139 / 290
学院初等部 4学年生
卒業式
しおりを挟む
プレ社交会が終わると、どことなく弛緩した空気と浮わついた空気に学院中が支配されると感じる。毎年思っていたんだけど、今年は特に浮わついた空気が強い。
薬草研究会でも卒業していく先輩方に送別会を行って、前途を祝福した。
今年の送別会には、例の聖女様風衣装を着せられた。サミュエル先生とシェアラー先生とリーベルト先生がニコニコしながら「着てくれるよね?」って迫ってくるんだもの。断りきれなかった。シェアラー先生なんか泣き落とししてくるんだもの。「老い先短い老いぼれに、せめて一目だけでも」って。シェアラー先生は後20年はお元気そうなんだけど。20年どころか50年位はお元気でいてほしい。
私が聖女様風衣装を着て会場のサロンに姿を見せたら、サロンがどよめいた。エスコートしてくれているサミュエル先生は満足そうにしていたけど、私は大変だった。
『聖女としての任命を受けたのか』とか、『その衣装はどうしたのか』とか。ガブリエラ様とお義兄様とアンバー様は事情を知っているから、3人ともニコニコニヤニヤしてたけど。
もっとも、卒業後に聖国に行く事を知っているのは、サミュエル先生と王家とフェルナー侯爵家だけ。フェルナー侯爵家もお義父様とローレンス様は知っているけど、ランベルトお義兄様はたぶん知らないと思う。お義母様は知っているかな?
とにかく、聖女としての任命は受けていない事、この衣装は友人と知り合いが共同で作ってくれた事を説明すると、なんとか納得してもらえた。サミュエル先生だけは「あれ?」って顔をしていたけど。
一昨年からの恒例となった腕相撲大会では、ランベルトお義兄様はシード枠というか、準々決勝からの参加にさせられていた。でもこれって、シード枠に有利な試合だよね。決勝戦では卒業していく先輩と勝負が付かなくて、最終的に大食い対決になっていた。サロンでスイーツを作ってくれていたカフェのシェフが久しぶりにたくさん作れて嬉しかったと言ってくれて、そこは良かったけど。ランベルトお義兄様と決勝を争った先輩と、有志数名は、その後屋外運動場に走りに行っちゃった。
「アンバー様、今更ながらあの兄で良いんですか?」
「何事にも一生懸命全力で取り組んで、カッコいいですわぁ」
あ、良いんですね。脳筋気味ですけど。アンバー様がそれで良いなら私は何も言いません。
卒業式の日は特段変わった事はなかった。粛々と式典は進んだし、その後の卒業記念パーティーの方が大変だった。
この日に合わせてマダムリュシュランから私が頼んだ2部式ドレスが届いていて、簡単な着方の説明書が付いていた。ドレスは背中が編み上げになっているコルセットのようになったドレスで、その上に手触りの良い白っぽいモコモコのケープ。縁のフワフワの毛が可愛いケープを羽織るタイプだった。スカート部分はシフォン地を重ねた柔らかい印象の、Aライン。今年はアンバー様と色違いで仕立ててもらった。
私は白と青のシフォン地を重ねて、アンバー様は青と黄色を重ねたスカートだ。私はローレンス様が居ないから、オーソドックスな汎用タイプだけど、アンバー様はランベルトお義兄様の瞳の色と自分の瞳の色で、これでもかって位婚約者同士だと主張している。
アンバー様もランベルトお義兄様も気が付いていないみたいで、キャッキャとしている。
「フェルナー様、あのお2人ってもしかして?」
「はい。正式発表はこの夏になるかと。それまでは内密にお願い致します」
ランベルトお義兄様とアンバー様の同級生の先輩に聞かれたから、こっそり教えておいた。やっぱり気付く人は気付くよね。
「正式発表はこの夏ですか?」
「高等部に進んだタイミングでもと、お義父様とアンバー様のお父上様も仰ってくださったのですけれど」
「うふふ。分かりましたわ。その時までは内密にしておきます」
内密になんて言っても、カリギュラ効果で誰かには言いたくなるだろうな。あの先輩が噂好きでない事を祈る。
卒業記念パーティーが始まった。私とアンバー様のケープは目立つらしく、何人かが聞きに来た。
「フェルナー嬢、そのケープってもしかして……」
「獣毛ですわ。とても暖かいんですのよ」
「獣毛ですって?そのような下品な……」
「あら、下品ですか?触ってみてくださいます?とても手触りが良いんですの。絹とはまた違った魅力ですわね」
「あ、あら?柔らかくてフワフワで気持ちいいですわね。これはどちらの?」
「マダムリュシュランの作品です。獣毛はノボリッチ伯爵領の物と伺っております」
「そうですのね」
この会話を何度繰り返しただろう?たぶん20人には言ったと思う。
「キャスリーン様、大丈夫ですか?」
私よりも明らかに疲れているのが分かるアンバー様が、お義兄様と一緒にやって来た。
「私よりも、アンバー様の方がお疲れのようですけど」
「このケープについてひっきりなしに聞かれてな。最後は逃げ出してきた」
「私もここまでとは思いませんでしたわ。この手触り、たぶんヤギさんだと思います」
「ヤギって、あのヤギ?」
「はい。あのメェェっと鳴くヤギさんですわ。前世のカシミヤという素材に似ていますもの」
「そのような素材があるのですのね」
「希少品でしょうけど。私はノボリッチ伯爵から伺いました」
「ご本人から?でもあの方……」
「言いたい事は分かりますわ。当たらずとも遠からずと言っておきます」
私が言ったとたんに周りから、「え?どっち?」という声が聞こえた。確定的な事は言うわけがないでしょ?私も確信持てないし、噂として拡散されたら嫌だもの。
「失礼いたします、フェルナー様。よく見ると、そのドレス……」
「はい。2部式ドレスです。一見そうは見えませんでしょう?正式な場所にはそぐいませんが、このような場ですもの。少し冒険してもよろしいのでは?とマダムリュシュランに提案してみまして、お義母様も卒業記念パーティーなら良いのではないかと許可をくださいました」
「このドレス、お気に入りですの。本当に楽ですのよ。コルセットは着用しておりませんけど、よく似た機能で苦しくないながら背筋が延びて姿勢もよく見えますし」
「まぁ、2部式ドレスにそのような利点が?」
「このドレスだけですわ。背中で調整出来ますのよ」
人が集まりすぎている気がする。十重二十重という表現がぴったりな位周りを取り囲まれている。
「皆様、せっかくの卒業記念パーティーですが、楽しまなくてもよろしいのですか?」
「「「「「こちらのお話の方が先ですわ」」」」」
一斉に言われてその音量にびっくりする。
「でも、余興も中断してしまっておりますし。演者の方にも失礼ですわ」
「フェルナー様、後でお話をお聞かせくださいませね?エスクーア様もですわよ?」
これは寮に帰ったら質疑応答大会かな?
「分かりましたわ。でも、エスクーア様は私がお頼みしましたの。ご迷惑はかけたくはございませんわ」
「キャスリーン様、そのようなお心遣いは無用ですわ。私も説明は受けておりますもの」
少し伏し目がちに言うと、アンバー様が意を察したようで、気遣い無用と言ってくれた。周りは少しだけヒートダウンしたように感じる。
「フェルナー様、エスクーア様。少し興奮しすぎましたわ。フェルナー様の言う通り、今は卒業記念パーティーを楽しみましょう」
卒業記念パーティーの主役である卒業生の先輩が言って、その場は収まった。
「驚きましたわ」
ガブリエラ様が言う。ガブリエラ様はずっと私の側にいて、人の波からイグニレス・ゲイツがずっと守っていた。どうでも良いけれどエスコートは必要ないのに、ずっとイチャイチャしてたのよね、この2人。
薬草研究会でも卒業していく先輩方に送別会を行って、前途を祝福した。
今年の送別会には、例の聖女様風衣装を着せられた。サミュエル先生とシェアラー先生とリーベルト先生がニコニコしながら「着てくれるよね?」って迫ってくるんだもの。断りきれなかった。シェアラー先生なんか泣き落とししてくるんだもの。「老い先短い老いぼれに、せめて一目だけでも」って。シェアラー先生は後20年はお元気そうなんだけど。20年どころか50年位はお元気でいてほしい。
私が聖女様風衣装を着て会場のサロンに姿を見せたら、サロンがどよめいた。エスコートしてくれているサミュエル先生は満足そうにしていたけど、私は大変だった。
『聖女としての任命を受けたのか』とか、『その衣装はどうしたのか』とか。ガブリエラ様とお義兄様とアンバー様は事情を知っているから、3人ともニコニコニヤニヤしてたけど。
もっとも、卒業後に聖国に行く事を知っているのは、サミュエル先生と王家とフェルナー侯爵家だけ。フェルナー侯爵家もお義父様とローレンス様は知っているけど、ランベルトお義兄様はたぶん知らないと思う。お義母様は知っているかな?
とにかく、聖女としての任命は受けていない事、この衣装は友人と知り合いが共同で作ってくれた事を説明すると、なんとか納得してもらえた。サミュエル先生だけは「あれ?」って顔をしていたけど。
一昨年からの恒例となった腕相撲大会では、ランベルトお義兄様はシード枠というか、準々決勝からの参加にさせられていた。でもこれって、シード枠に有利な試合だよね。決勝戦では卒業していく先輩と勝負が付かなくて、最終的に大食い対決になっていた。サロンでスイーツを作ってくれていたカフェのシェフが久しぶりにたくさん作れて嬉しかったと言ってくれて、そこは良かったけど。ランベルトお義兄様と決勝を争った先輩と、有志数名は、その後屋外運動場に走りに行っちゃった。
「アンバー様、今更ながらあの兄で良いんですか?」
「何事にも一生懸命全力で取り組んで、カッコいいですわぁ」
あ、良いんですね。脳筋気味ですけど。アンバー様がそれで良いなら私は何も言いません。
卒業式の日は特段変わった事はなかった。粛々と式典は進んだし、その後の卒業記念パーティーの方が大変だった。
この日に合わせてマダムリュシュランから私が頼んだ2部式ドレスが届いていて、簡単な着方の説明書が付いていた。ドレスは背中が編み上げになっているコルセットのようになったドレスで、その上に手触りの良い白っぽいモコモコのケープ。縁のフワフワの毛が可愛いケープを羽織るタイプだった。スカート部分はシフォン地を重ねた柔らかい印象の、Aライン。今年はアンバー様と色違いで仕立ててもらった。
私は白と青のシフォン地を重ねて、アンバー様は青と黄色を重ねたスカートだ。私はローレンス様が居ないから、オーソドックスな汎用タイプだけど、アンバー様はランベルトお義兄様の瞳の色と自分の瞳の色で、これでもかって位婚約者同士だと主張している。
アンバー様もランベルトお義兄様も気が付いていないみたいで、キャッキャとしている。
「フェルナー様、あのお2人ってもしかして?」
「はい。正式発表はこの夏になるかと。それまでは内密にお願い致します」
ランベルトお義兄様とアンバー様の同級生の先輩に聞かれたから、こっそり教えておいた。やっぱり気付く人は気付くよね。
「正式発表はこの夏ですか?」
「高等部に進んだタイミングでもと、お義父様とアンバー様のお父上様も仰ってくださったのですけれど」
「うふふ。分かりましたわ。その時までは内密にしておきます」
内密になんて言っても、カリギュラ効果で誰かには言いたくなるだろうな。あの先輩が噂好きでない事を祈る。
卒業記念パーティーが始まった。私とアンバー様のケープは目立つらしく、何人かが聞きに来た。
「フェルナー嬢、そのケープってもしかして……」
「獣毛ですわ。とても暖かいんですのよ」
「獣毛ですって?そのような下品な……」
「あら、下品ですか?触ってみてくださいます?とても手触りが良いんですの。絹とはまた違った魅力ですわね」
「あ、あら?柔らかくてフワフワで気持ちいいですわね。これはどちらの?」
「マダムリュシュランの作品です。獣毛はノボリッチ伯爵領の物と伺っております」
「そうですのね」
この会話を何度繰り返しただろう?たぶん20人には言ったと思う。
「キャスリーン様、大丈夫ですか?」
私よりも明らかに疲れているのが分かるアンバー様が、お義兄様と一緒にやって来た。
「私よりも、アンバー様の方がお疲れのようですけど」
「このケープについてひっきりなしに聞かれてな。最後は逃げ出してきた」
「私もここまでとは思いませんでしたわ。この手触り、たぶんヤギさんだと思います」
「ヤギって、あのヤギ?」
「はい。あのメェェっと鳴くヤギさんですわ。前世のカシミヤという素材に似ていますもの」
「そのような素材があるのですのね」
「希少品でしょうけど。私はノボリッチ伯爵から伺いました」
「ご本人から?でもあの方……」
「言いたい事は分かりますわ。当たらずとも遠からずと言っておきます」
私が言ったとたんに周りから、「え?どっち?」という声が聞こえた。確定的な事は言うわけがないでしょ?私も確信持てないし、噂として拡散されたら嫌だもの。
「失礼いたします、フェルナー様。よく見ると、そのドレス……」
「はい。2部式ドレスです。一見そうは見えませんでしょう?正式な場所にはそぐいませんが、このような場ですもの。少し冒険してもよろしいのでは?とマダムリュシュランに提案してみまして、お義母様も卒業記念パーティーなら良いのではないかと許可をくださいました」
「このドレス、お気に入りですの。本当に楽ですのよ。コルセットは着用しておりませんけど、よく似た機能で苦しくないながら背筋が延びて姿勢もよく見えますし」
「まぁ、2部式ドレスにそのような利点が?」
「このドレスだけですわ。背中で調整出来ますのよ」
人が集まりすぎている気がする。十重二十重という表現がぴったりな位周りを取り囲まれている。
「皆様、せっかくの卒業記念パーティーですが、楽しまなくてもよろしいのですか?」
「「「「「こちらのお話の方が先ですわ」」」」」
一斉に言われてその音量にびっくりする。
「でも、余興も中断してしまっておりますし。演者の方にも失礼ですわ」
「フェルナー様、後でお話をお聞かせくださいませね?エスクーア様もですわよ?」
これは寮に帰ったら質疑応答大会かな?
「分かりましたわ。でも、エスクーア様は私がお頼みしましたの。ご迷惑はかけたくはございませんわ」
「キャスリーン様、そのようなお心遣いは無用ですわ。私も説明は受けておりますもの」
少し伏し目がちに言うと、アンバー様が意を察したようで、気遣い無用と言ってくれた。周りは少しだけヒートダウンしたように感じる。
「フェルナー様、エスクーア様。少し興奮しすぎましたわ。フェルナー様の言う通り、今は卒業記念パーティーを楽しみましょう」
卒業記念パーティーの主役である卒業生の先輩が言って、その場は収まった。
「驚きましたわ」
ガブリエラ様が言う。ガブリエラ様はずっと私の側にいて、人の波からイグニレス・ゲイツがずっと守っていた。どうでも良いけれどエスコートは必要ないのに、ずっとイチャイチャしてたのよね、この2人。
161
お気に入りに追加
467
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
傷付いた騎士なんて要らないと妹は言った~残念ながら、変わってしまった関係は元には戻りません~
キョウキョウ
恋愛
ディアヌ・モリエールの妹であるエレーヌ・モリエールは、とてもワガママな性格だった。
両親もエレーヌの意見や行動を第一に優先して、姉であるディアヌのことは雑に扱った。
ある日、エレーヌの婚約者だったジョセフ・ラングロワという騎士が仕事中に大怪我を負った。
全身を包帯で巻き、1人では歩けないほどの重症だという。
エレーヌは婚約者であるジョセフのことを少しも心配せず、要らなくなったと姉のディアヌに看病を押し付けた。
ついでに、婚約関係まで押し付けようと両親に頼み込む。
こうして、出会うことになったディアヌとジョセフの物語。
暗闇に輝く星は自分で幸せをつかむ
Rj
恋愛
許婚のせいで見知らぬ女の子からいきなり頬をたたかれたステラ・デュボワは、誰にでもやさしい許婚と高等学校卒業後にこのまま結婚してよいのかと考えはじめる。特待生として通うスペンサー学園で最終学年となり最後の学園生活を送る中、許婚との関係がこじれたり、思わぬ申し出をうけたりとこれまで考えていた将来とはまったく違う方向へとすすんでいく。幸せは自分でつかみます!
ステラの恋と成長の物語です。
*女性蔑視の台詞や場面があります。
【完結】今世は我儘なぐーたら令嬢を目指します
くま
恋愛
一つ下の妹のキャンディは愛嬌は良く可愛い妹だった。
「私ね、お姉様が大好きです!」
「私もよ」
私に懐く彼女を嫌いなわけがない。
公爵家の長女の私は、常に成績トップを維持し、皆の見本になるようにしていた。
だけど……どんなに努力をしていても、成績をよくしていても
私の努力の結果は《当たり前》
来月私と結婚を控えている愛しい婚約者のアッサム様……
幼馴染であり、婚約者。とても優しい彼に惹かれ愛していた。
なのに……結婚式当日
「……今なんと?」
「……こ、子供が出来たんだ。キャンディとの」
「お、お姉様……ごめんなさい…わ、私…でも、ずっと前からアッサム様が好きだったの!お姉様を傷つけたくなくて……!」
頭が真っ白になった私はそのまま外へと飛びだして馬車に引かれてしまった。
私が血だらけで倒れていても、アッサム様は身籠もっているキャンディの方を心配している。
あぁ……貴方はキャンディの方へ行くのね…
真っ白なドレスが真っ赤に染まる。
最悪の結婚式だわ。
好きな人と想い合いながらの晴れ舞台……
今まで長女だからと厳しいレッスンも勉強も頑張っていたのに…誰も…誰も私の事など…
「リゼお嬢様!!!」
「……セイ…」
この声は我が家の専属の騎士……口も態度も生意気の奴。セイロンとはあまり話したことがない。もうセイロンの顔はよく見えないけれど……手は温かい……。
「俺はなんのために‥‥」
セイロンは‥‥冷たい男だと思っていたけど、唯一私の為に涙を流してくれるのね、
あぁ、雨が降ってきた。
目を瞑ると真っ暗な闇の中光が見え、
その瞬間、何故か前世の記憶を思い出す。
色々と混乱しつつも更に眩しい光が現れた。
その光の先へいくと……
目を覚ました瞬間‥‥
「リゼお姉様?どうしたんですか?」
「…え??」
何故16歳に戻っていた!?
婚約者になる前のアッサム様と妹の顔を見てプツンと何かが切れた。
もう、見て見ぬフリもしないわ。それに何故周りの目を気にして勉強などやらなければならいのかしら?!もう…疲れた!!好きな美味しいお菓子食べて、ぐーたら、したい!するわ!
よくわからないけれど……今世は好き勝手する!まずは、我慢していたイチゴケーキをホールで食べましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる