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ファンタジー16
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膝を抱えたまま、憂いに満ちた瞳で前を見つめていた。
「あの時から私はずっと1人だった……今はどうなんだろう……」
そう呟いた直後、星は自分の膝に顔を埋めた……。
確かに今は一人ではない。だがそれは近くに誰かが居ると言うだけで、学校に居る時と何ら変わらないのだ。
少なくとも心のどこか奥底では、未だに心を許せないでいる自分がいた。
っと言うことは、見方を変えればまだ孤独なままなのかもしれない。本当に信頼している関係ではなく、ただ行動を共にしているだけの関係――心のどこかでそう思っている。
しかし、それは相手に対してとても失礼なことだ。衣食住と身の安全を保証してもらっている。そのことも理解しているからこそ、自分はそんな人達を本当に信頼していないという事実が星には辛かった。
顔を上げた星は眉をひそめながら、更に憂鬱な気分で空を見上げていた。
それからしばらく自分の中での答えを導き出そうと、思考回路を回していると突然。後ろの草むらから、なにやらがさごそと物音が聞こえてきた。
「――だ、誰!? ……レイ?」
星はびくっと体を震わせると、不安そうな声でそう問い掛けたが、その草むらからの返事は一向に返ってこない。だが、もしも誰かが隠れて脅かそうとしているなら、わざと物音を立てたりなんてしないはずだ。
一瞬返事がないことを不審に思った星だったが……。
(どうしたんだろう。返事がない……あっ! もしかして落ち込んでる私を励まそうと、レイが隠れてるのかな?)
確かに普段から落ち着きのないレイニールなら、我慢しきれずに動いてしまっても説明はつく。
しかも、さっきまで疑うことを捨てて、もっと仲間達を信じようと思っていたばかり、ここで疑うことは信頼関係を築く上でも良くない。
きっとエミル達の様子を見にいったついでに、自分を脅かそうとしているのだろう。
思わずくすっと笑みを溢すと、星はそーっと草むらに向かって歩き出した。
「……レイなんでしょ? 隠れてないで出てきて……」
星が草むらを覗き込もうと、前屈みになったその時、草むらの中から何かが勢い良く飛び出してきた。
それと同時に、体を縄の様な長いもので強く締め付けられている感覚と、凄まじい激痛が星の頭の中を駆け巡った。
「うっ! なっ……なにッ!? 締め上げられる……体中がすごく痛い……」
痛みに耐えながら、星が自分の体に巻き付いている物を確認すると、そこには自分の体に巻き付いている大きな蛇の頭が見えた。
そう。草むらに潜んでいたのはレイニールではなく、星の胴体ぐらいある巨大な大蛇だったのだ――。
全体は草むらに隠れてその大きさは把握できないものの。出ている部分だけでも数メートルはある。しかも、それが今、星の小さな体を容赦なく締め上げていた。システムのステータス強化がなければ、今頃星の体はバラバラに吹き飛ばされていただろう。
「……く、苦しい……な、なんとか……しないと……」
星が蛇を振り解こうと体に力を入れようものなら、巻き付いている大蛇は更に何倍もの力で体をきつく締め上げてくる。
抵抗虚しく強く締められた体が、限界を超えてミシミシと軋むような音を立て始める。まるで、水の中にでもいるかの様に全く息ができないほどだった。それと相応して、星の表情がみるみるうちに青ざめ、意識が遠のいていくのを感じていた。
「……かはっ! 苦しくて……息が、できないよ……だ、だれか……」
全身が今にも弾け飛ぶ様な苦痛の中、星はなんとか助けを求めようと辺りを見渡すが、そこには誰の姿もない。その時、ふと我に返った星は自分の底意地の悪さに自ら幻滅する。
それもそうだ。今までは一人の方がいいと考えていたのに、生命の危機になった瞬間には、もう誰かを頼っている自分がいるのだから……。
(……私ってずるい。こういう時だけ人を頼って……これは1人でなんとかしなきゃいけない問題なんだ!)
星は遠のく意識を気合で持ち直すと、腰に刺さった剣を抜こうと懸命にもがく。しかし、もがけばもがくほど体に巻き付いた大蛇は、緩急をつける様に締め上げてくる。
データの集合体であって実際の体ではないはずなのだが、全身の骨を砕かれる様な激しい痛みが星を襲う。
「……くっ! あああああああああああああッ!!」
星が叫び声を上げたその瞬間、レイニールの声が星の耳に飛び込んきた。
「――大丈夫か!? 主!!」
薄れゆく意識の中で、咄嗟に星の脳裏に言葉が浮かぶ。
「……レイ。だめ……逃げて……」
星はそのレイニールの声に反射的に、そう声にならない声を上げる。
何故その言葉が頭に一番に浮かんだのかは分からない――それが人に助けてもらうわけにはいかないというプライドから来るものなのか、それとも相手を心配して出た言葉なのかは今の星には分からなかった。
「あの時から私はずっと1人だった……今はどうなんだろう……」
そう呟いた直後、星は自分の膝に顔を埋めた……。
確かに今は一人ではない。だがそれは近くに誰かが居ると言うだけで、学校に居る時と何ら変わらないのだ。
少なくとも心のどこか奥底では、未だに心を許せないでいる自分がいた。
っと言うことは、見方を変えればまだ孤独なままなのかもしれない。本当に信頼している関係ではなく、ただ行動を共にしているだけの関係――心のどこかでそう思っている。
しかし、それは相手に対してとても失礼なことだ。衣食住と身の安全を保証してもらっている。そのことも理解しているからこそ、自分はそんな人達を本当に信頼していないという事実が星には辛かった。
顔を上げた星は眉をひそめながら、更に憂鬱な気分で空を見上げていた。
それからしばらく自分の中での答えを導き出そうと、思考回路を回していると突然。後ろの草むらから、なにやらがさごそと物音が聞こえてきた。
「――だ、誰!? ……レイ?」
星はびくっと体を震わせると、不安そうな声でそう問い掛けたが、その草むらからの返事は一向に返ってこない。だが、もしも誰かが隠れて脅かそうとしているなら、わざと物音を立てたりなんてしないはずだ。
一瞬返事がないことを不審に思った星だったが……。
(どうしたんだろう。返事がない……あっ! もしかして落ち込んでる私を励まそうと、レイが隠れてるのかな?)
確かに普段から落ち着きのないレイニールなら、我慢しきれずに動いてしまっても説明はつく。
しかも、さっきまで疑うことを捨てて、もっと仲間達を信じようと思っていたばかり、ここで疑うことは信頼関係を築く上でも良くない。
きっとエミル達の様子を見にいったついでに、自分を脅かそうとしているのだろう。
思わずくすっと笑みを溢すと、星はそーっと草むらに向かって歩き出した。
「……レイなんでしょ? 隠れてないで出てきて……」
星が草むらを覗き込もうと、前屈みになったその時、草むらの中から何かが勢い良く飛び出してきた。
それと同時に、体を縄の様な長いもので強く締め付けられている感覚と、凄まじい激痛が星の頭の中を駆け巡った。
「うっ! なっ……なにッ!? 締め上げられる……体中がすごく痛い……」
痛みに耐えながら、星が自分の体に巻き付いている物を確認すると、そこには自分の体に巻き付いている大きな蛇の頭が見えた。
そう。草むらに潜んでいたのはレイニールではなく、星の胴体ぐらいある巨大な大蛇だったのだ――。
全体は草むらに隠れてその大きさは把握できないものの。出ている部分だけでも数メートルはある。しかも、それが今、星の小さな体を容赦なく締め上げていた。システムのステータス強化がなければ、今頃星の体はバラバラに吹き飛ばされていただろう。
「……く、苦しい……な、なんとか……しないと……」
星が蛇を振り解こうと体に力を入れようものなら、巻き付いている大蛇は更に何倍もの力で体をきつく締め上げてくる。
抵抗虚しく強く締められた体が、限界を超えてミシミシと軋むような音を立て始める。まるで、水の中にでもいるかの様に全く息ができないほどだった。それと相応して、星の表情がみるみるうちに青ざめ、意識が遠のいていくのを感じていた。
「……かはっ! 苦しくて……息が、できないよ……だ、だれか……」
全身が今にも弾け飛ぶ様な苦痛の中、星はなんとか助けを求めようと辺りを見渡すが、そこには誰の姿もない。その時、ふと我に返った星は自分の底意地の悪さに自ら幻滅する。
それもそうだ。今までは一人の方がいいと考えていたのに、生命の危機になった瞬間には、もう誰かを頼っている自分がいるのだから……。
(……私ってずるい。こういう時だけ人を頼って……これは1人でなんとかしなきゃいけない問題なんだ!)
星は遠のく意識を気合で持ち直すと、腰に刺さった剣を抜こうと懸命にもがく。しかし、もがけばもがくほど体に巻き付いた大蛇は、緩急をつける様に締め上げてくる。
データの集合体であって実際の体ではないはずなのだが、全身の骨を砕かれる様な激しい痛みが星を襲う。
「……くっ! あああああああああああああッ!!」
星が叫び声を上げたその瞬間、レイニールの声が星の耳に飛び込んきた。
「――大丈夫か!? 主!!」
薄れゆく意識の中で、咄嗟に星の脳裏に言葉が浮かぶ。
「……レイ。だめ……逃げて……」
星はそのレイニールの声に反射的に、そう声にならない声を上げる。
何故その言葉が頭に一番に浮かんだのかは分からない――それが人に助けてもらうわけにはいかないというプライドから来るものなのか、それとも相手を心配して出た言葉なのかは今の星には分からなかった。
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