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学院中等部 6学年生
芸術祭後
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芸術祭が終わると、武術魔法披露会に向けての準備が始まる。薬草研究会でもポーションの量産が始まった。そんなに効果が持続しないと分かっているので、まずは薬草の準備から。洗ったり乾燥させたり刻んだり、それぞれの班に分かれて作業を行う。
「キャスリーン様、ポーションって最後に光魔法が必要ですわよね?バージェフ先輩が卒業されたら、キャスリーン様おひとりで作業をなさいますの?」
「そうなりますわね」
「その時は私も手伝うよ。心配しなくて大丈夫」
サミュエル先生が言ってくれて、ちょっと安心した。武術魔法披露会に使うポーションは、毎年50本弱。出場する生徒だけでなく見に来る王宮関係者も使ったりするからね。その度にサミュエル先生が苦言を申し立てているらしいんだけど、減らないのよね。本当に気を付けていただきたい。
「あ、怖い事、気付いちゃった」
「なになに?」
「フェルナー先輩が卒業されたら、ポーションは作れないんじゃ?」
「「「あ……」」」
そうよね。私が卒業したら光魔法使いが居なくなっちゃう。光魔法使いは珍しいとはいえ、年に数人は生まれているはずだから、こんなに間が開く事は通常無いらしいんだけど。
「そこは私が頑張るよ。光魔法使いは他にもいるから、その人に頼んでも良いし」
「でもそれじゃ先生が大変ですよね?」
「まぁ、最初から分かっていたしね。大変なのは1年位だと思うし」
ん?という事は聖女就任後にポーションの為に、わたしは学院に来る事になるのかしら?良いけど。そこまで大変でもないし。
正直にいうと会の発足当初は、武術魔法披露会にポーションを使うという発想は無かったのよね。ただ、ポーションの味を良くしたり、効果を高めたりを研究するって目的だったんだもの。バージェフ先輩が最初からポーションの試飲を剣術武術倶楽部に頼んでいて、その流れで救護の時に渡してたら評判が良くて、その時からずっと恒例化しちゃっただけだもの。それによって味も効果も向上したし、悪い事ばかりでも無いけどね。
とにかく今年はバージェフ先輩もいるし、来年以降の事は来年にならないと対策の立てようがない。もしかしたら来年に光魔法使いが入学するかもしれないし。
もちろん光魔法使いが来年以降に入学するかもというのは、私のお気楽な希望だ。私はひとりで50本近い量のポーションに光魔法をかけた事がない。やってやれない事はないと思うけど、やはり不安は残る。
「フェルナー嬢だけでも十分だと思うんだけどね。試しにやってみる?」
「どうなるか分かりませんよ?控えていてくれるんですよね?バージェフ先輩」
「もちろん。たぶんブランジット先生も居てくれると思うよ」
「それなら安心出来ますけれど」
「でもでもぉ、フェルナー先輩が失敗するってぇ、イメージ出来ないんですけどぉ?」
「そうだよな。想像出来ない」
「私も失敗はしますわよ?人間ですもの」
「そうですけどぉ」
語尾を伸ばす癖のある、ヒラリー・クリスト伯爵令嬢が言う。
「光魔法と言えばぁ、闇魔法って聞かないですよねぇ。先生ぇ、闇魔法ってあるんですかぁ?」
「うーん。記録は残ってないね。今、闇魔法と言われているのは呪詛だったり洗脳や精神汚染とか、いわゆる魔術犯罪と言われる物だからね」
「恐ろしいですわぁ」
「一般には関り合いには無いからね。心配しなくていいよ」
「そういった事を生業にしてる人も、いるんですよね?」
「居るだろうね」
闇魔法って無いんだ。光魔法があるから闇魔法もあると思ってた。サミュエル先生は、「魔術犯罪を生業にしている人も居るだろうね」と言ったけど、確実に居る。呪詛事件は二月に1回は巷を騒がせているらしいし、何よりも私自身が呪詛に関わった事がある。小さい頃の呪いのネックレスや、最近ではアヴァレーツィオの事件。プロクシィであるサフィーナ・セレスタさんが言っていた呪物は、自然発生的な物だと聖国が発表したから、除いて良いと思う。
「何を考えているんだい?」
「呪詛って、どうして無くならないのかな?と」
「呪いたい位、憎い人がいるからでしょ?それが正当な物か身勝手な物かはともかく」
ぼーっと考えていたら、バージェフ先輩に話しかけられたので、考えていた事を話してみたら、当然といった風に答えを返された。
「先輩、は……」
「呪いたいと思った事はないけどね。呪われろ、とか、居なくなれ、とかは誰だって1度は思うでしょ。生きていれば」
「生きていれば、ですか。重いお言葉ですね」
バージェフ先輩はかつて親族に虐げられていたと言う。私も同じような状況だったけど、決定的な違いはそれが記憶として残っているか否か。私はほとんど覚えていない。ハッキリと覚えているのは目の前でジャンヌさんが血を吐いて倒れた事と、雪の中家を追い出された事。
バージェフ先輩は光魔法使いと分かってからずっとって事だから、そこも決定的に違う。
「でもね、今はアイツらに会っても何とも思わないよ。アイツらはしょせん、弱い者を甚振るしか出来ない人間だしね」
「バージェフ先輩はお強いですね」
「ははっ。まぁ、いろんな人がいるって知ったしね。力強い友人も増えたし」
その中のひとりがランベルトお義兄様だ。そういう友情って良いな、と思う。
私にも友人はいる。小さい頃ほどなんでも話せるって訳じゃないけど、それでもいい友人関係は築けていると思う。薬草の準備は整った。後は武術魔法披露会前日に光魔法をかけるだけって所まで準備を終えて、寮に帰る。
武術魔法披露会前日。授業外交流を終えた薬草研究会の部室には、私とバージェフ先輩とサミュエル先生が残った。ダニエル様とマリアさんもいる。他の部員には遅くなるからと帰ってもらった。
「じゃあ、始めようか」
サミュエル先生の合図で、私ひとりでポーションに光魔法をかけはじめる。
光魔法の淡い光が、瓶に入った薬草液を通過していく。面白いと思うのが、元が緑色の薬草液が光魔法の淡い光が通過すると、色が薄くなる点だ。
30本を越えた頃、少し疲れが出てきた。
「少し疲れが出てきました」
「いったん休もうか」
「30本かぁ。フェルナー嬢はスゴいね」
「バージェフ先輩もよく似た感じですよね?」
「そうだね。同じ位だね。どうする?代わろうか?」
「私ひとりでやってみますわ」
「そう?」
私とバージェフ先輩が話をしている間に、効果を暫定的に見る魔道具に私の作ったポーションを、かけて確かめていたサミュエル先生が戻ってきた。
「同一効果だね。大丈夫そうだよ」
「良かった。続きを行います」
「キャシーちゃん、無理はしないようにね」
窓の外は陽がすっかり落ちて、鮮やかな夕焼けが広がっている。私のポーション作成が終わらないと、バージェフ先輩が帰れない。少し焦るけど焦りは思わぬ結果を産む。深呼吸して集中する。
残りのポーションを作成し終わった時には、外はすっかり暗くなっていた。
「大丈夫そうだね。お疲れ様」
サミュエル先生の声にホッとした。帰寮準備をしていると、部室内にかえったはずの薬草研究会の部員が5名、入ってきた。後ろにウィスプ先生もいる。
「キャスリーン様、ポーションって最後に光魔法が必要ですわよね?バージェフ先輩が卒業されたら、キャスリーン様おひとりで作業をなさいますの?」
「そうなりますわね」
「その時は私も手伝うよ。心配しなくて大丈夫」
サミュエル先生が言ってくれて、ちょっと安心した。武術魔法披露会に使うポーションは、毎年50本弱。出場する生徒だけでなく見に来る王宮関係者も使ったりするからね。その度にサミュエル先生が苦言を申し立てているらしいんだけど、減らないのよね。本当に気を付けていただきたい。
「あ、怖い事、気付いちゃった」
「なになに?」
「フェルナー先輩が卒業されたら、ポーションは作れないんじゃ?」
「「「あ……」」」
そうよね。私が卒業したら光魔法使いが居なくなっちゃう。光魔法使いは珍しいとはいえ、年に数人は生まれているはずだから、こんなに間が開く事は通常無いらしいんだけど。
「そこは私が頑張るよ。光魔法使いは他にもいるから、その人に頼んでも良いし」
「でもそれじゃ先生が大変ですよね?」
「まぁ、最初から分かっていたしね。大変なのは1年位だと思うし」
ん?という事は聖女就任後にポーションの為に、わたしは学院に来る事になるのかしら?良いけど。そこまで大変でもないし。
正直にいうと会の発足当初は、武術魔法披露会にポーションを使うという発想は無かったのよね。ただ、ポーションの味を良くしたり、効果を高めたりを研究するって目的だったんだもの。バージェフ先輩が最初からポーションの試飲を剣術武術倶楽部に頼んでいて、その流れで救護の時に渡してたら評判が良くて、その時からずっと恒例化しちゃっただけだもの。それによって味も効果も向上したし、悪い事ばかりでも無いけどね。
とにかく今年はバージェフ先輩もいるし、来年以降の事は来年にならないと対策の立てようがない。もしかしたら来年に光魔法使いが入学するかもしれないし。
もちろん光魔法使いが来年以降に入学するかもというのは、私のお気楽な希望だ。私はひとりで50本近い量のポーションに光魔法をかけた事がない。やってやれない事はないと思うけど、やはり不安は残る。
「フェルナー嬢だけでも十分だと思うんだけどね。試しにやってみる?」
「どうなるか分かりませんよ?控えていてくれるんですよね?バージェフ先輩」
「もちろん。たぶんブランジット先生も居てくれると思うよ」
「それなら安心出来ますけれど」
「でもでもぉ、フェルナー先輩が失敗するってぇ、イメージ出来ないんですけどぉ?」
「そうだよな。想像出来ない」
「私も失敗はしますわよ?人間ですもの」
「そうですけどぉ」
語尾を伸ばす癖のある、ヒラリー・クリスト伯爵令嬢が言う。
「光魔法と言えばぁ、闇魔法って聞かないですよねぇ。先生ぇ、闇魔法ってあるんですかぁ?」
「うーん。記録は残ってないね。今、闇魔法と言われているのは呪詛だったり洗脳や精神汚染とか、いわゆる魔術犯罪と言われる物だからね」
「恐ろしいですわぁ」
「一般には関り合いには無いからね。心配しなくていいよ」
「そういった事を生業にしてる人も、いるんですよね?」
「居るだろうね」
闇魔法って無いんだ。光魔法があるから闇魔法もあると思ってた。サミュエル先生は、「魔術犯罪を生業にしている人も居るだろうね」と言ったけど、確実に居る。呪詛事件は二月に1回は巷を騒がせているらしいし、何よりも私自身が呪詛に関わった事がある。小さい頃の呪いのネックレスや、最近ではアヴァレーツィオの事件。プロクシィであるサフィーナ・セレスタさんが言っていた呪物は、自然発生的な物だと聖国が発表したから、除いて良いと思う。
「何を考えているんだい?」
「呪詛って、どうして無くならないのかな?と」
「呪いたい位、憎い人がいるからでしょ?それが正当な物か身勝手な物かはともかく」
ぼーっと考えていたら、バージェフ先輩に話しかけられたので、考えていた事を話してみたら、当然といった風に答えを返された。
「先輩、は……」
「呪いたいと思った事はないけどね。呪われろ、とか、居なくなれ、とかは誰だって1度は思うでしょ。生きていれば」
「生きていれば、ですか。重いお言葉ですね」
バージェフ先輩はかつて親族に虐げられていたと言う。私も同じような状況だったけど、決定的な違いはそれが記憶として残っているか否か。私はほとんど覚えていない。ハッキリと覚えているのは目の前でジャンヌさんが血を吐いて倒れた事と、雪の中家を追い出された事。
バージェフ先輩は光魔法使いと分かってからずっとって事だから、そこも決定的に違う。
「でもね、今はアイツらに会っても何とも思わないよ。アイツらはしょせん、弱い者を甚振るしか出来ない人間だしね」
「バージェフ先輩はお強いですね」
「ははっ。まぁ、いろんな人がいるって知ったしね。力強い友人も増えたし」
その中のひとりがランベルトお義兄様だ。そういう友情って良いな、と思う。
私にも友人はいる。小さい頃ほどなんでも話せるって訳じゃないけど、それでもいい友人関係は築けていると思う。薬草の準備は整った。後は武術魔法披露会前日に光魔法をかけるだけって所まで準備を終えて、寮に帰る。
武術魔法披露会前日。授業外交流を終えた薬草研究会の部室には、私とバージェフ先輩とサミュエル先生が残った。ダニエル様とマリアさんもいる。他の部員には遅くなるからと帰ってもらった。
「じゃあ、始めようか」
サミュエル先生の合図で、私ひとりでポーションに光魔法をかけはじめる。
光魔法の淡い光が、瓶に入った薬草液を通過していく。面白いと思うのが、元が緑色の薬草液が光魔法の淡い光が通過すると、色が薄くなる点だ。
30本を越えた頃、少し疲れが出てきた。
「少し疲れが出てきました」
「いったん休もうか」
「30本かぁ。フェルナー嬢はスゴいね」
「バージェフ先輩もよく似た感じですよね?」
「そうだね。同じ位だね。どうする?代わろうか?」
「私ひとりでやってみますわ」
「そう?」
私とバージェフ先輩が話をしている間に、効果を暫定的に見る魔道具に私の作ったポーションを、かけて確かめていたサミュエル先生が戻ってきた。
「同一効果だね。大丈夫そうだよ」
「良かった。続きを行います」
「キャシーちゃん、無理はしないようにね」
窓の外は陽がすっかり落ちて、鮮やかな夕焼けが広がっている。私のポーション作成が終わらないと、バージェフ先輩が帰れない。少し焦るけど焦りは思わぬ結果を産む。深呼吸して集中する。
残りのポーションを作成し終わった時には、外はすっかり暗くなっていた。
「大丈夫そうだね。お疲れ様」
サミュエル先生の声にホッとした。帰寮準備をしていると、部室内にかえったはずの薬草研究会の部員が5名、入ってきた。後ろにウィスプ先生もいる。
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