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新米冒険者とそれなり冒険者
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しおりを挟む食事を終えた後「用事があるからここで」と言うストレイと別れた二人は、大通りをのんびりと歩いていた。
冒険者ギルドのギルドマスターであるアイザックと約束をした時間まではまだ少しある。
どこで時間を潰そうかと話していると、どこからか「ひったくりだ!」と叫ぶ声が聞こえた。
「ひったくり?」
声の聞こえた方向へ顔を向けると、人相の悪い男が、男には不釣り合いな女性物の洒落た鞄を抱えて、ハイネル達のいる方角へと走っているのが見える。
男の背後には鎧を付けた冒険者らしい青年が、男を追いかけていた。
「冒険者の町でひったくりとは」
「命知らずもいたもんですねぇ」
男は「どけどけぇ!」とお決まりのフレーズを口にして、通行人達を押しのけて走っている。
あと十数秒でセイル達が立っている場所を通るだろう。
セイルとハイネルは顔を見合わせると、男が通りやすそうな程度の道幅を開け、それぞれ左右に割れる。
男はセイル達が怯えて道を開けたのだとと勘違いし、ニヤニヤと笑いながらその間へと向かった。
――――その時だ。
男が自分達の間を走るタイミングを見計らって、セイルとハイネルは二人揃ってひょいと足を出す。
男は両方から出てきた足に気付かず、その足に引っ掛けられて躓き、勢いよくごろごろと転がる。
そうしてドンッと痛そうな音を立てて建物の壁にぶつかり、目を回した。
「よし、頭脳プレイ」
セイルとハイネルはパンッとお互いの手を合わせて打ち鳴らす。
そんな二人達の所へ、男を追っていた冒険者の青年が駆け寄ってきた。
「すまない、助かった!」
二十代前半のサラサラとした金髪の青年だった。
身に着けている鎧や腰に下げた剣から、どうやら戦士系なのだろうとセイルは推測する。
整った顔立ちをしており、周りからは「キャー! フラン様ー!」という叫び声が聞こえてくる事から、有名な冒険者か何かのだろう。
(モテモテだ)
そんな事を考えていると、セイルはハイネルが、青年を見て嫌そうに顔をしかめている事に気が付いた。
「ハイネル?」「ハイネル?」
どうしたのかと口を開いたセイルと青年の言葉が重なった。
おや、とセイルは目を瞬く。
ハイネルは苦虫を潰したような顔で、
「あなたでしたか、フラン」
なんて言って、眼鏡をくいと押し上げた。
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