24 / 58
1-23 歓喜の声と達成感
しおりを挟む
あの後僕はアナさんへ事情を説明した。
するとすぐさまどういう状況か把握したようで、彼女は僕に「1階で待っててください」と言うと、半裸のリセアさんを連れてどこかへと行ってしまった。
ということで彼女の言葉に従い1階の席に座って待っていると、少ししてアナさんと、宿屋の備品だろうか大きめの麻服に身を包んだリセアさんがやってきて、僕の対面に並んで腰掛けた。
そしてアナさんは僕に「すみません、お待たせしました」と言った後、横に座るリセアさんへとジト目を向ける。
「まったく、リセアはもう少し恥じらいを持たないと」
「うー、すまねぇ……」
プリプリと可愛らしく怒るアナさんと、その横でしゅんとするリセアさん。その姿だけで、この2人の仲の良さがはっきりと見てとれた。
「それで、どうして朝からあんなに騒いでいたの?」
アナさんがそう問うと、リセアさんは思い出したとばかりにカッと目を見開く。
「そ、そうだった! なぁ聞いてくれよ! あたしの肌がな、もちもちつるつるになってんだよ! ほら、見てくれ! 触ってくれ!」
言って立ち上がり、前のめりになると、こちらにしなやかな筋肉のついた美しい腕を差し出してくる。……いつぞやのアナさんのような圧力である。
その圧に苦笑を浮かべつつも、まぁ腕ならいいかということで軽く触れてみる。
……なるほど。確かに完全によくなった訳ではないけど、それでも確かに昨日とは比べものにならない程に肌質が改善しているな。
血行が改善したり、マッサージオイルの保湿によって肌環境が良くなったりすることはある。しかしそれでもこんなにすぐに効果が出ることは当然ない。
おそらくこれは美肌(極小)と、あとはオイルによる一時的な効果が合わさった結果なのだろう。
……にしても 美肌(極小)でこれだけの効果って。美肌(大)とかになったらどうなるんだこれ? 肌が若返ったりでもするのか?
そう密かに戦々恐々としながらも、僕は彼女の腕に触れつつ言葉を返す。
「確かにだいぶ改善されてますね」
「そんな淡々とする話じゃねぇぞ!? 今まで何やってもよくならなかったのに、あのたった1時間で! こんなに!」
リセアさんはかなり興奮した様子でそう声を上げる。
……まぁ長年の悩みが、それもいつしか諦めてしまったそれが少しでも改善していれば、こういう反応にもなるか。
「なぁアナも触ってみてくれ!」
興奮覚めやらぬとばかりに続いてアナさんへと腕を差し出す。アナさんはその腕に優しく触れながら、柔らかい声音で声を上げた。
「……すごい」
「だろ? めっちゃ良くなってんだよ!」
「ずっと悩んでたものね」
「そうなんだよ! だからアナありがとな!」
「えっ……?」
「ソースケを紹介してくれてだよ!」
「ふふっ、どういたしまして」
「ソースケもありがとな!」
「喜んでいただけたのなら何よりですよ」
「うぉぉぉ!! なんかテンション上がりすぎてじっとしてられねぇ! よし! 今から魔物狩ってくるわ!」
「……えっ」
「んじゃ、そういうことで!! あ、アナこれ宿代な! ソースケ、またくるからな!」
「はい、いつでもお待ちしてま……って行っちゃった」
「すみません、朝から騒がしくて……」
「あはは、まぁそれだけ喜んでくれたということで」
そう言って僕が微笑むと、アナさんは肯定するように小さく頷いた後、その視線を宿の入り口の方へと向けた。
「それにしても……あんなキラキラした目のリセア、久しぶりに見ました」
そう呟くように言った後、アナさんはさらに言葉を続ける。
「まるで憑き物が落ちたみたいに、輝いた……」
じっと入り口の方を見つめるアナさん。その表情はよく読み取れないが、少なくともリセアさんの症状が改善したことを喜んでいるのは間違いなさそうだ。
アナさんはそうして少しの間だけそちらへ視線を向けた後、ゆっくりと僕の方へと向き直ると、小さく頭を下げた。
「私からもお礼を言わせてください。ソースケさん、リセアの憂いを取り払ってくれてありがとうございました」
その声に、僕は微笑みと共に言葉を返す。
「いえ、それが僕の──」
「やべぇ! 剣と鎧忘れてた!」
そう言いながらドンっと宿に戻ってくるリセアさん。
その姿になんだか締まらないなと思いつつも、喜びを露わにする彼女のキラキラした表情を見て、僕は確かな達成感を感じるのであった。
するとすぐさまどういう状況か把握したようで、彼女は僕に「1階で待っててください」と言うと、半裸のリセアさんを連れてどこかへと行ってしまった。
ということで彼女の言葉に従い1階の席に座って待っていると、少ししてアナさんと、宿屋の備品だろうか大きめの麻服に身を包んだリセアさんがやってきて、僕の対面に並んで腰掛けた。
そしてアナさんは僕に「すみません、お待たせしました」と言った後、横に座るリセアさんへとジト目を向ける。
「まったく、リセアはもう少し恥じらいを持たないと」
「うー、すまねぇ……」
プリプリと可愛らしく怒るアナさんと、その横でしゅんとするリセアさん。その姿だけで、この2人の仲の良さがはっきりと見てとれた。
「それで、どうして朝からあんなに騒いでいたの?」
アナさんがそう問うと、リセアさんは思い出したとばかりにカッと目を見開く。
「そ、そうだった! なぁ聞いてくれよ! あたしの肌がな、もちもちつるつるになってんだよ! ほら、見てくれ! 触ってくれ!」
言って立ち上がり、前のめりになると、こちらにしなやかな筋肉のついた美しい腕を差し出してくる。……いつぞやのアナさんのような圧力である。
その圧に苦笑を浮かべつつも、まぁ腕ならいいかということで軽く触れてみる。
……なるほど。確かに完全によくなった訳ではないけど、それでも確かに昨日とは比べものにならない程に肌質が改善しているな。
血行が改善したり、マッサージオイルの保湿によって肌環境が良くなったりすることはある。しかしそれでもこんなにすぐに効果が出ることは当然ない。
おそらくこれは美肌(極小)と、あとはオイルによる一時的な効果が合わさった結果なのだろう。
……にしても 美肌(極小)でこれだけの効果って。美肌(大)とかになったらどうなるんだこれ? 肌が若返ったりでもするのか?
そう密かに戦々恐々としながらも、僕は彼女の腕に触れつつ言葉を返す。
「確かにだいぶ改善されてますね」
「そんな淡々とする話じゃねぇぞ!? 今まで何やってもよくならなかったのに、あのたった1時間で! こんなに!」
リセアさんはかなり興奮した様子でそう声を上げる。
……まぁ長年の悩みが、それもいつしか諦めてしまったそれが少しでも改善していれば、こういう反応にもなるか。
「なぁアナも触ってみてくれ!」
興奮覚めやらぬとばかりに続いてアナさんへと腕を差し出す。アナさんはその腕に優しく触れながら、柔らかい声音で声を上げた。
「……すごい」
「だろ? めっちゃ良くなってんだよ!」
「ずっと悩んでたものね」
「そうなんだよ! だからアナありがとな!」
「えっ……?」
「ソースケを紹介してくれてだよ!」
「ふふっ、どういたしまして」
「ソースケもありがとな!」
「喜んでいただけたのなら何よりですよ」
「うぉぉぉ!! なんかテンション上がりすぎてじっとしてられねぇ! よし! 今から魔物狩ってくるわ!」
「……えっ」
「んじゃ、そういうことで!! あ、アナこれ宿代な! ソースケ、またくるからな!」
「はい、いつでもお待ちしてま……って行っちゃった」
「すみません、朝から騒がしくて……」
「あはは、まぁそれだけ喜んでくれたということで」
そう言って僕が微笑むと、アナさんは肯定するように小さく頷いた後、その視線を宿の入り口の方へと向けた。
「それにしても……あんなキラキラした目のリセア、久しぶりに見ました」
そう呟くように言った後、アナさんはさらに言葉を続ける。
「まるで憑き物が落ちたみたいに、輝いた……」
じっと入り口の方を見つめるアナさん。その表情はよく読み取れないが、少なくともリセアさんの症状が改善したことを喜んでいるのは間違いなさそうだ。
アナさんはそうして少しの間だけそちらへ視線を向けた後、ゆっくりと僕の方へと向き直ると、小さく頭を下げた。
「私からもお礼を言わせてください。ソースケさん、リセアの憂いを取り払ってくれてありがとうございました」
その声に、僕は微笑みと共に言葉を返す。
「いえ、それが僕の──」
「やべぇ! 剣と鎧忘れてた!」
そう言いながらドンっと宿に戻ってくるリセアさん。
その姿になんだか締まらないなと思いつつも、喜びを露わにする彼女のキラキラした表情を見て、僕は確かな達成感を感じるのであった。
0
お気に入りに追加
474
あなたにおすすめの小説
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
俺だけ異世界行ける件〜会社をクビになった俺は異世界で最強となり、現実世界で気ままにスローライフを送る〜
平山和人
ファンタジー
平凡なサラリーマンである新城直人は不況の煽りで会社をクビになってしまう。
都会での暮らしに疲れた直人は、田舎の実家へと戻ることにした。
ある日、祖父の物置を掃除したら変わった鏡を見つける。その鏡は異世界へと繋がっていた。
さらに祖父が異世界を救った勇者であることが判明し、物置にあった武器やアイテムで直人はドラゴンをも一撃で倒す力を手に入れる。
こうして直人は異世界で魔物を倒して金を稼ぎ、現実では働かずにのんびり生きるスローライフ生活を始めるのであった。
俺だけ成長限界を突破して強くなる~『成長率鈍化』は外れスキルだと馬鹿にされてきたけど、実は成長限界を突破できるチートスキルでした~
つくも
ファンタジー
Fランク冒険者エルクは外れスキルと言われる固有スキル『成長率鈍化』を持っていた。
このスキルはレベルもスキルレベルも成長効率が鈍化してしまう、ただの外れスキルだと馬鹿にされてきた。
しかし、このスキルには可能性があったのだ。成長効率が悪い代わりに、上限とされてきたレベル『99』スキルレベル『50』の上限を超える事ができた。
地道に剣技のスキルを鍛え続けてきたエルクが、上限である『50』を突破した時。
今まで馬鹿にされてきたエルクの快進撃が始まるのであった。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる