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名御屋までの道中4
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その瞬間「イヤッ!」とその手を振り払うと、少女はその場にうずくまった。
すると、その男の態度が急変する。
「なにすんだよ!」
声を荒げた男が少女の茶色く長い髪を鷲掴みにすると、強引に彼女を立たせた。
「いや! いたい、やめて!!」
そう叫んだ直後にパン!っと乾いた音が響き渡った。
男は自分の頬を押さえながら、驚きを隠せないという表情で少女の顔を見つめている。
「図に乗ってんじゃねえよ! お前立場分かってんのか!? この世界で殺されれば現実でも死ぬんだぞ! それとも、試しに死んでみるか?」
「……ひっ! い、いやぁ……」
少女は涙を流しながら首筋に突きつけられた剣を見つめ、恐怖で掠れた声を上げた。
そんな少女の反応を楽しむかのように、彼女の身体を好き勝手に弄っている。
「や、やめて……」
「ふはっはっ! やめてほしかったら強くなる事だな!!」
少女は涙混じりの声でそう呟くと、黒い鎧の男が狂ったような声を上げて少女の装備を剥ごうと手を掛けた。
「――ほう。強ければ、何をしてもいいのだな?」
その時、どこからか何者かの声が辺りに響き渡る。
『だ、誰だッ!?』
男達は一斉にその声の方を向いた。
彼等の視線の先には、太い木の枝から彼等を見下ろしている髪を後ろで縛った白髪頭の黒い道着を纏った老人が腕組をして仁王立ちしている姿があった。
それは紛れもないマスターの姿だ――。
『誰だお前は!!』
「――お前達のような。獣同然の者に名乗る名などないわっ!!」
マスターは高く跳び上がると、彼の拳が黒いオーラを纏う。
「くたばれ。この外道が!! ダークネスフレアァァァァァァッ!!」
その直後、マスターの掌から圧縮された闇属性のオーラが発射され、男達の周りはたちまち砂煙に包まれた。突然の遠距離攻撃に男達も何が起きたのか分からず、砂煙の中でひたすら怒鳴り声を上げている。
マスターは地面に着地すると、その隙きに少女を抱きかかえて離脱したメルディウスが現れた。
「――ふむ。首尾良くやったようだな。メルディウス」
「おう! それじゃとどめと行こうか。じじい!」
メルディウスは少女をその場に降ろすと、剣を構えて跳び上がった。
マスターも両手を前に突き出すと、その手に再び黒いオーラが立ち上がる。
「ダークネスファング!!」
すると、マスターは黒いオーラを帯びている手を地面に向かって両手を突き刺す。
両手の黒いオーラが地面に吸い込まれた次の瞬間。オーラで作られた大きなドラゴンの頭が現れ、砂煙ごと男達を呑み込んだ。
マスターの技の効果で、ドラゴンの口の中に閉じ込められた彼等は闇属性のダメージを受けている。その直後、空中高くに跳び上がったメルディウスの愛用のベルセルクが大斧の姿へと変わる。
メルディウスは大斧を頭上に構えると、マスターの出したドラゴンの鼻先目掛けて、勢い良く振り下ろした。
「うおりゃああああああああッ!! 吹き飛ばせベルセルク!!」
彼の大斧が当たると同時に、ドラゴンの内部で凄まじい爆発が連発して起きる。
マスターの必殺技『ダークネスファング』の発動中は、内部外部両方からの攻撃の全てが中に通るのだ――。
メルディウスはマスターの隣に着地した直後、2人は声を揃えて「終わりだ!」と叫ぶと、ドラゴンの頭が姿を消して中にいた男達諸共大きな爆発が起こって彼等は勢い良く空へと吹き飛びそのまま地面に落下する。
「――さすがだな。メルディウス」
「――お前もな。じじい」
2人は顔を見合わせ互いを讃える様にニヤリと笑みを浮かべると、お互いの拳を打ち付けた合った。
っと思い出したように、メルディウスが身を翻す。
「おっと、そうだ!」
メルディウスは倒れている男達を踏みつけると、困惑した様子で2人を見つめている少女の元へと向かった。
少女は目を泳がせて、メルディウスと必死に視線を合わせないようにしている。
先程まで男達に襲われ、乱暴されそうになっていたのだ、マスター達を警戒するのは当然といえば当然の反応だろう。
「あの……私を助けてくれたんですよね……?」
疑うようにそう小さく尋ねてきた少女に、メルディウスは精一杯の微笑みを浮かべて優しい声音で答えた。
「おう、危ないところだったな。だが、もう大丈夫だ」
「はぁ~。良かった~」
少女はその言葉を聞いて、その場にペタンと座り込むと瞳から涙が流れ落ちる。
「うっ、ひぐっ……」
「おっ、おい! もう大丈夫だって言っただろ!?」
急に泣き出してしまう少女に向かって、メルディウスは慌てて駆け寄った。
マスターは闇属性の効果によって動けない男達を、まとめて道着の帯で体をぐるぐる巻きにしながら小さく呟く。
「あんな事があったのだ。仕方なかろう……それよりも、ここの治安も悪くなっているようだな」
「ああ、そうみたいだな。始まりの街は、元々俺達が仕切ってたからな」
メルディウスはマスターに縛られたまま、項垂れている男達を見て言った。
「そういえばそうだったか……」
昔のことを思い出しているのか、マスターは感慨深げにそう遠くを見る眼をした。
過去にマスターが四天王と組んでいたギルドが、本来は始まりの街を中心に活動していた。
すると、その男の態度が急変する。
「なにすんだよ!」
声を荒げた男が少女の茶色く長い髪を鷲掴みにすると、強引に彼女を立たせた。
「いや! いたい、やめて!!」
そう叫んだ直後にパン!っと乾いた音が響き渡った。
男は自分の頬を押さえながら、驚きを隠せないという表情で少女の顔を見つめている。
「図に乗ってんじゃねえよ! お前立場分かってんのか!? この世界で殺されれば現実でも死ぬんだぞ! それとも、試しに死んでみるか?」
「……ひっ! い、いやぁ……」
少女は涙を流しながら首筋に突きつけられた剣を見つめ、恐怖で掠れた声を上げた。
そんな少女の反応を楽しむかのように、彼女の身体を好き勝手に弄っている。
「や、やめて……」
「ふはっはっ! やめてほしかったら強くなる事だな!!」
少女は涙混じりの声でそう呟くと、黒い鎧の男が狂ったような声を上げて少女の装備を剥ごうと手を掛けた。
「――ほう。強ければ、何をしてもいいのだな?」
その時、どこからか何者かの声が辺りに響き渡る。
『だ、誰だッ!?』
男達は一斉にその声の方を向いた。
彼等の視線の先には、太い木の枝から彼等を見下ろしている髪を後ろで縛った白髪頭の黒い道着を纏った老人が腕組をして仁王立ちしている姿があった。
それは紛れもないマスターの姿だ――。
『誰だお前は!!』
「――お前達のような。獣同然の者に名乗る名などないわっ!!」
マスターは高く跳び上がると、彼の拳が黒いオーラを纏う。
「くたばれ。この外道が!! ダークネスフレアァァァァァァッ!!」
その直後、マスターの掌から圧縮された闇属性のオーラが発射され、男達の周りはたちまち砂煙に包まれた。突然の遠距離攻撃に男達も何が起きたのか分からず、砂煙の中でひたすら怒鳴り声を上げている。
マスターは地面に着地すると、その隙きに少女を抱きかかえて離脱したメルディウスが現れた。
「――ふむ。首尾良くやったようだな。メルディウス」
「おう! それじゃとどめと行こうか。じじい!」
メルディウスは少女をその場に降ろすと、剣を構えて跳び上がった。
マスターも両手を前に突き出すと、その手に再び黒いオーラが立ち上がる。
「ダークネスファング!!」
すると、マスターは黒いオーラを帯びている手を地面に向かって両手を突き刺す。
両手の黒いオーラが地面に吸い込まれた次の瞬間。オーラで作られた大きなドラゴンの頭が現れ、砂煙ごと男達を呑み込んだ。
マスターの技の効果で、ドラゴンの口の中に閉じ込められた彼等は闇属性のダメージを受けている。その直後、空中高くに跳び上がったメルディウスの愛用のベルセルクが大斧の姿へと変わる。
メルディウスは大斧を頭上に構えると、マスターの出したドラゴンの鼻先目掛けて、勢い良く振り下ろした。
「うおりゃああああああああッ!! 吹き飛ばせベルセルク!!」
彼の大斧が当たると同時に、ドラゴンの内部で凄まじい爆発が連発して起きる。
マスターの必殺技『ダークネスファング』の発動中は、内部外部両方からの攻撃の全てが中に通るのだ――。
メルディウスはマスターの隣に着地した直後、2人は声を揃えて「終わりだ!」と叫ぶと、ドラゴンの頭が姿を消して中にいた男達諸共大きな爆発が起こって彼等は勢い良く空へと吹き飛びそのまま地面に落下する。
「――さすがだな。メルディウス」
「――お前もな。じじい」
2人は顔を見合わせ互いを讃える様にニヤリと笑みを浮かべると、お互いの拳を打ち付けた合った。
っと思い出したように、メルディウスが身を翻す。
「おっと、そうだ!」
メルディウスは倒れている男達を踏みつけると、困惑した様子で2人を見つめている少女の元へと向かった。
少女は目を泳がせて、メルディウスと必死に視線を合わせないようにしている。
先程まで男達に襲われ、乱暴されそうになっていたのだ、マスター達を警戒するのは当然といえば当然の反応だろう。
「あの……私を助けてくれたんですよね……?」
疑うようにそう小さく尋ねてきた少女に、メルディウスは精一杯の微笑みを浮かべて優しい声音で答えた。
「おう、危ないところだったな。だが、もう大丈夫だ」
「はぁ~。良かった~」
少女はその言葉を聞いて、その場にペタンと座り込むと瞳から涙が流れ落ちる。
「うっ、ひぐっ……」
「おっ、おい! もう大丈夫だって言っただろ!?」
急に泣き出してしまう少女に向かって、メルディウスは慌てて駆け寄った。
マスターは闇属性の効果によって動けない男達を、まとめて道着の帯で体をぐるぐる巻きにしながら小さく呟く。
「あんな事があったのだ。仕方なかろう……それよりも、ここの治安も悪くなっているようだな」
「ああ、そうみたいだな。始まりの街は、元々俺達が仕切ってたからな」
メルディウスはマスターに縛られたまま、項垂れている男達を見て言った。
「そういえばそうだったか……」
昔のことを思い出しているのか、マスターは感慨深げにそう遠くを見る眼をした。
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