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04.クリストフ様に会いたいです。
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夜道で話すのもなんだからと、ルティアが家に招待してくれた。リカルドは嫌そうな顔をしていたが。
「つまり、スヴィさんはクリストフさんが好きで、クリストフさんとデートがしたい、と?」
「はい! そしてできれば結婚したいです!」
「話が飛躍しすぎだ」
リカルドは呆れながら眼鏡を掛け直している。好きだと自覚したら、結婚を夢見てしまうのは普通じゃないだろうかとスヴィは首を傾げた。
「そういうわけで、リカルド班長、ここはひとつよろしくお願いします」
「なにがひとつよろしくだ。そんなもの、聞く義理などないな」
「そんなぁーー、お願いしますよ班長ぉお!」
「私はもう、スヴィの班長ではない」
「いけずっ」
「なんとでも言えばいいさ」
「まぁまぁ」
ルティアが間に入って諫めてくれる。
彼女も太陽組では超がつくほどの人気女優で、間近に明るいところで見ると、びっくりするほど可愛らしい。
「リカルド班長、こんな若くて愛らしい奥様を、どう射止めたんですか! 犯罪ですか!」
「帰れ」
「ルティアさん、知ってます?! 班長は舞台の上ではあんなですけど、勤務中は無表情の鬼ですよ!! 愛想なんてひとっつもない、なにを考えているかもわからない能面で無慈悲な冷酷男ですよ!!」
「か え れ」
「ふふ、そこも素敵なんです」
「マジですか……」
この男を素敵という人がいるとは、思っていなかった。
世の中、いろんな好みの人がいるものだ。
「蓼食う虫も好き好き!」
「誰が蓼で、誰が虫だ。言ってみろ」
「ぴえ、冗談ですーっ」
ずももももっ! と音が出そうなほどの黒いオーラを出されてスヴィは震え上がった。リカルドの瞳が、光る眼鏡に遮られて見えないのが怖い。
スヴィは逃げるようにルティアの方に視線をこそっと移動させた。
「ルティアさんは、リカルド班長のどこが好きで結婚したんですか?」
「ふふ、やっぱり最初は色気のある悪役をやっていたところですね。私もスヴィさんと同じで、最初はただのいちファンだったんですよ」
「本当ですか?! どうやって結婚までこぎつけたんですか! そこんとこ詳しく!」
「いい加減に帰れ」
ルティアに詰めよろうとするとリカルドに引き剥がされ、ぽーいと床に転がされる。
「うう、班長だけ幸せになっていてずるい……」
「はぁ。面倒なことをいう元部下だ」
「いいじゃないですか、協力してあげましょう?」
顔にはしっかり嫌だと書いているが、可愛い奥方に頼まれたせいか、リカルドはそれを声に出すことはしなかった。
「仕方ない。お膳立てはしてやるが、あとは自分でどうにかするんだ。いいな」
まさかのお膳立て発言に、スヴィは飛び上がった。
「ありがとうございます、リカルド班長ー!!」
「言っておくがこれっきりだ。ファンを役者に会わせていたらキリがない」
こくこくとスヴィは頷いた。
このやり方は邪道だろう。リカルドの言う通り、個人的に役者と会いたいファンは、山ほどいるのだろうから。
「それとスヴィ。一度だけ会わせてやるから、もう出待ちはするな。これが守れないようなら、私はスヴィにクリストフを会わせられん」
「……わかりました」
一瞬悩んだが、隊のみんなに迷惑をかける可能性が少しでもあるなら、出待ちはやめておこうと思えた。つまり、チャンスは会わせてくれる一度だけ。
たった一度きりで、スヴィは勝負を掛けなければいけなくなってしまったのだった。
「つまり、スヴィさんはクリストフさんが好きで、クリストフさんとデートがしたい、と?」
「はい! そしてできれば結婚したいです!」
「話が飛躍しすぎだ」
リカルドは呆れながら眼鏡を掛け直している。好きだと自覚したら、結婚を夢見てしまうのは普通じゃないだろうかとスヴィは首を傾げた。
「そういうわけで、リカルド班長、ここはひとつよろしくお願いします」
「なにがひとつよろしくだ。そんなもの、聞く義理などないな」
「そんなぁーー、お願いしますよ班長ぉお!」
「私はもう、スヴィの班長ではない」
「いけずっ」
「なんとでも言えばいいさ」
「まぁまぁ」
ルティアが間に入って諫めてくれる。
彼女も太陽組では超がつくほどの人気女優で、間近に明るいところで見ると、びっくりするほど可愛らしい。
「リカルド班長、こんな若くて愛らしい奥様を、どう射止めたんですか! 犯罪ですか!」
「帰れ」
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「か え れ」
「ふふ、そこも素敵なんです」
「マジですか……」
この男を素敵という人がいるとは、思っていなかった。
世の中、いろんな好みの人がいるものだ。
「蓼食う虫も好き好き!」
「誰が蓼で、誰が虫だ。言ってみろ」
「ぴえ、冗談ですーっ」
ずももももっ! と音が出そうなほどの黒いオーラを出されてスヴィは震え上がった。リカルドの瞳が、光る眼鏡に遮られて見えないのが怖い。
スヴィは逃げるようにルティアの方に視線をこそっと移動させた。
「ルティアさんは、リカルド班長のどこが好きで結婚したんですか?」
「ふふ、やっぱり最初は色気のある悪役をやっていたところですね。私もスヴィさんと同じで、最初はただのいちファンだったんですよ」
「本当ですか?! どうやって結婚までこぎつけたんですか! そこんとこ詳しく!」
「いい加減に帰れ」
ルティアに詰めよろうとするとリカルドに引き剥がされ、ぽーいと床に転がされる。
「うう、班長だけ幸せになっていてずるい……」
「はぁ。面倒なことをいう元部下だ」
「いいじゃないですか、協力してあげましょう?」
顔にはしっかり嫌だと書いているが、可愛い奥方に頼まれたせいか、リカルドはそれを声に出すことはしなかった。
「仕方ない。お膳立てはしてやるが、あとは自分でどうにかするんだ。いいな」
まさかのお膳立て発言に、スヴィは飛び上がった。
「ありがとうございます、リカルド班長ー!!」
「言っておくがこれっきりだ。ファンを役者に会わせていたらキリがない」
こくこくとスヴィは頷いた。
このやり方は邪道だろう。リカルドの言う通り、個人的に役者と会いたいファンは、山ほどいるのだろうから。
「それとスヴィ。一度だけ会わせてやるから、もう出待ちはするな。これが守れないようなら、私はスヴィにクリストフを会わせられん」
「……わかりました」
一瞬悩んだが、隊のみんなに迷惑をかける可能性が少しでもあるなら、出待ちはやめておこうと思えた。つまり、チャンスは会わせてくれる一度だけ。
たった一度きりで、スヴィは勝負を掛けなければいけなくなってしまったのだった。
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