無敵少女の意のままに

CHABO

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【previously on 無敵少女の意のままに】
敵の親玉、ネクロマンサーの正体はアンちゃんの幼馴染、アビゲイルだった。
お互い引けない2人の悲しい戦いが始まる。

「アンちゃんの近接攻撃は化け物級。ヴァーチャーを倒したのがアンちゃんなら遠距離真空破、衝撃破も使えるって話ね」
アビゲイルはドラゴンで飛び回っている、的を絞らせないつもりか。
「あのサイズで結構な速度ですわね、さすが神話級モンスターですわ」
『インスタントッ!!』
アビゲイルが魔法を唱えると、わたし達の周りに昆虫族が現れる。
「うえぇ~~、きしょいんですけど~~!!」
「囲まれた!!」
「2人とも落ち着いて、インスタントは最下級モンスターを即席で作り出す魔法、普通に戦えばまず負けませんわ」
これはおそらく時間稼ぎ...ということは。
『ライフセービング!!』
「ただでさえ強度の高いドラゴンゾンビの防御力を更に上げましたわね」
「エラはわたしの背中にいろ!!」
わたしは周辺の昆虫族への対処で手一杯だ。
「お姉さま、エラは任せましたわよ」
アンちゃんは正面を突破し、ドラゴンゾンビを視界に捉える。
「速度重視の…アン・パンチッ!!」

アンちゃんの高速衝撃破がドラゴンゾンビの足にヒット、だが衝撃を与えただけで外傷はない。
「うっそでしょ~、強化したこの子をグラつかせるなんて~、あの頃より断然火力増してるわね...」
「衝撃破の範囲を拡げるとアビーに被害が...攻略難易度高い戦闘ですわ~」
「アンちゃん、後ろだ!!」
昆虫族の1匹がアンちゃんに突進する。
「てぇい!!」
回し蹴りで敵は粉々になる。
「スキあり~~!!」
ドラゴンゾンビが大きく口を開ける。

『スーパー・ノヴァ!!』

ケルビムが以前使った爆発エクスプロード系の最高魔法だ(36話参照)
「残念、スキは与えるものですわ!!」
アンちゃんは回し蹴りとほぼ同時に正拳突きをドラゴンに放っていた。
衝撃破はドラゴンの口にHIT!!
魔法がかき消され、頭の一部が吹き飛ぶ。
「スッ、スキをついて攻撃することまで読んでいたの?」
「チャンスは最大のリスク、覚えておくといいですわよ。魔力を練り込んでいたのは分かっていましたし」
「アンちゃんかっこいい~~!!」
おい、背中の妖精。
わたしが必死に戦っているのにあっちに声援を送るな!!w

だが気持ちは分かる。
彼女は紛れもない戦闘の天才。
参考になることばかりだ、そして恐怖すら感じる。
果たしてわたしは努力であの位置まで行けるのか??
「ですが、このままでは決定打になりませんわね。もうお口を開くなんて自殺行為、しないでしょうから。というわけでわたしも少し仕込みをさせてもらいますわ」
アンちゃんが足元の小石を拾って握り込んだ。
「知ってますこと?拳に物を握るとパンチ力が増加するんですのよ」
いや、そうらしいけどそんな小石一個でどんだけ変わるのよ?w
「更にいつものパンチに少し回転を加えて...」
腰と手首を捻ってパンチを繰り出す。
すると衝撃破が渦を巻いて舞い上がる。
「キャアッ!!」
アビゲイルがドラゴンから一瞬剥がれたが、すぐにドラゴンが背中で受け止める。
「そう。あの子...やっぱりあの頃から何も変わってないのですわね...」
アンちゃんが意味深な事を呟く。
昆虫族を片付けたわたしはアンちゃんに訊ねる。
「何が変わってないんだ??」
「通常、ネクロマンシーによって操られている屍は操者を助けるなんて真似はしませんわ。でもあのドラゴンは自分の身よりもアビーを優先して助けた」
「どういうことだ?」
「あの子はあの頃から変わっていない、優しい子、ってことですわっ!!」
アンちゃんはさっきよりも更に威力の大きい渦をドラゴンにぶつける。
ドラゴンはほぼ体半分が破壊されたが...。
「しまった!!」
ドラゴンが体を捻ってよけようとしたせいで、アビゲイルが後ろに吹き飛んだ。
多分、手前に落として受け止める予定だったんだろう。
「お姉さま!!アビゲイルを受け止めてくださいまし~~」
「くっそ~~こんな距離、遠すぎる!!」
ダメだ間に合わん!!
このままじゃ地上に叩きつけられる!!
「アビ~~~ッ!!」
するとドラゴンにどこからか飛んできた水がかかる。
体半分になりながらも持ち直したドラゴンがなんとか片足でアビゲイルを受け止めた。
そのまま地面に落ちたが、衝撃は殺され、どうやら無事のようだ。
「はぁ、はぁ、はぁ。大丈夫か!?」
「うっ、うぇ~~ん、死んだかと思った~~!!」
アビゲイルは戦意喪失、死の恐怖で大泣きしている。
ふとアンちゃんを見ると、腰が抜けたかのようにへたり込んでいた。

あんな姿初めて見る、動画に残したいくらいだw
「ありがとうエラ、あなたの仕業なのでしょう?」
「気休め程度の治癒水をドラゴンに撃っただけよ。やらなくても同じだったかもね~」
アンちゃんがゆっくりとアビゲイルに近寄る。
「アビー、あなたはあの頃と変わらず優しいまま。ドラゴンゾンビにも愛情をもって接していたのでしょう?」
「そ、そんな事...」
ドラゴンゾンビは元に戻りながらも、もうこちらに敵意は向けていない様子。
主を救ってくれた事をまるで感謝しているかのようだった。
「ネクロマンサー失格ですわ。その優しさは非情にならないといけない戦闘において致命的ですわよ」
「...負けたわ。アンちゃん強すぎるんだもん...。」
アンちゃんが手を差し出し、アビーを起こす。
「今の魔王軍はむしろ君みたいな人材を歓迎する組織になっていると思うよ」
その後アビゲイルはエラに地上に送ってもらい、魔王城までアンちゃん付き添いで送られた。
ドラゴンゾンビ除く、全ての屍の術が解かれ、文字通り屍に戻った。
エラの要望で、ドラゴンゾンビはこのロストウッズを守護するポストを頼まれ、アビーもこれを了承。
「また会いに来るね、ゾンちゃん」
アビーから離れても元々は神話級の実力を持っているため、戦力としては十分だろう。
砦にいた天使族も降伏、彼らも地上に戻された。

「泉の毒も消えたし、集落に戻りましょう」
「あぁ、マァナ達はうまくやったかな?」
「エメリーちゃんもいるし、大丈夫でしょう」
むしろそれが心配なんだがw

集落に戻り、目にした光景は...。
「かぁ~~、かぁ~~...」
マァナ、エメリー、族長の爆睡しているマヌケな姿だったw
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