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幌馬車が帰ってくる前になんとか再生を終えたメアリは、喝采上げて飛び出してきたナターリヤに一体どんな手品を使ったのか、と質問された。しかし馬鹿正直に言うわけにもいかないので、ナターリヤには「魔法を少々」とだけ言っておいた。実際、魔法で動いている人形なので嘘ではない。
「なるほどな、王子様のメイドやるからにゃ、その程度の芸当は必須ってことか。なんだよラクル、お前意外と見る目あんだなぁ! もっと噂通りのチャランポランの馬鹿だと思ってたんだが、人は見た目によらねぇもんだなぁ!」
「お前マジでぶん殴るぞ?」
悪意ゼロの無邪気な罵倒に、ラクルはぶん殴らなかった自分を褒めたかった。
ともあれ、再び馬車は発進し、街道を少し急ぎ足で進んでいたのだが。
「予定通りいけば、今日も街道沿いの宿に着くが……この調子だと宿にも何かされるだろうな。夜中に襲撃されるのはゴメンだ」
馬車の中、足を組んで不機嫌そうにしているラクルへ、リリネはビクビクしながら尋ねる。
「それじゃあ、どうしますのですか?」
「予定を変更するしかねえな。主要街道を逸れて、少し遠回りをしながら連中を撒くしかねぇ。メアリ」
「はい」
小さな窓から、メアリはずいっと地図を差し出す。
それを見もせずに受け取り、ラクルは地図上のルートをなぞった。
「馬車も通れる小道を行くしかねえ。連中も、頭がお花畑な聖者様に、そんな知恵があるとは思っちゃいねえだろう。大都市くらいまで行けば大丈夫だろうが、小村しかないこの先の宿には寄らない方が賢明だろう。今日は野宿だな」
「の、野宿ですか。まあ慣れてはいますけど……」
リリネの言葉に、サリハは横で視線を彷徨わせた。慣れといっても、焚き火の周囲の地べたで寝転ぶような、そういうものではない。大勢の騎士に囲まれて、特に不自由のないキャンプのような野宿だ。
それを理解しているのか、ラクルはふんぞり返って宣う。
「じゃあ、お前は今日はこの馬車を使うな。ここは俺が使う」
「え、ええっ!?」
「俺は旅なんて慣れてないし野宿なんてしたこともない。だから俺に譲れ。異論は?」
「ずみばせん私が生意気いいましたぁ!! 寝台を使わせてくださいぃぃ!!」
「はっ! 最初からそう言やいいんだよ」
もはや涙目である。
完全に上下関係が出来上がっている現状に、サリハはやはり遠い目をして、ため息をついた。
・・・
その後、馬車はつつがなく街道を邁進し、途中で主要街道を逸れ、石畳の道から地面を均しただけの畦道を進み続けた。こんな道でも何処かの村へと繋がっているらしく、馬車らしき轍の跡が至る所で散見された。注意を促すためだろうか、別の馬車が置いたらしき倒木の向こうには、いかにも脱輪しそうな泥溜まりがあり、それら先人の軌跡のおかげで馬車はほとんど止まることはなかった。
そして夕刻の直前、まだ日は昇っているのだが、野営の準備もあるということで早々にその日の野営地を決めて、一行は馬車を降りた。
馬の世話は今まで通りサムと、意外にも馬の世話をしたことがあるらしいギンが行う。よく調練されている馬達は、日中の酷使に関しては何の不満もないようで、ただ無心にもぞもぞと草を食べ始めた。走らない日があると調子が悪くなるくらいなので、彼らにとって今日はとても有意義な日ではあっただろう。
ニコライとサフィールはテントを設営してから、周囲の枯れ木から薪に使えそうな枝をかき集め、火を起こすことにした。ちなみに火はゴンちゃんが居るので大きく短縮された。火を噴くトカゲという存在に関して、部外者たちは何とも言えない目で見ていたのだが、結局はメアリの「これは新種のコモドオオトカゲです」と言う強弁に頷かざるを得なかったようだ。しかしナターリヤだけは「デカくなったら殺り合ってみてぇなぁ」と言う、かなりズレたことを呟いていたが。
一方、メアリは周辺の哨戒、及び敵が近づいた場合の罠を仕掛けて周った。これに関してはナターリヤの方が知識が豊富なようで、彼女主導の元に周辺の茂みは罠だらけになった。ナターリヤは冒険者まがいのことも行っているので、この手の野営知識に詳しい。
残ったヒュームとギムトは相変わらず聖者リリネの護衛である。それが彼らの仕事なのだから当然だが。
そして護衛されている当の聖者だが、何時間もの王子さまのスバルタ授業によって完全に魂が抜けていた。口から何かがはみ出ていそうな顔をしているが、隣でふんぞり返っている王子様は素知らぬ顔。いつにも増して堂々とした姿である。
……そして野営地が完成し、メアリ、サフィール、サリハの三者によって夕食が振る舞われた。とはいっても、屋敷の食事に比べればかなり質素ではある。保存食である水気のない硬いビスケットに、塩漬け肉を煮込んだシチュー。肉は魔物を狩れば手に入るのだが、あいにくな事に本日は程よい獲物が見つからなかったのだ。森の中の獲物は主にゴブリンか植物型の魔物なのだが、今日はスライム日和のようであった。
メアリ的にはおそらく不味くはない料理なのだが、献立が質素なのでラクルが何か文句でも言うのではないかと戦々恐々としていたのだが、当の本人は黙々と食べるだけで終わった。それに少しだけ小首を傾げるが、わがままを言うこともなく馬車に引っ込んだ主人を見て、人知れずで一人で笑う。
何とも、人は成長するものだ。
・・・
当然だが、寝床を使用する者は既に決まっている。メアリとしては質のいい寝床をラクルに使ってもらいたかったのだが、当のラクルがリリネへ馬車の寝台を譲ったので、彼は大きな幌馬車の方を使ってもらうことになった。他の者は基本、外の地べたに張ったテントで寝てもらうのだ。
リリネたちが乗っている馬車はなかなか特注品のようであり、座席を動かして寝台することができる。ただし一人用だ。旅の途中でふかふかのベッドで眠ることができるのは、かなりの贅沢と言えるだろう。
一方、幌馬車は多くの必需品などの荷物が溢れているので、数名も寝ることはできない。と言うか、主人と一緒に寝ることは使用人の矜持が許さない。主人が雑魚寝などメアリのメイド道に反するので、旅の途中で各々が使っていた座布団のようなクッションを一つに集めて、その上にさらに薄いマットを乗せて大きなシーツで全体を包み込めば、それっぽいマットレスの完成だ。まあ屋敷のベットに比べればちょっと寝心地が悪いかもしれないが、そこは我慢してもらおう、とベッドメイクするメアリは思った。
主人の就寝を見届けたので、メアリは夜通し見張りをすることにした。体が人形なので睡眠を取る必要がないのだが、部外者はそれで大丈夫なのかと何度も繰り返し聞いてきた。
「ご安心を、私は夜行性ですので夜の方が元気なのです。それに、睡眠は明日の移動中に取りますので」
という言葉で、他の者たちは納得したようであるが、ナターリヤあたりには結構、怪訝に思われたようである。この旅の中でいつまで誤魔化せるのかと、メアリは少しだけヒヤヒヤした。
そんなわけで、焚き火を囲んで各々が歓談などしていたのだが、それも夜が深まるにつれて徐々に静かになっていき、サムが最後に挨拶をしてから、静寂に包まれた。
周囲に設営されたテントからは、人間たちが寝ている気配が漂ってくる。
「なんだかちょっとドキドキしますね。いつもと違う夜っていうのも」
メアリと同じく睡眠が必要でないサフィールは、夜の静寂の中で周囲を見回している。
もうすっかり冬場なので、近場に焚き火がないと命に関わるだろう。なので、メアリはちょくちょくと薪を探しに場を離れ、巨大な枯れ木を担いで来てはサフィールの目を丸くさせた。
虫の音色も聞こえない中では、しんと静まった不思議な空気だけが残っている。
動物の気配も薄い夜に、メアリは木をバキバキとひっぺがしながら呟く。
「こんな時期に巡礼に出ろ、などと言う教会もなかなか性格悪いですよね。暗に凍死して死ねって言ってるようなものじゃありませんか」
「いやー、さすがにそういうわけではないんじゃ……」
とはいえ、今朝のスライムのこともある。サフィールへスライムを引き寄せる特殊な薬液を投げつけた人間が、教会の手先である可能性はとても高い。なのでサフィールは断定を避けた。
潅木を火に突っ込んだメアリは、今度は素手で焚き火に手を突っ込んで、大きめの焼き石を取り出す。アツアツに熱したそれをキッチリと布で何重にも包み込めば、即席カイロの出来上がりだ。
燃えた服が再生するのを横目に、メアリはカイロを小さなテントの中で寝ている各人の毛布に突っ込んでいる。凍死予防だろう。
それをサフィールも手伝いながら、ひそひそ話の談話は続く。
「それよりも、よくご主人さまは文句言いませんでしたね。前までだったら今頃、もっとわがままを言っていたような気がしますが」
「色々と考えてなさるのですよ、あの方も」
「ああ、つまり成長してるって事ですよね」
「成長期ですからねぇ」
ラクルは十七歳なのだが、成長期らしく日に日に背が高くなっているような気がした。それはツバキも同じで、年頃の少女らしく少しだけ印象が大人びた気がする。
しかしサフィールには成長という概念はない。それに少しだけ寂しい思いをする。
「成長かぁ……あたしはどうなのかなぁ。見た目は成長しないから、なんだか曖昧な感じですよね」
「……そうですね、思えば私もここへ来てからそこそこ経ちますが、成長をしているという実感は薄いです」
サフィールから見ればメアリは最初から完璧なメイドである。しかしそこに至るまで、彼女なりに色々な努力をしてきたようではある。
なのでサフィールは彼女なりに拙い考えで言葉を紡ぐ。
「でも、ご主人様が変わりつつあるのって、絶対にメアリさんの影響だと思うんですよね」
「……そう思いますか?」
「むしろ、それじゃなかったら一体何が原因なのかわかりませんよ。それくらいご主人様にとってメアリさんはとっても重要な立ち位置だと思います」
これはサフィールの勘でもある、つまりは確信であった。
「ご主人様って、メアリさんが傍にいる時だけすごく安心してますよね。ほら、以前メアリさんと喧嘩してた時なんかとーっても不機嫌で、私本当に困っちゃったんですから」
「ああ……あの時はすみませんね。いろいろあったもので」
「いいですよ、そういう時の助け合いは大事ですからね。……それでですね、ご主人様って私との距離感もちょっと遠いんですよね。人形だからかなって思ったんですけど、でもメアリさんとはとても近い感じですし」
「……そうなんですか?」
メアリ自身は分からないことだったらしく、とても不思議そうに問い返された。
それにサフィールははっきりと頷く。
「ご主人様、朝起こしに行く時は必ず目を覚ましてるんですよね。他人の気配に敏感みたいで、誰かが入ってくると寝ててもすぐに起きちゃうんだって言ってました。だから、目覚まし代わりに私に起こさせてたみたいですけど」
「……ああ、そういえば」
メアリは思い出す。昔はサフィールの言う通りだったのだが、最近になってラクルはメアリが入っても、構わず寝続けていることが多くなった気がする。当初は珍しいなと思っていたのだが、それも徐々に日常風景となって不思議に思わなくなっていた。
だからそう言われて、メアリは戸惑いながら天を仰ぐ。
「ザリナ様にも似たようなことを言われましたね。ラクル様は私に対して距離感が近いと」
「やっぱりそれって愛ですよ、愛」
「愛」
「私が思うに、ご主人様はきっとメアリさんのことが大好きになったんですよ! だからメアリさんだけは特別なんじゃないかなって思います! ほら、スライムの時だって血相変えてましたし、絶対に間違いなし!」
変なスイッチが入ったらしい。サフィールはサファイアの瞳をキラキラさせながら、両手を組んで夢見る乙女のような顔をしていた。
「小説みたいですよねぇ、不当な扱いをされている素直じゃない王子さまに、それに尽くすメイド。対等ではないけれど徐々に詰まっていく心の距離、そして二人は大きな試練に立ち向かい、互いに互いを思い合うようになって……きゃ~!」
「あの、その当人の目の前で願望を言われても……それに私にとってラクル様は守るべき方であり、敬愛する対象ではありますが、男女間のそれではないのですが」
「ええ~」
「残念そうにしないでください」
他人事なら女子トークも大歓迎なのだが、それが自分の事となるとうんざりしてしまうものだ。
それでもサフィールは、未練がましく唇を尖らせながら言い募ってくる。
「でもでも、メアリさんはご主人様のこと好きなんですよね」
「ですから敬愛だと」
「本当ですかぁ? あたしから見ると、なんていうか……」
そこでサフィールは少しだけ口ごもり、あーとかうーとか呟いてから、考え考え言葉を紡ぐ。
「メアリさんって何て言うか……二重な感じがします」
「二重? とは?」
「だからぁ~……ええっと、言葉にしにくいんですけど、時々メアリさんって別人みたいになりますよね。ご主人様の昔のことを話す時とか、特に。さっきもそうでしたけど、一瞬だけ変な感じになります」
「……そう、なんですか?」
「そうなんですよ? 気づいてなかったんですか」
「……え、ええ」
完全に予想外の言葉だったので、メアリは言葉を無くしている。その合間を縫うように、サフィールは指を立てて自分が感じたことを教えた。
「確かにメアリさんがご主人様の話をする時、何て言うか、母性愛みたいなものを感じるんですよね。我が子を見る眼差しって言うんですかね。まるでお母さんみたいな。けれど、それっていつものメアリさんとちょっと違うんですよね。別人みたいな顔をするっていうか……やっぱり言葉にしにくいんですけど、あたしはそういう印象を受けました」
ずっとサフィールが引っかかっていたこと、それはメアリの二面性だと言う。
「だけど、少し前からメアリさんって、ちょっとご主人様への視線が変わりましたよね。なんだか苦しそうって言うか、あえて言葉を濁してる感じがして」
「……心当たりは」
ない、とは言えなかった。以前、ラクルと喧嘩をした際に、メアリは自分の立場を弁えることにした。その時にねじ伏せた心は、敬愛以外の何かが含まれていたのは確かだった。
「あたし、思ったんですよね。ご主人様が人形を作るとき、誰かの魂の欠片を入れるって。じゃあそれって、ひょっとしたら複数の人間が含まれているかもしれませんよね」
その言葉に、メアリは無いはずの心臓がドキッと高鳴ったのを感じた。
自分の中に、別の人間がいるかもしれない。
それは確かに困惑であり、同時にある種の期待を、抱いてしまった。
「……では私は、以前の人形だった時とは違う……?」
「かもしれませんねって話です。とはいっても、私は以前のメアリさんを知らないんですけども」
「…………、確かに少し、心当たりがあります」
ケフが言っていた、メアリが現れると同時に消えたと言う、女性の幽霊。
それがもしも彼女であるというのならば、今のメアリの中には、彼女の欠片も含まれているかもしれない。
……ならば、その欠片がある以上、メアリは自身の……異性としての好意を肯定することはできない。
「……もしもあの人が、私の中にいるのであれば、あの夜の約束を、あの人が守り続けていることになりますね」
彼を守ると言う強い意志。それを継ぐべく、メアリは彼の人形となった。人形としてラクルを見守り続けていたメアリにとっても、二年の間に彼女は既にラクルと同じくらい重要な存在になってしまっている。
その彼女の誓いを無下にする意思は、メアリには無い。否、できるわけがない。
「私は、愛というものを知りませんでした。もしこれが愛という感情であるのならば、これ以上になく残酷な代物ですね」
「メアリさん……」
「私が彼女を背負っている以上、私は彼女の意思を尊重したい。彼女は死んでまで、坊っちゃんを守ろうとした。一方、私は何もできなかった、何も……ただ、燃やされるだけの無力なお人形。あの人に報いることなど何一つなく、守る事もできなかった。……その私にチャンスを与えてくれた坊っちゃんを守るため、そして今度こそ彼女の意思に報いるためにも……今は、私自身の感情を伝えるわけにはいきません」
「でも、メアリさん……」
頑なに、とても苦しそうに呟くメアリへ、サフィールは何も言うことが出来なかった。
これはきっと、呪いだ。
死んだ人間が残した、未練という呪い。
不幸にもそれを受け取った人形は、失った人の代わりに、その役割を演じているのだ。
それら全てを察しながら、されどサフィールは掛ける言葉を何も持たなかった。メアリの葛藤も、その心境も、何一つとして想像ができなかったからだ。
サフィールは黙し続けながら、パチパチと爆ぜる木片を、静かに見つめ続けていた……。
「なるほどな、王子様のメイドやるからにゃ、その程度の芸当は必須ってことか。なんだよラクル、お前意外と見る目あんだなぁ! もっと噂通りのチャランポランの馬鹿だと思ってたんだが、人は見た目によらねぇもんだなぁ!」
「お前マジでぶん殴るぞ?」
悪意ゼロの無邪気な罵倒に、ラクルはぶん殴らなかった自分を褒めたかった。
ともあれ、再び馬車は発進し、街道を少し急ぎ足で進んでいたのだが。
「予定通りいけば、今日も街道沿いの宿に着くが……この調子だと宿にも何かされるだろうな。夜中に襲撃されるのはゴメンだ」
馬車の中、足を組んで不機嫌そうにしているラクルへ、リリネはビクビクしながら尋ねる。
「それじゃあ、どうしますのですか?」
「予定を変更するしかねえな。主要街道を逸れて、少し遠回りをしながら連中を撒くしかねぇ。メアリ」
「はい」
小さな窓から、メアリはずいっと地図を差し出す。
それを見もせずに受け取り、ラクルは地図上のルートをなぞった。
「馬車も通れる小道を行くしかねえ。連中も、頭がお花畑な聖者様に、そんな知恵があるとは思っちゃいねえだろう。大都市くらいまで行けば大丈夫だろうが、小村しかないこの先の宿には寄らない方が賢明だろう。今日は野宿だな」
「の、野宿ですか。まあ慣れてはいますけど……」
リリネの言葉に、サリハは横で視線を彷徨わせた。慣れといっても、焚き火の周囲の地べたで寝転ぶような、そういうものではない。大勢の騎士に囲まれて、特に不自由のないキャンプのような野宿だ。
それを理解しているのか、ラクルはふんぞり返って宣う。
「じゃあ、お前は今日はこの馬車を使うな。ここは俺が使う」
「え、ええっ!?」
「俺は旅なんて慣れてないし野宿なんてしたこともない。だから俺に譲れ。異論は?」
「ずみばせん私が生意気いいましたぁ!! 寝台を使わせてくださいぃぃ!!」
「はっ! 最初からそう言やいいんだよ」
もはや涙目である。
完全に上下関係が出来上がっている現状に、サリハはやはり遠い目をして、ため息をついた。
・・・
その後、馬車はつつがなく街道を邁進し、途中で主要街道を逸れ、石畳の道から地面を均しただけの畦道を進み続けた。こんな道でも何処かの村へと繋がっているらしく、馬車らしき轍の跡が至る所で散見された。注意を促すためだろうか、別の馬車が置いたらしき倒木の向こうには、いかにも脱輪しそうな泥溜まりがあり、それら先人の軌跡のおかげで馬車はほとんど止まることはなかった。
そして夕刻の直前、まだ日は昇っているのだが、野営の準備もあるということで早々にその日の野営地を決めて、一行は馬車を降りた。
馬の世話は今まで通りサムと、意外にも馬の世話をしたことがあるらしいギンが行う。よく調練されている馬達は、日中の酷使に関しては何の不満もないようで、ただ無心にもぞもぞと草を食べ始めた。走らない日があると調子が悪くなるくらいなので、彼らにとって今日はとても有意義な日ではあっただろう。
ニコライとサフィールはテントを設営してから、周囲の枯れ木から薪に使えそうな枝をかき集め、火を起こすことにした。ちなみに火はゴンちゃんが居るので大きく短縮された。火を噴くトカゲという存在に関して、部外者たちは何とも言えない目で見ていたのだが、結局はメアリの「これは新種のコモドオオトカゲです」と言う強弁に頷かざるを得なかったようだ。しかしナターリヤだけは「デカくなったら殺り合ってみてぇなぁ」と言う、かなりズレたことを呟いていたが。
一方、メアリは周辺の哨戒、及び敵が近づいた場合の罠を仕掛けて周った。これに関してはナターリヤの方が知識が豊富なようで、彼女主導の元に周辺の茂みは罠だらけになった。ナターリヤは冒険者まがいのことも行っているので、この手の野営知識に詳しい。
残ったヒュームとギムトは相変わらず聖者リリネの護衛である。それが彼らの仕事なのだから当然だが。
そして護衛されている当の聖者だが、何時間もの王子さまのスバルタ授業によって完全に魂が抜けていた。口から何かがはみ出ていそうな顔をしているが、隣でふんぞり返っている王子様は素知らぬ顔。いつにも増して堂々とした姿である。
……そして野営地が完成し、メアリ、サフィール、サリハの三者によって夕食が振る舞われた。とはいっても、屋敷の食事に比べればかなり質素ではある。保存食である水気のない硬いビスケットに、塩漬け肉を煮込んだシチュー。肉は魔物を狩れば手に入るのだが、あいにくな事に本日は程よい獲物が見つからなかったのだ。森の中の獲物は主にゴブリンか植物型の魔物なのだが、今日はスライム日和のようであった。
メアリ的にはおそらく不味くはない料理なのだが、献立が質素なのでラクルが何か文句でも言うのではないかと戦々恐々としていたのだが、当の本人は黙々と食べるだけで終わった。それに少しだけ小首を傾げるが、わがままを言うこともなく馬車に引っ込んだ主人を見て、人知れずで一人で笑う。
何とも、人は成長するものだ。
・・・
当然だが、寝床を使用する者は既に決まっている。メアリとしては質のいい寝床をラクルに使ってもらいたかったのだが、当のラクルがリリネへ馬車の寝台を譲ったので、彼は大きな幌馬車の方を使ってもらうことになった。他の者は基本、外の地べたに張ったテントで寝てもらうのだ。
リリネたちが乗っている馬車はなかなか特注品のようであり、座席を動かして寝台することができる。ただし一人用だ。旅の途中でふかふかのベッドで眠ることができるのは、かなりの贅沢と言えるだろう。
一方、幌馬車は多くの必需品などの荷物が溢れているので、数名も寝ることはできない。と言うか、主人と一緒に寝ることは使用人の矜持が許さない。主人が雑魚寝などメアリのメイド道に反するので、旅の途中で各々が使っていた座布団のようなクッションを一つに集めて、その上にさらに薄いマットを乗せて大きなシーツで全体を包み込めば、それっぽいマットレスの完成だ。まあ屋敷のベットに比べればちょっと寝心地が悪いかもしれないが、そこは我慢してもらおう、とベッドメイクするメアリは思った。
主人の就寝を見届けたので、メアリは夜通し見張りをすることにした。体が人形なので睡眠を取る必要がないのだが、部外者はそれで大丈夫なのかと何度も繰り返し聞いてきた。
「ご安心を、私は夜行性ですので夜の方が元気なのです。それに、睡眠は明日の移動中に取りますので」
という言葉で、他の者たちは納得したようであるが、ナターリヤあたりには結構、怪訝に思われたようである。この旅の中でいつまで誤魔化せるのかと、メアリは少しだけヒヤヒヤした。
そんなわけで、焚き火を囲んで各々が歓談などしていたのだが、それも夜が深まるにつれて徐々に静かになっていき、サムが最後に挨拶をしてから、静寂に包まれた。
周囲に設営されたテントからは、人間たちが寝ている気配が漂ってくる。
「なんだかちょっとドキドキしますね。いつもと違う夜っていうのも」
メアリと同じく睡眠が必要でないサフィールは、夜の静寂の中で周囲を見回している。
もうすっかり冬場なので、近場に焚き火がないと命に関わるだろう。なので、メアリはちょくちょくと薪を探しに場を離れ、巨大な枯れ木を担いで来てはサフィールの目を丸くさせた。
虫の音色も聞こえない中では、しんと静まった不思議な空気だけが残っている。
動物の気配も薄い夜に、メアリは木をバキバキとひっぺがしながら呟く。
「こんな時期に巡礼に出ろ、などと言う教会もなかなか性格悪いですよね。暗に凍死して死ねって言ってるようなものじゃありませんか」
「いやー、さすがにそういうわけではないんじゃ……」
とはいえ、今朝のスライムのこともある。サフィールへスライムを引き寄せる特殊な薬液を投げつけた人間が、教会の手先である可能性はとても高い。なのでサフィールは断定を避けた。
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それをサフィールも手伝いながら、ひそひそ話の談話は続く。
「それよりも、よくご主人さまは文句言いませんでしたね。前までだったら今頃、もっとわがままを言っていたような気がしますが」
「色々と考えてなさるのですよ、あの方も」
「ああ、つまり成長してるって事ですよね」
「成長期ですからねぇ」
ラクルは十七歳なのだが、成長期らしく日に日に背が高くなっているような気がした。それはツバキも同じで、年頃の少女らしく少しだけ印象が大人びた気がする。
しかしサフィールには成長という概念はない。それに少しだけ寂しい思いをする。
「成長かぁ……あたしはどうなのかなぁ。見た目は成長しないから、なんだか曖昧な感じですよね」
「……そうですね、思えば私もここへ来てからそこそこ経ちますが、成長をしているという実感は薄いです」
サフィールから見ればメアリは最初から完璧なメイドである。しかしそこに至るまで、彼女なりに色々な努力をしてきたようではある。
なのでサフィールは彼女なりに拙い考えで言葉を紡ぐ。
「でも、ご主人様が変わりつつあるのって、絶対にメアリさんの影響だと思うんですよね」
「……そう思いますか?」
「むしろ、それじゃなかったら一体何が原因なのかわかりませんよ。それくらいご主人様にとってメアリさんはとっても重要な立ち位置だと思います」
これはサフィールの勘でもある、つまりは確信であった。
「ご主人様って、メアリさんが傍にいる時だけすごく安心してますよね。ほら、以前メアリさんと喧嘩してた時なんかとーっても不機嫌で、私本当に困っちゃったんですから」
「ああ……あの時はすみませんね。いろいろあったもので」
「いいですよ、そういう時の助け合いは大事ですからね。……それでですね、ご主人様って私との距離感もちょっと遠いんですよね。人形だからかなって思ったんですけど、でもメアリさんとはとても近い感じですし」
「……そうなんですか?」
メアリ自身は分からないことだったらしく、とても不思議そうに問い返された。
それにサフィールははっきりと頷く。
「ご主人様、朝起こしに行く時は必ず目を覚ましてるんですよね。他人の気配に敏感みたいで、誰かが入ってくると寝ててもすぐに起きちゃうんだって言ってました。だから、目覚まし代わりに私に起こさせてたみたいですけど」
「……ああ、そういえば」
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「やっぱりそれって愛ですよ、愛」
「愛」
「私が思うに、ご主人様はきっとメアリさんのことが大好きになったんですよ! だからメアリさんだけは特別なんじゃないかなって思います! ほら、スライムの時だって血相変えてましたし、絶対に間違いなし!」
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「あの、その当人の目の前で願望を言われても……それに私にとってラクル様は守るべき方であり、敬愛する対象ではありますが、男女間のそれではないのですが」
「ええ~」
「残念そうにしないでください」
他人事なら女子トークも大歓迎なのだが、それが自分の事となるとうんざりしてしまうものだ。
それでもサフィールは、未練がましく唇を尖らせながら言い募ってくる。
「でもでも、メアリさんはご主人様のこと好きなんですよね」
「ですから敬愛だと」
「本当ですかぁ? あたしから見ると、なんていうか……」
そこでサフィールは少しだけ口ごもり、あーとかうーとか呟いてから、考え考え言葉を紡ぐ。
「メアリさんって何て言うか……二重な感じがします」
「二重? とは?」
「だからぁ~……ええっと、言葉にしにくいんですけど、時々メアリさんって別人みたいになりますよね。ご主人様の昔のことを話す時とか、特に。さっきもそうでしたけど、一瞬だけ変な感じになります」
「……そう、なんですか?」
「そうなんですよ? 気づいてなかったんですか」
「……え、ええ」
完全に予想外の言葉だったので、メアリは言葉を無くしている。その合間を縫うように、サフィールは指を立てて自分が感じたことを教えた。
「確かにメアリさんがご主人様の話をする時、何て言うか、母性愛みたいなものを感じるんですよね。我が子を見る眼差しって言うんですかね。まるでお母さんみたいな。けれど、それっていつものメアリさんとちょっと違うんですよね。別人みたいな顔をするっていうか……やっぱり言葉にしにくいんですけど、あたしはそういう印象を受けました」
ずっとサフィールが引っかかっていたこと、それはメアリの二面性だと言う。
「だけど、少し前からメアリさんって、ちょっとご主人様への視線が変わりましたよね。なんだか苦しそうって言うか、あえて言葉を濁してる感じがして」
「……心当たりは」
ない、とは言えなかった。以前、ラクルと喧嘩をした際に、メアリは自分の立場を弁えることにした。その時にねじ伏せた心は、敬愛以外の何かが含まれていたのは確かだった。
「あたし、思ったんですよね。ご主人様が人形を作るとき、誰かの魂の欠片を入れるって。じゃあそれって、ひょっとしたら複数の人間が含まれているかもしれませんよね」
その言葉に、メアリは無いはずの心臓がドキッと高鳴ったのを感じた。
自分の中に、別の人間がいるかもしれない。
それは確かに困惑であり、同時にある種の期待を、抱いてしまった。
「……では私は、以前の人形だった時とは違う……?」
「かもしれませんねって話です。とはいっても、私は以前のメアリさんを知らないんですけども」
「…………、確かに少し、心当たりがあります」
ケフが言っていた、メアリが現れると同時に消えたと言う、女性の幽霊。
それがもしも彼女であるというのならば、今のメアリの中には、彼女の欠片も含まれているかもしれない。
……ならば、その欠片がある以上、メアリは自身の……異性としての好意を肯定することはできない。
「……もしもあの人が、私の中にいるのであれば、あの夜の約束を、あの人が守り続けていることになりますね」
彼を守ると言う強い意志。それを継ぐべく、メアリは彼の人形となった。人形としてラクルを見守り続けていたメアリにとっても、二年の間に彼女は既にラクルと同じくらい重要な存在になってしまっている。
その彼女の誓いを無下にする意思は、メアリには無い。否、できるわけがない。
「私は、愛というものを知りませんでした。もしこれが愛という感情であるのならば、これ以上になく残酷な代物ですね」
「メアリさん……」
「私が彼女を背負っている以上、私は彼女の意思を尊重したい。彼女は死んでまで、坊っちゃんを守ろうとした。一方、私は何もできなかった、何も……ただ、燃やされるだけの無力なお人形。あの人に報いることなど何一つなく、守る事もできなかった。……その私にチャンスを与えてくれた坊っちゃんを守るため、そして今度こそ彼女の意思に報いるためにも……今は、私自身の感情を伝えるわけにはいきません」
「でも、メアリさん……」
頑なに、とても苦しそうに呟くメアリへ、サフィールは何も言うことが出来なかった。
これはきっと、呪いだ。
死んだ人間が残した、未練という呪い。
不幸にもそれを受け取った人形は、失った人の代わりに、その役割を演じているのだ。
それら全てを察しながら、されどサフィールは掛ける言葉を何も持たなかった。メアリの葛藤も、その心境も、何一つとして想像ができなかったからだ。
サフィールは黙し続けながら、パチパチと爆ぜる木片を、静かに見つめ続けていた……。
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