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学院中等部 5学年生
芸術祭 2日目
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今日は朝から音楽観賞会。毎年恒例の、剣術体術倶楽部の皆さんに守られての観賞会だ。
「お義兄様、人数が増えていませんか?」
「当然だろう?お前は昨日の騒ぎを忘れたのか?」
「忘れてはおりませんわ。皆様にご無理を仰ったのではと、心配になっただけですもの」
「うふふ。キャスリーン様はお可愛らしいですものね。お義兄様としては心配でいらっしゃいますわよね?」
ガブリエラ様にニコニコと言われて、お義兄様が撃沈した。そんなお義兄様をアンバー様がニコニコと眺めている。
「視線が鬱陶しいですわね」
イザベラ様がボソリと言った。
「申し訳ございません」
「キャスリーン様の所為ではありませんことよ。キャスリーン様の昨日のお姿は、神々しく美しく慈愛に満ちておられましたもの。問題は勘違いした下衆共ですわ」
イザベラ様ってナチュラルに毒を吐くのよね。私達は慣れているけど、慣れてないと引くと思う。イザベラ様の毒舌は相手次第なんだけどな。
ヴァイオリン部門、ヴィオラ部門、チェロ部門、ピアノ部門のソロ、ペア、トリオ、弦楽カルテット、ピアノを交えてのチャンバーなどの部門に増えた発表を聞く。チャンバーの人数制限は無いけれど、5人というのが多かった。本来は10人以下らしい。
部門が増えた分、ソロは狭き門になったけど、ペア、トリオなどの部門が増えた分、可能性は広がった、らしい。演奏時間も少なくなったけどね。以前は1人15分だった持ち時間が10分に減ったもの。セッティングも入れての時間だから実際の演奏時間は5分強。
発表した事のあるイザベラ様に言わせると、実際の演奏時間が5分強というのは、かなり厳しいらしい。もちろんセッティングを素早くすれば演奏時間は延びるけれど、貴族学院だから「準備の時もエレガントに」という不文律があるんだって。
「楽しんでいらして?エマちゃん」
「はわわわわ」
イザベラ様に声をかけられてパニクっているのは、エマちゃん。バージェフ先輩は後ろにいるけれど、気を使うって事をしないのよね。私の隣は目立つから嫌だっていうし、仕方がないからイザベラ様の隣に座ってもらったんだけど、イザベラ様が侯爵令嬢だって知って、プチパニック中だ。お友達も居るんだけどね。
エマちゃんは私の側に居るけれど、私が侯爵子女というのは気にしていない。気にしなくて良いと言ったし、薬草研究会で慣れたのもあると思う。
でもイザベラ様は少しお顔立ちが勝ち気なのよね。つり上がった目、金髪縦ロール、ハキハキとした口調。ララ様には悪役令嬢顔だと言われていた。「実際にはツンデレさんだもんね」と言われたイザベラ様が、顔を真っ赤にしてララ様に抗議してたけど、その時は「かぁわいぃぃ」なんて言われて、ギュウウッと抱き締められていた。薬草研究会にイザベラ様が遊びにいらした時の話です。後でサミュエル先生に叱られてたっけ。相手の身分を考えろって。イザベラ様はその1件でララ様を気に入っちゃったらしいけど。
演奏会は順調に進んでいた。残りはチャンバーの2組を残すのみ。
後ろに誰かが立った。剣術体術倶楽部のみんなが騒がないのを見ると、知り合いなんだと思う。
「楽しんでる?」
「サミュエル先生」
「まずは謝っておくね。王家からこれが届いた」
「招待状ですか?」
お茶会の招待状。これは私1人では答えられない。
「先生、これは私1人ではお答え出来ません」
「心配要らないよ。侯爵の許可は取ったってさ。お母上も同席するよ」
そこまで話が進んでいるの?
「何の為に?」
「ん?」
「何の為のお茶会ですか?」
「ここでは話せないよ」
「……分かりました。後程お話ししましょう」
「怖いね」
サミュエル先生が立っていった気配を感じた。
「あら?キャスリーン様、どうなさったの?それはいったい?」
「……申し訳ございません。少し中座いたします」
シェーン様が付いてきてくれた。
「キャスリーン様、大丈夫ですか?お顔色が……」
「え?」
「お顔色が悪いです。どこかで休まれた方が」
「そんなにですか?」
「香を焚きましょうか?」
「いいえ。少し休めば大丈夫だと思います」
シェーン様に救護室まで連れていってもらった。救護のミーア先生に顔色で驚かれて、少し強引に休まされた。
眠れないと思ったけどいつの間にか寝ていたらしい。ミーア先生に起こされた。
「フェルナー様、大丈夫ですか?魘されておられましたわよ」
妙にリアルな夢を見た。場所はどこかの庭園。私と男女数名がお茶を飲んでいた。お茶会だと思う。その中の誰かが突然血を吐いて倒れた。服毒なのか私がすぐに解毒を行う。解毒が終わった頃に心臓が止まってしまったから即座にCPRを行った。助けられたかどうかは分からない。その前に起きちゃったから。
「ミーア先生」
「どうなされました?」
「サミュエル、先生、は?」
「お呼びしましょうか?」
「私が向かっても良いのですが」
「あら、ダメよ。まだお顔色が悪いわ。少しお待ちなさい」
ミーア先生がサミュエル先生に連絡を取ってくれたらしい。5分後にはサミュエル先生が現れた。
「キャシーちゃん、どうしたんだい?」
「先生、今すぐ解毒魔法を教えてください」
「解毒魔法を?良いけど、訳を話しなさい」
「荒唐無稽な話になりますが、よろしいですか?」
前置きをしてから夢の話をする。
「その庭園の詳細を覚えている?」
「詳細ですか?」
覚えてるのは整えられた花の咲き誇る花壇。白いガゼボ。遠くに見える2本の尖塔。特徴のある噴水。
「特徴のある噴水?」
「花の形でした。アイリスのような花弁から水が流れ落ちてて。色は青と緑の中間色というか、青銅色?」
しばらく黙っていたサミュエル先生が口を開く。
「季節は?分かる?」
「分かりません。でも夏や冬ではないと思います。寒そうにも暑そうにも見えなかったから。春か秋かな?」
「春か秋。キャシーちゃん、さっき言った噴水だけど、王宮の庭園によく似た噴水があるんだ」
「王宮の?でも王宮なんて5歳の時にお邪魔しただけです」
「そうだよね。エドワードの交遊関係を選ぶお茶会だよね?」
「はい」
「それで解毒魔法を教えて欲しいって、以前に教えたよね?」
「正確には鍛えてほしい、です。夢の話だって分かっているんですけど、妙に現実味があって怖いんです」
「分かった。任せなさい。ただね、キャシーちゃん。キャシーちゃんは普段から使っているよ?」
「え?」
「治癒魔法で膿が出ている時に、拭き取ってから治癒してるでしょ?ああいう時は最初に軽く解毒魔法を掛けるものなんだ。キャシーちゃんは教えなくてもやってるよね?」
確かにpus流出時に、心掛けてはいるけど。あれが解毒魔法?
簡単だって思ってしまった。曖昧だったイメージが一気にクリアになった気がする。
「キャシーちゃん?」
「出来そうな気がします」
「イメージがハッキリするとやりやすいけどね。そのイメージをハッキリさせるのが一般的に1番大変なんだけど」
「そういうのは得意なんです」
「確かに魔法の威力を上げるのはイメージをハッキリさせるのが1番の手段だけどさ。じゃあ、さっき言っていた夢の話の服毒時ならどういうイメージ?」
「そうですね。中和させるイメージでしょうか。その後で消してしまえば良いんですよね?」
「うん。そうだけど、毒性分を消し去るのは光魔法じゃ……。あぁ、そっか。キャシーちゃんなら出来るかもね」
「お義兄様、人数が増えていませんか?」
「当然だろう?お前は昨日の騒ぎを忘れたのか?」
「忘れてはおりませんわ。皆様にご無理を仰ったのではと、心配になっただけですもの」
「うふふ。キャスリーン様はお可愛らしいですものね。お義兄様としては心配でいらっしゃいますわよね?」
ガブリエラ様にニコニコと言われて、お義兄様が撃沈した。そんなお義兄様をアンバー様がニコニコと眺めている。
「視線が鬱陶しいですわね」
イザベラ様がボソリと言った。
「申し訳ございません」
「キャスリーン様の所為ではありませんことよ。キャスリーン様の昨日のお姿は、神々しく美しく慈愛に満ちておられましたもの。問題は勘違いした下衆共ですわ」
イザベラ様ってナチュラルに毒を吐くのよね。私達は慣れているけど、慣れてないと引くと思う。イザベラ様の毒舌は相手次第なんだけどな。
ヴァイオリン部門、ヴィオラ部門、チェロ部門、ピアノ部門のソロ、ペア、トリオ、弦楽カルテット、ピアノを交えてのチャンバーなどの部門に増えた発表を聞く。チャンバーの人数制限は無いけれど、5人というのが多かった。本来は10人以下らしい。
部門が増えた分、ソロは狭き門になったけど、ペア、トリオなどの部門が増えた分、可能性は広がった、らしい。演奏時間も少なくなったけどね。以前は1人15分だった持ち時間が10分に減ったもの。セッティングも入れての時間だから実際の演奏時間は5分強。
発表した事のあるイザベラ様に言わせると、実際の演奏時間が5分強というのは、かなり厳しいらしい。もちろんセッティングを素早くすれば演奏時間は延びるけれど、貴族学院だから「準備の時もエレガントに」という不文律があるんだって。
「楽しんでいらして?エマちゃん」
「はわわわわ」
イザベラ様に声をかけられてパニクっているのは、エマちゃん。バージェフ先輩は後ろにいるけれど、気を使うって事をしないのよね。私の隣は目立つから嫌だっていうし、仕方がないからイザベラ様の隣に座ってもらったんだけど、イザベラ様が侯爵令嬢だって知って、プチパニック中だ。お友達も居るんだけどね。
エマちゃんは私の側に居るけれど、私が侯爵子女というのは気にしていない。気にしなくて良いと言ったし、薬草研究会で慣れたのもあると思う。
でもイザベラ様は少しお顔立ちが勝ち気なのよね。つり上がった目、金髪縦ロール、ハキハキとした口調。ララ様には悪役令嬢顔だと言われていた。「実際にはツンデレさんだもんね」と言われたイザベラ様が、顔を真っ赤にしてララ様に抗議してたけど、その時は「かぁわいぃぃ」なんて言われて、ギュウウッと抱き締められていた。薬草研究会にイザベラ様が遊びにいらした時の話です。後でサミュエル先生に叱られてたっけ。相手の身分を考えろって。イザベラ様はその1件でララ様を気に入っちゃったらしいけど。
演奏会は順調に進んでいた。残りはチャンバーの2組を残すのみ。
後ろに誰かが立った。剣術体術倶楽部のみんなが騒がないのを見ると、知り合いなんだと思う。
「楽しんでる?」
「サミュエル先生」
「まずは謝っておくね。王家からこれが届いた」
「招待状ですか?」
お茶会の招待状。これは私1人では答えられない。
「先生、これは私1人ではお答え出来ません」
「心配要らないよ。侯爵の許可は取ったってさ。お母上も同席するよ」
そこまで話が進んでいるの?
「何の為に?」
「ん?」
「何の為のお茶会ですか?」
「ここでは話せないよ」
「……分かりました。後程お話ししましょう」
「怖いね」
サミュエル先生が立っていった気配を感じた。
「あら?キャスリーン様、どうなさったの?それはいったい?」
「……申し訳ございません。少し中座いたします」
シェーン様が付いてきてくれた。
「キャスリーン様、大丈夫ですか?お顔色が……」
「え?」
「お顔色が悪いです。どこかで休まれた方が」
「そんなにですか?」
「香を焚きましょうか?」
「いいえ。少し休めば大丈夫だと思います」
シェーン様に救護室まで連れていってもらった。救護のミーア先生に顔色で驚かれて、少し強引に休まされた。
眠れないと思ったけどいつの間にか寝ていたらしい。ミーア先生に起こされた。
「フェルナー様、大丈夫ですか?魘されておられましたわよ」
妙にリアルな夢を見た。場所はどこかの庭園。私と男女数名がお茶を飲んでいた。お茶会だと思う。その中の誰かが突然血を吐いて倒れた。服毒なのか私がすぐに解毒を行う。解毒が終わった頃に心臓が止まってしまったから即座にCPRを行った。助けられたかどうかは分からない。その前に起きちゃったから。
「ミーア先生」
「どうなされました?」
「サミュエル、先生、は?」
「お呼びしましょうか?」
「私が向かっても良いのですが」
「あら、ダメよ。まだお顔色が悪いわ。少しお待ちなさい」
ミーア先生がサミュエル先生に連絡を取ってくれたらしい。5分後にはサミュエル先生が現れた。
「キャシーちゃん、どうしたんだい?」
「先生、今すぐ解毒魔法を教えてください」
「解毒魔法を?良いけど、訳を話しなさい」
「荒唐無稽な話になりますが、よろしいですか?」
前置きをしてから夢の話をする。
「その庭園の詳細を覚えている?」
「詳細ですか?」
覚えてるのは整えられた花の咲き誇る花壇。白いガゼボ。遠くに見える2本の尖塔。特徴のある噴水。
「特徴のある噴水?」
「花の形でした。アイリスのような花弁から水が流れ落ちてて。色は青と緑の中間色というか、青銅色?」
しばらく黙っていたサミュエル先生が口を開く。
「季節は?分かる?」
「分かりません。でも夏や冬ではないと思います。寒そうにも暑そうにも見えなかったから。春か秋かな?」
「春か秋。キャシーちゃん、さっき言った噴水だけど、王宮の庭園によく似た噴水があるんだ」
「王宮の?でも王宮なんて5歳の時にお邪魔しただけです」
「そうだよね。エドワードの交遊関係を選ぶお茶会だよね?」
「はい」
「それで解毒魔法を教えて欲しいって、以前に教えたよね?」
「正確には鍛えてほしい、です。夢の話だって分かっているんですけど、妙に現実味があって怖いんです」
「分かった。任せなさい。ただね、キャシーちゃん。キャシーちゃんは普段から使っているよ?」
「え?」
「治癒魔法で膿が出ている時に、拭き取ってから治癒してるでしょ?ああいう時は最初に軽く解毒魔法を掛けるものなんだ。キャシーちゃんは教えなくてもやってるよね?」
確かにpus流出時に、心掛けてはいるけど。あれが解毒魔法?
簡単だって思ってしまった。曖昧だったイメージが一気にクリアになった気がする。
「キャシーちゃん?」
「出来そうな気がします」
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「そういうのは得意なんです」
「確かに魔法の威力を上げるのはイメージをハッキリさせるのが1番の手段だけどさ。じゃあ、さっき言っていた夢の話の服毒時ならどういうイメージ?」
「そうですね。中和させるイメージでしょうか。その後で消してしまえば良いんですよね?」
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