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学院中等部 5学年生
王都へ
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「フランは知っていたの?」
「はい。聞かされておりました」
「そう」
それなら今まで来られなかった私は、とんだ不義理者じゃないだろうか。だってみんな待っていてくれたんだよね?
「お嬢様、お気になさらなくとも大丈夫ですよ。旦那様とローレンス様が事情を説明しておりますし、古参の者はお嬢様の状態を見ておりましたから」
「そう、そうよね。ここに居た記憶は無いけれど」
「私も聞いただけですが、旦那様がとてもお怒りになっておられたそうです。即座に捜査をお命じになられたと。お嬢様のお熱が少し落ち着かれるや否や、『タウンハウスで療養させる』と仰って、王都にお連れになったと。タウンハウスのお医者様に叱られておられましたわ。『少し熱が下がったからと高熱の子供を馬車で連れてくるなど、この子を殺す気ですか?』と」
まぁね。発熱時は安静にして室温調整が基本だ。後は氷枕や氷嚢で首(頸動脈)や腋窩や鼠径部(足の付け根)を冷やすと良い。太い血管が通っているから。ちなみに頭を冷やしても気持ちが良いだけで熱を下げる効果は低い。
知り合いで「太い動脈なら良いんでしょ?」って氷枕を抱えていた人が居たけど、あれは効果があったんだろうか?確かに心臓に近かったし腹部大動脈もあるけど。
それもせずに馬車に乗せて移動した事をお義父様は叱られたらしいけど、その時のお義父様の思考は理解できる。一刻も早く王都に連れていった方が良いと判断したのだろうし。
そんな事を考えながらお雛様を眺めていると、フランに興味深く見られている事に気がついた。
「フラン?」
「不思議なお人形ですわね」
「そう?」
私はお雛様は記憶にあるから、不思議とは思わないんだけど。こちらでのお人形とは系統が違うから不思議だと感じるのかしら?
「なんだか高貴なお方に見守られている感じになります」
「そうね。お雛様のモデルは国王陛下と王妃殿下だから。お2人の結婚式の様子がモデルだって聞いたわ」
「そうなのですね」
それだけじゃないかもしれないけど。フランの言う通り見守られてるって感じはするかも。
「お嬢様、奥様がお呼びですよ」
ミレーナが戻ってきた。もうすぐお夕食だものね。
お義母様は食事室の中庭を眺められる席に座っていた。
「キャシーちゃん」
「お呼びとうかがいましたが」
「ねぇ、キャシーちゃん。あのね、キャシーちゃんは聖女様にはなりたくはないの?」
示された席に私が座るのを待って、お義母様が徐に口を開く。
「ないですね。私はそんな聖女様と呼ばれるほどの働きはしておりません」
「そうかしら?私から見たら十分に素質はあると思うわよ?」
「……イメージでしょうか。聖女様って誰にでも優しくて穏やかでってイメージなんです。でも、私は醜い部分もあるし負の感情だって持っています」
「それは当たり前じゃなくて?聖女様と呼ばれていようが、人なんですもの。醜い部分や負の感情を持たないなんて、人としていびつだわ」
「それはそうなんですけど」
そこまで話して気が付く。
「お義母様、どなたかに説得するように頼まれましたか?」
「いいえ。そんな事はないわ」
「女性の場合は嘘をつくときに『相手の目を凝視する』傾向があるんです。お義母様は私をジッと見ておられましたよね?目線を逸らさずに」
お義母様がほぅっと息を吐いた。
「キャシーちゃん、信じてちょうだい?私達はキャシーちゃんの味方よ?」
「分かっております。その上でお聞きします。どなたかに説得するように頼まれましたわね?」
「キャシーちゃぁん」
「お義母様が私の事を困らせるつもりが無いのは分かります。お義母様はそんなお人じゃない。でも、実際に私が困る質問をしている。どなたかに説得するように頼まれないと、話題にも出さなかったはずです」
お義母様に頼んだ、もしくは圧力をかけたのは、おそらく王家よね。
「要するに王家は自国から聖女が出たと、自慢したいのでございましょう?」
「キャシーちゃんったら。ダメよ?不敬になっちゃうわ」
「重々承知の上でしてよ?お義母様」
ローレンス様とランベルトお義兄様が食事室に入ってきて、夕食が始まった。夕食時にはお義母様も私もさっきの話題は、おくびにも出さなかった。だけど、ローレンス様は何かに気付いたようだ。
「キャシー、母上と何かあった?」
「特に何もございませんわ」
夕食後に部屋までやって来たローレンス様に聞かれてしまった。
「そう?それなら良いんだけど」
「ローレンス様、ローレンス様は私が聖国に行って聖女認定されるのをどう思われますか?」
「誇らしいと思うよ。でも少し寂しいかな?」
「寂しい?」
「手の届かない人になりそうでね。キャシーはそこにいるのに、どんどん遠くに行ってしまうような気になる」
「私はここにおりましてよ?」
「うん。分かってるよ。分かってるんだけどね」
ローレンス様も卒業後の聖国行きで、私が聖女認定されるって知ってたのね。本当に私だけ隠されていたんだ。
ローレンス様が出ていって、ひとりにしてもらった。フランとミレーナは心配してたけど、ひとりで考えたいからとわがままを通した。
お雛様を持ってきてベッドに座る。
「どうしたら良いのかな?」
答えは返ってこないと分かっていながら、お雛様に話しかけた。
その日から王都に帰るまでの毎日を、夜にひとりで考える時間に当てさせてもらった。私ひとりが嫌だと言い続けてもすでに外堀は埋められているし、たぶん聖女認定は覆らない。私が覚悟を決めれば良いだけなんだけど、その覚悟が決まらない。
そもそも聖女って何をするの?
分からない事は詳しい人に聞けば良い。よし。夏期休暇が終わったら、サミュエル先生を質問責めにしよう。その為には疑問点を書き出しておかなきゃね。
私がそう吹っ切ったのは、王都に帰る前日だった。
翌日、王都に戻る為に馬車に乗る。今回はミレーナも連れていく事になっている為、1人1台の馬車になった。ローレンス様は盛大にごねたけどお義母様に説得されていた。
「お嬢様、お悩みは解決したのですか?」
「解決はしていないわ。でも逃げられないっぽいから詳しい方に聞こうと思っているの」
「詳しいお方ですか?」
「サミュエル先生よ」
「あぁ、あの方ですね」
フランは納得したけど、ミレーナはちんぷんかんぷんな顔をしている。
「ミレーナ、サミュエル先生は私の光魔法の師よ。学院でも教えていただいているの」
「そうなんですか。私、何も知らなくて」
「お会いしてない方を知っていたら、それはそれで怖いと思うのだけど」
「そうでしょうか」
「今までフェルナー領から出た事がないのよね?それなら当然よ。私はフェルナー領出身だけど、知らない事ばかりだったもの」
「お嬢様は幼かったからですよ」
「ミレーナも私の事情を知っているの?」
「私が聞かされたのは何らかの事情で、幼いお嬢様を旦那様が引き取られたという事だけです。詳しい事情は分かりません」
「そう……」
話をしている間にトールキャッスルに到着した。
「キャシーちゃん、こちらの馬車に乗らない?」
「お義母様?どうなさったのですか?」
「母娘で馬車に乗ってみたいのよ」
「領城に戻る時に乗りましたよね?」
「良いじゃない。相手をしてちょうだい」
「はい。聞かされておりました」
「そう」
それなら今まで来られなかった私は、とんだ不義理者じゃないだろうか。だってみんな待っていてくれたんだよね?
「お嬢様、お気になさらなくとも大丈夫ですよ。旦那様とローレンス様が事情を説明しておりますし、古参の者はお嬢様の状態を見ておりましたから」
「そう、そうよね。ここに居た記憶は無いけれど」
「私も聞いただけですが、旦那様がとてもお怒りになっておられたそうです。即座に捜査をお命じになられたと。お嬢様のお熱が少し落ち着かれるや否や、『タウンハウスで療養させる』と仰って、王都にお連れになったと。タウンハウスのお医者様に叱られておられましたわ。『少し熱が下がったからと高熱の子供を馬車で連れてくるなど、この子を殺す気ですか?』と」
まぁね。発熱時は安静にして室温調整が基本だ。後は氷枕や氷嚢で首(頸動脈)や腋窩や鼠径部(足の付け根)を冷やすと良い。太い血管が通っているから。ちなみに頭を冷やしても気持ちが良いだけで熱を下げる効果は低い。
知り合いで「太い動脈なら良いんでしょ?」って氷枕を抱えていた人が居たけど、あれは効果があったんだろうか?確かに心臓に近かったし腹部大動脈もあるけど。
それもせずに馬車に乗せて移動した事をお義父様は叱られたらしいけど、その時のお義父様の思考は理解できる。一刻も早く王都に連れていった方が良いと判断したのだろうし。
そんな事を考えながらお雛様を眺めていると、フランに興味深く見られている事に気がついた。
「フラン?」
「不思議なお人形ですわね」
「そう?」
私はお雛様は記憶にあるから、不思議とは思わないんだけど。こちらでのお人形とは系統が違うから不思議だと感じるのかしら?
「なんだか高貴なお方に見守られている感じになります」
「そうね。お雛様のモデルは国王陛下と王妃殿下だから。お2人の結婚式の様子がモデルだって聞いたわ」
「そうなのですね」
それだけじゃないかもしれないけど。フランの言う通り見守られてるって感じはするかも。
「お嬢様、奥様がお呼びですよ」
ミレーナが戻ってきた。もうすぐお夕食だものね。
お義母様は食事室の中庭を眺められる席に座っていた。
「キャシーちゃん」
「お呼びとうかがいましたが」
「ねぇ、キャシーちゃん。あのね、キャシーちゃんは聖女様にはなりたくはないの?」
示された席に私が座るのを待って、お義母様が徐に口を開く。
「ないですね。私はそんな聖女様と呼ばれるほどの働きはしておりません」
「そうかしら?私から見たら十分に素質はあると思うわよ?」
「……イメージでしょうか。聖女様って誰にでも優しくて穏やかでってイメージなんです。でも、私は醜い部分もあるし負の感情だって持っています」
「それは当たり前じゃなくて?聖女様と呼ばれていようが、人なんですもの。醜い部分や負の感情を持たないなんて、人としていびつだわ」
「それはそうなんですけど」
そこまで話して気が付く。
「お義母様、どなたかに説得するように頼まれましたか?」
「いいえ。そんな事はないわ」
「女性の場合は嘘をつくときに『相手の目を凝視する』傾向があるんです。お義母様は私をジッと見ておられましたよね?目線を逸らさずに」
お義母様がほぅっと息を吐いた。
「キャシーちゃん、信じてちょうだい?私達はキャシーちゃんの味方よ?」
「分かっております。その上でお聞きします。どなたかに説得するように頼まれましたわね?」
「キャシーちゃぁん」
「お義母様が私の事を困らせるつもりが無いのは分かります。お義母様はそんなお人じゃない。でも、実際に私が困る質問をしている。どなたかに説得するように頼まれないと、話題にも出さなかったはずです」
お義母様に頼んだ、もしくは圧力をかけたのは、おそらく王家よね。
「要するに王家は自国から聖女が出たと、自慢したいのでございましょう?」
「キャシーちゃんったら。ダメよ?不敬になっちゃうわ」
「重々承知の上でしてよ?お義母様」
ローレンス様とランベルトお義兄様が食事室に入ってきて、夕食が始まった。夕食時にはお義母様も私もさっきの話題は、おくびにも出さなかった。だけど、ローレンス様は何かに気付いたようだ。
「キャシー、母上と何かあった?」
「特に何もございませんわ」
夕食後に部屋までやって来たローレンス様に聞かれてしまった。
「そう?それなら良いんだけど」
「ローレンス様、ローレンス様は私が聖国に行って聖女認定されるのをどう思われますか?」
「誇らしいと思うよ。でも少し寂しいかな?」
「寂しい?」
「手の届かない人になりそうでね。キャシーはそこにいるのに、どんどん遠くに行ってしまうような気になる」
「私はここにおりましてよ?」
「うん。分かってるよ。分かってるんだけどね」
ローレンス様も卒業後の聖国行きで、私が聖女認定されるって知ってたのね。本当に私だけ隠されていたんだ。
ローレンス様が出ていって、ひとりにしてもらった。フランとミレーナは心配してたけど、ひとりで考えたいからとわがままを通した。
お雛様を持ってきてベッドに座る。
「どうしたら良いのかな?」
答えは返ってこないと分かっていながら、お雛様に話しかけた。
その日から王都に帰るまでの毎日を、夜にひとりで考える時間に当てさせてもらった。私ひとりが嫌だと言い続けてもすでに外堀は埋められているし、たぶん聖女認定は覆らない。私が覚悟を決めれば良いだけなんだけど、その覚悟が決まらない。
そもそも聖女って何をするの?
分からない事は詳しい人に聞けば良い。よし。夏期休暇が終わったら、サミュエル先生を質問責めにしよう。その為には疑問点を書き出しておかなきゃね。
私がそう吹っ切ったのは、王都に帰る前日だった。
翌日、王都に戻る為に馬車に乗る。今回はミレーナも連れていく事になっている為、1人1台の馬車になった。ローレンス様は盛大にごねたけどお義母様に説得されていた。
「お嬢様、お悩みは解決したのですか?」
「解決はしていないわ。でも逃げられないっぽいから詳しい方に聞こうと思っているの」
「詳しいお方ですか?」
「サミュエル先生よ」
「あぁ、あの方ですね」
フランは納得したけど、ミレーナはちんぷんかんぷんな顔をしている。
「ミレーナ、サミュエル先生は私の光魔法の師よ。学院でも教えていただいているの」
「そうなんですか。私、何も知らなくて」
「お会いしてない方を知っていたら、それはそれで怖いと思うのだけど」
「そうでしょうか」
「今までフェルナー領から出た事がないのよね?それなら当然よ。私はフェルナー領出身だけど、知らない事ばかりだったもの」
「お嬢様は幼かったからですよ」
「ミレーナも私の事情を知っているの?」
「私が聞かされたのは何らかの事情で、幼いお嬢様を旦那様が引き取られたという事だけです。詳しい事情は分かりません」
「そう……」
話をしている間にトールキャッスルに到着した。
「キャシーちゃん、こちらの馬車に乗らない?」
「お義母様?どうなさったのですか?」
「母娘で馬車に乗ってみたいのよ」
「領城に戻る時に乗りましたよね?」
「良いじゃない。相手をしてちょうだい」
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