1 / 3
↑新着順(上へ行くほど新しい)
おばあちゃんと犬
しおりを挟む
おばあちゃんはおとなりさんの家へ行きました。
「ワンワン! ワンワン!」
玄関前で犬が吠えるのに、
「こんにちは」
おばあちゃんは手を振りました。
おとなりさんに回覧板を渡すと、
「犬、飼い始めたのね」
「そうなの」
そんな話をしました。
――
それから……
「ワンワン! ワンワン!」
おばあちゃんはおとなりさんへ行くたびに、犬に吠えられ、
「こんにちは」
あいさつしながら、そっと手を振りました。
(柴犬だからねぇ……)
おばあちゃんは思いました。
(日本犬は警戒心が強いのよね。
だから懐かないのよねぇ……)
おばあちゃんは犬を飼っていませんが、近所の外国の犬が親しげに寄ってくることがある反面、日本犬は警戒して吠えてくることが多いので、そんなことを思いました。
――
ある日、おばあちゃんはいつものように、おとなりさんの家へ行きました。
「……」
(あれ?)
おばあちゃんは犬小屋の前の犬を不思議そうに見ました。
『ワンワン! ワンワン!』
そういつも吠えていた犬が吠えずに、おばあちゃんを無視するのです。
(今日は元気ないのかしら?)
そう思いながらおばあちゃんは
「こんにちは」
いつものようにそっと手を振り、あいさつしました。
犬はチラリとおばあちゃんを見て、寝転がりました。
――
何日か後、おばあちゃんはまたおとなりさんの家へ行きました。
「……」
(あら。まただ……)
おばあちゃんはまたちっとも吠えずに寝そべる犬を見つめました。
「こんにちは」
あいさつをしても、チラリとおばあちゃんを見て、寝そべったままです。
――
それからも、犬がおばあちゃんに吠えない日々が続きました。
おばあちゃんはちょっと心配になってきました。
「……」
今日も
「こんにちは」
吠えない犬にあいさつをしたおばあちゃんは、おとなりさんに聞いてみました。
「最近、犬が吠えなくなったわね……
どうかしたの?」
おばあちゃんはドキドキしながら尋ねました。
『病気だから最近元気ないのよ』
『この犬はもう年だから最近元気ないのよ』
そんな答えが返ってくるのではないかと、予想したのです。
しかし……
「ああ……そうね?」
おとなりさんはあっけらかんと言いました。
「おばあちゃんの顔を憶えたから。
吠えなくなったんじゃない?」
(えっ!?)
おばあちゃんはびっくりして、玄関近くに相変わらず無言で寝そべる犬を見つめました。
相変わらず無愛想ですが……
(おやまあ……)
無愛想な柴犬は、おばあちゃんのことを記憶したので、吠えなくなったのです。
(ふふ……)
おばあちゃんは、ほっこりしました。
――終――
「ワンワン! ワンワン!」
玄関前で犬が吠えるのに、
「こんにちは」
おばあちゃんは手を振りました。
おとなりさんに回覧板を渡すと、
「犬、飼い始めたのね」
「そうなの」
そんな話をしました。
――
それから……
「ワンワン! ワンワン!」
おばあちゃんはおとなりさんへ行くたびに、犬に吠えられ、
「こんにちは」
あいさつしながら、そっと手を振りました。
(柴犬だからねぇ……)
おばあちゃんは思いました。
(日本犬は警戒心が強いのよね。
だから懐かないのよねぇ……)
おばあちゃんは犬を飼っていませんが、近所の外国の犬が親しげに寄ってくることがある反面、日本犬は警戒して吠えてくることが多いので、そんなことを思いました。
――
ある日、おばあちゃんはいつものように、おとなりさんの家へ行きました。
「……」
(あれ?)
おばあちゃんは犬小屋の前の犬を不思議そうに見ました。
『ワンワン! ワンワン!』
そういつも吠えていた犬が吠えずに、おばあちゃんを無視するのです。
(今日は元気ないのかしら?)
そう思いながらおばあちゃんは
「こんにちは」
いつものようにそっと手を振り、あいさつしました。
犬はチラリとおばあちゃんを見て、寝転がりました。
――
何日か後、おばあちゃんはまたおとなりさんの家へ行きました。
「……」
(あら。まただ……)
おばあちゃんはまたちっとも吠えずに寝そべる犬を見つめました。
「こんにちは」
あいさつをしても、チラリとおばあちゃんを見て、寝そべったままです。
――
それからも、犬がおばあちゃんに吠えない日々が続きました。
おばあちゃんはちょっと心配になってきました。
「……」
今日も
「こんにちは」
吠えない犬にあいさつをしたおばあちゃんは、おとなりさんに聞いてみました。
「最近、犬が吠えなくなったわね……
どうかしたの?」
おばあちゃんはドキドキしながら尋ねました。
『病気だから最近元気ないのよ』
『この犬はもう年だから最近元気ないのよ』
そんな答えが返ってくるのではないかと、予想したのです。
しかし……
「ああ……そうね?」
おとなりさんはあっけらかんと言いました。
「おばあちゃんの顔を憶えたから。
吠えなくなったんじゃない?」
(えっ!?)
おばあちゃんはびっくりして、玄関近くに相変わらず無言で寝そべる犬を見つめました。
相変わらず無愛想ですが……
(おやまあ……)
無愛想な柴犬は、おばあちゃんのことを記憶したので、吠えなくなったのです。
(ふふ……)
おばあちゃんは、ほっこりしました。
――終――
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる