138 / 541
マスターの真意6
しおりを挟む
「ううん。絶対だめ! マスターは必ず帰って来るし。ここにはエミル姉もイシェルさんもデイビッドもいる。あんたはここにいた方が安全なんだから!」
「だから俺は安全な場所で待っているだけなんて嫌なんだよ!」
「このわからずやっ!」
「わからずやはどっちだっ!」
2人はそう言って、またいがみ合う。
星は一触即発の2人に「ケンカはだめですよ」とあたふたしながら間に割り込んで止めに入った。
その時、カレンの視界に突然。
【マスター様からメッセージが入りました。】
っと表示が現れる。
カレンは「マスターからだ!」と呟き慌ててコマンドを開き、メッセージボックスでその内容を確認する。
そこには――。
『カレン。まさかとは思うが儂の後を追いかけてはおらんだろうな? もしそうならすぐにエミル達の元へ戻れ。良いな! お前にはエミル達の護衛を任せる。一週間程度で戻る。それまで、しっかり修行しておれ!』
カレンはそれを読むと、小さくため息をついて歩き出した。
「ちょっと! どこ行くのよ!?」
「どこって城に戻るんだろ? お前も早く来いよ……」
それを見て叫んぶエリエに、カレンは振り返らずに答えた。
エリエと星は顔を見合わせて首を傾げると、カレンの背中を追いかけていった。
* * *
月が水面に映る湖で白馬が水を飲んでいた。その横にはテントが立ててあり、その隣で焚き火を炊きながらマスターがコマンドを操作している。
「はぁー。カレンの方はこれで良いだろう……しかし、あいつにも困ったものよ。男勝りに育ってしまってこれから先が思いやられるな」
マスターはコマンドを閉じてそう呟くと大きく息を吐いた。
「しかし、あやつらに会うのも久しぶりだ。よもや、腕は鈍ってはおらんだろうな……メルディウス」
マスターはそう呟くと、拳を空へと突き上げて笑みを浮かべた。
その頃、城のエミルの部屋ではエミル、イシェル、デイビッドが3人の帰りを待っていた。
飛び出していった3人が気掛かりだったが、いったところで状況を混乱させるだけなのは分かっている。
部屋の中は、まるでお通夜のようにな静けさで、外にいるモンスター達の鳴き声が部屋に聞こえそうなくらいに静まり返っていた。
「ちょい遅くない? うち心配やから見てこようか?」
「……いいわよ。待ってましょう」
イシェルの言葉にエミルはそう返したもののその表情は険しく、明らかにこの中で一番心配していのは彼女だろう。
そんな彼女を見て、イシェルはくすっと笑みを浮かべると徐ろに席を立つ。
「ちょっとイシェ。行かなくてもいいって言ってるのに!」
意地を張っているのか、イシェルが立ち上がったことで驚いて声を上げたエミルに向かって、イシェルはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫、行かへんよ。でも、あの子らが帰ってきても気まずくなるのは見えとるやろ? エリエちゃんは確かお菓子が好きやったはずやし。紅茶とお菓子をこさえて待ってよう思ってな~」
それを聞いたエミルとデイビッドが紅茶と聞いて、同時に声を上げた。
「「飲み物は紅茶じゃない方がいいと思う!」」
その息の合った声を聞いてイシェルは驚き目を丸くさせたが、すぐに「了解」と微笑み返すと、キッチンへと向かって歩き出した。
おそらく。この時のデイビッドとエミルにはエリエが「紅茶の気分じゃないんだけどな~」とぼやくのが見えていたのだろう。
エミルとデイビッドはその姿を見送ると、お互いの顔を見つめる。
「はぁ~。それにしても、マスターはいったい何を考えてるのかしら……」
「そうだなー。でもマスターの事だから、それなりに考えがあっての行動だとは思う。けど、イシェルさんまで呼び出すとはな……」
大きなため息をつき、頭を押さえているエミルにデイビッドも腕を組んで椅子の背凭れに体を預けた。
エミルはそんなデイビッドの顔を見つめると、真面目な顔をして口を開く。
「私の勘違いならいいんだけど……マスターはもしかして、何か大規模な作戦を考えてるんじゃないかしら。イシェのスキルは複数戦闘が得意だし、マスターが直接出向いて呼びに行く人間なんて数人しか思い当たらないのだけど……」
エミルの真剣な顔が徐々に不安で崩れていくのを見て、デイビッドは何かを察したのか、ゆっくりと口を開いた。
「あ……いや、まさか、あの人達に声を掛けるわけないだろ? だって『3日もあればゲーム内のモンスターを狩り尽くす』なんて言われるくらいでたらめな力を持っているのに、性格もばらばらで戦闘スタイルは強引な人達だろ? それに確か、彼等はマスターとは仲悪かったんじゃないか?」
「ええ、そのはずなんだけどね。でも緊急時だし、もしログアウトできなくなった時にプレイしていたとなると……」
「ああ、皆筋金入りのゲーマーだろうから。そうなると……」
2人は顔を見合わせると、その表情からは徐々に血の気が引いて青ざめていく……。
「「すっごく怒ってる――」」
「――でしょうね」
「――だろうな」
同時に呟き、エミル達は大きなため息を付いた。
そこにコーヒーが入ったカップをおぼんに乗せたイシェルが歩いてきた。
「だから俺は安全な場所で待っているだけなんて嫌なんだよ!」
「このわからずやっ!」
「わからずやはどっちだっ!」
2人はそう言って、またいがみ合う。
星は一触即発の2人に「ケンカはだめですよ」とあたふたしながら間に割り込んで止めに入った。
その時、カレンの視界に突然。
【マスター様からメッセージが入りました。】
っと表示が現れる。
カレンは「マスターからだ!」と呟き慌ててコマンドを開き、メッセージボックスでその内容を確認する。
そこには――。
『カレン。まさかとは思うが儂の後を追いかけてはおらんだろうな? もしそうならすぐにエミル達の元へ戻れ。良いな! お前にはエミル達の護衛を任せる。一週間程度で戻る。それまで、しっかり修行しておれ!』
カレンはそれを読むと、小さくため息をついて歩き出した。
「ちょっと! どこ行くのよ!?」
「どこって城に戻るんだろ? お前も早く来いよ……」
それを見て叫んぶエリエに、カレンは振り返らずに答えた。
エリエと星は顔を見合わせて首を傾げると、カレンの背中を追いかけていった。
* * *
月が水面に映る湖で白馬が水を飲んでいた。その横にはテントが立ててあり、その隣で焚き火を炊きながらマスターがコマンドを操作している。
「はぁー。カレンの方はこれで良いだろう……しかし、あいつにも困ったものよ。男勝りに育ってしまってこれから先が思いやられるな」
マスターはコマンドを閉じてそう呟くと大きく息を吐いた。
「しかし、あやつらに会うのも久しぶりだ。よもや、腕は鈍ってはおらんだろうな……メルディウス」
マスターはそう呟くと、拳を空へと突き上げて笑みを浮かべた。
その頃、城のエミルの部屋ではエミル、イシェル、デイビッドが3人の帰りを待っていた。
飛び出していった3人が気掛かりだったが、いったところで状況を混乱させるだけなのは分かっている。
部屋の中は、まるでお通夜のようにな静けさで、外にいるモンスター達の鳴き声が部屋に聞こえそうなくらいに静まり返っていた。
「ちょい遅くない? うち心配やから見てこようか?」
「……いいわよ。待ってましょう」
イシェルの言葉にエミルはそう返したもののその表情は険しく、明らかにこの中で一番心配していのは彼女だろう。
そんな彼女を見て、イシェルはくすっと笑みを浮かべると徐ろに席を立つ。
「ちょっとイシェ。行かなくてもいいって言ってるのに!」
意地を張っているのか、イシェルが立ち上がったことで驚いて声を上げたエミルに向かって、イシェルはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫、行かへんよ。でも、あの子らが帰ってきても気まずくなるのは見えとるやろ? エリエちゃんは確かお菓子が好きやったはずやし。紅茶とお菓子をこさえて待ってよう思ってな~」
それを聞いたエミルとデイビッドが紅茶と聞いて、同時に声を上げた。
「「飲み物は紅茶じゃない方がいいと思う!」」
その息の合った声を聞いてイシェルは驚き目を丸くさせたが、すぐに「了解」と微笑み返すと、キッチンへと向かって歩き出した。
おそらく。この時のデイビッドとエミルにはエリエが「紅茶の気分じゃないんだけどな~」とぼやくのが見えていたのだろう。
エミルとデイビッドはその姿を見送ると、お互いの顔を見つめる。
「はぁ~。それにしても、マスターはいったい何を考えてるのかしら……」
「そうだなー。でもマスターの事だから、それなりに考えがあっての行動だとは思う。けど、イシェルさんまで呼び出すとはな……」
大きなため息をつき、頭を押さえているエミルにデイビッドも腕を組んで椅子の背凭れに体を預けた。
エミルはそんなデイビッドの顔を見つめると、真面目な顔をして口を開く。
「私の勘違いならいいんだけど……マスターはもしかして、何か大規模な作戦を考えてるんじゃないかしら。イシェのスキルは複数戦闘が得意だし、マスターが直接出向いて呼びに行く人間なんて数人しか思い当たらないのだけど……」
エミルの真剣な顔が徐々に不安で崩れていくのを見て、デイビッドは何かを察したのか、ゆっくりと口を開いた。
「あ……いや、まさか、あの人達に声を掛けるわけないだろ? だって『3日もあればゲーム内のモンスターを狩り尽くす』なんて言われるくらいでたらめな力を持っているのに、性格もばらばらで戦闘スタイルは強引な人達だろ? それに確か、彼等はマスターとは仲悪かったんじゃないか?」
「ええ、そのはずなんだけどね。でも緊急時だし、もしログアウトできなくなった時にプレイしていたとなると……」
「ああ、皆筋金入りのゲーマーだろうから。そうなると……」
2人は顔を見合わせると、その表情からは徐々に血の気が引いて青ざめていく……。
「「すっごく怒ってる――」」
「――でしょうね」
「――だろうな」
同時に呟き、エミル達は大きなため息を付いた。
そこにコーヒーが入ったカップをおぼんに乗せたイシェルが歩いてきた。
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
共に
第8回歴史時代小説参加しました!
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる