魔拳のデイドリーマー

osho

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第22章 双黒の魔拳

第539話 ゼットVSジャバウォック Revenge

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 ミナトがゼットの治療、および改造による強化をするにあたって重視したのは、2点。

 1つは、数週間後に控えている、ジャバウォックら『神域の龍』との決戦に間に合うこと。

 もう1つは、ゼットに見合った特殊な強化方法をどのようにするか、ということ。

 前者については説明の必要はないだろうが、後者に関しては中々に頭を悩ませる問題だった。

 単純に機械類、あるいはマジックアイテムの類を埋め込んで強化するだけなら簡単だが、その程度の小手先の強化では、ゼットの成長速度や、この先の成長の可能性に見合わない。
 そこらの魔物ならまだしも、将来的には、この龍は、その一時的な、文字通り『とってつけたような』強化を追い抜いてしまうスペックを持っており、その際、埋め込んだものが邪魔になるような未来すら考えられる。

 そうなると理想としては、ドレークに作った『インフィニティ』のように、持ち主、ないし使い手に合わせて武器自体も成長していくようなものが望ましい。

 しかしミナトはそれで満足せず、それに加えて、ゼット自身のスペックそのものを底上げするような強化をできないものかと考え……それを実行した。

 イメージしたのは、自分の『強化変身』の一形態である、『アルティメットジョーカー』で使っていたシステム。
 『ワルプルギスのマント』や『ゲオルギウスの剣』、『ウロボロスの大砲』のように、必要に応じて必要な武装を作り出して使うこと。そして、それらの運用に必要になるであろう、膨大な魔力の供給。

 そしてそのための補助技術として、『ヤマト皇国』で学んだ『陰陽術』を組み込んだ。

 そうして施された強化は、改造手術というよりも、もはや『品種改良』に近いもので。

 結果としてゼットは、元々の体質も相まって、それまでとはさらに次元違いとすら言えるような力を手に入れるに至った。

 肉体のスペックは、改造に引っ張られる形で極限まで強化され、強化の前後で天と地ほどの性能の差を手にするに至った。

 全身を包む鱗や甲殻は、形容するのが難しいほどの強度の装甲となると同時に、柔軟に形態や性質を変化させる変幻自在の矛であり盾となった。

 そして、組み込まれ、そこから覚えた様々な力が文字通り結晶し……その胸に現れたのは、ミナトの研究者人生の中でも、トップクラスに『やらかした』と自他共に認める、否常識な発明品……その、生体機能による再現。
 内部に極小の、魔力由来のブラックホールを再現した、膨大なエネルギーを放出する動力炉……『魔法式縮退炉』。

 ゼットの改造完了時、ミナトが乾いた笑いとともに『やりすぎたかも』とまで口にした……文字通りの怪物が産声を上げ……そして、その力が振るわれる時が、ついに来ていた。


 ☆☆☆


 先に述べたように、ゼットの改造には、機械系のパーツは一切使われていない。

 にも関わらず、その姿が……あくまで装甲や武装の形状のみとはいえ、まるで機械の龍のような形に……ミナトが思わず『あれ、僕サイボーグ作ったっけ?』とまでこぼしたような形に変容しているのは……ある種の『収斂進化』のようなものであるのかもしれない。

 背部、尾部、翼、脚、その4か所に取り付けられたブースターから魔力の炎が噴出し……一瞬のうちに凄まじい速さにまで加速したゼットは、自身を弾丸、いやミサイルに見立ててジャバウォックに激突。
 その鱗を砕いて下の肉を大きくえぐりながら、その巨体を吹き飛ばした。

 激痛と、自らが見下していた『下等種族』に手傷を負わされたことに憤るジャバウォックであるが、そんな怒りなど知ったことかとばかりに、ゼットは飛翔して追撃を始める。

 重厚な装甲に覆われた腕部に、幾筋かの琥珀色の光が走り……それに沿って装甲が縦に割れる。
 そうしてできた隙間から、シャキン、という音とともに、光で形作られた刃が4本伸びて出た。

 長さがゼットの全長の半分ほどもあろうかという巨大なそれは、まるで光の鉤爪であり……両腕に出現したそれを振りかざして、先ほど以上の高速で突撃する。

 それを迎撃せんと振り下ろされる、膨大な魔力のこもったジャバウォックの巨腕。

 強化前のゼットをたやすく粉砕したあの拳の一撃、その何倍もの破壊力が込められたその一撃はしかし……猛烈な勢いで体をスピンさせたゼットの甲殻に傷一つつけることかなわずにはじかれ、逆にその回転に乗せて振るわれた光爪の一撃で、腕の半ばまで切り裂かれた。

 激痛に顔をしかめて体を硬直させるジャバウォックの懐に飛び込み、胸の部分でクロスさせるように爪をふるうゼット。さらに急上昇して、首筋でも。

 次々に体に刻まれていく、これまでになく大きな傷の数々。
 何物をも通さないはずの自分の鱗が、紙同然にたやすく切り裂かれていく現状に、ジャバウォックはしかし……困惑も恐怖も通り越して、さらに怒りを燃え上がらせる。

「下等種族ごときが……生意気な真似をォ!!」

 直後、全身から膨大な魔力をほとばしらせて体を強化し、それによって傷ついた個所を一気に再生させ始めるジャバウォック。

 異変を悟って即座に退避したゼットの目の前で、そのあまりの魔力によって全身がバンプアップし、先ほどよりもわずかに大きくなったように見えるジャバウォックは咆哮する。

「どのような手を使ったのか知らぬが、この我の体に傷を刻むなど……生意気な、小癪な、不届きな輩めがァ! 貴様からは『資格』は感じぬが、もはやどうでもいい……この手で粉々に粉砕して血肉を食らい、その力も我が物としてくれようぞ!!」

 そう叫ぶなり、握った両手を大きく振り上げるジャバウォック。

 それを見て、遠巻きに見ていた手下の龍たちが『まずい、逃げろ!』と一目散に飛んでいく。

 その直後、勢いよく地面にたたきつけられた両拳から衝撃波が全方位に向かって放たれ、範囲内にあったものを無差別に破壊していく。

 地面も、木々も、岩も、放置されていた『コアトータス』の亡骸も。全て逃さず砕いて殺していくその暴虐的な力の波道は、なるほど逃げなければその巻き添えで手下の龍達も死ぬものだっただろう。
 ジャバウォックは、手下が逃げるとわかっていて放ったのか、あるいは巻き添えになっても構わないと思っていたのか、そもそもいちいち考えていなかったのか……そのあたりは定かではない。

 しかしゼットは、迫りくるその破壊から逃げるそぶりはなく……両腕の爪を振りかぶるように構える。

 胸にきらめく『縮退炉』――型の生体機関――が光を放つと同時に、その光爪が一層凶悪な光を放って巨大化し始め……そのサイズは、ゼットの全長の数倍にまで伸びる。

 それが振るわれ、衝撃波と激突し……瞬間、その場の大気が悲鳴を上げて引き裂かれたかのような轟音が響き渡った。

 両者のちょうど衝突した地点にあったすべてが破壊されて塵になり……相殺される形で2つの攻撃は消滅する。

 が、それにかまわず……というよりも、そうなることを予想していたのだろう。ゼットは立ち上る土埃の中を突貫し、すぐさま腕に新たな爪を生やしてジャバウォックめがけて飛ぶ。

 一方、ジャバウォックもまた、その光景にさらに苛立ちを募らせながら、今度はその口元に力を収束させていく。土埃を突破してゼットが出てきた瞬間に、最大威力のブレスをぶつけるべくチャージを進め……しかし、一向に出てこない。

 あの速さならば、むしろジャバウォックのチャージが済む前に出てきてもよさそうなものだが、そのことを不審に思うより先に……ジャバウォックの真下の地面が弾けて、地中を掘り進んでいたゼットが急上昇して出てくる。
 ジャバウォック自身も空中に浮かんでいたことが災いして、先ほどの『コアトータス』の時のように、その接近を察知することができなかった。

 急上昇したゼットは、爪ではなく膝蹴りで……脚部のブースターからの噴射の勢いも載せたそれを、ジャバウォックのあごに叩き込んで、ガチンッ、と牙同士をぶつけ合わせて強引に口を閉じさせる。
 それと同時に、魔力の乗った衝撃波を……些細なものではあるが、膝から叩き込む。

 その些細な、しかし浸透して伝わった衝撃により……口内にチャージされていたブレスが誘爆して暴発、ジャバウォックの口の中で暴れまわる。
 たまらず開いた口から、爆炎、というよりは、暴発したあとの炎の余波ないし爆風と、肉の焼け焦げた匂いの乗った黒煙が立ち上り……衝撃で牙の半分以上が中からの衝撃で吹き飛んだ。

 これにはたまらずジャバウォックも悲鳴を上げるが、そうしてできた決定的な隙間をゼットが見逃すはずもない。

 腕に生やしていた光爪に魔力を集中させ、ブースターの勢いを載せて突撃し……その首に刃を突き立てる。

 本能的に危機を悟ったジャバウォックは、首元に極限まで力と魔力を込めることで硬質化させて防御するが、それをも押しのけて徐々にゼットの刃は奥へ、奥へと食い込んでくる。

 このままいけば、ジャバウォックは首と胴体が泣き別れになるか、そうでなくとも脊髄や軌道が断絶され、決定的な……致命傷を負うことになる。

 かつてないほどに深刻な命の危機を前に、ジャバウォックはどうにかしてそれを回避しようとして……しかし、救いは意外なところから現れた。

 もうすでに3分の1ほども光爪がめり込み、あとほんのわずかで脊髄を切り裂くに至ろうかとしたところで……突如横から飛んできた何かが、ガギン、と硬質な音とともにその爪をはじいて、ジャバウォックの体から強引に抜き取った。

 それと同時に、ゼットの体にも強烈な衝撃が叩き込まれ……大きく弾き飛ばされる。

 ジャバウォックとゼット、その双方が『何だ?』といぶかしみながら目を向けると……そこにいたのは、黒い軍服のような装束に身を包んだ……1人の人間、らしき何者か。

 脚を振りぬいた、おそらくは蹴りでゼットの体を弾き飛ばしたのであろう、その男……ハイロックは、油断なく残心しながらゼットをにらみつけ、そのままジャバウォックに語り掛ける。

「ジャバウォック殿、わが主の命により助太刀しに参った。この場は協力して切り抜けた上で……傷も浅くはありますまい、一旦、拠点に戻って傷をいやすことをお勧めする」

「っ……ふん、恩でも売りに来たつもりか? ……よかろう、今はその提案に乗ってやる」

 ハイロック・リナージ。種族、スローン族。
 『ダモクレス財団』最高幹部の1人にして、ミナトに匹敵する肉体強度と、ミナト以上の体術を併せ持つことで知られ……その実力を知る者達を戦慄させた男。

 おそらくはその上司である、財団総裁・バイラスの指示でここに来たのであろう男は、魔力で徐々に傷を癒していくジャバウォックを背にかばいながら、油断なくゼットをにらみつける。

 ゼットもまた、目の前の男が、何も考えずに飛び込んでいいような男ではないと……ジャバウォックよりも体は小さくとも、決して油断してはいけない存在であると察していた。

「貴様は、バイラスの直属の護衛ではなかったのか? 奴のことは放っておいてもいいのか?」

「心配ご無用。総裁は今、何者も手出しできない場所に身を置いていらっしゃいますがゆえに……ここでこのラインと、あなたを失うのは我々にとっても痛手。故にここは、協力して切り抜けるようにと私が派遣され……」





「却下で」





 その瞬間、
 どこか緊張感に欠けるような声とともに……突如として空間を突き破り、ハイロックの真横に現れたミナトが、その横っ腹に飛び回し蹴りを叩き込む。

 とっさにハイロックは、その驚異的な反応速度でそれを防御したものの、勢いを殺しきることはできずに大きく吹き飛ばされる。

 そしてその吹き飛んだ先で、何もないはずの空中で、『何か』にその体が激突し……まるでガラス板のように、空間がガシャァン!と割れる。
 そのままハイロックは、その向こうに開いた『亜空間』に飲み込まれ……一瞬でその出入口は閉じてしまった。

 またしてもいきなり現れたミナトに、いきなりどこかへ消えたハイロック。
 状況の急変の連続に、ジャバウォックとゼットが驚く中で……ミナトはゼットのほうを見て、手短に告げる。

「あいつは僕がやる。お前、引き続きこっち。OK?」

 そのまま一拍。
 ゼットは黙ってミナトの横を通って後ろに抜け、ジャバウォックに相対する姿勢を取る。

 それを肯定ととったミナトは、『じゃ、任せた』とだけ言って……今しがたハイロックを送ったのと同じ亜空間への入り口を自分も開き、そこへ飛び込んだ。



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