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水の退治屋
「退治の協力願いだよ」
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話がまとまったところで、さっそくロウソク修行の準備をした。その際に、軽く逢花が凛に修行内容を伝えた。
中心に置かれている丸テーブルには、火のついたロウソクが三本立てられた。
その周りを星桜、凛、翔月が険しい顔で囲うように座る。そして、星桜の後ろには寝そべっている弥幸の姿があった。
緊張の面持ちで、凛がおそるおそる両手をロウソクへと近づける。
プルプルと震えており、額からは汗が滲み出ていた。
固唾を飲み、炎に手を添えた。
次の瞬間、火が大きく揺らめきシュッと消える。
「だぁぁあ!!!! 出来ない!!!!」
炎が消えてしまったことにショックを受け、翔月と星桜は「まぁまぁ」と宥める。
「そう簡単に出来ないよ。私も、二時間以上かかってやっとできたもん」
「確かに、これは難しいわ」
次に翔月が挑戦しようと両手を火に添えようとするが、やはり凛と同じく近付けると勢いよく消えてしまう。
「クソが!!!!」
「おおおお落ち着いて翔月!!」
「月宮落ち着いて!!」
テーブルを叩く翔月を宥める二人。
「てか、これ本当に出来るわけ?」
「星桜は一度成功させてるから、できないことはないと思うけどな」
見守っている星桜を見ても、答えなど見えてくるわけがない。
凛は息を吐き、寝そべっている弥幸の肩をポンポンと叩いた。
「赤鬼君、火おねがーい」
スッと目を開け、弥幸が起き上がった。
「協力するなんて、言わなければ良かった」
「頑張って、弥幸お兄ちゃん!!」
逢花も二人がわかりやすいように言葉を選びつつ、弥幸が火をつけるのを待った。
そんな時、襖が突然開かれ、顔を上げた。
「こんにちわ。頑張っているところごめんなさい。弥幸、貴方に大事な手紙が届いていたわよ。渡しておくわね」
弥幸に手紙を渡したのは、綺麗な女性。
長い髪は後ろで結っており、簪が付けられている。
服は藍色を主体としている着物で、蝶の柄が控えめ程度に入っている。まるで、夜闇の中に飛び交う蝶のような模様に、凛も星桜も見惚れてしまった。
着物も綺麗だがそれだけではなく、その綺麗な着物を着こなしている女性も肌白で、赤い瞳が優しく光っているように見える。そして、口元にあるホクロがなんとも色っぽい。
そして、どことなく弥幸や逢花に似ている。
三人が見惚れていると、女性は視線に気づいた。
優しい笑みを浮かべ、姿勢を整えた。
「初めまして。私は弥幸の母、赤鬼美禰子と言います。呼びやすいように呼んでいただいて、構いませんよ」
そう自己紹介している横で、弥幸は渡された手紙を確認していた。
三人はその自己紹介を聞いたあとしばらくは放心状態だったが、顔を見合せたあと我に戻り――……
「「「母親ぁぁぁぁああああ?!?!!?!」」」
三人の叫び声が屋敷に外にまで響き渡った。
※
「ふふっ。そんなに驚かなくてもいいのに」
美禰子は星桜と凛の間に座り、笑みを浮かべながら会話に入った。
「いや、だって……。見た目だけなら普通に二十代……」
「あら、嬉しいわぁ。ありがとう」
口元に手を持っていき、控えめに笑う美禰子は本当に美しい。
誰かの母親など考えられないほど若々しく見える。
「てっきり、お姉さんかと……」
「残念だけれど、三人兄弟で女の子は逢花だけよ。あとは、男の子」
言いながら、美禰子は手紙を確認している弥幸を見た。
そんな彼女に、星桜が手を上げ問いかけた。
「あの、三人兄弟なんですか?」
「えぇ。弥幸は次男なの。逢花が長女。赤鬼家には長男が居るのだけれど、今はどこで何をしているのか分からないわ」
目を伏せ、悲しげに美禰子は教えた。
その様子に、星桜達は顔を見合せ後悔したような表情を浮かべ俯く。
「あら、ごめんなさい。せっかく楽しい雰囲気でしたのに、邪魔をしてしまったわね」
「あ、いえ。そんなことは……」
「私は、これで失礼しますね。弥幸、しっかりと手紙の返事は送りなさいよ」
美禰子は立ち上がり、今は確認も終わり、寝そべっている弥幸に言った。
わかったのか分かってないのか。弥幸は左手をフリフリと振るだけで返答しない。
美禰子は呆れたような顔を浮かべるが、直ぐにいつもの優しい笑みに戻り「失礼しますね」と部屋を出て行った。
沈黙の時間が続く中、逢花が弥幸に顔を向け問いかけた。
「そういえば、弥幸お兄ちゃん。今回のは、どこからの手紙だったの?」
「水泉家」
弥幸の言葉に、逢花は納得した表情を浮かべる。だが、他の三人は聞き覚えがなく首を傾げた。
「水泉というのは、人の苗字だよ。ほら、私達は苗字が赤鬼でしょ。だから、他の退治屋も赤鬼家って呼ぶの。それで、今回は水泉さんという人から手紙が届いたってこと。水泉家はここから片道三時間半にある港。【水光の港】にあるんだよ」
水光の港は、港なだけあって海に囲まれた場所だ。
人々も水を大事にしており、海を汚す者達を絶対に許さない。
他にも、魚介類がものすごく美味しいらしく、観光に行く際には必ず魚介類は食べておくというのが鉄則になっている。
「それで、弥幸お兄ちゃん。水泉家からなんて?」
「退治の協力願いだよ。水泉魅涼かららしい」
手紙をヒラヒラと無意味に振りながら、弥幸は四人に伝えた。
「え、協力願い?」
「一つの家だけで撃破が難しい場合、今回のように協力願いを他の家に送る事もあるんだよ」
逢花が伝えると、弥幸がよっこらせと体を起こした。
「二通目だし、今回は結構やばいらしい」
「一通目は?」
「無視した」
「弥幸お兄ちゃんらしいね」
三人が呆れていると、弥幸がスマホを開き、カレンダーアプリを開いた。
「………来週は三連休だね。そこで向かおうか。返事を書いて来るから、僕はここで失礼するよ」
弥幸は立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
手紙の返事を書きに、違う部屋へと向かってしまった。
「書く?」
凛の呟きに、逢花が軽く説明をした。
「連絡は、手紙を使って行っているの」
「メールにすれば早くない?」
「メールだと、漏洩の恐れがあるから怖いんだよね。それに、この手紙は退治家について知っている有力者が運んでいるから、周りに漏れることはないし安心なの」
逢花が説明し、三人は納得。そして、火付け役の弥幸が抜けてしまったことにより修行が出来なくなり、三人は素直に帰ることにした。
中心に置かれている丸テーブルには、火のついたロウソクが三本立てられた。
その周りを星桜、凛、翔月が険しい顔で囲うように座る。そして、星桜の後ろには寝そべっている弥幸の姿があった。
緊張の面持ちで、凛がおそるおそる両手をロウソクへと近づける。
プルプルと震えており、額からは汗が滲み出ていた。
固唾を飲み、炎に手を添えた。
次の瞬間、火が大きく揺らめきシュッと消える。
「だぁぁあ!!!! 出来ない!!!!」
炎が消えてしまったことにショックを受け、翔月と星桜は「まぁまぁ」と宥める。
「そう簡単に出来ないよ。私も、二時間以上かかってやっとできたもん」
「確かに、これは難しいわ」
次に翔月が挑戦しようと両手を火に添えようとするが、やはり凛と同じく近付けると勢いよく消えてしまう。
「クソが!!!!」
「おおおお落ち着いて翔月!!」
「月宮落ち着いて!!」
テーブルを叩く翔月を宥める二人。
「てか、これ本当に出来るわけ?」
「星桜は一度成功させてるから、できないことはないと思うけどな」
見守っている星桜を見ても、答えなど見えてくるわけがない。
凛は息を吐き、寝そべっている弥幸の肩をポンポンと叩いた。
「赤鬼君、火おねがーい」
スッと目を開け、弥幸が起き上がった。
「協力するなんて、言わなければ良かった」
「頑張って、弥幸お兄ちゃん!!」
逢花も二人がわかりやすいように言葉を選びつつ、弥幸が火をつけるのを待った。
そんな時、襖が突然開かれ、顔を上げた。
「こんにちわ。頑張っているところごめんなさい。弥幸、貴方に大事な手紙が届いていたわよ。渡しておくわね」
弥幸に手紙を渡したのは、綺麗な女性。
長い髪は後ろで結っており、簪が付けられている。
服は藍色を主体としている着物で、蝶の柄が控えめ程度に入っている。まるで、夜闇の中に飛び交う蝶のような模様に、凛も星桜も見惚れてしまった。
着物も綺麗だがそれだけではなく、その綺麗な着物を着こなしている女性も肌白で、赤い瞳が優しく光っているように見える。そして、口元にあるホクロがなんとも色っぽい。
そして、どことなく弥幸や逢花に似ている。
三人が見惚れていると、女性は視線に気づいた。
優しい笑みを浮かべ、姿勢を整えた。
「初めまして。私は弥幸の母、赤鬼美禰子と言います。呼びやすいように呼んでいただいて、構いませんよ」
そう自己紹介している横で、弥幸は渡された手紙を確認していた。
三人はその自己紹介を聞いたあとしばらくは放心状態だったが、顔を見合せたあと我に戻り――……
「「「母親ぁぁぁぁああああ?!?!!?!」」」
三人の叫び声が屋敷に外にまで響き渡った。
※
「ふふっ。そんなに驚かなくてもいいのに」
美禰子は星桜と凛の間に座り、笑みを浮かべながら会話に入った。
「いや、だって……。見た目だけなら普通に二十代……」
「あら、嬉しいわぁ。ありがとう」
口元に手を持っていき、控えめに笑う美禰子は本当に美しい。
誰かの母親など考えられないほど若々しく見える。
「てっきり、お姉さんかと……」
「残念だけれど、三人兄弟で女の子は逢花だけよ。あとは、男の子」
言いながら、美禰子は手紙を確認している弥幸を見た。
そんな彼女に、星桜が手を上げ問いかけた。
「あの、三人兄弟なんですか?」
「えぇ。弥幸は次男なの。逢花が長女。赤鬼家には長男が居るのだけれど、今はどこで何をしているのか分からないわ」
目を伏せ、悲しげに美禰子は教えた。
その様子に、星桜達は顔を見合せ後悔したような表情を浮かべ俯く。
「あら、ごめんなさい。せっかく楽しい雰囲気でしたのに、邪魔をしてしまったわね」
「あ、いえ。そんなことは……」
「私は、これで失礼しますね。弥幸、しっかりと手紙の返事は送りなさいよ」
美禰子は立ち上がり、今は確認も終わり、寝そべっている弥幸に言った。
わかったのか分かってないのか。弥幸は左手をフリフリと振るだけで返答しない。
美禰子は呆れたような顔を浮かべるが、直ぐにいつもの優しい笑みに戻り「失礼しますね」と部屋を出て行った。
沈黙の時間が続く中、逢花が弥幸に顔を向け問いかけた。
「そういえば、弥幸お兄ちゃん。今回のは、どこからの手紙だったの?」
「水泉家」
弥幸の言葉に、逢花は納得した表情を浮かべる。だが、他の三人は聞き覚えがなく首を傾げた。
「水泉というのは、人の苗字だよ。ほら、私達は苗字が赤鬼でしょ。だから、他の退治屋も赤鬼家って呼ぶの。それで、今回は水泉さんという人から手紙が届いたってこと。水泉家はここから片道三時間半にある港。【水光の港】にあるんだよ」
水光の港は、港なだけあって海に囲まれた場所だ。
人々も水を大事にしており、海を汚す者達を絶対に許さない。
他にも、魚介類がものすごく美味しいらしく、観光に行く際には必ず魚介類は食べておくというのが鉄則になっている。
「それで、弥幸お兄ちゃん。水泉家からなんて?」
「退治の協力願いだよ。水泉魅涼かららしい」
手紙をヒラヒラと無意味に振りながら、弥幸は四人に伝えた。
「え、協力願い?」
「一つの家だけで撃破が難しい場合、今回のように協力願いを他の家に送る事もあるんだよ」
逢花が伝えると、弥幸がよっこらせと体を起こした。
「二通目だし、今回は結構やばいらしい」
「一通目は?」
「無視した」
「弥幸お兄ちゃんらしいね」
三人が呆れていると、弥幸がスマホを開き、カレンダーアプリを開いた。
「………来週は三連休だね。そこで向かおうか。返事を書いて来るから、僕はここで失礼するよ」
弥幸は立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
手紙の返事を書きに、違う部屋へと向かってしまった。
「書く?」
凛の呟きに、逢花が軽く説明をした。
「連絡は、手紙を使って行っているの」
「メールにすれば早くない?」
「メールだと、漏洩の恐れがあるから怖いんだよね。それに、この手紙は退治家について知っている有力者が運んでいるから、周りに漏れることはないし安心なの」
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