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第1章 楽園は希望を駆逐する
第2話 無為に帰す(1日目) その3
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夜が更けていく中、織田流水が食事を終えて談笑をしているところで――、
「――だぁぁッくそッ! ……ハァ、やめだやめやめ。こんなに負け越したのは初めてだ。もう今日は終わり!」
ずっとオンライン対戦ゲームをしていた女――空狐がゲーム機をテーブルの上に置く。
「……空ちゃん、ゲームは不調だったの?」と、臼潮薫子。
「ああ、かつてないほどにな。さすがのウチも、今日ばかりは気が滅入っているようだ」と、空ちゃんと呼ばれた彼女――空狐は投げやりに答える。
しかしその様子も束の間、空狐は一転、笑みを浮かべて織田流水に向き直る。
「よっ。三途の川から五体満足で帰ってこれたんだな、僥倖僥倖」
「そんな軽い労り方、ある……?」
空狐の手を上げて挨拶をする姿に、織田流水が苦笑する。
「何言ってるんだ、ウチは真剣だぜ? ちゃんとお前につける戒名も考えたんだから」
「僕の死を受け入れる準備しないでッ!? 僕の生存ルートを模索してよッ!?」
空狐は<僧>の<再現子>だ。
橙色の法衣を重ね着しているためあまり目立たないが、実はメリハリのある体型をしている。身長こそ織田流水と同じくらい小さく、女性陣で2番目の低さだが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
バストサイズで比べると、女性陣では大きい方だ。
下半身は切袴や足袋、雪駄と、オーソドックスな着方だが、気崩した袈裟やデコレーションされた輪袈裟が目立つ。金色に染めたロングウェーブヘア、マニキュアがビッシリとされた手元には、可愛くデコレーションされた数珠が異彩を放っている。お洒落さをこれでもかと押し出している。とても僧とは思えないギャルっぽさだ。
背負ったリュックサックに掛けた笠にもサイコロの刺繍が入っているなど、どうしても不真面目な印象を受けるが、本人曰く、見かけによらず中身は熱心な僧だそうだ。
将来の夢は、<プロゲーマー>だ。
「――ところで、どうして皆はここにとどまってるの? 明日朝に議論の続きをする可能性が高いんでしょ?」
織田流水は食後に暖かい玄米茶を飲みながら今更な質問をする。
「……まあ、あんなことがあって、すぐ眠りにつけるほど、神経が図太くないからね」
矢那蔵連蔵に常識的なことを言われた織田流水は思わず噴き出した。
「それもそうだね。当たり前のこと聞いてごめん」
「…………」
臼潮薫子も同意見なのか無言のままだ。
「……狗神と話して、俺たち2人は皆が寝静まるまでは起きていようと思っていてな。一言で云えば、”抑止力”だ。議論の最中でも諍いが生まれたほど、今は不安定な状況。石橋を叩いて渡る気でいる」
鬼之崎電龍が力強く拳を握りしめて答える。
そんな彼を空狐はジト目で見る。
「ふ~ん、真面目だなぁ……ウチは“むい”から追加の発表でもあるのかと思って待っていたぜ。まあ、葉高山が肝心の“むい”に付きまといをしたからか、何もなかったけど」
「つ、追加って……」
あんなことがあったのにも関わらず、物事を軽く考えているような感想に絶句する織田流水に空狐は続ける。
「だってそうだろ? “むい”は極力干渉しないとは言ったが、極力姿を現さないとは言ってないぜ? だったら、姿を現して“干渉”とは言えない程度のことをしてくるはずだ」
「…………それは……そう、かも、しれんな」
矢那蔵連蔵が一理あると首肯して、背もたれから体を起こす。
「そ、そんな……っ! ア、アイツは、私たちの自由を認めるって言ったじゃんッ!」
臼潮薫子が泣きそうな顔で訴えるが、鬼之崎電龍が「落ち着け」と彼女に声を掛けながら、空狐に質問する。
「空狐はヤツらがどんなことをしてくるか、予測できているのか?」
鬼之崎電龍からは覆面で視線を感じないはずなのに、強い”目力”を感じた。
「んにゃ、具体的には何も……ただ、“どこで遊ぶか”とか、“どこで食べるか”とか、“どこで寝るか”とか、国家機密の施設を占拠してくるような凶暴なテロリストたちが、それらに一切関与してこないのは――異常だと思う。仮にもウチらは<再現子>なんだぜ? 全員が何かのスペシャリストだ。そんなウチらをあえて脱出も可能なほど自由でいさせるのには、何か裏があると睨んでいるんだ」
「……うーむ、なるほど」と、鬼之崎電龍が腕を組み唸る。
「ヤツらからしたら、ウチらはこの施設から絶対に出したくない存在だ。脱出したら罰を与える的な発言をしていたけど、そもそも脱出ができない状況にするものだろう? 人質なんだぜ? なぜ、脱出されるかもしれない危険性を残すんだ? そんなことして何になる?」
――もしかして。
「――“むい”が、僕たちが脱出できないような策を用意してくると?」
「いや……既に”楔”は打たれた、か」
織田流水の発言に矢那蔵連蔵が続ける。
「楔?」と、臼潮薫子が聞き返す。
「先の“銃殺刑”さ。あの例で云うと、脱出を目論んだ本人だけが罰を受けるわけではないと判明した以上、ウチらは手前勝手に行動できない。なぜなら、置いてきた仲間たちや職員たちが代わりに殺される可能性が高いからな。これについては、織田はいなかったけど既に議題にもなっている」と、空狐。
「議題……」と、織田流水。
「脱出するか否か、だね。恥ずかしながらまともな議論はできなかったよ。決を採るのは明朝だ」と、美ヶ島秋比呂。
「……そうか、脱出するなら、職員たちも、か……当たり前のことだったな」と、鬼之崎電龍。
職員は総勢91名いる。
彼ら<再現子>を含めると、計110名だ。
そんな大人数で脱出するなんて、できるのだろうか?
「……そうかッ!!」
空狐が出し抜けに叫ぶ。
「ど、どうしたの?」
臼潮薫子が怯えた顔をする。
「しまった! すっかり頭から抜け落ちていた。そうだ、職員たちがいるじゃないかッ!」
「なになに!? どういうこと!?」
織田流水が空狐の狼狽ぶりに驚いていると――、
「……っ! そうか、そういうことかっ」
――矢那蔵連蔵も何かに気が付いた。
「おい貴様ら、説明しろ」
鬼之崎電龍の要求に空狐が重い口を開く。
「“政府に対する人質”はウチら19名で十分と云える。そうだろう? 過去の歴史上の人物たちの才能を継いだウチらの存在、不足はない。じゃあ、なぜ職員を生かしているのか。90名を越す大人たちを生かす理由は?」
「――僕たちへの人質だ」
空狐の言葉を矢那蔵連蔵が継いだ。
「「「!?」」」
織田流水も、臼潮薫子も、鬼之崎電龍も一様に絶句する。
「そうか、そうなると、空狐の説にも繋がるな。もしかしたら、“むい”は職員たちを人質に、僕たちに何かを要求してくるかもしれない」
矢那蔵連蔵が言った後に、空狐が続けた。
「――職員たちが今も全員生きているか、しっかり裏付けを取るべきだったな。くそっ、だから、“むい”は職員たちへの通信手段を奪い、かつ、職員の生存について言及しなかったんだ! ……和泉に確認しないといけないな。埋め込んだ発信機は生体認証型なのかどうかを」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
織田流水、空狐、矢那蔵連蔵、鬼之崎電龍の4名はそこで無言になる。
やはり不意を突かれて一気に占拠されたせいで、テロリストたちに対して後手後手に回っている印象は否めない。
敵の行動の真意や目的を探る前に、彼らは行動を制限させられている。
中途半端に行動を許されるせいで、問題の肝に頭が回らなくなっている。
――人は、追いつめられた状況から”一歩手前”を維持されると、そのことに対してより鈍感になってしまうのだ。取り返しのつかない状況になってから漸く自身の置かれた状況に気が付くのも、このせいだ。
今の状況を正しく見据え、未来で待ち構える危機を察知し、その回避策を考えることの、如何に難しいことか。
これは頭で理解していても見落とすことが多い。
注意深く入念に自戒しよう。
彼ら<再現子>は既に政府とも、職員とも連絡することができなくなった今、こうして<再現子>たちで話し合うことしかできない。それも、確認の手段は制限させられている。情報も得ることができず、生殺しの状態である。
空気が重くのしかかり、全員に沈黙が下りた時に――、
「んがっっ!! ぐぐっ……ぐごー!」
――男が大きないびきを上げる。
「ったく、この男はいいな、幸せそうで」
空狐が男の――風間太郎の頬をつつく。
「……今、この考えに辿り着けたのは幸運だ。見当違いだった場合でも、杞憂で終わるならそれでいい」
鬼之崎電龍の発言に矢那蔵連蔵が同意する。
「だね。また別の意見が出るかもしれないし、はたまた今の説も見落としがあるかもしれない。これ以上考えてもドツボに嵌りかねない。今日はもう終わりにしよう」
「……うん、そうだね」
「…………」
織田流水が小さく肯き、臼潮薫子は黙ったままだった。
「――では、明朝にまた会おう」
鬼之崎電龍の挨拶を最後に、彼らも個室に戻っていった。
あとの食堂からは、いびきが聞こえるだけだった。
さて――風間太郎の紹介をして終わりとしたい。
この酒に溺れて爆睡している男は、<忍者>の<再現子>だ。
毛、毛、毛――頭部を覆い隠さんとする、とてつもない毛量。もはや獅子の顔と入れ替えても差し支えないほどの毛の多さだ。それらが赤、青、黄、緑の四色に染められているという派手派手な容貌で、男性陣では2番目に小柄な体格とはいえ、かなり目立つ。
紫色のアイラインに存在感溢れるマスカラ、左目側にアイブロウ、右目側にアンチアイブロウと、これまた派手だ。会話中などでは舌ピアスが微かに見える。とても忍ぶ者の姿には到底見えない。
首から下は赤紫色の忍び装束だ。足元の草履と足袋がむしろミスマッチさがある。
将来の夢は、<俳優>だ。
「――だぁぁッくそッ! ……ハァ、やめだやめやめ。こんなに負け越したのは初めてだ。もう今日は終わり!」
ずっとオンライン対戦ゲームをしていた女――空狐がゲーム機をテーブルの上に置く。
「……空ちゃん、ゲームは不調だったの?」と、臼潮薫子。
「ああ、かつてないほどにな。さすがのウチも、今日ばかりは気が滅入っているようだ」と、空ちゃんと呼ばれた彼女――空狐は投げやりに答える。
しかしその様子も束の間、空狐は一転、笑みを浮かべて織田流水に向き直る。
「よっ。三途の川から五体満足で帰ってこれたんだな、僥倖僥倖」
「そんな軽い労り方、ある……?」
空狐の手を上げて挨拶をする姿に、織田流水が苦笑する。
「何言ってるんだ、ウチは真剣だぜ? ちゃんとお前につける戒名も考えたんだから」
「僕の死を受け入れる準備しないでッ!? 僕の生存ルートを模索してよッ!?」
空狐は<僧>の<再現子>だ。
橙色の法衣を重ね着しているためあまり目立たないが、実はメリハリのある体型をしている。身長こそ織田流水と同じくらい小さく、女性陣で2番目の低さだが、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
バストサイズで比べると、女性陣では大きい方だ。
下半身は切袴や足袋、雪駄と、オーソドックスな着方だが、気崩した袈裟やデコレーションされた輪袈裟が目立つ。金色に染めたロングウェーブヘア、マニキュアがビッシリとされた手元には、可愛くデコレーションされた数珠が異彩を放っている。お洒落さをこれでもかと押し出している。とても僧とは思えないギャルっぽさだ。
背負ったリュックサックに掛けた笠にもサイコロの刺繍が入っているなど、どうしても不真面目な印象を受けるが、本人曰く、見かけによらず中身は熱心な僧だそうだ。
将来の夢は、<プロゲーマー>だ。
「――ところで、どうして皆はここにとどまってるの? 明日朝に議論の続きをする可能性が高いんでしょ?」
織田流水は食後に暖かい玄米茶を飲みながら今更な質問をする。
「……まあ、あんなことがあって、すぐ眠りにつけるほど、神経が図太くないからね」
矢那蔵連蔵に常識的なことを言われた織田流水は思わず噴き出した。
「それもそうだね。当たり前のこと聞いてごめん」
「…………」
臼潮薫子も同意見なのか無言のままだ。
「……狗神と話して、俺たち2人は皆が寝静まるまでは起きていようと思っていてな。一言で云えば、”抑止力”だ。議論の最中でも諍いが生まれたほど、今は不安定な状況。石橋を叩いて渡る気でいる」
鬼之崎電龍が力強く拳を握りしめて答える。
そんな彼を空狐はジト目で見る。
「ふ~ん、真面目だなぁ……ウチは“むい”から追加の発表でもあるのかと思って待っていたぜ。まあ、葉高山が肝心の“むい”に付きまといをしたからか、何もなかったけど」
「つ、追加って……」
あんなことがあったのにも関わらず、物事を軽く考えているような感想に絶句する織田流水に空狐は続ける。
「だってそうだろ? “むい”は極力干渉しないとは言ったが、極力姿を現さないとは言ってないぜ? だったら、姿を現して“干渉”とは言えない程度のことをしてくるはずだ」
「…………それは……そう、かも、しれんな」
矢那蔵連蔵が一理あると首肯して、背もたれから体を起こす。
「そ、そんな……っ! ア、アイツは、私たちの自由を認めるって言ったじゃんッ!」
臼潮薫子が泣きそうな顔で訴えるが、鬼之崎電龍が「落ち着け」と彼女に声を掛けながら、空狐に質問する。
「空狐はヤツらがどんなことをしてくるか、予測できているのか?」
鬼之崎電龍からは覆面で視線を感じないはずなのに、強い”目力”を感じた。
「んにゃ、具体的には何も……ただ、“どこで遊ぶか”とか、“どこで食べるか”とか、“どこで寝るか”とか、国家機密の施設を占拠してくるような凶暴なテロリストたちが、それらに一切関与してこないのは――異常だと思う。仮にもウチらは<再現子>なんだぜ? 全員が何かのスペシャリストだ。そんなウチらをあえて脱出も可能なほど自由でいさせるのには、何か裏があると睨んでいるんだ」
「……うーむ、なるほど」と、鬼之崎電龍が腕を組み唸る。
「ヤツらからしたら、ウチらはこの施設から絶対に出したくない存在だ。脱出したら罰を与える的な発言をしていたけど、そもそも脱出ができない状況にするものだろう? 人質なんだぜ? なぜ、脱出されるかもしれない危険性を残すんだ? そんなことして何になる?」
――もしかして。
「――“むい”が、僕たちが脱出できないような策を用意してくると?」
「いや……既に”楔”は打たれた、か」
織田流水の発言に矢那蔵連蔵が続ける。
「楔?」と、臼潮薫子が聞き返す。
「先の“銃殺刑”さ。あの例で云うと、脱出を目論んだ本人だけが罰を受けるわけではないと判明した以上、ウチらは手前勝手に行動できない。なぜなら、置いてきた仲間たちや職員たちが代わりに殺される可能性が高いからな。これについては、織田はいなかったけど既に議題にもなっている」と、空狐。
「議題……」と、織田流水。
「脱出するか否か、だね。恥ずかしながらまともな議論はできなかったよ。決を採るのは明朝だ」と、美ヶ島秋比呂。
「……そうか、脱出するなら、職員たちも、か……当たり前のことだったな」と、鬼之崎電龍。
職員は総勢91名いる。
彼ら<再現子>を含めると、計110名だ。
そんな大人数で脱出するなんて、できるのだろうか?
「……そうかッ!!」
空狐が出し抜けに叫ぶ。
「ど、どうしたの?」
臼潮薫子が怯えた顔をする。
「しまった! すっかり頭から抜け落ちていた。そうだ、職員たちがいるじゃないかッ!」
「なになに!? どういうこと!?」
織田流水が空狐の狼狽ぶりに驚いていると――、
「……っ! そうか、そういうことかっ」
――矢那蔵連蔵も何かに気が付いた。
「おい貴様ら、説明しろ」
鬼之崎電龍の要求に空狐が重い口を開く。
「“政府に対する人質”はウチら19名で十分と云える。そうだろう? 過去の歴史上の人物たちの才能を継いだウチらの存在、不足はない。じゃあ、なぜ職員を生かしているのか。90名を越す大人たちを生かす理由は?」
「――僕たちへの人質だ」
空狐の言葉を矢那蔵連蔵が継いだ。
「「「!?」」」
織田流水も、臼潮薫子も、鬼之崎電龍も一様に絶句する。
「そうか、そうなると、空狐の説にも繋がるな。もしかしたら、“むい”は職員たちを人質に、僕たちに何かを要求してくるかもしれない」
矢那蔵連蔵が言った後に、空狐が続けた。
「――職員たちが今も全員生きているか、しっかり裏付けを取るべきだったな。くそっ、だから、“むい”は職員たちへの通信手段を奪い、かつ、職員の生存について言及しなかったんだ! ……和泉に確認しないといけないな。埋め込んだ発信機は生体認証型なのかどうかを」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
織田流水、空狐、矢那蔵連蔵、鬼之崎電龍の4名はそこで無言になる。
やはり不意を突かれて一気に占拠されたせいで、テロリストたちに対して後手後手に回っている印象は否めない。
敵の行動の真意や目的を探る前に、彼らは行動を制限させられている。
中途半端に行動を許されるせいで、問題の肝に頭が回らなくなっている。
――人は、追いつめられた状況から”一歩手前”を維持されると、そのことに対してより鈍感になってしまうのだ。取り返しのつかない状況になってから漸く自身の置かれた状況に気が付くのも、このせいだ。
今の状況を正しく見据え、未来で待ち構える危機を察知し、その回避策を考えることの、如何に難しいことか。
これは頭で理解していても見落とすことが多い。
注意深く入念に自戒しよう。
彼ら<再現子>は既に政府とも、職員とも連絡することができなくなった今、こうして<再現子>たちで話し合うことしかできない。それも、確認の手段は制限させられている。情報も得ることができず、生殺しの状態である。
空気が重くのしかかり、全員に沈黙が下りた時に――、
「んがっっ!! ぐぐっ……ぐごー!」
――男が大きないびきを上げる。
「ったく、この男はいいな、幸せそうで」
空狐が男の――風間太郎の頬をつつく。
「……今、この考えに辿り着けたのは幸運だ。見当違いだった場合でも、杞憂で終わるならそれでいい」
鬼之崎電龍の発言に矢那蔵連蔵が同意する。
「だね。また別の意見が出るかもしれないし、はたまた今の説も見落としがあるかもしれない。これ以上考えてもドツボに嵌りかねない。今日はもう終わりにしよう」
「……うん、そうだね」
「…………」
織田流水が小さく肯き、臼潮薫子は黙ったままだった。
「――では、明朝にまた会おう」
鬼之崎電龍の挨拶を最後に、彼らも個室に戻っていった。
あとの食堂からは、いびきが聞こえるだけだった。
さて――風間太郎の紹介をして終わりとしたい。
この酒に溺れて爆睡している男は、<忍者>の<再現子>だ。
毛、毛、毛――頭部を覆い隠さんとする、とてつもない毛量。もはや獅子の顔と入れ替えても差し支えないほどの毛の多さだ。それらが赤、青、黄、緑の四色に染められているという派手派手な容貌で、男性陣では2番目に小柄な体格とはいえ、かなり目立つ。
紫色のアイラインに存在感溢れるマスカラ、左目側にアイブロウ、右目側にアンチアイブロウと、これまた派手だ。会話中などでは舌ピアスが微かに見える。とても忍ぶ者の姿には到底見えない。
首から下は赤紫色の忍び装束だ。足元の草履と足袋がむしろミスマッチさがある。
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