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復讐編 あなたは絶世のファム・ファタール!
交渉とこれから
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アナスタシオスが〝アナスタシアの双子の弟〟として、アデヤ達の前に現れる前。
アナスタシオスはアデヤの父である美国王と言葉を交わしていた。
「アナスタシオス・フィラウティア、我が息子アデヤの初恋を守る……その役目を、よく果たしてくれた」
美国王は頭を垂れるアナスタシオスに感謝の意を示した。
美国王の愛息子、アデヤの初恋を守るべく、女性として過ごしてきたアナスタシオス。
婚約破棄されたとなれば、その役目は終わりを迎える。
「お力になれて光栄に思います」
美国王は、学園に広がっていた〝アナスタシア〟の黒い噂を知っている。
アナスタシオスが無実であることも。
【博愛の聖女】レンコに嫌がらせをしたという時間、アナスタシオスはお手洗いに行っていた、と正直に話してある。
弟との密会は、単なる男兄弟の戯れだとも。
美国王はアナスタシオスを男だと知っている。
【博愛の聖女】に選ばれなかったからと言って、レンコに嫉妬することなどない。
だからこそ、美国王はアナスタシオスの言い分を信じた。
アデヤに〝アナスタシア〟が男だと知られないために、真実を言えず、噂を否定出来なかった、と。
アデヤの心が自分から離れていると感じたアナスタシオスは、美国王に提案したのだ。
「良い機会です。アデヤ様から婚約破棄を言い渡して貰いましょう。いつまでも、男の私と婚約している訳にはいきません。世継ぎのことを考え、そうした方が賢明かと」
美国王はその提案を快く飲んだのである。
「褒美をやろう。希望を申せ」
「陛下の労いの言葉が何よりの褒美です」
「世辞は良い」
「では、お言葉に甘えて……。私は六年間学園で学び、勉学を極めたいと思いました。このまま、卒業までキュリオ学園んで学ばせて頂きたく思います」
アナスタシオスの言葉に美国王は眉を顰めた。
もう〝アナスタシア〟はアデヤにも美国王にも必要はない。
あと一年。
アデヤに〝アナスタシア〟が男だとバレる危険を犯してまで、〝アナスタシア〟をアデヤのいる学園に通わせる理由はない。
「そこで、私から一つご提案があります」
「なんだ」
「〝アナスタシア〟は死亡したとしましょう」
「は……」
「さすれば、アデヤ様は次なる恋にも行きやすいでしょう。〝アナスタシア〟がいては、アデヤ様を迷わせてしまいます……」
「しかし、かつて愛した者が死んだとなれば、アデヤは傷つくであろう」
「聴衆の前で婚約破棄を言い渡したのですから、愛など微塵も残っていないのでしょう」
アナスタシオスは悲しそうに目を伏せながら言った。
「アデヤ様には過去の恋愛を忘れ、真実の愛に真っ直ぐ向かっていって欲しいのです」
「だが、そなたはどうするのだ。学園に通っていたいのだろう」
「私は〝アナスタシオス〟に戻ります。〝アナスタシア〟の双子の弟として、学園に通うのです。勿論、殿下には、私が〝アナスタシア〟であったことを隠し通します」
そこまで言われても、美国王は首を縦には降らなかった。
不安が拭えないのだろう。
「しかしだな……」
「お願い致します。どうか、どうか、あと一年だけ……あの学園に通わせて下さい」
彼は美しさがものを言う国、美国。
その王、美国王。
あの外見至上主義のアデヤの父。
美しい顔で懇願されては、首を縦に振るしかなかった。
□
「名俳優だよなあ。惚れ惚れするぜ」
アナスタシオスは美国王との交渉を思い出して、得げに笑う。
「自分で言うか?」
クロードは呆れた。
「期限は一年……。やるべきことは一つだ」
アナスタシオスはニヤリと笑う。
「俺の時間を奪った者達への復讐」
一目惚れをし、アナスタシオスに女性のふりをさせる原因を作ったアデヤ。
アナスタシオスを陥れたレンコ。
そして、レンコの言葉を信じ、レンコに協力した男共。
「俺を敵に回したこと、一生後悔させてやるぜ」
あまりにも極悪な笑みに、クロードは背筋がゾクゾクとする。
恐怖と興奮。
──流石、悪役令嬢だ……。
「復讐なんて何も生まないぞ」
「そりゃそうだ。復讐は生まれた怒りを殺すためにすんだから。何も生まれねえさ」
アナスタシオスはへっ、と笑う。
「しっかし、レンコのあの言葉……」
『やっと会えましたね──』
「確かに、変だよな。まるで、兄さんを最初から狙っていたような……」
「……狙ってたんだろ。最初からァ」
アナスタシオスは自分の顔をクロードの顔に近づけた。
「クロードよォ、俺になんか隠してることねえか?」
「隠してるって……何がだよ」
「俺が攻略対象って奴なんじゃねえかってことだよ」
「ええ!? 兄さんが!?」
──確かに、アナスタシアのビジュは攻略対象並……いや、それ以上の美麗さだけど!?
アナスタシアを攻略したい、と転生前のクロードだって思ったことはある。
しかし、【キュリオシティラブ】は女性向けゲームだ。
女性キャラであるアナスタシアを攻略出来るシナリオはない。
実際、アナスタシア攻略ルートはなく、二年目後半で死亡し、姿を消す。
「その反応……隠してた訳じゃあねえみてえだな」
「当たり前だろ! 知ってたら真っ先に言う!」
「じゃあ、クロードの知らねえ、【空白の三年目】に現れるのかもな」
「ゲームの終盤の終盤だぞ……!? そんな重要情報、最後の一年に出すか!?」
「シルフィトだって、二年目から登場するんだろ?」
「それは……そうだけど」
クロードはぐうの音も出ない。
「公式サイトにはアナスタシオスなんて──」
──いや、待てよ?
そこまで言って、ふと思いついた。
公式サイトには載らない攻略対象は、男性向けのギャルゲーにいたことがあるな、と。
「もしかして、隠しキャラ……か?」
恋愛シミュレーションゲームには隠しキャラがいることが多々ある。
登場条件を満たさなければ現れない、特殊なキャラクター。
──おれはゲームをそこまでやり込んでいない……。兄さんが【三年目】に登場する隠しキャラだったなら。
ならば、アナスタシアが男なのも、パッケージにデカデカとアナスタシアが描かれていたのも頷ける。
全て、ゲームの設定だったのだ。
アナスタシアが断罪され処刑されたあと、隠しキャラの〝アナスタシオス〟が登場する。
そういうシナリオだったなら?
「今までのおれ達の苦労は一体……?」
「神に踊らされた哀れな俺達……」
アナスタシオスはわざとらしくすんすんと鼻を鳴らした。
「じゃあ、レンコの本当の目的って……!」
転生前、レンコがゲームをやり込み、隠しキャラであるアナスタシオスを出現させ、惚れ込んでいたのなら……。
「レンコの目的は兄さんの攻略……!?」
アナスタシア断罪がアナスタシオス登場のフラグだったのなら、レンコの必死さも頷ける。
アナスタシアを消さなければ、アナスタシオスが学園に来ることはないのだから。
「全部……レンコの思い通り……?」
クロードはその場にへたり込んでしまった。
「ま、このままハッピーエンドってのは戴けねえよなあ?」
──悪い顔してるな……。
クロードは世界の構造を知って、絶望していると言うのに。
「地獄の底まで付き合ってくれるんだろ?」
アナスタシオスはクロードに手を差し伸べる。
クロードは諦めたように笑った。
「二言はないよ」
クロードはアナスタシオスの手を取った。
アナスタシオスはアデヤの父である美国王と言葉を交わしていた。
「アナスタシオス・フィラウティア、我が息子アデヤの初恋を守る……その役目を、よく果たしてくれた」
美国王は頭を垂れるアナスタシオスに感謝の意を示した。
美国王の愛息子、アデヤの初恋を守るべく、女性として過ごしてきたアナスタシオス。
婚約破棄されたとなれば、その役目は終わりを迎える。
「お力になれて光栄に思います」
美国王は、学園に広がっていた〝アナスタシア〟の黒い噂を知っている。
アナスタシオスが無実であることも。
【博愛の聖女】レンコに嫌がらせをしたという時間、アナスタシオスはお手洗いに行っていた、と正直に話してある。
弟との密会は、単なる男兄弟の戯れだとも。
美国王はアナスタシオスを男だと知っている。
【博愛の聖女】に選ばれなかったからと言って、レンコに嫉妬することなどない。
だからこそ、美国王はアナスタシオスの言い分を信じた。
アデヤに〝アナスタシア〟が男だと知られないために、真実を言えず、噂を否定出来なかった、と。
アデヤの心が自分から離れていると感じたアナスタシオスは、美国王に提案したのだ。
「良い機会です。アデヤ様から婚約破棄を言い渡して貰いましょう。いつまでも、男の私と婚約している訳にはいきません。世継ぎのことを考え、そうした方が賢明かと」
美国王はその提案を快く飲んだのである。
「褒美をやろう。希望を申せ」
「陛下の労いの言葉が何よりの褒美です」
「世辞は良い」
「では、お言葉に甘えて……。私は六年間学園で学び、勉学を極めたいと思いました。このまま、卒業までキュリオ学園んで学ばせて頂きたく思います」
アナスタシオスの言葉に美国王は眉を顰めた。
もう〝アナスタシア〟はアデヤにも美国王にも必要はない。
あと一年。
アデヤに〝アナスタシア〟が男だとバレる危険を犯してまで、〝アナスタシア〟をアデヤのいる学園に通わせる理由はない。
「そこで、私から一つご提案があります」
「なんだ」
「〝アナスタシア〟は死亡したとしましょう」
「は……」
「さすれば、アデヤ様は次なる恋にも行きやすいでしょう。〝アナスタシア〟がいては、アデヤ様を迷わせてしまいます……」
「しかし、かつて愛した者が死んだとなれば、アデヤは傷つくであろう」
「聴衆の前で婚約破棄を言い渡したのですから、愛など微塵も残っていないのでしょう」
アナスタシオスは悲しそうに目を伏せながら言った。
「アデヤ様には過去の恋愛を忘れ、真実の愛に真っ直ぐ向かっていって欲しいのです」
「だが、そなたはどうするのだ。学園に通っていたいのだろう」
「私は〝アナスタシオス〟に戻ります。〝アナスタシア〟の双子の弟として、学園に通うのです。勿論、殿下には、私が〝アナスタシア〟であったことを隠し通します」
そこまで言われても、美国王は首を縦には降らなかった。
不安が拭えないのだろう。
「しかしだな……」
「お願い致します。どうか、どうか、あと一年だけ……あの学園に通わせて下さい」
彼は美しさがものを言う国、美国。
その王、美国王。
あの外見至上主義のアデヤの父。
美しい顔で懇願されては、首を縦に振るしかなかった。
□
「名俳優だよなあ。惚れ惚れするぜ」
アナスタシオスは美国王との交渉を思い出して、得げに笑う。
「自分で言うか?」
クロードは呆れた。
「期限は一年……。やるべきことは一つだ」
アナスタシオスはニヤリと笑う。
「俺の時間を奪った者達への復讐」
一目惚れをし、アナスタシオスに女性のふりをさせる原因を作ったアデヤ。
アナスタシオスを陥れたレンコ。
そして、レンコの言葉を信じ、レンコに協力した男共。
「俺を敵に回したこと、一生後悔させてやるぜ」
あまりにも極悪な笑みに、クロードは背筋がゾクゾクとする。
恐怖と興奮。
──流石、悪役令嬢だ……。
「復讐なんて何も生まないぞ」
「そりゃそうだ。復讐は生まれた怒りを殺すためにすんだから。何も生まれねえさ」
アナスタシオスはへっ、と笑う。
「しっかし、レンコのあの言葉……」
『やっと会えましたね──』
「確かに、変だよな。まるで、兄さんを最初から狙っていたような……」
「……狙ってたんだろ。最初からァ」
アナスタシオスは自分の顔をクロードの顔に近づけた。
「クロードよォ、俺になんか隠してることねえか?」
「隠してるって……何がだよ」
「俺が攻略対象って奴なんじゃねえかってことだよ」
「ええ!? 兄さんが!?」
──確かに、アナスタシアのビジュは攻略対象並……いや、それ以上の美麗さだけど!?
アナスタシアを攻略したい、と転生前のクロードだって思ったことはある。
しかし、【キュリオシティラブ】は女性向けゲームだ。
女性キャラであるアナスタシアを攻略出来るシナリオはない。
実際、アナスタシア攻略ルートはなく、二年目後半で死亡し、姿を消す。
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そこまで言って、ふと思いついた。
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登場条件を満たさなければ現れない、特殊なキャラクター。
──おれはゲームをそこまでやり込んでいない……。兄さんが【三年目】に登場する隠しキャラだったなら。
ならば、アナスタシアが男なのも、パッケージにデカデカとアナスタシアが描かれていたのも頷ける。
全て、ゲームの設定だったのだ。
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そういうシナリオだったなら?
「今までのおれ達の苦労は一体……?」
「神に踊らされた哀れな俺達……」
アナスタシオスはわざとらしくすんすんと鼻を鳴らした。
「じゃあ、レンコの本当の目的って……!」
転生前、レンコがゲームをやり込み、隠しキャラであるアナスタシオスを出現させ、惚れ込んでいたのなら……。
「レンコの目的は兄さんの攻略……!?」
アナスタシア断罪がアナスタシオス登場のフラグだったのなら、レンコの必死さも頷ける。
アナスタシアを消さなければ、アナスタシオスが学園に来ることはないのだから。
「全部……レンコの思い通り……?」
クロードはその場にへたり込んでしまった。
「ま、このままハッピーエンドってのは戴けねえよなあ?」
──悪い顔してるな……。
クロードは世界の構造を知って、絶望していると言うのに。
「地獄の底まで付き合ってくれるんだろ?」
アナスタシオスはクロードに手を差し伸べる。
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