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名御屋までの道中
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* * *
足早にマスター達が千代の街を出てから、すでに半日が経っていた。
どこまでも続く道を、馬の手綱を握り締めた彼等が颯爽と進んで行く。その時、マスターを先頭に進んでいた一行の中から、突如として叫ぶ声が聞こえた。
「あーにーきー! もう僕疲れたー、少し休もうぜー!」
「全くだらしねぇーな。男なら少しは我慢しろ! じじいも紅蓮達も文句言わないだろうが!」
馬の上で上を向いて、弱音を吐いた小虎にメルディウスが叫ぶと、小虎は不満そうに渋い顔をする。
そのやり取りを見ていた紅蓮がメルディウスの横に馬を着けると、彼に聞こえるようにわざとらしく。
「……私も少し疲れたかもしれません。少しでいいから休めたらなぁ~」
その言葉を聞いたメルディウスはチラッと紅蓮の方を見て、仕方ないという顔で頭を掻きながら告げた。
「じじい。まだ先は長いんだろ? ここらで少し休もう!」
「ん? ああ、構わんが、さっきと言ってる事が違く――」
「――うるせぇー。さあ、休むぞ!!」
ツッコミを入れられたメルディウスは顔を赤く染めると、そっぽを向いて乗っていた馬の背から飛び降りた。
木漏れ日が降り注ぐ中。5人は木陰に紅蓮の敷いたシートの上に腰を下ろすと、紅蓮がアイテムの中から飲み物とサンドイッチを取り出し、順番に配り始める。
「どうぞ、マスター。私が作ったんですけど、上手くできているか……」
「うむ。すまない紅蓮」
マスターは紅蓮からサンドイッチとコップを受け取ってにっこりと微笑んだ。
そんな2人の様子を見ていたメルディウスは、不機嫌そうに貧乏揺すりをしながらマスターのことを睨んでいる。
「メルディウス。どうしましたか? そんな怖い顔して……疲れました?」
「い、いや。何でもないんだ。ちょっと目にゴミが入ったからよ」
目にゴミが入ったフリをして、腕で顔を擦って見せる。
「はい、メルディウス。あなたの好きなお肉をたくさん入れておきましたよ」
「お、おう! ありがとう!」
紅蓮は大きな肉の塊がはみ出しているサンドイッチを差し出すと、メルディウスはそれを照れながら受け取って、そのまま大口を開けて噛み付いた。
(やっぱり紅蓮は俺の事を考えてくれてるんだな。それだけでいいんだ。今はそれだけでな……)
心の中でメルディウスがそう頷いて紅蓮の方を見た。
メルディウスの思いを尻目に紅蓮は「そんなにお腹空いてたんですか?」と首を傾げている。
だが、この時の紅蓮は『メルディウスは怒らせると後で面倒だから』くらいの考えしかなかった。
そんな紅蓮の隣に座っていた白雪が、彼女にそっとおにぎりを差し出す。
「紅蓮様。これは私が作った握り飯なのですが、良かったら……」
「はい、いただきます。ありがとう、白雪」
小さな手で紅蓮は差し出された握り飯を受け取ると、上目遣いに白雪の目を見上げる。
「い、いえ。任務ですから!」
白雪は嬉しさからか瞳をキラキラさせながら背筋を伸ばしてそう叫ぶと、おにぎりを手に紅蓮は「任務?」と小首を傾げた。
そんな堅苦しい彼女に、紅蓮が優しく語りかける。
「白雪。そんなにかしこまらなくていいんですよ? 皆仲間なんですから」
「いえ、私は紅蓮様を守る事が全てですので、私の事など気にかけていただかなくても大丈夫です」
すぐにそう言葉を返す白雪の顔を見て、紅蓮は言葉を続けた。
「……私は固有スキルのおかげで死なないですから、心配いりませんよ? それより、私は白雪の方が心配です」
「ですが紅蓮様のスキル『イモータル』には、1時間使用したら5分のインターバルを取らなければいけないという致命的な欠点があります」
「それはいつも言ってますが、5分なんてあっという間です。そんなものデメリットにもなりません。自分でなんとかしますし……」
それを聞いた白雪が「ダメです!」と声を上げて立ち上がる。
驚きもせずに紅蓮は白雪の顔を見上げた。
「紅蓮様は普段から、攻撃を避けるのが得意ではないではありませんか!」
「……ですが、攻撃をする際には、敵にも隙がうまれやすくなりますから」
「そうですね。紅蓮様はそれでいいのです。私が紅蓮様を必ずお守りします!」
白雪は紅蓮を守り切る決意を新たに、拳を握り締めた。
熱意の篭った彼女の瞳に、紅蓮は諦めたのか小さく息を吐いた。
守ってもらえるのは嬉しいが、それで仲間が危険に陥るならば、それは本末転倒だ――だが、紅蓮は『まあ、危ない時は守ってあげればいいですね』と心の中で呟き、パクッと手に持っていたおにぎりに噛み付く。
その直後――。
「――はッ! 誰ですかッ!?」
紅蓮は背後に気配を感じて、袴の内側に忍ばせていた短剣を抜くと身を翻すと、そこには涎を流しながら、立ち尽くしている小虎の姿があった。
「……小虎? どうしました。突然後ろに立って」
小虎は武器を向けられていることなどお構いなしに、その視線は紅蓮の出したサンドイッチに釘付けになっている。
足早にマスター達が千代の街を出てから、すでに半日が経っていた。
どこまでも続く道を、馬の手綱を握り締めた彼等が颯爽と進んで行く。その時、マスターを先頭に進んでいた一行の中から、突如として叫ぶ声が聞こえた。
「あーにーきー! もう僕疲れたー、少し休もうぜー!」
「全くだらしねぇーな。男なら少しは我慢しろ! じじいも紅蓮達も文句言わないだろうが!」
馬の上で上を向いて、弱音を吐いた小虎にメルディウスが叫ぶと、小虎は不満そうに渋い顔をする。
そのやり取りを見ていた紅蓮がメルディウスの横に馬を着けると、彼に聞こえるようにわざとらしく。
「……私も少し疲れたかもしれません。少しでいいから休めたらなぁ~」
その言葉を聞いたメルディウスはチラッと紅蓮の方を見て、仕方ないという顔で頭を掻きながら告げた。
「じじい。まだ先は長いんだろ? ここらで少し休もう!」
「ん? ああ、構わんが、さっきと言ってる事が違く――」
「――うるせぇー。さあ、休むぞ!!」
ツッコミを入れられたメルディウスは顔を赤く染めると、そっぽを向いて乗っていた馬の背から飛び降りた。
木漏れ日が降り注ぐ中。5人は木陰に紅蓮の敷いたシートの上に腰を下ろすと、紅蓮がアイテムの中から飲み物とサンドイッチを取り出し、順番に配り始める。
「どうぞ、マスター。私が作ったんですけど、上手くできているか……」
「うむ。すまない紅蓮」
マスターは紅蓮からサンドイッチとコップを受け取ってにっこりと微笑んだ。
そんな2人の様子を見ていたメルディウスは、不機嫌そうに貧乏揺すりをしながらマスターのことを睨んでいる。
「メルディウス。どうしましたか? そんな怖い顔して……疲れました?」
「い、いや。何でもないんだ。ちょっと目にゴミが入ったからよ」
目にゴミが入ったフリをして、腕で顔を擦って見せる。
「はい、メルディウス。あなたの好きなお肉をたくさん入れておきましたよ」
「お、おう! ありがとう!」
紅蓮は大きな肉の塊がはみ出しているサンドイッチを差し出すと、メルディウスはそれを照れながら受け取って、そのまま大口を開けて噛み付いた。
(やっぱり紅蓮は俺の事を考えてくれてるんだな。それだけでいいんだ。今はそれだけでな……)
心の中でメルディウスがそう頷いて紅蓮の方を見た。
メルディウスの思いを尻目に紅蓮は「そんなにお腹空いてたんですか?」と首を傾げている。
だが、この時の紅蓮は『メルディウスは怒らせると後で面倒だから』くらいの考えしかなかった。
そんな紅蓮の隣に座っていた白雪が、彼女にそっとおにぎりを差し出す。
「紅蓮様。これは私が作った握り飯なのですが、良かったら……」
「はい、いただきます。ありがとう、白雪」
小さな手で紅蓮は差し出された握り飯を受け取ると、上目遣いに白雪の目を見上げる。
「い、いえ。任務ですから!」
白雪は嬉しさからか瞳をキラキラさせながら背筋を伸ばしてそう叫ぶと、おにぎりを手に紅蓮は「任務?」と小首を傾げた。
そんな堅苦しい彼女に、紅蓮が優しく語りかける。
「白雪。そんなにかしこまらなくていいんですよ? 皆仲間なんですから」
「いえ、私は紅蓮様を守る事が全てですので、私の事など気にかけていただかなくても大丈夫です」
すぐにそう言葉を返す白雪の顔を見て、紅蓮は言葉を続けた。
「……私は固有スキルのおかげで死なないですから、心配いりませんよ? それより、私は白雪の方が心配です」
「ですが紅蓮様のスキル『イモータル』には、1時間使用したら5分のインターバルを取らなければいけないという致命的な欠点があります」
「それはいつも言ってますが、5分なんてあっという間です。そんなものデメリットにもなりません。自分でなんとかしますし……」
それを聞いた白雪が「ダメです!」と声を上げて立ち上がる。
驚きもせずに紅蓮は白雪の顔を見上げた。
「紅蓮様は普段から、攻撃を避けるのが得意ではないではありませんか!」
「……ですが、攻撃をする際には、敵にも隙がうまれやすくなりますから」
「そうですね。紅蓮様はそれでいいのです。私が紅蓮様を必ずお守りします!」
白雪は紅蓮を守り切る決意を新たに、拳を握り締めた。
熱意の篭った彼女の瞳に、紅蓮は諦めたのか小さく息を吐いた。
守ってもらえるのは嬉しいが、それで仲間が危険に陥るならば、それは本末転倒だ――だが、紅蓮は『まあ、危ない時は守ってあげればいいですね』と心の中で呟き、パクッと手に持っていたおにぎりに噛み付く。
その直後――。
「――はッ! 誰ですかッ!?」
紅蓮は背後に気配を感じて、袴の内側に忍ばせていた短剣を抜くと身を翻すと、そこには涎を流しながら、立ち尽くしている小虎の姿があった。
「……小虎? どうしました。突然後ろに立って」
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