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学院中等部 5学年生
中等部
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中等部と初等部のもっとも大きな違いは、授業に領地経営学が入ってくる事だろう。選択制だから、跡継ぎでない生徒も授業を受ける事が出来る。私は受けてみたかったけど断念した。医師資格取得の特別講座もあるし、これ以上は時間も厳しくなる。薬草研究会は絶対に辞めたくないから、取捨選択をしなければいけない。領地経営学の授業は課題もたくさん出されるらしいし。受けてみたかったんだけどね。領地経営学の先生は元王宮の役人だった方らしい。
領地経営学を選択していない生徒はその間、他の専門的な授業を受けられる。外国語だったり宮中儀礼だったり、世界情勢だったり魔道具についてだったり。私はイザベラ様と一緒に外国語の授業を選択した。外国語といっても色々ある。医師に必要なシャーマニー語もそうだしヨハケーネ国のヨケハ語も学べる。第2言語としてケーソンボガン聖国のソンガンボ語を学ぶ人もいる。ソンガンボ後は聖語とも呼ばれていて、教会内でも上層部はソンガンボ語の聖典を読む為に必ず学ぶらしい。とはいっても、丸暗記しちゃう人もいるって聞いたけど。それはそれで大変だと思う。
イザベラ様はソンガンボ語を学ぶらしい。私も一緒にと誘われた。ソンガンボ語って装飾的な言い回しが多いのよね。日常会話で普通に挨拶が出来ない。
「木々に朝露が煌めいて、心が洗われていくようです」
これは「おはようございます」という意味で、それを受けた返事はこうなる。
「夜空の星々の贈り物ですね。互いに心にたくさんの星を宿しましょう」
一事が万事こんな調子だ。ブレシングアクアを届けに行った時サミュエル先生に聞いたら、「日常的に使ってると、訳分かんなくなるよ」って言われちゃった。
「覚えれば詩歌に有利そうですけど、それまでの道のりが、ですわね」
「そう言わないでよ。歴史のある言語なんだから」
「知っておりますわよ。全ての言語の元となった言語だと教えていただきました」
「ソンガンボ語の教師は、ケーソンボガン聖国からの派遣だからね。そう言うだろうね」
「ケーソンボガン聖国からの派遣?スタヴィリス国出身だと仰っておられたらしいですけど」
「移住したんだろうね。たまに居るんだよ。一生を神に捧げたいって人物」
「サミュエル先生、今さらですけど、この国って多神教ですよね?」
「多神教?まぁそうだね。ケーソンボガン聖国もそうだよ。主神はいるけど眷族神というか、まぁ属性を司ったりの神々はいるね」
「主神様って天父神シュターディル様と地母神マーテル様ですわよね?」
「そうだよ。知りたきゃ講義するけど?」
「それは後程お願いいたします」
「後程……。何が知りたいの?」
「いえ。前世の神道と似てるな、と」
「シントウ?」
「私の前世って、宗教に寛大というか、いろんな宗教儀式を生活に取り入れていたんです。年中行事だけ見ても新年の初詣で神道、お盆には仏教行事、クリスマスはキリスト教。大晦日に仏教で除夜の鐘を撞いてって言う具合に」
「どれがどれか分からないけど、なんか色々あるんだね」
「人の一生でも色々ありますよ。他国の友人からは信じられないと言われました。その友人も最終的には楽しんでましたけど」
ちなみにその友人は「何故クリスマスにターキーを食べないんだ」って叫んで、部長に「大きいからね。日本だと食べきれないの」って聞かされて、なんだか納得していた。
「楽しめていたなら良かったね。で、シントウって何?」
「簡単に言っちゃうとこの世に存在するありとあらゆるモノ、森羅万象には、全てに神が宿っているといった考えの宗教です」
それだけじゃないけどね。超簡単な説明ならこれで十分だと思う。
「この世に存在するありとあらゆるモノ全てに、ね。違う点といえばこちらのピュリオンヴェルッティ教は、全て天父神シュターディル様と地母神マーテル様が産み出したとされている点かな」
「そこも似ています。神話の国産みでは男女神が力を合わせて神々を産み出し、死によって決別してからもいろんな神々が生まれていますから」
「死によって?神が死ぬの?」
「火の神様を産んで、女神がヤケドで亡くなっちゃうんです」
「火の神様……。納得出来るけど納得出来ないって感じだね」
「神話ってそういうものでしょう?」
「ソウダネ」
サミュエル先生、何故カタコトなの?部屋の片隅ではダニエル様が机をバンバン叩いて笑っていて、シェーン様は私の斜め後ろで顔を背けている。肩が震えているから笑ってるんだと思う。
サミュエル先生の部屋を出て、シェーン様に聞いてみた。
「シェーン様、私は何かおかしな事を言ったでしょうか?」
「いいえ。私はキャスリーン様は素直で可愛らしいお方だと思っただけですよ」
ものすごく微笑ましげに見られた。
そんな中、薬草研究会の新人達が、新しい取り組みをしてみたいと言ってきた。
「新しい取り組みって、何を?」
「染色です」
「染色って、布を染める?何の為に?」
「薬草研究会って花も扱っているじゃないですか。でも使わない花は捨てちゃいますよね?」
「乾燥ハーブにしてるけど?」
「えっ?」
「あなた達が食べているそのクッキー、薬草を乾燥させた物が練り込んであるわよ?」
「えぇっ?でも、どこに?」
「粉末にしているからね。色が少し付いているでしょ?食べても良い薬草は乾燥させて粉末にしているの」
「そんなぁ」
「でも新しい事をしたいってあなた達の気持ちは買うわ。やってごらんなさい」
「はいっ」
先輩の言葉に良い笑顔で良いお返事をする新入部員達。この子達も男爵家や子爵家の子達だ。薬草研究会で侯爵家は2人。辺境伯家が1人。伯爵家は6人。後の15人程は子爵、男爵階級だ。
薬草研究会は家柄にこだわらないし、興味とやる気があるなら受け入れる。土いじりや薬草洗いなんかも嫌がらずにやってくれるなら、なおありがたいというスタンスだ。今のところ全員が、嫌がらずに取り組んでくれている。
「でも、染色ってやった事はあるの?」
「無いです」
元気一杯答えてくれた。
「誰かに聞いた方が良いかもね。用務員なら伝手があるかも」
別の先輩が言う。
でも、染色なんてやった事があるのかな?私の染色のイメージは、藍染だ。たしかあれって染料で皮膚まで染まっちゃってたんだけど、その辺はどうするんだろう?
私があれこれ考えている内に、新入部員の染色希望組は用務員に聞きに行った。その上で染色に携わった事のある用務員を紹介してもらい、早速今度やってみると息巻いていた。今年の子達は行動が早い。
染色の当日、用務員が来てくれて、準備物を説明していく。どうやら草木染のようで、最初は模様無しで染めるみたい。そしてその材料はなんと紅茶だった。後はミルクがいると言われた。ミルクを2倍程度に薄めてハンカチを浸していく。これを30分は置いておくみたい。その間に紅茶を煮出す。濃く煮出せたら浸けておいたハンカチを絞り、お塩をいれた紅茶に浸していく。
「後はしばらく置いておきます。一晩程度でしっかり染まりますよ」
「結構時間がかかるのね」
「はい。今回は紅茶で染めました。淡いブラウンに染まります。この他にも染色に適した植物がありますが、どうなさいますか?」
「あのっ、ピンクとかって出来ないの?」
「出来ますよ。染色液の種類さえ変えれば。お嬢様、お坊っちゃま方には馴染みはないでしょうが、玉ねぎの皮やニンジンでも染まります」
「へぇぇ」
「考えておいてください。季節柄手に入らない材料も出てきますので」
「ありがとうございました」
用務員が帰っていって後片付けをして、その日の薬草研究会は終わった。
領地経営学を選択していない生徒はその間、他の専門的な授業を受けられる。外国語だったり宮中儀礼だったり、世界情勢だったり魔道具についてだったり。私はイザベラ様と一緒に外国語の授業を選択した。外国語といっても色々ある。医師に必要なシャーマニー語もそうだしヨハケーネ国のヨケハ語も学べる。第2言語としてケーソンボガン聖国のソンガンボ語を学ぶ人もいる。ソンガンボ後は聖語とも呼ばれていて、教会内でも上層部はソンガンボ語の聖典を読む為に必ず学ぶらしい。とはいっても、丸暗記しちゃう人もいるって聞いたけど。それはそれで大変だと思う。
イザベラ様はソンガンボ語を学ぶらしい。私も一緒にと誘われた。ソンガンボ語って装飾的な言い回しが多いのよね。日常会話で普通に挨拶が出来ない。
「木々に朝露が煌めいて、心が洗われていくようです」
これは「おはようございます」という意味で、それを受けた返事はこうなる。
「夜空の星々の贈り物ですね。互いに心にたくさんの星を宿しましょう」
一事が万事こんな調子だ。ブレシングアクアを届けに行った時サミュエル先生に聞いたら、「日常的に使ってると、訳分かんなくなるよ」って言われちゃった。
「覚えれば詩歌に有利そうですけど、それまでの道のりが、ですわね」
「そう言わないでよ。歴史のある言語なんだから」
「知っておりますわよ。全ての言語の元となった言語だと教えていただきました」
「ソンガンボ語の教師は、ケーソンボガン聖国からの派遣だからね。そう言うだろうね」
「ケーソンボガン聖国からの派遣?スタヴィリス国出身だと仰っておられたらしいですけど」
「移住したんだろうね。たまに居るんだよ。一生を神に捧げたいって人物」
「サミュエル先生、今さらですけど、この国って多神教ですよね?」
「多神教?まぁそうだね。ケーソンボガン聖国もそうだよ。主神はいるけど眷族神というか、まぁ属性を司ったりの神々はいるね」
「主神様って天父神シュターディル様と地母神マーテル様ですわよね?」
「そうだよ。知りたきゃ講義するけど?」
「それは後程お願いいたします」
「後程……。何が知りたいの?」
「いえ。前世の神道と似てるな、と」
「シントウ?」
「私の前世って、宗教に寛大というか、いろんな宗教儀式を生活に取り入れていたんです。年中行事だけ見ても新年の初詣で神道、お盆には仏教行事、クリスマスはキリスト教。大晦日に仏教で除夜の鐘を撞いてって言う具合に」
「どれがどれか分からないけど、なんか色々あるんだね」
「人の一生でも色々ありますよ。他国の友人からは信じられないと言われました。その友人も最終的には楽しんでましたけど」
ちなみにその友人は「何故クリスマスにターキーを食べないんだ」って叫んで、部長に「大きいからね。日本だと食べきれないの」って聞かされて、なんだか納得していた。
「楽しめていたなら良かったね。で、シントウって何?」
「簡単に言っちゃうとこの世に存在するありとあらゆるモノ、森羅万象には、全てに神が宿っているといった考えの宗教です」
それだけじゃないけどね。超簡単な説明ならこれで十分だと思う。
「この世に存在するありとあらゆるモノ全てに、ね。違う点といえばこちらのピュリオンヴェルッティ教は、全て天父神シュターディル様と地母神マーテル様が産み出したとされている点かな」
「そこも似ています。神話の国産みでは男女神が力を合わせて神々を産み出し、死によって決別してからもいろんな神々が生まれていますから」
「死によって?神が死ぬの?」
「火の神様を産んで、女神がヤケドで亡くなっちゃうんです」
「火の神様……。納得出来るけど納得出来ないって感じだね」
「神話ってそういうものでしょう?」
「ソウダネ」
サミュエル先生、何故カタコトなの?部屋の片隅ではダニエル様が机をバンバン叩いて笑っていて、シェーン様は私の斜め後ろで顔を背けている。肩が震えているから笑ってるんだと思う。
サミュエル先生の部屋を出て、シェーン様に聞いてみた。
「シェーン様、私は何かおかしな事を言ったでしょうか?」
「いいえ。私はキャスリーン様は素直で可愛らしいお方だと思っただけですよ」
ものすごく微笑ましげに見られた。
そんな中、薬草研究会の新人達が、新しい取り組みをしてみたいと言ってきた。
「新しい取り組みって、何を?」
「染色です」
「染色って、布を染める?何の為に?」
「薬草研究会って花も扱っているじゃないですか。でも使わない花は捨てちゃいますよね?」
「乾燥ハーブにしてるけど?」
「えっ?」
「あなた達が食べているそのクッキー、薬草を乾燥させた物が練り込んであるわよ?」
「えぇっ?でも、どこに?」
「粉末にしているからね。色が少し付いているでしょ?食べても良い薬草は乾燥させて粉末にしているの」
「そんなぁ」
「でも新しい事をしたいってあなた達の気持ちは買うわ。やってごらんなさい」
「はいっ」
先輩の言葉に良い笑顔で良いお返事をする新入部員達。この子達も男爵家や子爵家の子達だ。薬草研究会で侯爵家は2人。辺境伯家が1人。伯爵家は6人。後の15人程は子爵、男爵階級だ。
薬草研究会は家柄にこだわらないし、興味とやる気があるなら受け入れる。土いじりや薬草洗いなんかも嫌がらずにやってくれるなら、なおありがたいというスタンスだ。今のところ全員が、嫌がらずに取り組んでくれている。
「でも、染色ってやった事はあるの?」
「無いです」
元気一杯答えてくれた。
「誰かに聞いた方が良いかもね。用務員なら伝手があるかも」
別の先輩が言う。
でも、染色なんてやった事があるのかな?私の染色のイメージは、藍染だ。たしかあれって染料で皮膚まで染まっちゃってたんだけど、その辺はどうするんだろう?
私があれこれ考えている内に、新入部員の染色希望組は用務員に聞きに行った。その上で染色に携わった事のある用務員を紹介してもらい、早速今度やってみると息巻いていた。今年の子達は行動が早い。
染色の当日、用務員が来てくれて、準備物を説明していく。どうやら草木染のようで、最初は模様無しで染めるみたい。そしてその材料はなんと紅茶だった。後はミルクがいると言われた。ミルクを2倍程度に薄めてハンカチを浸していく。これを30分は置いておくみたい。その間に紅茶を煮出す。濃く煮出せたら浸けておいたハンカチを絞り、お塩をいれた紅茶に浸していく。
「後はしばらく置いておきます。一晩程度でしっかり染まりますよ」
「結構時間がかかるのね」
「はい。今回は紅茶で染めました。淡いブラウンに染まります。この他にも染色に適した植物がありますが、どうなさいますか?」
「あのっ、ピンクとかって出来ないの?」
「出来ますよ。染色液の種類さえ変えれば。お嬢様、お坊っちゃま方には馴染みはないでしょうが、玉ねぎの皮やニンジンでも染まります」
「へぇぇ」
「考えておいてください。季節柄手に入らない材料も出てきますので」
「ありがとうございました」
用務員が帰っていって後片付けをして、その日の薬草研究会は終わった。
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