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アジトへの潜入7
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少女の頬は柔らかく、まるでつきたてのお餅の様に良く伸びる。
「いっ、いはいし! はらひて~!!」
サラザは少女の頬から手を放すと、少女が涙ながらに訴える。
「うぅ……女の子なんてしらないし……こんなのありえないし……ぐすっ……てかあたし。まだ、なにもしてないし……」
その直後、少女の瞳から我慢していた大粒の涙を一気に流れ出し。
「最初からやりなおしてほしいし~」
っと大声で叫ぶと、少女はわんわん泣き始めた。
エリエはその様子を見ていて眉をひそめながら、サラザ達に告げる。
「――この子、本当に星の事を知らないみたいだし。なんか、凄い泣いてて、見てて可哀想になってきたんだけど……」
「確かに……サラザ。ちょっと強くやり過ぎたんじゃない?」
エリエとガーベラがそう言ってサラザの方を向く。
サラザは両手を振って否定する。
「はぁ~。なら仕方ない……」
エリエはため息を漏らすと、サラザに耳打ちする。
それを聞いたサラザは、大きなため息をつくと少女を肩に担いだ。
突然担ぎ上げられた少女は驚き、両足首を縛られた足をできる限り動かし、まるでエビの様に仰け反る。
「いや~! 放してほしいし!」
「ごめんなさいね~。とりあえず。あなたをこのままここに残すわけにはいかないのよ~」
「えっ!? そんなのあたしに関係ないし! 放して~。降ろしてよ~」
少女は必死に足をバタつかせるが、非戦闘状況の城の中では、サラザには……いや、もしそうじゃなかったとしても、筋肉隆々のサラザに抗う術はない。
何故なら、サラザと少女には圧倒的な違いがある。それがヒューマンとボディービルダーという決して揺らぐことのない種族の違いだ――。
「さて、この階には用事もないし。次に行きましょ~」
「そうね。時間もないし」
「じゃが、本当にこの娘も連れて行くのか?」
そう首を傾げて尋ねるレイニールに、話していたエリエとサラザが頷くと、次の階の階段へと向かって歩き出した。
サラザの肩に担がれながら少女は泣き叫ぶと、それを見てどうすればいいか分からず、その場におすわりしている幻獣ケルベロスに向かって叫ぶ。
「やだやだ。こんなのありえな~い! エリザベス! エリザベス~!!」
泣きながら必死に呼びかける主に、頭が3つの幻獣は「グルルル」と喉を鳴らすことしかできなかった。
抵抗虚しく連れていかれる少女は、最後まで頭が3つの幻獣の名前を叫びながら階段へと消えていった。
エリエ達は薄暗い階段を上がっていく。その最中、サラザの脇に抱かれながら静かに泣き続けている少女に、イライラしていたエリエが声を荒らげた。
「あ~もう! ほら、泣かない! なんか私達が悪者みたいじゃない!」
「だ、だって……ぐすっ……だってぇ~」
また大声で泣き出す少女に、エリエは困り果ててため息を漏らす。
少女は泣きながら言葉を続けた。
「……どうして、あたしが……こ、こんな目に合わないと……いけないの? 本当は……エリザベスの背中で、颯爽と……颯爽と戦うはずだったのにぃ~」
少女は途切れ途切れにそう言って、また激しく泣き始めた。
だが、実際。もしも少女がケルベロスを動かしてエリエ達に襲い掛かっていたら、敵の拠点内で武器の使えないエリエ達は間違いなく全滅していただろう。
正直、少女がマドレーヌに誘き出されてくれるバカで助かったと言わざるを得ない。
号泣している少女に、エリエが呆れながら言葉を返す。
「どうしてって……あなたがマドレーヌに釣られたからでしょ? それにこうでもしないと、あのケルベロスに襲われてたし。この城の中を案内してもらないと、私達が迷っちゃうでしょ?」
「知らない知らない! そんなの知らない! あたしにはそんなの関係ない!」
少女は足をばたつかせながら叫んだ。
全力で拒否している少女に、エリエが諭すように言った。
「だって、あなただってこの組織に居たら、犯罪者になっちゃうんだよ? 三食お菓子付きの生活がしたいだけなら、ここじゃなくてもいいでしょ?」
「――うぅ……犯罪者になるのは嫌だし……」
「でしょ? なら星を助けたら私達と一緒に行こ。ねっ?」
「……お昼寝も付けてほしいし」
少女は泣き止み、膨れっ面をしてぼそっと呟く。
エリエは呆れながらも優しく微笑んで「後でお菓子作って上げるからね」と少女の頭を撫でた。
それからしばらくの間。窓のない漆黒の闇の中、どこまでも続く長い階段を進んで行くと、サラザの脇に抱かれていた少女が言った。
遠慮しながら、サラザの顔色を窺うように……。
「あの~。そろそろこの縄を解いてほしいし…………ねぇ~」
「ダメ」
そのお願いをサラザではなく、エリエが即座に否定する。
早すぎるエリエの返答に、少女は不服そうに頬を膨らませ声を荒らげた。
「なんで!? てか、もうちょっと考えてから言ってほしかったし!」
「だって、あなたが逃げないとは限らないでしょ? だから我慢して……」
「我慢できないし~」
さすがに我慢の限界なのか、少女は無理やり縄を解こうと、これまでにないほど身悶える。
まあ無理もない。下の階からおそらく30分以上は歩き続けている。彼女は星よりも年上だが、その精神年齢の方は星よりもずっと幼いのだろう。
普通ではない。異常とも言える日々を生きてきた星と、平凡に何も考えることなくわがままを言って生きてきた年相応の子供の忍耐力では耐えられる限界を等に超えていた。
「いっ、いはいし! はらひて~!!」
サラザは少女の頬から手を放すと、少女が涙ながらに訴える。
「うぅ……女の子なんてしらないし……こんなのありえないし……ぐすっ……てかあたし。まだ、なにもしてないし……」
その直後、少女の瞳から我慢していた大粒の涙を一気に流れ出し。
「最初からやりなおしてほしいし~」
っと大声で叫ぶと、少女はわんわん泣き始めた。
エリエはその様子を見ていて眉をひそめながら、サラザ達に告げる。
「――この子、本当に星の事を知らないみたいだし。なんか、凄い泣いてて、見てて可哀想になってきたんだけど……」
「確かに……サラザ。ちょっと強くやり過ぎたんじゃない?」
エリエとガーベラがそう言ってサラザの方を向く。
サラザは両手を振って否定する。
「はぁ~。なら仕方ない……」
エリエはため息を漏らすと、サラザに耳打ちする。
それを聞いたサラザは、大きなため息をつくと少女を肩に担いだ。
突然担ぎ上げられた少女は驚き、両足首を縛られた足をできる限り動かし、まるでエビの様に仰け反る。
「いや~! 放してほしいし!」
「ごめんなさいね~。とりあえず。あなたをこのままここに残すわけにはいかないのよ~」
「えっ!? そんなのあたしに関係ないし! 放して~。降ろしてよ~」
少女は必死に足をバタつかせるが、非戦闘状況の城の中では、サラザには……いや、もしそうじゃなかったとしても、筋肉隆々のサラザに抗う術はない。
何故なら、サラザと少女には圧倒的な違いがある。それがヒューマンとボディービルダーという決して揺らぐことのない種族の違いだ――。
「さて、この階には用事もないし。次に行きましょ~」
「そうね。時間もないし」
「じゃが、本当にこの娘も連れて行くのか?」
そう首を傾げて尋ねるレイニールに、話していたエリエとサラザが頷くと、次の階の階段へと向かって歩き出した。
サラザの肩に担がれながら少女は泣き叫ぶと、それを見てどうすればいいか分からず、その場におすわりしている幻獣ケルベロスに向かって叫ぶ。
「やだやだ。こんなのありえな~い! エリザベス! エリザベス~!!」
泣きながら必死に呼びかける主に、頭が3つの幻獣は「グルルル」と喉を鳴らすことしかできなかった。
抵抗虚しく連れていかれる少女は、最後まで頭が3つの幻獣の名前を叫びながら階段へと消えていった。
エリエ達は薄暗い階段を上がっていく。その最中、サラザの脇に抱かれながら静かに泣き続けている少女に、イライラしていたエリエが声を荒らげた。
「あ~もう! ほら、泣かない! なんか私達が悪者みたいじゃない!」
「だ、だって……ぐすっ……だってぇ~」
また大声で泣き出す少女に、エリエは困り果ててため息を漏らす。
少女は泣きながら言葉を続けた。
「……どうして、あたしが……こ、こんな目に合わないと……いけないの? 本当は……エリザベスの背中で、颯爽と……颯爽と戦うはずだったのにぃ~」
少女は途切れ途切れにそう言って、また激しく泣き始めた。
だが、実際。もしも少女がケルベロスを動かしてエリエ達に襲い掛かっていたら、敵の拠点内で武器の使えないエリエ達は間違いなく全滅していただろう。
正直、少女がマドレーヌに誘き出されてくれるバカで助かったと言わざるを得ない。
号泣している少女に、エリエが呆れながら言葉を返す。
「どうしてって……あなたがマドレーヌに釣られたからでしょ? それにこうでもしないと、あのケルベロスに襲われてたし。この城の中を案内してもらないと、私達が迷っちゃうでしょ?」
「知らない知らない! そんなの知らない! あたしにはそんなの関係ない!」
少女は足をばたつかせながら叫んだ。
全力で拒否している少女に、エリエが諭すように言った。
「だって、あなただってこの組織に居たら、犯罪者になっちゃうんだよ? 三食お菓子付きの生活がしたいだけなら、ここじゃなくてもいいでしょ?」
「――うぅ……犯罪者になるのは嫌だし……」
「でしょ? なら星を助けたら私達と一緒に行こ。ねっ?」
「……お昼寝も付けてほしいし」
少女は泣き止み、膨れっ面をしてぼそっと呟く。
エリエは呆れながらも優しく微笑んで「後でお菓子作って上げるからね」と少女の頭を撫でた。
それからしばらくの間。窓のない漆黒の闇の中、どこまでも続く長い階段を進んで行くと、サラザの脇に抱かれていた少女が言った。
遠慮しながら、サラザの顔色を窺うように……。
「あの~。そろそろこの縄を解いてほしいし…………ねぇ~」
「ダメ」
そのお願いをサラザではなく、エリエが即座に否定する。
早すぎるエリエの返答に、少女は不服そうに頬を膨らませ声を荒らげた。
「なんで!? てか、もうちょっと考えてから言ってほしかったし!」
「だって、あなたが逃げないとは限らないでしょ? だから我慢して……」
「我慢できないし~」
さすがに我慢の限界なのか、少女は無理やり縄を解こうと、これまでにないほど身悶える。
まあ無理もない。下の階からおそらく30分以上は歩き続けている。彼女は星よりも年上だが、その精神年齢の方は星よりもずっと幼いのだろう。
普通ではない。異常とも言える日々を生きてきた星と、平凡に何も考えることなくわがままを言って生きてきた年相応の子供の忍耐力では耐えられる限界を等に超えていた。
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