135 / 231
学院初等部 4学年生
厄介なモノ
しおりを挟む
「ローレンス様、セレスタ様は?箱の大きさが違う気がするのですけれど」
「うん。セレスタ嬢、開けてくれるかな?」
セレスタ様が緊張気味に蓋を開ける。中には私とは違うコインが入っていた。セレスタ様のコインは直径3センチ程。白金色に輝いている。
「白金貨か」
「このコインには命令強制力はございますの?」
「キャシーのよりは緩いよ。たしか他国に移住も出来たはず」
「うん。召集されたら即座に駆けつける事って、但し書きが付くけどね」
「この国を出る気はないですけど。キャスリーン様もいらっしゃるし」
「キャスリーン様?」
ローレンス様がピクリと眉を動かした。
「私がそう呼ぶように言いましたの」
だからローレンス様、圧をかけないであげてください。
「仕方がないね。キャシーは優しいから」
それは関係無いんですけどね。なんとなく言ったらご機嫌が悪くなって私が甘やかされる気がする。
リチャード神官が様子を見に来てくれた。
「フェルナー様、よろしいですか?」
「はい。患者さんですか?」
「そうです。お医者様が呼んできてほしいと」
と、いう事は外傷かな?
「分かりました。すぐに向かいます」
向かった先にいたのは狼に噛まれたという集団。重傷が5人、軽傷が6人。軽傷の6人は噛まれたというより逃げる際に転んだ人が多い。その内の何人かは事情を聴かれていた。
「すみませんな、フェルナー嬢。お手伝いいただけますかな」
「かしこまりました」
お医者様と手分けして治していく。セレスタ様も手を貸してくれた。重傷の人達の3人は何ヵ所も噛まれている。喰い千切られて骨が見えている人もいる。
セレスタ様は気丈に治療しているけど、結構辛そうだ。
「セレスタ様、大丈夫ですか?」
「キャスリーン様。はい、大丈夫です」
「辛いなら下がっていたまえ。こちらの邪魔になる」
いつになく厳しいお医者様の言葉に、悔しそうな顔をしたセレスタ様だけど、軽傷の人達の処置をしていたララ様に軽傷者の治癒を頼まれて、そちらに向かった。
次々に運び込まれる怪我人。狼を討伐しに行った人達もいて、なんとか全ての人の治療が終わったのは、お昼を大きく回っていた。
その中に転生者のレオナルド様がいた。
「レオナルド様?」
「悪いな、キャスリーン。所用で王都に来たんだが、見過ごせなくて加勢したら、このザマだ」
「狼の群れとの事でしたが、数は多かったのですか?」
「ありゃあ、いくつかのファミッリャだな。クランってとこか。4、50頭は居たからな」
「そんなに……」
「狼の群れとしては大きい方だな。ま、安心するといい。兵士も討伐に向かったから。チャリオットなんて久々に見た」
「チャリオット?」
「キャスリーンは知らないのか?古代で使われていた馬が牽く戦車だよ」
言われてぼんやりと思い浮かぶ。
「なんとなく分かりました。そういえばレオナルド様、お髭を剃りましたのね」
「あぁ。男前になっただろ?」
話をしていたら不審に思ったのか、ララ様がやって来た。
「キャシーちゃん、お知り合い?」
「転生者の方です。昨年知り合いました。あ、そうだ。レオナルド様、ララ・ノックス様です。去年一緒に伺う予定だった転生者です。ララ様、こちらがレオナルド様。本当の名は……」
「自分で言う。カイル・レヴィだ。今はレオナルド・ダ・ヴィンチと名乗っている。地球ではルイージ・ジャコメッティだった」
「あ、はじめまして。ララ・ノックスといいます。地球では黒川 美月でした」
「クリョカゥワミチュキ?」
「黒川 美月ですってば」
「レオナルド様、ミツキ・クロカワですわ。今はララ・ノックス様ですのでそちらで呼んであげてくださいませ」
「ララでいいか?」
「うん。私はどう呼んだらいい?」
「レオナルドで。思い出したらカイルって名前がしっくり来なくてさ。転生者にしか分からないだろうから、レオナルド・ダ・ヴィンチって勝手に名乗った」
「ルイージの方じゃダメだったの?」
「アハハハハ。僕はジャパニメーションが好きだったんでね。ルイージって聞くと自然に赤と緑の帽子の配管工のゲームが浮かんできてな。前世でも友人にレオナルドって呼んでもらってたんだ」
「へぇ」
ララ様は感心した後、コソっと私に聞いた。
「キャシーちゃん、ジャパニメーションって何?」
「ジャパンのアニメーションです。ちょっと古めの言葉ですね」
「古いの?」
「そう記憶してます。2000年位にはその言葉自体が衰退していったと思いますよ」
「どうして?」
「詳しくはないですが、ジャパニメーションってjapとAnimationの合成語なんですよ。japは日本を指す差別用語ですから、その辺りが関係しているんじゃないかと」
「へぇぇ。そうなんだ」
「もしかして、キャスリーンの方が年上だった?」
「前世での死亡年齢をいうなら、そうですね。ララ様は現役女子高生だったようですから。私は勤務中の二次災害に巻き込まれて鬼籍に入りました」
「キャシーちゃん、キセキって?」
「亡くなった事をいうんです。鬼の籍と書いて鬼籍。閻魔様の死者の名や死亡年月日などを記す帳面ですね。ここに名を書き入れられるのは亡くなった時ですから」
「へぇぇ」
「そうなんだ。知らなかったよ」
「仏教用語のようですから。それに鬼籍なんて若い方の間では使わないでしょうし」
「キャスリーンは何故知ってるんだ?」
「家が仏教徒でしたので。たぶんそこからだと思います。あまり自信はありません。どんどん記憶は薄れてってるし、でもこういうどうでもいいことは覚えているんですよね」
「カミーユもそんな事を言っていたな」
「レオナルド様はこれから?」
「しばらく王都に滞在して必要物品を買ったら、ハーランドって転生者の所に行く。その後は山小屋に帰るつもりだ。今から宿探しだな」
「山小屋?」
「レオナルド様は猟師をなさっておいでです。拠点があるのですよ」
「今日は教会に泊まったら?宿泊費は格安よ?」
「そりゃあありがたいが、良いのか?」
「大丈夫よ。責任者に言っておくわ」
ララ様が走って出ていく。ララ様、学院で習った淑女のマナーはどこに落としてきたの?
「どうしたんだ?キャスリーン。やけにララを目で追っているじゃないか」
「ララ様は学院で習った淑女のマナーをどこに落としてこられたのかと。それよりレオナルド様、私には婚約者がおります。出来ればフェルナー嬢とお呼びくださいませ」
「急に水臭いな。良いだろ?同じ転生者じゃねぇか」
「良くはございません。私にも名誉というものがございますし、レオナルド様は平民という立場でよろしかったですか。それでしたら不敬罪の適用となってしまいます。レオナルド様も危険なのですよ?」
「そうやって俺の事を心配してくれる、優しいキャスリーンだから好きなんだ」
「レオナルド様!!」
「へーへー。フェルナー家って侯爵だっけ?しがない男爵家の三男坊だった俺じゃ、たしかに不敬にあたるな。でも2人だけの時は良いんだろ?」
「良くはございません」
「ツレない事を言うなって」
「レオナルド様、私も貴族の端くれにございます。一転生者としては良いと言ってしまうでしょうが、この世の貴族の娘としては、良いとは申せません」
「まったく貴族ってやつは面倒だな」
「それには同意いたしますけど」
「じゃあ良いじゃないか」
「良くはございません。じゃあ、の意味も分かりかねます」
厄介な方に気に入られちゃった気がする。
「うん。セレスタ嬢、開けてくれるかな?」
セレスタ様が緊張気味に蓋を開ける。中には私とは違うコインが入っていた。セレスタ様のコインは直径3センチ程。白金色に輝いている。
「白金貨か」
「このコインには命令強制力はございますの?」
「キャシーのよりは緩いよ。たしか他国に移住も出来たはず」
「うん。召集されたら即座に駆けつける事って、但し書きが付くけどね」
「この国を出る気はないですけど。キャスリーン様もいらっしゃるし」
「キャスリーン様?」
ローレンス様がピクリと眉を動かした。
「私がそう呼ぶように言いましたの」
だからローレンス様、圧をかけないであげてください。
「仕方がないね。キャシーは優しいから」
それは関係無いんですけどね。なんとなく言ったらご機嫌が悪くなって私が甘やかされる気がする。
リチャード神官が様子を見に来てくれた。
「フェルナー様、よろしいですか?」
「はい。患者さんですか?」
「そうです。お医者様が呼んできてほしいと」
と、いう事は外傷かな?
「分かりました。すぐに向かいます」
向かった先にいたのは狼に噛まれたという集団。重傷が5人、軽傷が6人。軽傷の6人は噛まれたというより逃げる際に転んだ人が多い。その内の何人かは事情を聴かれていた。
「すみませんな、フェルナー嬢。お手伝いいただけますかな」
「かしこまりました」
お医者様と手分けして治していく。セレスタ様も手を貸してくれた。重傷の人達の3人は何ヵ所も噛まれている。喰い千切られて骨が見えている人もいる。
セレスタ様は気丈に治療しているけど、結構辛そうだ。
「セレスタ様、大丈夫ですか?」
「キャスリーン様。はい、大丈夫です」
「辛いなら下がっていたまえ。こちらの邪魔になる」
いつになく厳しいお医者様の言葉に、悔しそうな顔をしたセレスタ様だけど、軽傷の人達の処置をしていたララ様に軽傷者の治癒を頼まれて、そちらに向かった。
次々に運び込まれる怪我人。狼を討伐しに行った人達もいて、なんとか全ての人の治療が終わったのは、お昼を大きく回っていた。
その中に転生者のレオナルド様がいた。
「レオナルド様?」
「悪いな、キャスリーン。所用で王都に来たんだが、見過ごせなくて加勢したら、このザマだ」
「狼の群れとの事でしたが、数は多かったのですか?」
「ありゃあ、いくつかのファミッリャだな。クランってとこか。4、50頭は居たからな」
「そんなに……」
「狼の群れとしては大きい方だな。ま、安心するといい。兵士も討伐に向かったから。チャリオットなんて久々に見た」
「チャリオット?」
「キャスリーンは知らないのか?古代で使われていた馬が牽く戦車だよ」
言われてぼんやりと思い浮かぶ。
「なんとなく分かりました。そういえばレオナルド様、お髭を剃りましたのね」
「あぁ。男前になっただろ?」
話をしていたら不審に思ったのか、ララ様がやって来た。
「キャシーちゃん、お知り合い?」
「転生者の方です。昨年知り合いました。あ、そうだ。レオナルド様、ララ・ノックス様です。去年一緒に伺う予定だった転生者です。ララ様、こちらがレオナルド様。本当の名は……」
「自分で言う。カイル・レヴィだ。今はレオナルド・ダ・ヴィンチと名乗っている。地球ではルイージ・ジャコメッティだった」
「あ、はじめまして。ララ・ノックスといいます。地球では黒川 美月でした」
「クリョカゥワミチュキ?」
「黒川 美月ですってば」
「レオナルド様、ミツキ・クロカワですわ。今はララ・ノックス様ですのでそちらで呼んであげてくださいませ」
「ララでいいか?」
「うん。私はどう呼んだらいい?」
「レオナルドで。思い出したらカイルって名前がしっくり来なくてさ。転生者にしか分からないだろうから、レオナルド・ダ・ヴィンチって勝手に名乗った」
「ルイージの方じゃダメだったの?」
「アハハハハ。僕はジャパニメーションが好きだったんでね。ルイージって聞くと自然に赤と緑の帽子の配管工のゲームが浮かんできてな。前世でも友人にレオナルドって呼んでもらってたんだ」
「へぇ」
ララ様は感心した後、コソっと私に聞いた。
「キャシーちゃん、ジャパニメーションって何?」
「ジャパンのアニメーションです。ちょっと古めの言葉ですね」
「古いの?」
「そう記憶してます。2000年位にはその言葉自体が衰退していったと思いますよ」
「どうして?」
「詳しくはないですが、ジャパニメーションってjapとAnimationの合成語なんですよ。japは日本を指す差別用語ですから、その辺りが関係しているんじゃないかと」
「へぇぇ。そうなんだ」
「もしかして、キャスリーンの方が年上だった?」
「前世での死亡年齢をいうなら、そうですね。ララ様は現役女子高生だったようですから。私は勤務中の二次災害に巻き込まれて鬼籍に入りました」
「キャシーちゃん、キセキって?」
「亡くなった事をいうんです。鬼の籍と書いて鬼籍。閻魔様の死者の名や死亡年月日などを記す帳面ですね。ここに名を書き入れられるのは亡くなった時ですから」
「へぇぇ」
「そうなんだ。知らなかったよ」
「仏教用語のようですから。それに鬼籍なんて若い方の間では使わないでしょうし」
「キャスリーンは何故知ってるんだ?」
「家が仏教徒でしたので。たぶんそこからだと思います。あまり自信はありません。どんどん記憶は薄れてってるし、でもこういうどうでもいいことは覚えているんですよね」
「カミーユもそんな事を言っていたな」
「レオナルド様はこれから?」
「しばらく王都に滞在して必要物品を買ったら、ハーランドって転生者の所に行く。その後は山小屋に帰るつもりだ。今から宿探しだな」
「山小屋?」
「レオナルド様は猟師をなさっておいでです。拠点があるのですよ」
「今日は教会に泊まったら?宿泊費は格安よ?」
「そりゃあありがたいが、良いのか?」
「大丈夫よ。責任者に言っておくわ」
ララ様が走って出ていく。ララ様、学院で習った淑女のマナーはどこに落としてきたの?
「どうしたんだ?キャスリーン。やけにララを目で追っているじゃないか」
「ララ様は学院で習った淑女のマナーをどこに落としてこられたのかと。それよりレオナルド様、私には婚約者がおります。出来ればフェルナー嬢とお呼びくださいませ」
「急に水臭いな。良いだろ?同じ転生者じゃねぇか」
「良くはございません。私にも名誉というものがございますし、レオナルド様は平民という立場でよろしかったですか。それでしたら不敬罪の適用となってしまいます。レオナルド様も危険なのですよ?」
「そうやって俺の事を心配してくれる、優しいキャスリーンだから好きなんだ」
「レオナルド様!!」
「へーへー。フェルナー家って侯爵だっけ?しがない男爵家の三男坊だった俺じゃ、たしかに不敬にあたるな。でも2人だけの時は良いんだろ?」
「良くはございません」
「ツレない事を言うなって」
「レオナルド様、私も貴族の端くれにございます。一転生者としては良いと言ってしまうでしょうが、この世の貴族の娘としては、良いとは申せません」
「まったく貴族ってやつは面倒だな」
「それには同意いたしますけど」
「じゃあ良いじゃないか」
「良くはございません。じゃあ、の意味も分かりかねます」
厄介な方に気に入られちゃった気がする。
121
お気に入りに追加
359
あなたにおすすめの小説
婚約者のいる側近と婚約させられた私は悪の聖女と呼ばれています。
鈴木べにこ
恋愛
幼い頃から一緒に育ってきた婚約者の王子ギルフォードから婚約破棄を言い渡された聖女マリーベル。
突然の出来事に困惑するマリーベルをよそに、王子は自身の代わりに側近である宰相の息子ロイドとマリーベルを王命で強制的に婚約させたと言い出したのであった。
ロイドに愛する婚約者がいるの事を知っていたマリーベルはギルフォードに王命を取り下げるように訴えるが聞いてもらえず・・・。
カクヨム、小説家になろうでも連載中。
※最初の数話はイジメ表現のようなキツイ描写が出てくるので注意。
初投稿です。
勢いで書いてるので誤字脱字や変な表現が多いし、余裕で気付かないの時があるのでお気軽に教えてくださるとありがたいです٩( 'ω' )و
気分転換もかねて、他の作品と同時連載をしています。
【書庫の幽霊王妃は、貴方を愛することができない。】
という作品も同時に書いているので、この作品が気に入りましたら是非読んでみてください。
生まれたときから今日まで無かったことにしてください。
はゆりか
恋愛
産まれた時からこの国の王太子の婚約者でした。
物心がついた頃から毎日自宅での王妃教育。
週に一回王城にいき社交を学び人脈作り。
当たり前のように生活してしていき気づいた時には私は1人だった。
家族からも婚約者である王太子からも愛されていないわけではない。
でも、わたしがいなくてもなんら変わりのない。
家族の中心は姉だから。
決して虐げられているわけではないけどパーティーに着て行くドレスがなくても誰も気づかれないそんな境遇のわたしが本当の愛を知り溺愛されて行くストーリー。
…………
処女作品の為、色々問題があるかとおもいますが、温かく見守っていただけたらとおもいます。
本編完結。
番外編数話続きます。
続編(2章)
『婚約破棄されましたが、婚約解消された隣国王太子に恋しました』連載スタートしました。
そちらもよろしくお願いします。
運命の歯車が壊れるとき
和泉鷹央
恋愛
戦争に行くから、君とは結婚できない。
恋人にそう告げられた時、子爵令嬢ジゼルは運命の歯車が傾いで壊れていく音を、耳にした。
他の投稿サイトでも掲載しております。
女官になるはずだった妃
夜空 筒
恋愛
女官になる。
そう聞いていたはずなのに。
あれよあれよという間に、着飾られた私は自国の皇帝の妃の一人になっていた。
しかし、皇帝のお迎えもなく
「忙しいから、もう後宮に入っていいよ」
そんなノリの言葉を彼の側近から賜って後宮入りした私。
秘書省監のならびに本の虫である父を持つ、そんな私も無類の読書好き。
朝議が始まる早朝に、私は父が働く文徳楼に通っている。
そこで好きな著者の本を借りては、殿舎に籠る毎日。
皇帝のお渡りもないし、既に皇后に一番近い妃もいる。
縁付くには程遠い私が、ある日を境に平穏だった日常を壊される羽目になる。
誰とも褥を共にしない皇帝と、女官になるつもりで入ってきた本の虫妃の話。
更新はまばらですが、完結させたいとは思っています。
多分…
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる