私は彼のメイド人形

満月丸

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「それでは、使用人総出で大掃除を致しましょう」

最近、学園や暗殺者騒動にかまけてお屋敷の掃除が疎かになっていたと思うので、ここらで一斉に掃除することにしました。で、ラクル様の許可取って、休日に屋敷中を整理整頓しますよ。メイドの腕が鳴りますねー。

「ニコライは客室、サフィールは応接室から手を付けて下さい。その二つが終わり次第、衣服室の整理をしますので、各自で互いの手伝いをお願いします」
「「はい」」

なお、サムは諜報に出ているのでいません。実質三人でお掃除ですね。

「あとゴンちゃんは出たゴミを燃やす係です」
「クルァ?」

分かっていなさそうに、つぶらな瞳を向けて小首を傾げてきます。こやつ、バックれる気ですね。

「手伝っていただけるのなら、今夜の肉は倍にしましょう」
「クルルァ!」

よっしゃ任せろ!と言わんばかりにトテトテと向かっていきました。見た目によらずかなり強かな性格してますよ。え、私に似たんだろうって?うふふ、ご冗談を。

さーて、それでは袖を捲ってやりますかね。

では私は外観の美化を試みましょう。一番最初に外観の蔓は取っ払いましたけど、また伸びてきてますし、やり残した部分が気になります。あと壁もクリーンにしなければ。

というわけで、ここで出るのがメイド長さん直筆のメイドの心得全三巻!

この本によれば、壁などを汚した場合は一度壁を水で濡らして馴染ませてから、ヌカの実を砕いた物とカガロ溶剤・・・この世界でいう木工用ボンドみたいなもんですね・・・を混ぜ合わせて塗り、一時間経ってから固まった溶剤をぺりっとめくればあら不思議、汚れが吸着されて取れちゃうそうで。ヌカの実は汚れ落としとしての効能もあるそうで、それがうまい感じに溶剤と混ぜ合わさってこういう効果がでるようで。あれですね、主婦の生活の知恵みたいなもんですね。
そのお知恵を拝借しつつ、汚れの酷い部分だけバシャバシャーっと濡らして濡れ雑巾で拭いてー、既に用意しておいた溶剤をペタペターっと塗って、あとは放置しましょう。

その間に梯子を掛けて、鎌を片手に高所作業です。蔦を鷲掴んでベリベリーっと剥がして適当に鎌で切ってを繰り返してましたが、途中でなんか面倒になったんで大束の蔦を掴んだまま地面に飛び降ります・・・あれ、途中で止まっちゃいましたよ。張り付いてる蔦の方が強くて千切れませんね、これは。
仕方が無いので、もう一回登って周囲を切り離し、ベリベリべりっと剥がしていきます。・・・むむ、取り残しが多いですね。いっそ箒で壁ごと吹っ飛ばしますかね、駄目ですか、そうですか。

ちまちまと作業を続け、なんとか高所も含めて目に見える蔦は取り除けました。驚異の疲れ知らずボディでも苦戦するんですから、これが普通の人間だったらどんだけ人手が必要なんでしょうかね・・・。
とはいえ、壁はまだまだ薄汚れてます。コケとかカビとか。
ヌカの実には汚れ落としも兼ねてるそうなので、購入しておいた大容量お得パック分を握撃!で砕いて水に浸した物をモップに付けて~さささ~っと洗っちゃいましょう。嗚呼…ホースと水道が恋しい。
何度もゴシゴシやれば、なんとか汚れは落ちてピカピカーっとした壁が出てきます。汚れ落としが予想外に面白いので、無心でゴシゴシしてれば前面部は終わりました。そしてとうの昔に固まってた溶剤を思い出したように剥がせば、中から真っ白い壁がこんにちわしてきました。あら美人な壁さんですね。それじゃあ飾り付けしましょうかね。
掃除した壁の下側に、お花を植えたいんですよね。園芸ですよ、園芸。まあ苗はまだ買ってきていないので、まずは固まってる土を耕して、レンガを置いてそれっぽくします・・・これ、やっぱり肥料とか入れなきゃ駄目ですかね。私園芸に関してはさっぱりなんでちょっと悩みますが、まあ後で考えればいっか!と今は外面だけ綺麗にしておきましょう。
ともあれ、外観は必要最低限の体裁は整いました。側面、背面はまた別日にやりましょう。っていうかこの調子じゃ今日中に終わりませんからね。

残りは丸投げしておくことにして、次は洋服部屋の整理でもしましょうかね。
この洋服部屋、複数の部屋にわたって衣類が収納されていましてね、言うまでも無いですがこれらは家主以外の使用人の衣服も含まれてます。かつては大人数が住んでいたこの屋敷、そこに残されたお古の衣装はいっぱいあります。豪華なのはほとんど借金返済に当てられたみたいで、残ってるのは穴が開いてたり虫食いだったりとボロッとした物しかありません。あと、ラクル様が持ち込んだ衣類ですね。今までは主にこちらの用途で使われてましたが、人も増えてきたんで、今後のためにも整理することにしました。

さて、それじゃあまずラクル様の衣服・・・は、まあ大丈夫そうですね。私が洗濯の際に整頓し直したので、触らなくても問題ないです。
ですので、別の部屋の洋服部屋に取りかかります。壁際だけでなくズラーッと綺麗に並べられた衣装ダンスの中から、様々な衣服が出てくる出てくる。ほら、使用人が貧乏くさい格好してるのって家主にとって沽券に関わるじゃないですか。衣服一つ与えることも出来ないのかーって見られちゃうそうなので、必ずちゃんとした服を纏わせるそうで。だから奴隷のニコ君もしっかりとした服を着せられてるんですよね。彼、その辺の一般人より良い生活してると思いますよ、実際。
まあ、そんな用途で様々な背丈に合ったお古の使用人服・メイド服の山ですが、外出用のちょっと豪華な服もあります。王侯貴族が集まるパーティとかで着ていく専用の奴ですね。広げてみると、こう言うのにもさり気なく丈合わせをした跡があって、なんだか歴史を感じだせますね。まあ侯爵家なんですから歴史あるんでしょうけど、私はその手の本は無駄なんで読んでません。面倒ですので。

一枚ずつ広げてチェックしつつ、良品と傷物と分けていき、良品は綺麗に畳んでしまい直します。防虫剤欲しいですよね・・・ないんですかね?そうですか・・・。
で、お古で使えそうなのは修繕用の箱へぽーい。それすら無理そうなのは残念ながらゴミへダンクシュゥート!・・・そういえば、こういう服でも欲しがる人っているんですかね?今度、業者のお姉さんに聞いてみましょうかね。

そうして整理していると、掃除が終わったらしいニコ君とサフィちゃんがやってきました。なので、三人でわいわいやりながら整理をすることに。
最初、一人で洗濯していた頃が遠い昔のようですねぇ・・・としみじみしつつ、サフィちゃんの質問に答えながら今日のお仕事を終えます。ああ、同僚がいるって素晴らしい!

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