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第二部 冒険者になってやろう!
第二十八話 冒険者の登録をしてやろう!
しおりを挟む「ウィナ様、コレール・ムート様、ボースハイト様、グロル様。審査が終わりました。冒険者ライセンスを発行致します」
コレールが目をパチクリさせる。
「本当に、本名で登録、出来た……」
大きな町に到着した我が輩達は早速冒険者ギルドとやらに入った。
冒険者の登録に必要な書類を書き、ギルドの受付係に提出を終え、審査が終わるまで暫く待たされた。
その間、コレールはチラチラと受付のカウンターを見たり、周囲をうろうろしたり、落ち着きがなかった。
我が輩が大丈夫だと言ったのに……。
「ま、魔法って、便利なんだな」
「知らなかったのか? 便利だからもっと使うが良い」
冒険者の登録をする際、我が輩は受付係や審査員に魔法をかけた。
認識を少しずらす魔法《認識阻害》だ。
それだけで人間は簡単に騙される。
現に、受付係や審査員は我が輩達の討伐依頼が出されていることを認識出来なかった。
彼女らは我が輩達を「討伐依頼が出されてる人達に似てるな~」ぐらいにしか認識出来ていないはずだ。
「こ、この魔法があれば、国を出なくて済んだんじゃ……?」
気づいてしまったか。
だって、国を出る覚悟を決めた三人に「出て行かずとも良い」なんて言えなかったんだもん……。
というのは建前で、過酷な旅を用いて三人を鍛えたかったのだ。
あの学院の中で鍛えるのには限界があるからな。
「エゴですな」とバレットの声が聞こえた気がした。
目の前にいるんだから文句は面と向かって言え。
「こちらが冒険者ライセンスです。冒険者ランクはFランクからスタートになります」
「冒険者ランク?」
「冒険者ランクは、冒険者としての熟練度を現しています。依頼をこなしていけば、ランクが上がりますよ」
「学院を卒業しているとDランクからなのですが、卒業する前に学院を出たので、Fランクからですな」
バレットがそう付け加える。
そういえば、バレットは冒険者の登録しなかったな。
「教員免許を取るのに冒険者ランクがCランクになっていないといけないのですな。ですから、登録は既にしてあるのです」
バレットは自身の冒険者ライセンスを見せた。
いつの間に冒険者ランクをCランクにしていたのだ。
報告、連絡、相談ぐらいしろ。
我が輩は貴様の上司だぞ。
「バレットは上から三番目のCランクなんだな」
「いえ、Aランクの上にSランク、SSランク、SSSランクがありますな」
「なんでAの次がSなのだ」
「それは……何故でしょうな? お偉いさんに聞いて欲しいですな」
お偉いさん……。
国王のラウネンなら知ってるだろうか……。
「さ、早速、依頼を、受けに行こうか」
全員が冒険者ライセンスを受け取ると、コレールは大きな掲示板を指差した。
そこに依頼書が張り出されているらしい。
我が輩は近づいて、至近距離で依頼書を吟味する。
魔物の討伐依頼だけでなく、薬草採取やダンジョンでの探し物、ダンジョンを跨いだ配達の依頼もある。
無論、我が輩が受けるのは魔物の討伐依頼だ。
「お。トレントの討伐依頼があるぞ。今の貴様らなら楽に倒せる。これを受けよう」
「あっ。すみません。説明不足でした」
受付係が近づいてきて慌てて言う。
「規定として、冒険者ランク以下のランクの依頼しか受けられないことになっています。トレントの討伐依頼はDランクですので、受けられません」
「バレットはCランクだぞ」
「パーティの半数がDランク以上なら受けられるのですが……」
Cランク一人に対して、Fランクが四人。
面倒を見きれないということか。
「Fランクは依頼を50件クリアすればランクが上がりますから、頑張って下さい」
「50件!?」
面倒だな。
いや、魔物の討伐なら50件など余裕なのだが、トレント以下の魔物が相手だとやり応えがない。
「Fランクの依頼からコツコツやるしかありませんね」
グロルがため息をついて、一枚の依頼書を手に取る。
その依頼は薬草採取の依頼だった。
「我が輩は魔物討伐依頼を受けたい」
「Fランクの依頼に魔物討伐はないみたいですよ」
「………………」
冒険者にならなきゃ良かった。
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