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紅蓮の宝物6
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「どうします? マスター。バカのせいで大変なことになりましたけど……」
「うむ。バカが余計な事をしてしまったからな……だが、これだけの目がある中で退くわけにもいくまい」
「ですが、あのバカは部屋に入ってから一言も発していません」
「そうだな。バカだが、後先考えずにしてしまった事を悔いておるのやも知れん」
2人がひそひそと、しかしメルディウスの耳には聞こえるくらいの声で相談していると、メルディウスが我慢できずに叫んだ。
「あー。バカバカ言うんじゃねぇー!! 分かったよ!! 俺だけで相手すりゃいいんだろ!?」
「ふん。バカを通り越してアホと言ったところか……相手は2体。1人で相手できるわけもあるまい。それに、後ろにこれだけの者が居っては、お前の固有スキルは使えんだろう? まあ、使ったところでダンジョンでは全滅扱いになるがな……」
マスターはそう吐き捨てるように言うと、メルディウスの前に出て拳を構えると叫んだ。
「紅蓮! 後方でサポートを頼む! 行くぞバカたれ! お前は赤いのをやれ!!」
「くっそー。馬鹿馬鹿言いやがってー! 実力の違いを教えてやるぜ! くそじじい!!」
先に飛び掛かったマスターの後を追うように背中の大剣を鞘から抜くと、遅れてメルディウスも斬り掛かる。
青いミノタウロス目掛けて飛び掛かったマスターの突き出した拳を、ミノタウロスは咄嗟に持っていた斧で受け止める。しかし、その凄まじい勢いを殺しきれず、青いミノタウロスは数歩後ろに後退る。
次の瞬間。マスターの側を鎖鎌が横切っていく、それを横目で確認したマスターは不敵な笑みを浮かべる。
真っ直ぐに飛んでいく鎖鎌が下がろうとしていた青いミノタウロスの足に絡まり、その巨体が音を立てて崩れ落ちるようにその場に膝を着いた。
「うむ。相変わらず的確な支援だな……奴の目を潰す!!」
マスターは斧の足場に、そのまま青いミノタウロスの顔の前に出ると、素早くその黄金の瞳目掛けて拳を振り抜いた。
――ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
けたたましい鳴き声に空気は振動し、まるで地震のように地面を激しく揺らす。
左目にヒットしたマスターの拳に、堪らず青いミノタウロスは目を押さえ、うめき声を上げている。
マスターはそんな敵に情けをかけることなく地面を思い切り蹴り上がると、その顎に拳を振り抜く。
その直後、青いミノタウロスの巨体がゆっくりと傾き、今度は完全に地面に背中を着けて倒れる。
この時を待っていたと言わんばかりに、マスターの連続パンチがノーガードになった腹部に突き刺さる。
「あたたたたたたたたたたたーッ!!」
マスターの雄叫びとともに猛烈に突き刺さる拳が、確実に敵のHPをそぎ落としていく。
マスターが怒涛の攻撃で青いミノタウロスのHPを削っていた頃――。
赤いミノタウロスに斬り掛かったメルディウスの攻撃は、惜しくも遊撃された斧に防がれ、反動で弾き飛ばされた彼は空中で3回転し器用に体制を整えると、なんとか地面に着地した。
鼻息荒く勝ち誇った様に鳴き声を上げる赤いミノタウロスを見遣った直後、視線を自分の持っていた大剣へと落とす。
大剣にはヒビは入っていないものの、くっきりと当たった部分には痕が残っている。
「くっそー。なんて重てぇ斬撃だ……なにっ!?」
メルディウスが真上を見上げると、赤いミノタウロスが今まさに、斧を振り下ろさんと振り上げているところだった。
(くっ! 足が痺れててかわせねぇ……ここは防御を!)
すでに勝ちを確信した様子で、大きく振り上げた斧を頭上に掲げ。赤いミノタウロスは口元にニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、メルディウスを見下ろしている。
メルディウスは背を向けていた体をクルッと回すと、赤いミノタウロスと向かい合うようにして大剣を真上に構えた。
その直後、斧が勢い良く振り下ろされ、その刃がメルディウスの大剣の刃がぶつかり、彼は大剣を斜めに方向けた。激しい火花を散らせながら擦れ合い、すんでのところで勢いを横に受け流した。
「――くそっ、重てぇー!!」
歯を食いしばっていたメルディウスの真横に、振り下ろされた斧が地面に突き刺さり、地面を全体を揺らす。
正直、もしもまともに刃で受け止めていたら、大剣の刃が真っ二つに切り落とされていただろう。
そう思えるほどに、赤いミノタウロスの放った一撃は強く重いものだった――。
だが、メルディウスは自分のカンストしたレベルのステータスに掛かった。ゲームシステムの筋力補正システムを越えるその攻撃に、多くの敵を相手にしてきた彼も驚きを隠せない。
目を丸くさせているメルディウスの耳に紅蓮の声が飛び込んできた。
「メルディウス。腕を斬ります! 貴方は左腕をお願いします!」
「おう。分かった!」
メルディウスは頷くのを確認して、高速で横を通り過ぎた紅蓮が、地面を蹴って更に加速し、地面に突き刺さった斧を抜こうとしている赤いミノタウロスの右腕目掛けて駆けていく。
「はああああああああああああッ!!」
敵に飛び込んでいった彼女は、空中で背負っていた身長ほどもある刀を抜くと、勢いそのままに赤いミノタウロスの右腕を斬り落とす。
「うむ。バカが余計な事をしてしまったからな……だが、これだけの目がある中で退くわけにもいくまい」
「ですが、あのバカは部屋に入ってから一言も発していません」
「そうだな。バカだが、後先考えずにしてしまった事を悔いておるのやも知れん」
2人がひそひそと、しかしメルディウスの耳には聞こえるくらいの声で相談していると、メルディウスが我慢できずに叫んだ。
「あー。バカバカ言うんじゃねぇー!! 分かったよ!! 俺だけで相手すりゃいいんだろ!?」
「ふん。バカを通り越してアホと言ったところか……相手は2体。1人で相手できるわけもあるまい。それに、後ろにこれだけの者が居っては、お前の固有スキルは使えんだろう? まあ、使ったところでダンジョンでは全滅扱いになるがな……」
マスターはそう吐き捨てるように言うと、メルディウスの前に出て拳を構えると叫んだ。
「紅蓮! 後方でサポートを頼む! 行くぞバカたれ! お前は赤いのをやれ!!」
「くっそー。馬鹿馬鹿言いやがってー! 実力の違いを教えてやるぜ! くそじじい!!」
先に飛び掛かったマスターの後を追うように背中の大剣を鞘から抜くと、遅れてメルディウスも斬り掛かる。
青いミノタウロス目掛けて飛び掛かったマスターの突き出した拳を、ミノタウロスは咄嗟に持っていた斧で受け止める。しかし、その凄まじい勢いを殺しきれず、青いミノタウロスは数歩後ろに後退る。
次の瞬間。マスターの側を鎖鎌が横切っていく、それを横目で確認したマスターは不敵な笑みを浮かべる。
真っ直ぐに飛んでいく鎖鎌が下がろうとしていた青いミノタウロスの足に絡まり、その巨体が音を立てて崩れ落ちるようにその場に膝を着いた。
「うむ。相変わらず的確な支援だな……奴の目を潰す!!」
マスターは斧の足場に、そのまま青いミノタウロスの顔の前に出ると、素早くその黄金の瞳目掛けて拳を振り抜いた。
――ヴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!
けたたましい鳴き声に空気は振動し、まるで地震のように地面を激しく揺らす。
左目にヒットしたマスターの拳に、堪らず青いミノタウロスは目を押さえ、うめき声を上げている。
マスターはそんな敵に情けをかけることなく地面を思い切り蹴り上がると、その顎に拳を振り抜く。
その直後、青いミノタウロスの巨体がゆっくりと傾き、今度は完全に地面に背中を着けて倒れる。
この時を待っていたと言わんばかりに、マスターの連続パンチがノーガードになった腹部に突き刺さる。
「あたたたたたたたたたたたーッ!!」
マスターの雄叫びとともに猛烈に突き刺さる拳が、確実に敵のHPをそぎ落としていく。
マスターが怒涛の攻撃で青いミノタウロスのHPを削っていた頃――。
赤いミノタウロスに斬り掛かったメルディウスの攻撃は、惜しくも遊撃された斧に防がれ、反動で弾き飛ばされた彼は空中で3回転し器用に体制を整えると、なんとか地面に着地した。
鼻息荒く勝ち誇った様に鳴き声を上げる赤いミノタウロスを見遣った直後、視線を自分の持っていた大剣へと落とす。
大剣にはヒビは入っていないものの、くっきりと当たった部分には痕が残っている。
「くっそー。なんて重てぇ斬撃だ……なにっ!?」
メルディウスが真上を見上げると、赤いミノタウロスが今まさに、斧を振り下ろさんと振り上げているところだった。
(くっ! 足が痺れててかわせねぇ……ここは防御を!)
すでに勝ちを確信した様子で、大きく振り上げた斧を頭上に掲げ。赤いミノタウロスは口元にニヤリと不気味な笑みを浮かべながら、メルディウスを見下ろしている。
メルディウスは背を向けていた体をクルッと回すと、赤いミノタウロスと向かい合うようにして大剣を真上に構えた。
その直後、斧が勢い良く振り下ろされ、その刃がメルディウスの大剣の刃がぶつかり、彼は大剣を斜めに方向けた。激しい火花を散らせながら擦れ合い、すんでのところで勢いを横に受け流した。
「――くそっ、重てぇー!!」
歯を食いしばっていたメルディウスの真横に、振り下ろされた斧が地面に突き刺さり、地面を全体を揺らす。
正直、もしもまともに刃で受け止めていたら、大剣の刃が真っ二つに切り落とされていただろう。
そう思えるほどに、赤いミノタウロスの放った一撃は強く重いものだった――。
だが、メルディウスは自分のカンストしたレベルのステータスに掛かった。ゲームシステムの筋力補正システムを越えるその攻撃に、多くの敵を相手にしてきた彼も驚きを隠せない。
目を丸くさせているメルディウスの耳に紅蓮の声が飛び込んできた。
「メルディウス。腕を斬ります! 貴方は左腕をお願いします!」
「おう。分かった!」
メルディウスは頷くのを確認して、高速で横を通り過ぎた紅蓮が、地面を蹴って更に加速し、地面に突き刺さった斧を抜こうとしている赤いミノタウロスの右腕目掛けて駆けていく。
「はああああああああああああッ!!」
敵に飛び込んでいった彼女は、空中で背負っていた身長ほどもある刀を抜くと、勢いそのままに赤いミノタウロスの右腕を斬り落とす。
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