真実の愛なんてクソ喰らえ

第一章

銀紙に包まれた秘密④

そんなもの、私には居ない。

居るはずがない。

今までそう思って生きてきたのに、彼は簡単にもその言葉で私が送ってきた人生を崩していく。

冷静に考えるとわかる事。運命だと分かっていて私を置いて行った薄情者に抱く感情は、怒り以外に何も無いだろう。





「…私を置いて行った癖に。そんな白々しい態度をとっておきながら、“運命”と。よく語れたものだわ。」

「…何だって？」

「運命なんて私は信じない。
絶対に。そんなの無くなってしまえばいい。」





つい本音が口からポロリと零れ落ちた。

彼に触れられ身体も熱くなっていく中、自我を保って言葉を放つのは至難の技だと思っていた。

けれど怒りで心を支配されていれば、それは意外にも簡単なのだと理解する。

感じるのは吐き気と、怒りだ。

なんとか自我を保った状態で彼をキッと睨みつけると、鋭い目と視線が絡み合う。

一方、彼から感じるのは静かな怒りだ。

ああ、やっぱりこの男は自分の損得しか考えていないような獣だ。

私の言葉を聞いて怒るのなら、怒ればいい。

それで自分の価値を下げていけばいいのだ。

この状況で私の口角は上がっていて、目は彼が怒る姿を楽しんで見ている。







「……無くなってしまえばいい。
本当に、そう思うのか？」

「…当たり前よ。
そんな繋がり、私にはいらないから。」







服の中に入っていた彼の手がするりと抜け、一時的に密着していたものから解放される。