僕の存在理由

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僕の存在理由

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「これから、ここで一緒に暮らすジュゼラーテだ。ジュゼラーテ挨拶を。」


「初めまして、ジュゼラーテと申します。」

ぺこりと白いに近い金髪が上下に動いた。

そして、そんな彼の言葉を受けた僕らは、上から順番に挨拶をしていく。

「初めまして、リペスト家の長男のデレスです。」

「長女のレミーナーですわ、初めまして。」

僕は、兄弟達が彼と言葉を交わす様子をぼーっと見つめる。

「おい、お前も挨拶しなさい。」

「はい、お父様。」

無事に頂けたので挨拶をする。

「初めまして、アリュールと申します。」

ぺこりとお辞儀をすると視界の端に黒に近いと言われるくすんだ青灰色の髪が映りこんだ。

「これからジュゼラーテも兄弟として仲良くするように。」

「「「はい、かしこまりました。」」」

他の兄弟に合わせて声を出し、お辞儀をする。


そんな僕らの様子を目にも入れず、父様は談話室の扉の外へ出ていってしまったのだった。















ジュゼラーテは、とても優秀だった。彼がリペスト侯爵家の養子に入ってすぐに家庭教師がついたが、どの家庭教師も口を揃えて彼を褒めた。


「ジュゼラーテ様は素晴らしい!」

「なんの才能も持ち合わせている。」

「なにをやらせても完璧にこなす。」

皆口ぐちにそう言った。

そして、自分に向けてこうとも言った。

「それに比べてアリュール様は...」

「この歳になっても...」

でも、それは仕方ないことだと思った。遠くで見る彼は、とてもキラキラと輝いている。多分...いや、絶対に彼は神に愛され者なのだ。

そうだから、彼と僕とを比べるなど、きっと、とても烏滸がましいことなのだ。

視界の端に写った眩しい光から僕はそっと目を背けた。















今日は家庭教師が来る日だ。

学を得ることは楽しいが、今日の勉強はどうしても苦手だった。

「さあ、早く」

「はい、先生。」

先生がズボンの前をくつろげ、パンツをズラす。出てきた先生のものを必死に大きくするように口いっぱいに咥える。

これは、いつも顎が外れそうになるから苦手だ。匂いも味もキツいし。早く終わってくれないかなっと一生懸命しゃぶる。ようやく、先生が口の中に出してくれたのだ。それを、ごくりと飲み込む。先生がいそいそと立ち上がり部屋から出ていく様子をぼーっと見つめる。

昔は、こんな事をするのは嫌だと主張しては、殴られ蹴られを繰り返し、僕の心は諦めきっていた。

僕は、一体何をしているんだろうか。


















闇は光に憧れるが、光は闇のことを疎ましいのだろう。


は、を見ると、嫌悪感をあらわにした顔でじろりっと睨みつけ、こちらに背を向けて歩き出してしまう。



…少しだけ悲しくなった。なぜなら、彼だけは皆とは違うと勝手に期待していたりしてしまったのだ。


まあ、他人なんて期待しても裏切られるのだから仕方ないのだけど。
















今日は、お父様に呼び出され、執務室に来ていた。お父様がソファーに座ったのを確認して、僕は床に座りこみ話を聞いた。

なんでも、話の内容は、僕をこの国の第二王子に嫁がせるという話だった。

そのために平民の母から生まれた卑しい生まれの僕を養ったのだとまた言い聞かせられた。

使

前々から薄々思っていたけど、どうやらお父様の目には僕は人間として写っていないらしい。

だから、
















ガッシャンっと扉の外から音がした。時計を見ると、夕食の時間なのだろう。扉を開けて床に置かれているトレーを取りに行く。トレーは、勢いよく落とされたのだろう。床にはスープが飛び散り、かちこちのパンも落ちてしまっていた。パンを拾い、トレーを持ち上げながらもったいないとアルミの皿から床にこぼれたスープを見ていると。

ふと、誰かの視線を感じ頭を上げると彼が呆然とこちらを見つめていた。

どうしたのだろうと、思いながら彼に会釈する。

彼は、はっとしたような顔をして慌ただしく去っていってしまった。

…一体何があったのだろう?













今日も今日とて僕は、ぼーっと窓の外を見つめていた。鉄格子の中僕の部屋から眺めても空は綺麗だ。そして、綺麗な鳴き声を持ち、自由に風にのれる翼を持つ鳥に憧れた。

神様、神様がこの世にいるのであれば、僕もあんな風に自由に飛び回れる鳥のようになりたいです。

無性に心中で切に願った。













今日は偉い人が来ているらしい。なので僕は部屋に閉じ込められた。部屋の外から鍵をかけ僕を部屋の外に徹底的に出さないつもりらしい。

おかしいよな、そんなにしなくても人前なんかにこんな見すぼらしい姿で出るわけないのに。

僕は頬杖をつきながら窓から空をながめていると、


「おい。」

窓の外から声がした。

僕は、さあっと顔が真っ青になった。なぜなら、お父様に今の僕の様子を見つかったらマズイからだ。

声がする方にゆっくりと顔を向けると、最近我が家でよく目にする彼がいた。

「なあ、お前は「ごめんなさい、ごめんなさい!空を見ていただけなんです!!ごめんなさい!!もうしないのでこの事は、報告しないで下さい!!」えっお、おい!?」

何か彼は言っていたが僕は怖くなって部屋の中へ引っ込んだ。


彼には報告しないでと言ったが、勿論、報告はされていたようだ。誰が報告したかは知らないけど。

今日も今日とてお父様は、僕のことを殴り飛ばした。

唯一の楽しみ窓の鉄格子の隙間もしっかりと閉じられてしまった。それだけは、とても残念でならなかった。
















今日から、学園に通う。
学園に通えるなんて夢見たいだ!
なんでも、第ニ王子の婚約者にもそれなりの知性が必要らしい。
もう、そんなことは、どうでもよかった。ただ、僕は一時でも自由に美しい外の世界へ飛び出せることが嬉しかったのだ。








学園でも相変わらず一人だけど、家よりは断然居心地がいい。いっそ帰りたくないと思うほどだ。でも、行きも帰りも他人と同じ馬車空間にいるなんて耐えることは中々しんどい。
無言の空気の中、僕は、そっと震える体を手で抑えるのだった。











最近、第二王子が平民の子に惚れ込んだという噂話が聞こえてくる。なんでも、この平民の子は、学園で人気な生徒から気に入れられているらしい。あちらこちらで下品だとか卑劣だとか妬みの声が聞こえてくる。心底どうでもいい話だが、第二王子の婚約者の座は雲行きが怪しくなってきたなと他人事のように考えていた。









平民の子は、王子だけではなく、色んな人と仲がいいらしい。最近、彼といるのもよく見かける。僕は、それをぼんやりと見つめる。ふと、平民の子と目があった。平民の男の子は、得意げな顔でこちらを見てきたが、どう反応したらいいのか分からない。一応、なにもせずに逸らすのは失礼かと思い、ぺこりとお辞儀だけ返しておく。そうすると、よく兄弟がやるような嫌なものを見たような顔をされた。


慣れた反応に僕がもう何かを感じることは無かった。

















時はすぎ、卒業式を迎えた。
卒業式のパーティの会場で1人で佇んでいたら、王子が僕の名前を呼んだ。それはもう、怒鳴るように。


ただの婚約者である僕に何の用だろうと思って王子の前に向かうと、王子に平民の子が寄り添うようにくっついていた。


なんでも、王子曰く、僕がこの久しぶりに見た平民の子を虐めたらしい。平民の子は、大きな瞳をうるうるさせながら、王子を止めようとしていた。

王子は、平民の子を慰めながら、僕に婚約破棄を言い渡してきた。




(あぁ)





ふと周りに視線をやると父がこちらを冷めたような瞳で見ていた。

目は口ほどに物を言う。その言葉がピッタリなんじゃないかと思った。その冷めた瞳から、お前はもう用無しだ。と言っているのが伺えた。










その瞬間、










王子は、婚約破棄を言い渡してもこちらに何かしら難癖をつけてきていた。




「大体お前は、いつも無表情で何を考えているの分からないし。まじでキモイんだよ。早く俺の前から消えてしまえ!!」



「消える...ですか?」


何故かその言葉だけ心に深く刻まれた。


やっと反応を返した僕に機嫌が良くなったのか、こちらに目を向けて

「そうだよ!お前は、もう俺の婚約者じゃないんだ!さっさと死んでしまえ!!!」










いつから...いつから、だろうか。いつの間にか、いや随分前からもう限界だったのであろう。

















「それは、とても魅力的なお話ですね!」


あぁ、自分でも自分の声が、口角が、気分が、上がっている事に気づいた。



王子は、そんな僕をみて鳩が豆鉄砲くらったような顔をしていたが。


周りもなぜだか、息を飲んだようにごくりと喉を鳴らしていたが。


そんなのは、もうどうでも良かった。







僕は、皆が静まり返っている中、会場から廊下へ足を向けていた。





廊下は誰1人として人がいない。



バルコニー近くにきた。ここは、大きな学園のため窓の外はとても高い。


あぁ、ずっと昔から憧れていたあの青さ自由だ。思わずうっとりと目を細めた。



大きな窓を開け放つ。バルコニーの下はとても高い。




バルコニーの柵の上に乗る。高いなと他人事のように感じた。




風が僕の髪を撫でるように優しく吹く。こんなに優しくされるのは、いつぶりかな。







ふと、後ろから声が聞こえた。




振り返るとそこには、見慣れた金髪がいた。



「アリュール!!!」


彼は、なぜだか、焦ったような怒鳴りそうなような急いだような懇願するような声で僕の名前を呼んだ。


そんな彼の様子に僕は驚いた。




 




「名前覚えていたんだ」


少しだけ心が暖かくなった。























「ありがとう...
































さようなら」


















僕は、その日、空を飛んだ。




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