上 下
34 / 37

1-33 放課後とクラスの番長

しおりを挟む
 あれから4日が経過し金曜日。

 その間、学校では女子に彩姫との仲を追及されたり、男子からは恨みがましい視線を向けられたりするが、ぼっちで居た頃よりは刺激的で楽しい日々を送れた。
 懸念点であった体育も何とか力を制御する事で乗り切った。彩姫の方も問題無かったようである。

 こうして迎えた放課後。彩姫が母親の手伝いと言う事でいつもの様に早々に帰宅。それを目にした前の席の柚菜と右斜め前の有紗による、ここ最近の日課にもなっているからかいと言うか、追及と言うか、とにかく2人からの質問をのらりくらりと躱したり、全く関係のない世間話の様なものをしていると、

「おい、一ノ瀬」

 という荒々しい声が突如聞こえてくる。話を止め、そちらへと振り向くとそこにはクラス内ヒエラルキーで最上位に位置する筋肉質なイケメン竜崎雷我りゅうざきらいがと、いつも彼と共にいる手下の様な男5人の姿があった。

 その姿を目にし、桔梗は「ついに来たか……」と思いつつも、それを一切表には出さずに人の良い笑みを浮かべると、

「えっと、雷我君だっけ。何かな?」

「ちょっとツラかせや」

 言って典型的な不良の様に顎をしゃくり、後方の入口を示す。そんな彼に桔梗は言葉を返そうとし、それよりも早く女声が響く。

「いっちーは今あたし達とおしゃべり中なんだから、邪魔しないでくれないー?」

「そうだよー! 邪魔しないで!」

 柚菜と有紗である。2人は話の邪魔をされたのが気に食わなかったのか、それとも単にクラスの男女仲の問題か、迫力のある雷我相手に全く臆する事なく声を上げる。

 雷我はフンッと鼻で笑う。

「無駄話だろ? こっちは一ノ瀬に用があんだよ。どっちが重要かなんて一目瞭然、いや一聴瞭然だよなぁ?」

「……たいした用じゃない癖に」

 柚菜がボソッと呟くと、雷我は片眉を吊り上げる。

「あ?」

「はいでたーすぐ凄む。そうすれば全員が全員従うと思ったー?」

 先程のお返しとばかりに、有紗が鼻で笑う。

「っ……テメェ」

 雷我の額に青筋が浮かぶ。
 何やら溜まっているものがあるのか、両者一触即発の雰囲気が漂う。

 このままでは性別の違いから乱闘とはならずとも、何かしら面倒な事にはなりそうである。

 ──という訳で、桔梗は一度小さく息を吐くと、

「……いいよ、行こうか」

「ちょっ、いっちー! ついていったらどうなるかわかってる!?」

「そうだよ! こんなのについて行っちゃダメ!」

 柚菜と有紗が慌てた様子で、桔梗に思い直すようにと声を上げる。
 その心配した声音に桔梗は少しだけ嬉しく思いながら、一切の動揺など無い静謐な心持ちのまま2人の少女の方を向き口を開く。

「何を考えてるかもわかってるし、何をするつもりなのかも何となくわかってるよ。けどまぁ──」

 視線を雷我へと向け、

「──問題無いかな」

 その言葉により、雷我の怒りの矛先が桔梗へと向く。

「良い度胸だなぁ! よし、着いてこい!」

 言って雷我は5人の仲間を連れ教室の扉へと向かう。桔梗は立ち上がると、それについて行こうとし……何やら思い出した様子で立ち止まると、振り返り柚菜達へと視線を向ける。

「……あ、先生に連絡とかしないでね。面倒だから」

「う、うん……」

「わ、わかったよ。本当、気をつけてねいっちー」

 2人の不安げな声に、桔梗はニコリと微笑む。その、これから危険が待ち受けているかもしれないのに、全く心配などしていないと言いたげな笑みに、2人はほんの少しだけ恐怖を覚えるのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...