大きな白い鱗を覆われたドラゴンが悠々と首を伸ばして、侵入者であるエリエ達を黄色い瞳が睨んでいた。
彼女達の反応に気を良くしたのか、ミレイニは得意気になって説明する。
「この指輪は別の場所からこの場所に転送できるトレジャーアイテム『リング・オブ・ゲート』だし。これがあれば、いつでもどこでも思い通りの場所に、テイムしているモンスターの召喚が可能だし。ちなみに、戦闘用アイテムじゃないから、制約にも引っかからない。あたしの固有スキルはテイムする時しか固有スキルは発動されないんだし。だから、召喚の際はこの指輪を使えば何の問題もない……こんなの初歩の初歩、常識だし。こんなことも知らないなんて、素人も素人。そんな奴はもう、もぐりとしか――」
自慢げに胸を張って話しているミレイニの頬をエリエが思い切り引っ張る。
「――あんたの固有スキルの事なんて、私達が知ってるわけないでしょ!? ほら、謝んなさい。ごめんなさいって!!」
「ほえんあはい! ほえんあはい!!」
瞳を潤ませながら謝るミレイニの頬をむっとしながら引っ張っているエリエ。
ミレイニの偉そうな態度が相当気に障ったのか、なかなかエリエも手を離そうとしない。その様子を見兼ねたサラザが声を掛けた。
「エリー。そんな事いいから」
「ああ、そうだった!」
エリエは思い出したようにミレイニの頬から手を放すと、レイニール達の方へと向かって歩き出す。
レイニールとガーベラは押し問答を止め、互いに顔を睨み合っている。そんな2人の側にいくと、エリエは大きくため息をついた。
「それで、決着は着いたの?」
その声に反応してレイニールが叫ぶ。
「決着もなにも……こいつが、一歩も引かんのじゃ!」
「あたり前だろ? ここはタフネスである私か、サラザがタゲ役になる方が安定して――」
「――だから、我輩はお前達とは違うと、何度も言ってるのじゃ!!」
再び言い争いを始めるレイニール達に、エリエは頭を抱えている。
レイニールもガーベラもどちらも負けん気が強い性格らしく。これ以上、何か言って止めようものなら火に油を注ぐ結果にしかならない。これは自然と沈静化するのを待つしかなさそうだ――。
そんな状況でその横から、今度はミレイニが口を挟んできた。
「あたし、あたしに任せるし! アレキサンダーとギルガメシュのすご~い技を見せてあげるし!」
エリエは大きなため息をつくと手で顔を覆って天を仰いだ。
それもそうだろう。もう結構な時間、敵の本拠点の階段で立ち往生している。にも拘わらず、作戦は一向にまとまらない。
そんな中、エリエの脳裏にふとエミルとデイビッドの顔がチラつく。
(――こんな時、デイビッドやエミル姉がいてくれたら……)
そんなことを考えながら、まとまりに欠けるメンバー達を見つめていた。
だが、いつまでもここに留まっているわけにもいかない。
確かにミレイニの言う通り、移動速度の最も速い炎帝レオネルとミレイニのペアを行かせるのが正解かもしれない。
しかし、彼女は元ダークブレットのメンバーであり。しかも、裏切る裏切らないに関わらず。頭の出来は左程いい方ではないようだ。
おそらく。突撃を掛けて速攻で追い込まれ助けを求めながら、泣き喚く彼女の姿が目に見えるようだ……。
レイニールを先に行かせても。レイニールもレイニールで攻撃力はあるものの、あまり頭の方は良くない。
いや。それ以前に人間状態ならまだしも、ドラゴン状態に戻れば、その重量に耐えかね地面が陥没する恐れも捨てきれない。
エリエは考えを巡らせていたが、一向に打開策になりそうなものは浮かばない。
(……こんな時。こんな時あいつなら……)
瞼を閉じてもしもデイビッドなら、この状況をどう打開するかを考える。
こういう時。デイビッドなら、なんらかの意見を出してくれるに違いない。
その時、エリエの脳裏にデイビッドが、レイニールの背中から飛び降りていった最後の姿が浮かぶ。
(そうだ! あいつなら、自分が囮役になってでも血路を開く!!)
エリエは覚悟を決めたように瞼を開くと、皆に向かって叫んだ。
「皆! 私が先に突入する。その後サラザ達、オカマイスターに突入してもらって、最後にミレイニ、レイニールの年少コンビに行ってもらうわ!」
エリエがそう言い放つと、レイニールは彼女の提案が不満なのか、それに異を唱えた。
「ええい。ちょっと待つのじゃ! 我輩はお前達より年上じゃぞ!? それに上に居るのが氷雪系のドラゴンならば、我輩が突入して――」
「――だめよ。あなたがドラゴンの姿に戻れば、城の床が抜ける恐れがある! レイニールはそのままの姿で、できうる限りのサポート。いいわね!」
彼女の勢いに押され、レイニールは思わず口籠ると。
「うぅ……仕方ないのじゃ」
っと、珍しく素直に引き下がる。
エリエは決意に満ちた眼差しで、階段の先に開いた次の階への入り口を見つめ叫んだ。
「必ず皆生き残って、星を連れて帰るよ!」
『おー!』
その場に居た全員が声を合わせてそう叫ぶと、再び次の部屋に向かい歩き出す。
入り口の前でエリエを戦闘に部屋の中を覗くと、中にはミレイニの言った通り、大きな白い鱗を覆われたドラゴンが悠々と首を伸ばして、侵入者であるエリエ達を黄色い瞳が睨んでいた。
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