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一章

43、夜の寝室で【1】

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 わたしは心臓がどきどきしていました。
 だって、自ら抱いてほしいなんておねだりしたんですよ。
 そんなはしたないこと、まさか自分の口から出てくるなんて。今でも信じられません。

 もう、恥ずかしくて恥ずかしくて。
 多分、ほんの少し時を遡れるのなら、わたしは自分の口を塞いだことでしょう。
 でも、一度発した言葉は取り消すことはできません。

 お部屋に戻ったわたしは壁にひたいをつけて、エルヴィンさまのお顔をまともに見ることができませんでした。

「レナーテ。こっちにおいで」
「いえ、あの……わたしは、ここで」

 背後にエルヴィンさまが立つ気配がして、余計に壁と仲良くなってしまいます。
 肩に手を掛けられるだけで、びくっとして。
 彼の大きな手に、これから触れられるのだと思うと冷静でなんていられません。

「立ったままするのは、君にはまだ無理だよ」
「た、立ったまま? そんなのがあるのですか」
「うん。だからベッドにおいで」

 頭が混乱しすぎて、わたしは素直にエルヴィンさまに従いました。
 促されるままに仰向けになると、わたしの寝間着のボタンをエルヴィンさまが外していきます。

「君は初心者なのだから、さすがに無茶は良くないからね」

 どういうのが初心者向きで、どういうのが熟練者向きなのか、さっぱり分かりません。
 まとっていた寝間着を脱がされ、肌にひんやりとした空気を感じました。

 寝室に明かりは点っていませんが、暗さに慣れた目と月明りで存外明るく思えます。
 ぎしり、という音。エルヴィンさまがわたしの左右に手をついて、ベッドが沈み込みました。

「可愛いレナーテ。俺を求めてくれるのは嬉しいが、歯止めが効かなくなるからほどほどにな」
「は、はい」
「もし朝まで眠れなかったら、申し訳ない。先に謝っておくよ」

 わたしの返事を待たずに、エルヴィンさまに唇を塞がれます。
 舌が、エルヴィンさまの舌が口の中に入ってきて。わたしはそれに必死に応じました。

「ん……んんっ」

 息が苦しい程の長いキス。ようやく解放されたと思ったら、今度は唇にも頬にもひたいにも、そして瞼にもくちづけられます。
 それと同時に乾いた大きな手が、わたしの肌を撫で。エルヴィンさまに触れられた場所が、徐々に熱を持っていくんです。

「あ、や……っ」
「レナーテは敏感だからな。痛いようなら言いなさい」

 胸の尖りを指で抓まれます。痛いのに痺れるような甘さを左右の胸に感じ、わたしはエルヴィンさまの腕につかまりました。
 
「こんなに暗くても、赤く染まっているのが分かるよ。ほら、それに硬くなっている」
「仰らないでぇ」

 爪なのでしょうか。ぐりぐりと左右の乳首を弄られて。エルヴィンさまが仰る通りに、そこが硬くなっているのが自分でも分かります。
 だから、恥ずかしくて。

 ああ、どうして自分からおねだりしたのかしら。
 
 先端ばかりではなく、胸全体にも指が食い込んで。そのまま、やわやわと揉まれます。
 これは、まだ平気。
 ほっと息をついたところで、エルヴィンさまに再びきつく抓まれました。

「……あっ」
「それは痛いから? それとも気持ちいいから? 言ってごらん」
「い、言えません」

 わたしの返事に、エルヴィンさまは小さく苦笑なさいます。ええ、確かに笑ったの。

「レナーテ。もうそれは答えているのと一緒だよ。ほら、言葉にしてごらん」
「そんな……」
「どっちだい?」

 恥ずかしさに、わたしはきつく瞼を閉じました。そして今にも消え入りそうな声で答えたの。

「気持ち……いい、です」
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