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「休学届けはサフィールが提出に行きました。聖女の巡礼に同行するという理由ですから、受理されないということはないでしょう」
「だろうな。さすがに教会の顰蹙を買うような事を、あの学園長がやるわけがないからな」
さて、巡礼の旅について行くことが決定し、私たちは慌ただしく準備をすることになりました。出発予定は明日の早朝です。早すぎですよ。
いえね、リリネたちの資金の問題でこれ以上の滞在は難しいということらしく。一応、教会から部屋は借りているらしいんですが、一番最初に「無料の施しは障りがあるということでお金を払う」という宣誓をしてしまい、資金は削れていく一方で。一度吐いた唾を飲むことはできないため、結局、日に日に資金が減っていくという悪循環に陥ったわけです。武士は食わねど高楊枝とはいえ、なんでそういう見栄を張っちゃうんですかね。やっぱりあの子、ポンコツでしょう。
そんな裏事情によって、スピード出発になったわけで。めちゃくちゃ急な話でこちらとしても凄い迷惑なんですけどね、涙でぐちゃぐちゃになった顔で土下座せんばかりに頭を下げられたら、それ以上は何も言えませんでした。ラクル様は腕組んでゴミを見るような目で居丈高でしたけど。
……ん? 屋敷の部屋でも貸してやればいいんじゃないのかって? いえいえ、見ず知らずの他人を泊めてやるほど平和ボケはしていませんよ。もし彼女が王宮などのスパイだった場合は、こちらの死活問題ですもの。……え、サムの時は暗殺者を家に入れてた? え~なんでしたっけ~? 私覚えてませんので~?
ともあれ、大急ぎで長期旅行用の荷物を纏めています。ラクル様だけでなく、使用人総出で向かうので、衣服とか日用品とかいろんな物が必要でしてね、人間はこの辺が不便ですよねぇ。それと長期旅行用の馬車を至急、借受けねばならないのですが、これはリリネが「教会に交渉してなんとかもぎ取ってきます!」と拳を握って言ってたんで大丈夫でしょう、きっと大丈夫、多分大丈…………大丈夫ですかね?
そんなめちゃくちゃ慌ただしい準備の中、ラクル様は一月ほど不在になるという手紙を、文通相手に送ってるようです。ヘッセム卿とか、贔屓にしてる商人さんとか、あと私もよく知らない劇場の無名の役者さんとからしいですね。私は行ったことないんですけど、演劇や演奏がお好きらしく、ヘッセム卿にお世話になっていた頃はちょこちょこ観に行っていたらしいです。ちょっとジェラッ。
ジェラジェラしてる私を尻目に、ラクル様は羽ペンをインク瓶に浸しながら、流暢な筆記体で手紙を書いております。ぶっちゃけ、私は読むことができません。
なので、ちょっと疎外感を抱いたので、会話を振ってみます。
「しかし、意外でしたね。ラクル様がほとんど無償で他人に施しをするなんて」
「ふん、俺が施しだと? 馬鹿を言え、俺がそんな良い奴に見えるってのか」
「やはり何か裏がありますか」
ラクル様は手紙をひらひらと乾かしながら、皮肉げに口端を釣り上げます。
「忌々しいが、カティア・クリンに問われてからというもの、俺は奴の言う覚悟、王としての展望とやらをどうすれば証明できるのか考えてきた。しかしどれほど考えても、それに答えは出ない。……当然だ、俺は自分の足でこの国を歩いたことがないのだ。この国がどのように回り、どのように成り立っているか、食事に出されるパンの作り方だって、俺は知らずにずっと過ごしてきた。……俺には経験が足らんのだ」
その言葉に、私は思わず目を見開きます。お、おお、坊っちゃん……! ご自身で気づかれたのですね……! まあ私もあんまり気づいてませんでしたけど……!
カゴの中の鳥だった幼い頃とは違い、今は私達が居ます。ヘッセム卿はきっと、これらは無駄なことだと教えもしなかったでしょうから、ご自分からこう言い出したのは、とても大きな一歩でしょう。
「かといって、一人で歩き回ろうにも、そんなことをすればパトリックどもに不審がられる。また暗殺されるような事態になったら面倒だ」
「なるほど、聖者の護衛という名目ならばただの人気取りに見えますし、教会との関係の悪化を恐れて暗殺者を送り込んでくることはない、と。うまいこと隠れ蓑にしながら、見聞を広める旅に出るというわけですか」
「とはいえ、旅なんてほとんどやった事はないがな。ガキの頃に遊覧に出かけた時以来だ。……お前たちには苦労をかけることになるが、きっちり頼むぞ」
真剣な顔でそう言われ、私は内心の感動に感じ入りながらも、静かに頭を下げました。
「お任せください。必ずや完璧な旅を提供してご覧に入れましょう」
「ふん、せいぜい恥を晒さないように頑張るんだな」
そう皮肉られますけど、内心ではちょっと恥ずかしかったのか、手紙に没頭するふりをしています。なんだか子供の成長を見守る母親のような、微笑ましい気分になりました。心の涙が禁じ得ませんねぇ。涙腺ありませんけど。
それを察したのか、坊っちゃんはあーとかうーとか言いながら、誤魔化すように話を振ってきます。
「そういえば、巡礼の旅先はどんなルートなんだ?」
ああはいはい、ポケットからメモを取り出して、サリハ司祭から教えてもらった名前を羅列します。
「まず、明朝にカルドラスを発って、東の中央街道を3日ほどまっすぐ進んだ先にある、大河の畔の大都市バラムスへ向かいます」
「3日……」
「バラムスの教区長に挨拶して後、バラムス周辺の村落を慰労します。あのへんは日照りが多く水不足が深刻らしいので、リリネ様の魔法によって雨を増やしてもらう予定だとか。その日程はだいたい一週間です」
「一週間……」
「その次は南へ5日ほど下り、国境の都市カノンで同じように挨拶した後、乾燥地帯であるカノン周辺の慰労です。こちらも一週間ですね」
「………」
「あとは帰るだけですけど、まあ途中の村にも寄りますので、そこで数日は取られると見て宜しいでしょう。馬車の旅になりますけど乗り換えも必要になりますでしょうし、小忙しい旅にはなりそうです」
「………なあ」
「はい?」
「………やっぱり、止めにしないか?」
ああ、覚悟がグラァッと揺れてますね。意志が弱いのは男らしくありませんよ、ラクル様。
その後、パトリックはこれくらいのことは涼しい顔で行っていますよ、と発破をかけることで、なんとかモチベーションは持ち直しました。とりあえずパトリックの名を出せば解決するので、ある意味ではチョロいですよ、坊っちゃん。
「だろうな。さすがに教会の顰蹙を買うような事を、あの学園長がやるわけがないからな」
さて、巡礼の旅について行くことが決定し、私たちは慌ただしく準備をすることになりました。出発予定は明日の早朝です。早すぎですよ。
いえね、リリネたちの資金の問題でこれ以上の滞在は難しいということらしく。一応、教会から部屋は借りているらしいんですが、一番最初に「無料の施しは障りがあるということでお金を払う」という宣誓をしてしまい、資金は削れていく一方で。一度吐いた唾を飲むことはできないため、結局、日に日に資金が減っていくという悪循環に陥ったわけです。武士は食わねど高楊枝とはいえ、なんでそういう見栄を張っちゃうんですかね。やっぱりあの子、ポンコツでしょう。
そんな裏事情によって、スピード出発になったわけで。めちゃくちゃ急な話でこちらとしても凄い迷惑なんですけどね、涙でぐちゃぐちゃになった顔で土下座せんばかりに頭を下げられたら、それ以上は何も言えませんでした。ラクル様は腕組んでゴミを見るような目で居丈高でしたけど。
……ん? 屋敷の部屋でも貸してやればいいんじゃないのかって? いえいえ、見ず知らずの他人を泊めてやるほど平和ボケはしていませんよ。もし彼女が王宮などのスパイだった場合は、こちらの死活問題ですもの。……え、サムの時は暗殺者を家に入れてた? え~なんでしたっけ~? 私覚えてませんので~?
ともあれ、大急ぎで長期旅行用の荷物を纏めています。ラクル様だけでなく、使用人総出で向かうので、衣服とか日用品とかいろんな物が必要でしてね、人間はこの辺が不便ですよねぇ。それと長期旅行用の馬車を至急、借受けねばならないのですが、これはリリネが「教会に交渉してなんとかもぎ取ってきます!」と拳を握って言ってたんで大丈夫でしょう、きっと大丈夫、多分大丈…………大丈夫ですかね?
そんなめちゃくちゃ慌ただしい準備の中、ラクル様は一月ほど不在になるという手紙を、文通相手に送ってるようです。ヘッセム卿とか、贔屓にしてる商人さんとか、あと私もよく知らない劇場の無名の役者さんとからしいですね。私は行ったことないんですけど、演劇や演奏がお好きらしく、ヘッセム卿にお世話になっていた頃はちょこちょこ観に行っていたらしいです。ちょっとジェラッ。
ジェラジェラしてる私を尻目に、ラクル様は羽ペンをインク瓶に浸しながら、流暢な筆記体で手紙を書いております。ぶっちゃけ、私は読むことができません。
なので、ちょっと疎外感を抱いたので、会話を振ってみます。
「しかし、意外でしたね。ラクル様がほとんど無償で他人に施しをするなんて」
「ふん、俺が施しだと? 馬鹿を言え、俺がそんな良い奴に見えるってのか」
「やはり何か裏がありますか」
ラクル様は手紙をひらひらと乾かしながら、皮肉げに口端を釣り上げます。
「忌々しいが、カティア・クリンに問われてからというもの、俺は奴の言う覚悟、王としての展望とやらをどうすれば証明できるのか考えてきた。しかしどれほど考えても、それに答えは出ない。……当然だ、俺は自分の足でこの国を歩いたことがないのだ。この国がどのように回り、どのように成り立っているか、食事に出されるパンの作り方だって、俺は知らずにずっと過ごしてきた。……俺には経験が足らんのだ」
その言葉に、私は思わず目を見開きます。お、おお、坊っちゃん……! ご自身で気づかれたのですね……! まあ私もあんまり気づいてませんでしたけど……!
カゴの中の鳥だった幼い頃とは違い、今は私達が居ます。ヘッセム卿はきっと、これらは無駄なことだと教えもしなかったでしょうから、ご自分からこう言い出したのは、とても大きな一歩でしょう。
「かといって、一人で歩き回ろうにも、そんなことをすればパトリックどもに不審がられる。また暗殺されるような事態になったら面倒だ」
「なるほど、聖者の護衛という名目ならばただの人気取りに見えますし、教会との関係の悪化を恐れて暗殺者を送り込んでくることはない、と。うまいこと隠れ蓑にしながら、見聞を広める旅に出るというわけですか」
「とはいえ、旅なんてほとんどやった事はないがな。ガキの頃に遊覧に出かけた時以来だ。……お前たちには苦労をかけることになるが、きっちり頼むぞ」
真剣な顔でそう言われ、私は内心の感動に感じ入りながらも、静かに頭を下げました。
「お任せください。必ずや完璧な旅を提供してご覧に入れましょう」
「ふん、せいぜい恥を晒さないように頑張るんだな」
そう皮肉られますけど、内心ではちょっと恥ずかしかったのか、手紙に没頭するふりをしています。なんだか子供の成長を見守る母親のような、微笑ましい気分になりました。心の涙が禁じ得ませんねぇ。涙腺ありませんけど。
それを察したのか、坊っちゃんはあーとかうーとか言いながら、誤魔化すように話を振ってきます。
「そういえば、巡礼の旅先はどんなルートなんだ?」
ああはいはい、ポケットからメモを取り出して、サリハ司祭から教えてもらった名前を羅列します。
「まず、明朝にカルドラスを発って、東の中央街道を3日ほどまっすぐ進んだ先にある、大河の畔の大都市バラムスへ向かいます」
「3日……」
「バラムスの教区長に挨拶して後、バラムス周辺の村落を慰労します。あのへんは日照りが多く水不足が深刻らしいので、リリネ様の魔法によって雨を増やしてもらう予定だとか。その日程はだいたい一週間です」
「一週間……」
「その次は南へ5日ほど下り、国境の都市カノンで同じように挨拶した後、乾燥地帯であるカノン周辺の慰労です。こちらも一週間ですね」
「………」
「あとは帰るだけですけど、まあ途中の村にも寄りますので、そこで数日は取られると見て宜しいでしょう。馬車の旅になりますけど乗り換えも必要になりますでしょうし、小忙しい旅にはなりそうです」
「………なあ」
「はい?」
「………やっぱり、止めにしないか?」
ああ、覚悟がグラァッと揺れてますね。意志が弱いのは男らしくありませんよ、ラクル様。
その後、パトリックはこれくらいのことは涼しい顔で行っていますよ、と発破をかけることで、なんとかモチベーションは持ち直しました。とりあえずパトリックの名を出せば解決するので、ある意味ではチョロいですよ、坊っちゃん。
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