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編入生なんてシナリオイベントなかったわ。
05
しおりを挟む「使い魔がいなくなったなんて大変だ! 優しいヴィオレティーナはもちろん探してあげるんだろう?」
――という、スヴェンの余計な一言のせいで使い魔探しをすることになってしまった。
ニコニコ笑うスヴェンに、喉奥まででかかった抗議の言葉は飲み込んでしまう。きっと、私が断ってもスヴェンは探すのを手伝ってあげるんだろう。
目の届かないところで妹と関わってしまうのなら、目の届くところで関わらせればいい。
深く溜め息を吐いたヴィオラをスヴェンは目を細めて眺める。
「一週間前から姿が見えない、ねぇ」
羊皮紙にまとめられた情報は以下の通りだ。
カトレアの使い魔は一尾の狐で、名前をフォーリアと言う。
非常に賢く、人間の言葉を理解していたらしい。
いなくなったのはちょうど一週間前の夜から、次の日の朝にかけて。その日は朝からそわそわして、落ち着かない様子だった。
朝、いくら呼びかけても出てこず、今日まで時間があれば探して回っていたが、影も形も見当たらず、途方に暮れていた。
「なにか事件に巻き込まれたとか!」
「もし、事件ならもっと多くの使い魔が犠牲になっていてもおかしくないわ」
「じゃあ、家出とか!」
「彼の使い魔……フォーリアの思念は寮内で途切れてた。それも、忽然と」
太陽の寮の監督教師に許可を得て、カトレアの寮部屋を覗かせてもらったのだ。綺麗に整頓された部屋に、確かにフォーリアの残り香があった。
細く、今にも消えてしまいそうな残りがは、寮内を漂い、ぷつりと途切れていた。
「……そういえば、スヴェン、貴方が編入してきたのも一週間前だったわね」
「それがどうかした?」
にっこりと、笑うスヴェンに首を振った。
偶然だろう。なんでもない、と告げ、はたと首を傾げる。
「スヴェン、貴方の使い魔は?」
「散歩だってさ。きっと森の方を探検しているんじゃないかな」
思い浮かべたのは細長いシルエットの使い魔。真っ白くつるりとした胴体に、理知深い青の瞳。しゅるしゅると舌をチロチロ出しながらスヴェンの体に巻き付く使い魔の蛇。
とても大人しく、イブと名付けられた美しい使い魔だ。
「イブが、彼の使い魔を食べたとかないわよね?」
「まさか! まず、食べたとしたらお腹が大きくなっていてすぐにわかるだろ。それに、僕の使い魔を疑うよりなら、もっと疑う使い魔がいるはずだよ。狼とか、ね?」
きらりと、瞳が怪しげに色光らせる。
狼と言われて思い浮かんだのは、友人の使い魔。そういえば、彼の使い魔もイヴという名前だった。
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