大人向け童話、児童文学集

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先延ばし太郎、本を読む

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 あるところに、何でも『先延ばし』してしまうので『先延ばし太郎』と周りの人から呼ばれる者がいました。

 先延ばし太郎は自身の悪癖『先延ばし』をできるだけ少なくしようと日々学んでいました。

 ある夜、先延ばし太郎は寝る前に、こんなことが書いてある本を読みました。

『やらなくてはいけないことを、
「やりたい」「やりたくない」。
「好き」「嫌い」
……と考えるのではなくて。
「どうでも良い」か「どうでも良くない」かで、考えよう。
そして「どうでも良くない」と思ったなら「先延ばし」せずにやろう――あなたにとって「どうでも良くない」ことなのだから、きっとできる』

 例えば、『仕事』は、『どうでも良いこと』か、『どうでも良くないこと』か。
 ……などと考える、と。

(なるほど)
 と先延ばし太郎は思いました。
(仕事はやりたくないけど、『どうでも良いこと』ではないな……)

『僕にとって仕事は「どうでも良いこと」ではない。
つまりは「大切なこと」なんだ、たとえやりたくなくて、できるだけ先延ばししてしまっても』
 と先延ばし太郎は思いました。

 それから先延ばし太郎は色々なものを『どうでも良いこと』かどうか考えてみました。

 そして『どうでも良くないこと』と思ったものを大切にしよう、先延ばしせずにしようと改めて思ったのでした……


 ―― 

 本を読むのをやめて、電気を消して布団に寝転がった先延ばし太郎は、 
(今日は良い考え方を読んだなあ……)
 と思いました。
(明日から、きっと今までより『先延ばし』が減るに違いないぞ)

 そして、『ふっ』とある質問が思い浮かびました。
(僕にとって『僕』は。
『どうでも良い』だろうか?)

 その『答え』はすぐに思いつきました。
『どうでも良くない』、と。

 先延ばし太郎は自分が自分のことを『どうでも良くない』と思っていることに満足して、目をつむり、眠りに就きました。


 ――

 さて、明日から先延ばし太郎の先延ばしは少しは減るのでしょうか……?






 ――終――
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