3歳で捨てられた件

玲羅

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学院中等部 6学年生

事後報告

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 サミュエル先生の言葉に、一瞬理解が出来なかった。

「シェーン様から?」

「無事に聖騎士訓練生になれたそうだ。キャシーちゃんを待っていると書いてあった」

「そう、ですか」

「聖騎士訓練生になれても、光の聖女様の聖騎士になれるとは、限らないけどね」

「そうなのですか?」

「選考があるんだよ。筆記試験と剣技の試験がね」

「そうなのですね」

 ダンスが終わって、お義母様達の側に行く。サミュエル先生が送ってくれた。

「まぁまぁ、ブランジット様。ありがとうございました」

「私の優秀な教え子だからね。他意はないよ。だから睨まないように」

「睨んでませんよ」

 これって私は何か言った方が良いの?ローレンス様がサミュエル先生を睨んでて、サミュエル先生は苦笑しながらローレンス様を見ている。

 デビュタントバルが終わった。学友達も三々五々帰っていく。帰りは特に決まりはないから、ガブリエラ様とイザベラ様とリリス様が一緒に出ていった。

 お義母様とランベルトお義兄様達も帰っていった。ローレンス様は盛大に文句を言いながら、お義母様に引っ張られていった。

「さて、キャスリーン。こちらに来なさい」

 私は事情説明がある。お義父様が一緒だから不安ではないけれど、正直、明日では駄目なのかと思ってしまう。

 連れていかれた先には、両陛下と王太子殿下、王子殿下とサミュエル先生が居た。

「フェルナー嬢、遅くにすまないな。今日はデビュタント、おめでとう」

「ありがとう存じます」

「それで、何があったのか説明してもらえるかな?」

「はい」

 時系列に沿って陛下達に説明する。

わたくしの学友が、助けてほしいとわたくしを呼びに来たのが、最初でございます」

「フェルナー嬢に?何故かな?」

わたくしが光魔法を持っているというのは、学院では広く知られてございます。わたくしに話をしに来たガブリエラ・グクラン辺境伯令嬢は、誰に話して良いのか分からなかったからと。王宮の使用人に話そうにも、女性のデリケートな問題をどう話して良いのか分からなかったと申しておりました」

「それで、フェルナー嬢に?」

「おみ足を痛められたとの事でしたので。光魔法で治せると思われたのだと存じます」

「結局サミュエルを呼んだ訳だけど、王宮医師では駄目だったのかな?」

「その辺りは分かりかねます。わたくしは王宮医師をお呼びしてほしいと、使用人に申し付けましたもの」

「それは私から説明するよ。フェルナー嬢は確かに王宮医師を呼んだんだよ。話を聞いて私の判断で私が行った。フェルナー嬢がという事だったし、なんらかのアクシデントだと思ったからね」

「ふむ。筋は通っておるな」

「それで、フェルナー嬢の所に行ったら、アザレア・キューリック子爵令嬢が足を痛めたと、フェルナー嬢が説明してくれてね。キューリック嬢が『』と言っていると聞いて、フェルナー嬢に治療するように指示した」

「光魔法で勝手に治療してはいけないという、馬鹿げた決め事か」

「光魔法使いを守る為という建前はあるよ。医師を守るという意味合いもね」

「しかし、光魔法使いに制約を課すなど」

「今はその事を議論している時間はありませんよ。フェルナー嬢も疲れているでしょうし」

 王太子殿下が言ってくれて、話を進める。

「それで、サミュエル先生の指示の元、わたくしが治療したのですが、キューリック様の足に、お靴が合っていないように感じましたので、それを指摘いたしましたら、お祖母様から贈られたものだと仰って」

「あの靴でダンスを踊るのは、危険だと判断したからね。予備の靴に履き替えてもらった。祖母君にバレないようにしてね。その時間稼ぎもあったんだよ。ダンスの時間の遅れは」

「サミュエル、という、その訳は?」

「キューリック家の問題だと思うよ。干渉する気?」

「王家が動くわけにはいかぬな」

「当然でしょ?助けを求められたら動けるけど、王族は軽々しく動けない」

「ふむ。もどかしいの」

「こういう問題って多いのかな?」

「どうであろうの」

 そう言って私を見られても困ります。

「キャスリーンに意見を求めないでいただきたい。この子はまだ成人前ですぞ」

 お義父様がそう言うと、両陛下と王太子殿下がポカーンとした。

「そうであったな。忘れておったわ」

「言う事も大人びてますからねぇ」

「こっちがやり込められたりするしね」

 王族内で話をされると、私はこの場に必要なのかと思ってしまう。

「フェルナー嬢、疲れただろう?今日は泊まっていったらどうだ?」

「陛下、娘はまだ成人前ですと、何度言えばお分かりか?」

「しかし、侯爵にはまだ仕事が残っておるだろう?」

「残っておりません。他の宰相職と協力し、終わらせました」

「しかしな……」

「それほどまでに娘を引き留めるのは、何か理由があるのでしょうか?」

 そうよね。こんなあからさまな引き留め、理由が無いとおかしい。

「いや、そのな……」

わたくしにどなたかがご用なのでしょうか?サミュエル先生はご存じなのですか?」

「聞いてないね。伯父上おじうえが誰かに良い所を見せようとしたか、もしくは誰かに自慢しようとしたか」

「もうひとつ、どなたか表沙汰に出来ない方を、わたくしに引き合わせようとしているとも、考えられますわ」

「表沙汰に出来ない人?お忍びって事かな?」

「はい。あり得なくはございませんでしょう?」

「今、お忍びでねぇ。もうすぐ年明けのこの時期にかい?」

わたくしは、その辺りの事情は存じ上げませんもの」

「すると、陛下の見栄の為に、キャスリーンは留め置かれたのかい?」

 私とサミュエル先生の会話に、お義父様が参戦した。

「その辺りは分かりかねますわ」

「まぁね。何も言わずに引き留めるなんて、大人ならしないと思うよね」

「そうですな。しませんな」

 サミュエル先生とお義父様に言われてしまった陛下は、黙り込んでしまった。

 王宮をおいとまする時に、王妃様に言い過ぎたかもしれないと言うと、カラカラと笑って「気にしなくて良い」と仰った。

「明日はね、陛下の弟君おとうとぎみが来られるのよ。『光の聖女様』と懇意だと自慢したかったのでしょう。本当に仕方の無い方なんだから」

 そんな事情があったんだ。

「それでは失礼いたします」

「えぇ。気を付けて。遅くまでありがとう」

 王妃様に見送られて、王宮を後にする。

「キャスリーン、疲れてないか?」

「大丈夫です。お義父様こそお疲れでは?」

「私は慣れているからね」

 タウンハウス王都侯爵邸に着くと、もう遅い時間だというのに、みんな起きて待っていてくれた。

「キャシー、疲れただろう?」

「キャシーちゃん、お腹は空いていない?デビュタントバルの会場では何も食べていないでしょう?」

「キャシー、いったい何があったんだ?キャシーだけ残されるなんて」

 見事にお義父様を労う言葉が出てこない。

「ご心配をおかけいたしました。少し事情を聞かれていただけです」

「デビュタントバルの演目に、少し変更があっただろう?キャスリーンが1番状況を分かっているだろうからと、陛下が判断されたのだ」

「だからってこんな時間まで」

「そこは私も抗議しておいた」

 お義父様とローレンス様が話をしている間に、着替えを済ませる。本当ならこのまま寝てしまいたいほど疲れた。だけど、お義母様もローレンス様もお義兄様も事情を聞きたいと思う。

「お嬢様、明日でもよろしいのでは?」

「でも、心配をかけたのは、事実だから。説明はしておいた方がいいと思うの」

「お嬢様、ご無理はなさらないでくださいませ」






     
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