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1-1 ヒロイン達が日本にやってきた!?

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 あまりにも想定外過ぎる出来事であり、流石に1人では対処出来ないという事で、あの後すぐに彩姫へと連絡した。

 因みに、直接の連絡先を知らなかった為、学校の連絡網から彼女の実家へと電話したのだが、彩姫が大の男嫌いだと知っている女性──口調的に家政婦か何かか?──が電話に出てしまい、大層驚かれた……なんて事もあったりはしたが、とりあえずは彼女を呼び出すことに成功した。

 住所を伝え、思いの外近所だった事が判明したりと色々ありながら、待つこと数分。

 あいも変わらず赤茶の髪をツインテールに結んだ美貌の少女、彩姫がうちへとやってきた。
 とりあえず家内へと招き、詳しい事情を説明。全ての説明が終わった後、一拍置くと彩姫は一言。

「……えっと、つまりどういう事かしら?」

 桔梗の話と、それが現実である事を証明する目前の光景に、彩姫は困惑の声を上げる。

「いや、だから……日本へ帰って来たら、突然光が溢れてきて、それが収まった時には4人が目の前に……」

「全く意味がわからないわね」

「同感だよ」

 説明した桔梗自身も理解できず、何とも言えない笑みを浮かべる。
 彩姫も同様の表情を浮かべていたのだが、一拍置き小さく息を吐くと、少し照れくささを滲ませた声で、

「……まぁでも良かったんじゃない? 私もみんなと居れて嬉しいし」

 そう言う彩姫の視線は、『もう離れない』と言いたげに桔梗の身体に掴まる少女達と、楽しげに桔梗の顔を弄るラティアナへと向けられる。
 そして、もう見れないと思っていた『異世界での日常』に優しい笑みを浮かべる。

「うん、それはそうなんだけど。ほら、これから彼女達が日本で生活していくとなると、色々と問題があるような気がぁー……って、ラティ! 会話中に口で遊ばないのー!」

 眼前でぐにぐにと桔梗の顔を弄るラティアナに、桔梗が柔らかく注意すると、彼女はきゃっきゃと楽しげに逃げるように飛んでいく。

 本来会話を遮るような悪戯はあまりよろしくないのだが、彼女はまだ人間換算で3歳。まぁ、そういうお年頃なのだ。

 彩姫はその様子にふふっと声を上げて笑った後、再度会話を続ける。

「確かに問題もあると思うけど……でも何とかなるんじゃない?」

「楽観的だなぁ」

「いや、だってこっちでも変わらず使みたいだし、上手くやれば彼女達にも不自由無い生活をさせてあげられると思うわ」

 何気無く伝えられた衝撃の事実に、桔梗は目を丸くする。

「え……? 魔法使えるの?」

「うん……ほら」

 言って、彩姫が手のひらに小さな炎を出す。

「うわ、ファイアだ。……マジで魔法使えるんだ」

 ──希望が見えてきた。

 桔梗は思う。それだけ魔法というものは、有用な力なのだ。

 しかし、そうは言ってもまだ問題はある。

 そんな桔梗の考えを見透かしているのか、彩姫が口を開く。

「それに、金銭面なら私が居るわ。存分に頼りなさい、桔梗」

 胸に手を当て彩姫はドヤ顔を浮かべる。
 しかし、それも当然か。
 彼女の母親は誰もが知るアパレルブランドを運営する会社の社長兼ファッションデザイナーなのだ。
 そして、彩姫はそんな母親の仕事の手伝いをしていると聞いた事がある。

 恐らく、その際に彼女自身も収入を得ているのだろう。

 しかし──

「いや、流石にそれは──」

 金銭面で誰かの援助を受けるというのは、やはり抵抗があるもので。
 とは思いつつも、彼女達を養えるだけのお金を早急に用意できないのは事実である。

 それにお金だけではない。
 仮に彼女達がこの世界に永住するのならば、当然住処だって──

「……ん? そういや、みんなはどこに住むんだ?」

 ハッと思い出したかのように疑問を口にする桔梗に、彩姫は至極当然とばかりに、

「そんなの、桔梗の家に決まってるでしょ」

「……え?」

「いや、だってみんなこの世界の事全く知らない上に、知り合いも私達しか居ない訳だし。それに、そもそもみんな桔梗の側を離れようとはしないと思うわよ」

「ねっ」と、少女達へ視線を向けると、彼女達は、迷惑を掛けてしまうかもしれないが、それ以外は考えられないと思ったのだろう、ウンウンと頷く。

 桔梗も異世界での生活を想起し、その通りだと感じた為、何も反論はしなかった。

 彩姫が話を続ける。

「だからこそ、金銭面で苦労すると思うの。……4人の年頃の女の子を養うとなると、相当な額が必要だわ。バイトなんかではまず賄えない」

「……間違いない」

 例え、スキルが使えたとしても、それは一介の高校生がお金を稼ぐ上では必要の無いものばかりだ。──いや、稼ごうと思えばやりようはあるのだが、思いつくものはどれも悪目立ちしてしまうものばかりというのが正しいか。

 認める桔梗に、彩姫は再度言葉を投げかける。

「さあ。私を頼りなさい、桔梗。この子達含めて私が養ってあげる」

 ……うーん、頼るしかないか。ならばまずは──

「対価は……」

「月2回私と2人きりでデート……でどう?」

 彩姫の言葉に、少女達がピクリと反応する。

 対し桔梗は想像以上に安易──勿論、恥ずかしさなどの感情を除いた上でだ──な要求に拍子抜けといった風に、

「えっ……それだけで良いの?」

「それだけ……って、あんたこれが如何に価値のある事か分かってないの?」

 3人の少女も「分かってないの?」といった視線を向ける。ラティアナはまだそういう事を理解できない年齢であるが、仲間外れは嫌だったのか、桔梗の眼前で腰に手を当て、口を尖らせた。

 そんなじとっとした視線に、しかし桔梗はよくわからないといった様相で、

「価値のある……?」

 桔梗の言葉に、彩姫はため息をつくと、桔梗に聞こえ無い程の声で、

「はぁ……相変わらずの自己評価の低さね」

「…………?」

 彩姫の言葉が聞こえず、桔梗は首を傾げる。

「とにかく。月2回のデートが条件で、当分の間資金を援助──って事で良いかしら?」

「それでお願いします……」

 少し情けないが、ここで強情を張り、ラティアナ達に貧しい思いをさせるのはよくないだろう。

 そう思った桔梗は、彩姫に向けて頭を下げる。
 その際、自分達の生活費で迷惑を掛けていると理解しているラティアナ以外の3人も、申し訳なさげに頭を下げ──とりあえず生活費の問題については解決するのであった。
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