上 下
48 / 48
エピローグ

「愛しているよ、これからずっと」

しおりを挟む
 冬の間、優輝は修行をしつつも、銀籠との時間も大事にし、共に過ごしていた。

 一緒にゲームをしたり、占いをしたり。
 神楽もゲームをする時は参戦、三人の笑い声が部屋の中に響いていた。

 そんな、楽しい時間はあっという間に過ぎ、春になる。

 春は新しい歳の始まりと、別れの季節。
 神楽と優輝は高校三年生となり、夕凪はまた日本を離れなければならなくなってしまった。

 今は、夕凪との最後の時を楽しく過ごすため、宴会の真っ最中。

 銀籠はだいぶ人に慣れる事が出来たため、宴会場に出席はしていた。
 だが、やはりまだ少し怖いため、壁側で銀と優輝に囲まれ飲み物を堪能していた。
 もちろん、飲み物は優輝と同じジュース。銀はお酒を楽しんでいる。

「優輝は行かなくて良いのか? 美味そうな飯を食いながら、人間達が酒を片手に楽しんでおるぞ?」
「そもそも俺は未成年だからお酒飲めないし、大人のノリについて行くの大変だし。ここが一番落ち着く」
「そうなのか?」

 片手に持っているオレンジジュースを飲み、ほっと一息。本当に落ち着いているなぁと思いながら、銀籠はくすくすと笑った。

 銀は邪魔してはいけないなとソッとその場を離れ、開成達と合流し酒を楽しみ始めた。

 見回してみると、夕凪の隣はいつの間にか神楽が陣取っており、楽しく女子トークを繰り広げている。

 銀籠は、笑みを浮かべながら楽しそうに盛り上がっている陰陽師達を見回した。

 前までは人を一目見ただけで体は震え、立っていられなかった。
 それなのに、今は笑みを浮かべる余裕すらある。
 そんな彼を横目で見て、優輝はふっと笑った。

「銀籠さん」
「なんだ?」
「人の事、まだ怖いですか?」

 優輝はジィと銀籠の銀色の瞳を見つめ、問いかけた。

 優輝の水色の瞳に見つめられ、心臓がトクンと跳ねる。
 頬が自然と赤く染まり、恥ずかしそうに口元を手で押さえ、照れているのを隠すように目を逸らす。

「銀籠さん?」
「あ、あまり見るでない。照れてしまう…………」
「その照れ顔を見せてください」
「目をかっぴらいで言うな。冷めたわ」
「ちっくしょぉぉぉお!!」

 優輝の必死な形相に、銀籠は一瞬にして冷めてしまいスンと真顔になってしまった。

 悔し気に歯ぎしりしている優輝を見て、銀籠は薄く笑みを浮かべると、腰を折り顔を覗かせた。

「優輝よ、先ほどの質問、答えても良いか?」
「あ、はい」

 姿勢を正し、銀籠に向き直した。

 水色と銀色の瞳が交差する。
 心地のよい沈黙、銀籠は微笑み優輝はキョトンと目を丸くする。

 覚悟を決め、銀籠は白い歯を見け笑いながら言い切った。

「――――我はもう、人は怖くないぞ」

 今の言葉には、一切の迷いは無い。
 銀籠からそのような言葉を聞くことができ、優輝は満面な笑みを浮かべた。

「それなら、良かった――……」

 二人はその後、宴会場からこっそり抜け出した。
 銀と開成は気づいていながらも見て見ぬふり。それは、神楽も同じ。

 抜け出した二人は、外へと出て夜の散歩。
 その時、優輝が銀籠を引き寄せた。

「銀籠さん」
「む? なんだ、優輝」
「愛しているよ、これからずっと」

 月が照らす中、二人の影はゆっくりと近づき、そして、重なった――……
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

いる
2023.11.13 いる

途中まで読ませてもらいましたー!面白いですね、そして人間恐怖症な私は銀籠にとてもシンパシーがあります。
人と接するのは怖いですが、優しくしてもらえるのがとても嬉しい、私自身がそんな風に思っていた頃を思い出します。
人見知りな人物像がうまく描けていて、また、そんな銀籠に接するみんなの人柄がとてもよくて好感が持てます。キャラクターのイメージがかっちりしているように感じます。これからも更新がんばってくださいね。

桜桃-サクランボ-
2023.11.13 桜桃-サクランボ-

読んで頂きありがとうございます!!
そのように言っていただけて嬉しいです❀.(*´▽`*)❀.
更新、これからも頑張ります💪( ・᷅ὢ・᷄ 💪)

解除
二位関りをん

作品読まさせて頂きました。お気に入り登録もさせて頂きました!
人間と人外の組み合わせいいですよね、今後二人がどうなるか気になります…!

今後も執筆頑張ってください!

解除

あなたにおすすめの小説

美しい怪物

藤間留彦
BL
幼き頃両親を事故で亡くし、莫大な財産を相続した美しい貴族の青年マティアス・ファルケンハインは、ある日人喰いの怪物と出会い恋に落ちた。 マティアスはその美しい怪物にシェーンという名を与え、側に置くが──。 人×人外のダークファンタジーBL。 表紙イラストはジョニー(Twitter@unshinon)様に描いて頂きました✨

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【続編】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

誰よりも愛してるあなたのために

R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。  ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。 前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。 だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。 「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」   それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!  すれ違いBLです。 初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。 (誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)

雪は静かに降りつもる

レエ
BL
満は小学生の時、同じクラスの純に恋した。あまり接点がなかったうえに、純の転校で会えなくなったが、高校で戻ってきてくれた。純は同じ小学校の誰かを探しているようだった。

旦那様と僕

三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。 縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。 本編完結済。 『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。