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しおりを挟むはい、ストを慣行中のメアリです。今日もメイド業はお休みで一時停止中です。
いえね、ラクル様の乱暴癖、過去形とはいえやっちゃいけない一線ってのがあるわけですよ。で、それを理解して頂くために、地道に非難がましい目線を無言で叩きつける毎日。
されど、その理由を私が話さないので、当人から見れば理不尽に思うわけで。
遂にがラクル様がぶち切れて、
「これ以上、俺の言うことをきかないのなら人形に戻すぞ!!」
と激昂されました。
されど私、その程度のことは織り込み済み。
間髪入れずに言います。
「では、今までありがとうございました」
「っ!?」
「私は壊されても一切の文句は言いません。ですが、それでも私は今までの行動を撤回しません。これも全て、ラクル様の為」
「俺の為、だと・・・?」
狼狽する相手へ、私は真っ正面から見つめます。責めるように。
「坊っちゃん、貴方は自分で気付かねばならないことが、多くあります。貴方が王になるというのであれば、尚のこと。自身の過去を顧みて、その過ちを認めねば、先へ進むことも出来ません」
つまり、カティアや今までに泣かせてきた女性の事を思い出して謝って下さい、ということですね。無論、それだけじゃ理解できないようでラクル様は怒鳴るんですけど、私はそれ以上は何も言いませんよ。殴ろうが蹴ろうが知った事じゃありません。詳しい話しはサムに聞けばわかりますし、自分で行動しなければ意味がありませんからね。なんでもかんでも教えるだけじゃ、その人のためにはなりません。自分で気づくことこそが一番大事なんです。
そんな冷たい私にラクル様は業を煮やしたのか、家に放ってサフィちゃんと一緒に学園へ向かうようになりました。申し訳無さそうなサフィちゃん達を送り出しますが、私はまだカティアに謝罪をするというクエストが残っていますんで、こちらもしばらくしてから密かに学園へ向かいます。私がラクル様のメイドってのは大々的に周知されてますし、門衛にも「ご主人様が忘れ物をしたので」とか言えば、顔パスで入れちゃいますし。ビバ、メイド。
とはいえ、ラクル様と顔を合わせないよう、生体感知センサーを全開で進みますが。マーキングをしておいたので、どこに居るかはリアルタイムでわかります。本当に便利ですよねぇ、これ。
さて、それで休憩時間を見計らって入り込み、図書館で居眠りしてるジュジュレ君を起こすカティア・クリンを見つけ、眉を顰められながらも謝罪したところ、
「・・・ふざけないでっ!」
とブチ切れられました。そりゃそうですよね!自分に恥かけさせた男のメイドが頭を下げに来るとか何考えてんでしょうかね!せめて当人が来いよ!とか思いますよねー!
されど、ここは忍の字です。これも全て、天使ちゃんのため。
私が頭を上げないのを見て、カティアはそれはそれはもう様々な感情を煮詰めたような顔で睨んでから、「二度と顔を見せないで!」と叫んで足音高く去って行きます。
まあ、普通の反応ですよね。私も同じ事されたらブチ切れるだけじゃ飽き足りませんもの。鼻の穴に指ぃ突っ込んで奥歯へし折ってやるくらいのことはしますから。
「・・・あー、ティアがああなったら、暫くは許してくれそうもないよ」
ボーッと見ていたジュジュレ君の感想に、私は頷くしか出来ません。
「存じております。それでも、やらねばならぬ事でしたから」
無論、これで終えるつもりはありません。私が頭を下げたことで、イズレルカには謝罪する意思がある、と知ってもらえたので。許してもらえるとは思いませんけど、一応のケジメは付けねばなりません。
さて、次は坊っちゃん自身に頭を下げさせねば。さーてどうやってあのアンポンタンに謝らせますかねー。
「・・・君ってさ、どうしてそこまでやるの?」
ふと、ジュジュレ君の言葉に目を向ければ、のっぽの青年は本を仕舞いながら話しかけてきます。
「だってさ、あのラクル殿が謝罪しろなんて命令するとは思わないから、それって君の独断だろ?」
「ええ」
「でも、それってそこまで君がやらなきゃいけないことなの?って思って。だって、ティアを傷つけたのはラクル殿だし」
「当然です。ですが、私はイズレルカ家のメイドです。主人の粗相は私の恥。私にも責任があります」
「責任って?」
「ええ、あの子を育てたのは私・・・」
・・・・・・・・・ん?あれ?ナチュラルに今、変なことを口走りそうになりませんでした?いえ、確かに幼少期に一緒にいましたけど、育ててはいませんね。若ボケでしょうか、嫌ですねぇ。
「責任感が強いんだねぇ。ラクル殿も、君みたいな人が傍に居るのなら、もっと大事にしてあげれば良いのにね」
学園でも私蹴っ飛ばされてますからね。それを見たことある人なら、眉を潜められて当然でしょうか。
「私はただのメイドですので。それも織り込み済みです」
「忠誠心が高いって言うのか、何なのか・・・あ、それなら、君もパトリックの事が嫌いなんだよね?」
「嫌いといえば嫌いですね。その昔、あの方は私とうちの天使ちゃんを小馬鹿にしくさりやがったので、いっぺんあのお綺麗な顔に拳を叩き込まないと気が済まないんですよ」
「あ~・・・うん、頑張ってね」
ジュジュレ君が内心で引いているようです。あらやだ、乱暴者に思われちゃいました?間違ってないですけど。
モゴモゴとジュジュレ君は何事かを呟いてから、ポツリと言います。
「・・・まあ、君に無理強いすることはできないんだけど」
「はい?」
「・・・できれば、ティアを助けてくれると、幼馴染としても嬉しいかなーって」
ああ、ジュジュレ君はカティアと幼馴染でしたね。んー、助けてあげてって・・・。
・・・そういえば、一年目の半ば・・・セーレは中途入学なので、必然的に半ばスタートなんですが・・・のイベントで、セーレとカティアが仲良くなる決定的なのがありましたね。
確か、カティアに喧嘩を売ってきた貴族の男をボッコボコにするやつでしたっけ。カティアも詳しくは話しませんでしたが、なんか言い合いになっていたところに出くわして、男は八つ当たりでセーレにも乱暴しかけ、それを見たカティアが「もう我慢できないわっ!」と躍りかかり、初戦闘のチュートリアルが始まるわけです。で、セーレの癒しの魔法を補助に、男を拳でぶん殴るご令嬢という凄いスチル絵が披露されるわけです。初っぱなからこれで「このゲームやべぇな」とか思った覚えが。
なるほど、その男の件でしょうかね。この世界のセーレが関わっていないのなら、その確執は未だに続いているのでしょう。
オッケイわかりました、女性の敵は私の敵。
「心得ました。今後、カティア様に何かがあれば、我が身命に変えてでもお守りいたしましょう」
「ああ、うん、そこまでガッツリ言われるとちょっと重いけど、頼んだよ」
原作の親友なので、私も愛着があります。
なので、彼女の為に目を光らせておきましょうかね…え、嫌われてるからウロチョロしてると嫌がられるって?そんなー。
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