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学院中等部 5学年生
後輩からの相談
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夏季休暇までは案外短い。夏季休暇が終わると芸術祭と武術魔法披露会があるけど、それまでは新入生が慣れる為の時間に当てられている。
今年の新入生の中に、少し訳ありの子が居るらしい。威力の大小はあるにせよ、全人類が授けられているはずの魔法が、発現していないそうだ。教会で何度も儀式を行い、その度に「属性無し」と言われてきたんだって。
「フェルナー先輩、なんとかなりませんか?」
「私に言われましても」
私は今、その子の友達に相談を受けていた。魔力はあるはずなんだよね。そうでないとこの世界では生きていけない。魔力が無ければ生命の維持が出来ないとか、医学書に書いてあった。そして魔力を生成している器官は、いまだに発見されていない。
「属性無しとは言われても、魔力はあるのですわよね?」
「そうでしょうね。魔道具は使えていますし」
「未発見の属性とか?」
「その辺りは分かりません」
「ですわよね」
何故私が相談を受けているのか。元々はリリス様が受けた相談だった。だけどリリス様には手に負えないと、リリス様から私に相談があった。そのリリス様はただいま席を外している。
「その方にお会いしてみないとなんとも言えませんわね」
「会っていただけますか?」
「かまいませんけど。私に何か出来るという確信はございませんのよ?」
「それでもいいんです。彼女が心配で」
「その方のお名前も伺っておりませんわ?」
「あ、すみません。エマニュエル・ハリス様です」
言い置いて、離れていった女性生徒を見送る。やがてひとりの新入生を連れてきた。黒髪に茶色い瞳のどことなく前世の日本人を思い起こさせる顔立ち。
「エマニュエル・ハリスです」
「はじめましてですわね。キャスリーン・フェルナーですわ」
「あの、私はこのままでも」
「もちろんご自身のお考えがいちばん優先されますわ。それでも心配してくださっているお友達の為にも、少しだけお話ししてみませんこと?」
話をしていて分かったのは、やはり属性無しと言われた事は気にしている事。それでも気にしていないと言わないと同情というか憐憫の視線が痛いらしい。
「先輩は光魔法なんですよね?」
「えぇ」
「うらやましいです」
ポツリと本音らしき言葉が漏れた。
「ハリス様、私の魔法の師に相談してみますか?」
「フェルナー先輩の?」
「幸い、ここで教鞭を取っておられますから」
「あ、でも、その、私は男爵家で……」
「関係はございませんわ。この学院の理念は『勉学に身分の上下無し』ですもの」
「それは建前だって聞きました」
「形骸化はしておりませんわよ。私も身分を笠に着るなと何度も言われましたもの」
「えっ?先輩って……」
「それなりとだけ言っておきますわ」
微笑むと黙ってしまった。
翌日、エマニュエル・ハリス様を初等部の1学年生の教室に迎えに行った。私が姿を見せると教室内が騒ついた。
「お騒がせしてごめんなさいね。ハリス様、参りましょう」
「はいっ」
緊張しているらしく返事が不必要に大きい。
「力をお抜きになって。大丈夫ですわよ」
「あの、後ろの男っ……、男性は?」
「護衛ですわ。少しありまして」
シェーン様が黙って会釈する。
「護衛?」
「えぇ。色々と巻き込まれたり、明確に私を狙ってきたり。おかげで護衛の方々にはお手数をかけております」
「巻き込まれ……」
ハリス様が絶句している。当時は人の悪意が怖くて怖くて閉じ籠ってしまいたい心境だったけど、周りの方達のおかげで閉じ籠らずに済んだ。みんなは「フェルナー嬢は強いから。折れない心を持っているから」と言ってくれたけど、みんなの支えがなければ私は今、こうやって立てていない。強風に負けないとされる柳も支える幹が無ければ倒れるし、しなやかな竹だって周りの助けが無ければ折れてしまう。
「あの、フェルナー先輩って侯爵家のご令嬢だったんですね。高位貴族だろうって分かっていたけど、まさか侯爵家だと思わなくて。っていうか、そうじゃなくてもものすごく不敬な気が……」
「私達も初等部の間は、身分関係なく話しておりましたわよ?お義母様に伺ったのですけれど、身分を意識するのは卒業してからで良いそうですわ。私達が今、言葉遣いに気を付けているのは、予行練習と申しましょうか。社交界に出た時にスムーズに淑女としてのふるまいが出来るようにと、その訓練ですわね」
「今はこのままでも良いんですか?」
「えぇ。ハリス様」
サミュエル先生の待つ魔法訓練施設に着いた。ここはあらゆる魔法防壁が張ってあるらしい。昔の技術って凄かったのね。
「ようこそキャシーちゃん。その子?」
「はい。お呼び立てして申し訳ございません」
「いいよ。今は時間があるからね。それにしても属性無し、ねぇ。王家を通して調べてもらったけど、属性無しはあり得ないんだそうだ」
「王家を通して?」
隣でハリス様が小さく呟いた。
「代わりに出てきたのが、補助系の魔法の持ち主の記録。他の者の魔力を補って増幅したり出来るらしいよ」
「そんな事が。珍しいのですわよね?」
「珍しいね。歴史的に見ても記録は12人しかいない。これは聖国の方の調査結果も入っているからね。確実だよ。それに特徴があってね。魔力が無色透明なんだそうだ」
「だから判定出来なかったと?」
「その可能性が高い。それで、えっと……?」
「ハリス様です。エマニュエル・ハリス様」
「ハリス嬢、君、何かスキルを持っていない?」
「スキルですか?」
スキルは技能とか特別な能力という意味で使われている。生まれつきスキルを持っている人物はいないらしい。魔法や技術を磨いていって、その先に身に付くと言われている。
「スキルかどうかは分かりませんけど、知らない歌が歌えます」
「ん?」
「聞いた事もない曲が頭に浮かぶんです。それを歌えます」
「歌ってみてくれる?」
突然のサミュエル先生の言葉に、ハリス様は少し驚いていたけど、呼吸を整えて歌い出した。その声は高く澄んでいるようにも、低く地を這うようにも聞こえる。まるで何人もが歌っているような感覚になった。
「キャシーちゃん、ブレシングアクアを1本作って」
ハリス様の歌声が響く中、ブレシングアクアを作成する。いつもより魔力の通りが良い。
作成したブレシングアクアをサミュエル先生に渡す。先生はそれを簡易解析装置にかけた。
ハリス様の歌は終わっている。先生が何をしているのか気になるようだけど、黙って先生を見ていた。
「キャシーちゃん、これって通常のブレシングアクアだよね?」
「はい。どうかなさいましたか?」
「数値が上がってる。効果が増幅しているんだよ」
「ハリス様のお歌のおかげでしょうか。いつもより魔力の通りが良かったんです」
「そうか。やっぱりね」
サミュエル先生がハリス様を見る。
「おめでとう。補助の属性だよ」
「補助って事は自分では何も出来ない?」
「訓練次第だね。この頃ちょくちょく魔法判定の後で魔法属性が出現したとか、報告があるし」
「そんな事があるんですか?」
「あるんだよ。条件は分かっていないけどね。それよりも王宮と聖国に報告しないといけないけど、大丈夫かな?」
「……大丈夫ですけど、私はどうなっちゃうんですか?」
「どうにもならないよ。学院に居る間はね。その後の事は大人の話し合い次第だ。ハリス家にも報告させてもらうよ」
「何かお咎めとか?」
「逆だよ。補助の属性の説明と今後について話をする」
「先生、ハリス様にも……」
「それも話し合い次第だよ。でもそうだね。しばらくは護衛が居る人物の近くに居た方が良いだろうね」
って、私ですよね?
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「私に言われましても」
私は今、その子の友達に相談を受けていた。魔力はあるはずなんだよね。そうでないとこの世界では生きていけない。魔力が無ければ生命の維持が出来ないとか、医学書に書いてあった。そして魔力を生成している器官は、いまだに発見されていない。
「属性無しとは言われても、魔力はあるのですわよね?」
「そうでしょうね。魔道具は使えていますし」
「未発見の属性とか?」
「その辺りは分かりません」
「ですわよね」
何故私が相談を受けているのか。元々はリリス様が受けた相談だった。だけどリリス様には手に負えないと、リリス様から私に相談があった。そのリリス様はただいま席を外している。
「その方にお会いしてみないとなんとも言えませんわね」
「会っていただけますか?」
「かまいませんけど。私に何か出来るという確信はございませんのよ?」
「それでもいいんです。彼女が心配で」
「その方のお名前も伺っておりませんわ?」
「あ、すみません。エマニュエル・ハリス様です」
言い置いて、離れていった女性生徒を見送る。やがてひとりの新入生を連れてきた。黒髪に茶色い瞳のどことなく前世の日本人を思い起こさせる顔立ち。
「エマニュエル・ハリスです」
「はじめましてですわね。キャスリーン・フェルナーですわ」
「あの、私はこのままでも」
「もちろんご自身のお考えがいちばん優先されますわ。それでも心配してくださっているお友達の為にも、少しだけお話ししてみませんこと?」
話をしていて分かったのは、やはり属性無しと言われた事は気にしている事。それでも気にしていないと言わないと同情というか憐憫の視線が痛いらしい。
「先輩は光魔法なんですよね?」
「えぇ」
「うらやましいです」
ポツリと本音らしき言葉が漏れた。
「ハリス様、私の魔法の師に相談してみますか?」
「フェルナー先輩の?」
「幸い、ここで教鞭を取っておられますから」
「あ、でも、その、私は男爵家で……」
「関係はございませんわ。この学院の理念は『勉学に身分の上下無し』ですもの」
「それは建前だって聞きました」
「形骸化はしておりませんわよ。私も身分を笠に着るなと何度も言われましたもの」
「えっ?先輩って……」
「それなりとだけ言っておきますわ」
微笑むと黙ってしまった。
翌日、エマニュエル・ハリス様を初等部の1学年生の教室に迎えに行った。私が姿を見せると教室内が騒ついた。
「お騒がせしてごめんなさいね。ハリス様、参りましょう」
「はいっ」
緊張しているらしく返事が不必要に大きい。
「力をお抜きになって。大丈夫ですわよ」
「あの、後ろの男っ……、男性は?」
「護衛ですわ。少しありまして」
シェーン様が黙って会釈する。
「護衛?」
「えぇ。色々と巻き込まれたり、明確に私を狙ってきたり。おかげで護衛の方々にはお手数をかけております」
「巻き込まれ……」
ハリス様が絶句している。当時は人の悪意が怖くて怖くて閉じ籠ってしまいたい心境だったけど、周りの方達のおかげで閉じ籠らずに済んだ。みんなは「フェルナー嬢は強いから。折れない心を持っているから」と言ってくれたけど、みんなの支えがなければ私は今、こうやって立てていない。強風に負けないとされる柳も支える幹が無ければ倒れるし、しなやかな竹だって周りの助けが無ければ折れてしまう。
「あの、フェルナー先輩って侯爵家のご令嬢だったんですね。高位貴族だろうって分かっていたけど、まさか侯爵家だと思わなくて。っていうか、そうじゃなくてもものすごく不敬な気が……」
「私達も初等部の間は、身分関係なく話しておりましたわよ?お義母様に伺ったのですけれど、身分を意識するのは卒業してからで良いそうですわ。私達が今、言葉遣いに気を付けているのは、予行練習と申しましょうか。社交界に出た時にスムーズに淑女としてのふるまいが出来るようにと、その訓練ですわね」
「今はこのままでも良いんですか?」
「えぇ。ハリス様」
サミュエル先生の待つ魔法訓練施設に着いた。ここはあらゆる魔法防壁が張ってあるらしい。昔の技術って凄かったのね。
「ようこそキャシーちゃん。その子?」
「はい。お呼び立てして申し訳ございません」
「いいよ。今は時間があるからね。それにしても属性無し、ねぇ。王家を通して調べてもらったけど、属性無しはあり得ないんだそうだ」
「王家を通して?」
隣でハリス様が小さく呟いた。
「代わりに出てきたのが、補助系の魔法の持ち主の記録。他の者の魔力を補って増幅したり出来るらしいよ」
「そんな事が。珍しいのですわよね?」
「珍しいね。歴史的に見ても記録は12人しかいない。これは聖国の方の調査結果も入っているからね。確実だよ。それに特徴があってね。魔力が無色透明なんだそうだ」
「だから判定出来なかったと?」
「その可能性が高い。それで、えっと……?」
「ハリス様です。エマニュエル・ハリス様」
「ハリス嬢、君、何かスキルを持っていない?」
「スキルですか?」
スキルは技能とか特別な能力という意味で使われている。生まれつきスキルを持っている人物はいないらしい。魔法や技術を磨いていって、その先に身に付くと言われている。
「スキルかどうかは分かりませんけど、知らない歌が歌えます」
「ん?」
「聞いた事もない曲が頭に浮かぶんです。それを歌えます」
「歌ってみてくれる?」
突然のサミュエル先生の言葉に、ハリス様は少し驚いていたけど、呼吸を整えて歌い出した。その声は高く澄んでいるようにも、低く地を這うようにも聞こえる。まるで何人もが歌っているような感覚になった。
「キャシーちゃん、ブレシングアクアを1本作って」
ハリス様の歌声が響く中、ブレシングアクアを作成する。いつもより魔力の通りが良い。
作成したブレシングアクアをサミュエル先生に渡す。先生はそれを簡易解析装置にかけた。
ハリス様の歌は終わっている。先生が何をしているのか気になるようだけど、黙って先生を見ていた。
「キャシーちゃん、これって通常のブレシングアクアだよね?」
「はい。どうかなさいましたか?」
「数値が上がってる。効果が増幅しているんだよ」
「ハリス様のお歌のおかげでしょうか。いつもより魔力の通りが良かったんです」
「そうか。やっぱりね」
サミュエル先生がハリス様を見る。
「おめでとう。補助の属性だよ」
「補助って事は自分では何も出来ない?」
「訓練次第だね。この頃ちょくちょく魔法判定の後で魔法属性が出現したとか、報告があるし」
「そんな事があるんですか?」
「あるんだよ。条件は分かっていないけどね。それよりも王宮と聖国に報告しないといけないけど、大丈夫かな?」
「……大丈夫ですけど、私はどうなっちゃうんですか?」
「どうにもならないよ。学院に居る間はね。その後の事は大人の話し合い次第だ。ハリス家にも報告させてもらうよ」
「何かお咎めとか?」
「逆だよ。補助の属性の説明と今後について話をする」
「先生、ハリス様にも……」
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