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1-22 帰宅とお弁当
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「ただいまー」
「おじゃまします」
食事を終えた桔梗達は、相変わらず周囲の視線に晒されながらも帰宅した。その中には彩姫の姿もある。というのも、帰宅中に桔梗が誘った事から、彩姫は夕食まで家にいる事となったのだ。
手洗い等を済ませ、リビングへと向かう。到着と同時に購入品を広げ、皆で協力して整理する。結構な品数であったが、6人も居れば、それ程時間がかかる事もなく、あっという間に終えることができた。
整理整頓が終われば夕食までは自由時間である。ゲームをしたり、武器の手入れをしたり、アイテムボックスの整理をしたり。 各々好きなように過ごしているのだが、ここで桔梗が何故かキッチンの方へと向かい、エプロンをつけ始めた。
「桔梗様?」
未だ夕食を作るには早いこの時間に、何故キッチンの方へと行くのか。
少女達が疑問に思う中、そのうちの1人であるルミアは武器の手入れをやめると、立ち上がり桔梗へと近づいた。
「桔梗様……いかがされましたか?」
言って首を傾げる。対し桔梗は、別に特別な事ではないとばかりに平然たる態度で、
「ん? いや、特にする事もないし、お弁当でも作っちゃおうと思ってね」
「あぁ、明日からですものね」
桔梗の言葉に、ルミアは納得したように頷く。
そう、色々な出来事があり思わず忘れてしまいそうになるが、桔梗は未だ高校生。現実世界へと帰還してからは休日が続いた為、家に居たり出掛けたりしたが、月曜つまり平日になれば、当然学校に行かなくてはならないのである。
「そ。弁当といえば朝作るのが一般的なんだけど、ほらアイテムボックスがあれば、時間的拘束が無くなるし……なら、暇な今やっちゃおうと思ってね」
アイテムボックス内では時間の経過が無い。つまりボックス内の食料については消費期限の心配をする必要は無く、また出来立ての料理をいつでも食べる事が可能になるのだ。
全く、電化製品が思わず真っ青になる様な性能である。
「ほんと便利だよね、これ」
転移前と比較し、改めてアイテムボックスひいては魔法の便利さを実感して感動する桔梗。
そんな彼の、好きなおもちゃを買ってもらった幼子の様な純粋な笑みに、ルミアは自分の事の様に嬉しくなったのか自然と笑顔になると、うんうんと頷いた。
その後、数拍開けルミアが口を開く。
「ところで桔梗様、何かお手伝いできる事はございますか?」
「んー、あ、じゃあ卵焼きでも作ってもらおうかな」
「わかりましたわ!」
お手伝い出来る事が嬉しいのか、ウキウキとした様子でルミアは手を洗う。
桔梗はその間にもお弁当に使用する材料の準備をしようとし、ここでふと何かを思いついた様な顔をした後、視線をリビングの方へと向けた。
「あ。ねー彩姫」
「……ん、何かしら」
ゲームのコントローラーを手に彩姫が桔梗の方を向く。どうやらシア、ラティアナの2人と、最近一ノ瀬家で密かにブームとなっているファリヲカートをしているようだ。
因みにリウは皆とソファに座りながらもゲームはやらず、アイテムボックスの整理をしている。意外と綺麗好きなのである。
そんな少女達の姿を目に収めながら、桔梗は再度口を開く。
「もしあれなら、彩姫の分のお弁当も作ろうか?」
「え、良いの?」
目を丸くする彩姫。桔梗は頷くと、
「うん、たいして手間じゃないし、むしろ材料を使い切りたいもんでその方が助かる」
「ほんと? ならお願いするわ」
「はいよ」
「手伝いは必要かしら?」
5人分が6人分に増えた所で大して手間は変わらない。とは言え、流石に桔梗に全てを任せ自身はゲームで遊んでいるという状況はいかがなものかと考えた彩姫がそう問う。
対し桔梗はうーんと少し考えた後、ルミア1人居れば十分と結論付け、
「いや、今回は良いかな。それよりもみんなの遊び相手になってあげて」
「わかったわ。お言葉に甘える事にする」
最早家族に近い彼らにとって、過ぎた遠慮は美徳にならず、彩姫は優しげな笑みを浮かべると、うんと頷いた。
という事で、桔梗はルミアと共にお弁当作りを始めた。彩りや栄養バランスなどを気にしながら協力して次々と料理を完成させていく。
そして完成し次第、桔梗と彩姫の分はお弁当箱に詰め、お留守番となる少女達の分はお皿に取り分けルミアのアイテムボックスへと入れていった。これで明日、少女達は出来立ての料理を食べる事ができる。
出来上がった彩姫と桔梗の弁当については、ある程度冷まし、桔梗の分は彼自身のアイテムボックスへ、彩姫の分は彼女のアイテムボックスへ入れてもらおうと直接手渡した。
「はい、彩姫」
「ありがと、桔梗。明日のお昼が楽しみだわ」
学校でも桔梗の料理が食べられると、ウキウキな彩姫。その可愛らしい様子に、桔梗はニコリと微笑んだ後、
「みんなの分はルミアが持っているからね」
と少女達に伝える。
口々にお礼を言う少女達。そんな中で1人状況が理解できていないのか、ラティアナはキョロキョロと周囲を見回した後、
「ごしゅじんたま、あしたどこかいくのー?」
言いながら、トテトテと桔梗の側へと走り寄ってくる。桔梗は首を小さく傾げ、
「あれ、ラティには言ってなかったかな。明日からね学校に行くんだよ」
そう。現実世界の時間としては、金曜日以来3日ぶりに、異世界も含めた時間としては約3年振りに、桔梗は学校に行く事になるのである。
──苦い思い出しかない、学校に。
「おじゃまします」
食事を終えた桔梗達は、相変わらず周囲の視線に晒されながらも帰宅した。その中には彩姫の姿もある。というのも、帰宅中に桔梗が誘った事から、彩姫は夕食まで家にいる事となったのだ。
手洗い等を済ませ、リビングへと向かう。到着と同時に購入品を広げ、皆で協力して整理する。結構な品数であったが、6人も居れば、それ程時間がかかる事もなく、あっという間に終えることができた。
整理整頓が終われば夕食までは自由時間である。ゲームをしたり、武器の手入れをしたり、アイテムボックスの整理をしたり。 各々好きなように過ごしているのだが、ここで桔梗が何故かキッチンの方へと向かい、エプロンをつけ始めた。
「桔梗様?」
未だ夕食を作るには早いこの時間に、何故キッチンの方へと行くのか。
少女達が疑問に思う中、そのうちの1人であるルミアは武器の手入れをやめると、立ち上がり桔梗へと近づいた。
「桔梗様……いかがされましたか?」
言って首を傾げる。対し桔梗は、別に特別な事ではないとばかりに平然たる態度で、
「ん? いや、特にする事もないし、お弁当でも作っちゃおうと思ってね」
「あぁ、明日からですものね」
桔梗の言葉に、ルミアは納得したように頷く。
そう、色々な出来事があり思わず忘れてしまいそうになるが、桔梗は未だ高校生。現実世界へと帰還してからは休日が続いた為、家に居たり出掛けたりしたが、月曜つまり平日になれば、当然学校に行かなくてはならないのである。
「そ。弁当といえば朝作るのが一般的なんだけど、ほらアイテムボックスがあれば、時間的拘束が無くなるし……なら、暇な今やっちゃおうと思ってね」
アイテムボックス内では時間の経過が無い。つまりボックス内の食料については消費期限の心配をする必要は無く、また出来立ての料理をいつでも食べる事が可能になるのだ。
全く、電化製品が思わず真っ青になる様な性能である。
「ほんと便利だよね、これ」
転移前と比較し、改めてアイテムボックスひいては魔法の便利さを実感して感動する桔梗。
そんな彼の、好きなおもちゃを買ってもらった幼子の様な純粋な笑みに、ルミアは自分の事の様に嬉しくなったのか自然と笑顔になると、うんうんと頷いた。
その後、数拍開けルミアが口を開く。
「ところで桔梗様、何かお手伝いできる事はございますか?」
「んー、あ、じゃあ卵焼きでも作ってもらおうかな」
「わかりましたわ!」
お手伝い出来る事が嬉しいのか、ウキウキとした様子でルミアは手を洗う。
桔梗はその間にもお弁当に使用する材料の準備をしようとし、ここでふと何かを思いついた様な顔をした後、視線をリビングの方へと向けた。
「あ。ねー彩姫」
「……ん、何かしら」
ゲームのコントローラーを手に彩姫が桔梗の方を向く。どうやらシア、ラティアナの2人と、最近一ノ瀬家で密かにブームとなっているファリヲカートをしているようだ。
因みにリウは皆とソファに座りながらもゲームはやらず、アイテムボックスの整理をしている。意外と綺麗好きなのである。
そんな少女達の姿を目に収めながら、桔梗は再度口を開く。
「もしあれなら、彩姫の分のお弁当も作ろうか?」
「え、良いの?」
目を丸くする彩姫。桔梗は頷くと、
「うん、たいして手間じゃないし、むしろ材料を使い切りたいもんでその方が助かる」
「ほんと? ならお願いするわ」
「はいよ」
「手伝いは必要かしら?」
5人分が6人分に増えた所で大して手間は変わらない。とは言え、流石に桔梗に全てを任せ自身はゲームで遊んでいるという状況はいかがなものかと考えた彩姫がそう問う。
対し桔梗はうーんと少し考えた後、ルミア1人居れば十分と結論付け、
「いや、今回は良いかな。それよりもみんなの遊び相手になってあげて」
「わかったわ。お言葉に甘える事にする」
最早家族に近い彼らにとって、過ぎた遠慮は美徳にならず、彩姫は優しげな笑みを浮かべると、うんと頷いた。
という事で、桔梗はルミアと共にお弁当作りを始めた。彩りや栄養バランスなどを気にしながら協力して次々と料理を完成させていく。
そして完成し次第、桔梗と彩姫の分はお弁当箱に詰め、お留守番となる少女達の分はお皿に取り分けルミアのアイテムボックスへと入れていった。これで明日、少女達は出来立ての料理を食べる事ができる。
出来上がった彩姫と桔梗の弁当については、ある程度冷まし、桔梗の分は彼自身のアイテムボックスへ、彩姫の分は彼女のアイテムボックスへ入れてもらおうと直接手渡した。
「はい、彩姫」
「ありがと、桔梗。明日のお昼が楽しみだわ」
学校でも桔梗の料理が食べられると、ウキウキな彩姫。その可愛らしい様子に、桔梗はニコリと微笑んだ後、
「みんなの分はルミアが持っているからね」
と少女達に伝える。
口々にお礼を言う少女達。そんな中で1人状況が理解できていないのか、ラティアナはキョロキョロと周囲を見回した後、
「ごしゅじんたま、あしたどこかいくのー?」
言いながら、トテトテと桔梗の側へと走り寄ってくる。桔梗は首を小さく傾げ、
「あれ、ラティには言ってなかったかな。明日からね学校に行くんだよ」
そう。現実世界の時間としては、金曜日以来3日ぶりに、異世界も含めた時間としては約3年振りに、桔梗は学校に行く事になるのである。
──苦い思い出しかない、学校に。
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