502 / 611
第22章 双黒の魔拳
第502話 強くなるためには…?
しおりを挟むその後、いくつかのことを話し合った上で、WEB会議?は終わった。
機材(という名のマジックアイテム各種)を片付けながら、ふと思いついたことをテオに聞いてみる。
「ねえテオ、こないだのシャラムスカの事件の時にさ、その場にいた『アバドン』と、ゼットとかいろんな龍が、すごい天敵同士みたいな感じで戦ってたんだけど……バイラスは『龍と獣は本能的に敵同士だから』だって言ってたけど、どういうことなのかわかる?」
コレ、地味に不思議だったんだよね。今までは僕、冒険者人生の中でも、本とかで読んだ知識ででも、そんなこと見たことも聞いたこともなかったし……なんなら、龍と獣が一緒のエリアに住んでたりする時も、争ったりする様子なんてなかったし。縄張り争いとか獲物の争奪戦は別として。
けど、今言った通り……こないだのシャラムスカの一件では、龍は獣を、獣は龍を、それぞれ不俱戴天の敵同士とでも言わんばかりに敵視して戦っていた。素人目にも、こいつら天敵同士なのかと思えてしまうくらいに。
「それは多分……『獣』と『龍』の双方が、特定のルーツを持つ者達だったからでしょうね。具体的には……『龍神文明』時代、あるいはそれ以降に生まれた新種なのだと思います」
テオの説明によると……予想ではあるが、その敵対関係は、『龍神文明』の時代に、『渡り星』から降りて来た龍達が行っていた『龍の遺伝子ばら撒き政策』に端を発するらしい。
こないだ聞いた通り、龍達は自らの遺伝子を、人、獣、魔物を問わずばら撒いて、強力なエネルギーを内包する個体を作り出し、それを捕食することでエネルギーの回収をもくろんだ。
しかし、龍達の予想を超えて強力な獣が現れ始めたために、龍は地球から撤退したんだっけ。
この時、『神域の龍』は、地上の獣達にとっては、言ってみれば外来種。自分達にとっては、自分達を食料として狙ってくるのみならず、血筋に変なものを混ぜようとしてくる、侵略者だ。色々な意味での。
だから基本的に、当時、獣に限らず、地球上におけるほとんど全ての種族にとって、龍は敵だったらしい。それこそ、『ドラゴノーシス』を発症して龍化した獣にとっても。
ただコレ、一部例外があって……『神域の龍』に対して敵対せず、むしろ味方するようにふるまった存在がいた。
それは、『神域の龍』の遺伝子によって、突然変異で生まれた新種の龍。
地球にもともと存在した龍が『神域の龍』の遺伝子を注がれた際、『ドラゴノーシス』の発症ではなく、ごくまれに遺伝子自体が変化して、全くの新種として生まれ変わることがある。
双方の『龍』の遺伝子やら何やらが、中途半端に近かった結果としてそうなったらしい。
こうして生まれた新種の龍は、地球の生物でありながら『神域の龍』に近い性質を持ち、『神域の龍』とは、理由がない限り敵対しようとしないらしい。
むしろ、『性質が近い』からだろうか、地球の獣達の方から『神域の龍』と同一視して襲われ、それに抵抗して戦うことの方が多かったそうだ。
しかし、『神域の龍』達が撤退して地上を離れてからは、その争いも徐々になくなった。もともと地上にいた種族の派生であり、自分達を積極的に害する存在でもないとわかったからか、獣達もそこまでしつこく敵対することはなく、やがて普通の動物や魔物と同じように暮らすようになった。
縄張りを分ける形ですみわけが行われ、時には何かしらの理由が合って戦ったりするような、ごく普通の魔物として生態系の中に組み込まれた。
「シャラムスカでは、『血晶』の発する初代龍王の力に充てられて、長い間眠っていた『龍神文明』時代の本能が呼び起こされたんだと思います。その当時から存在した古代種や、それに近い遺伝子を持った魔物ほど、力に充てられた際に強く本能が刺激されて……龍ならば獣を、獣ならば龍を、強烈に敵視したでしょうから」
「……それってさ、これからも『血晶』を使うたびに、あるいはそれを使って『ライン』をつないだり、その力が放出されるたびに同じようなことが起こるのかな?」
「……可能性は高いと思います」
龍の襲撃に加えて、大陸中で魔物が狂暴化する可能性まで出て来た。
シャラムスカの時の龍と獣の暴れ方、互いを強烈に敵視するあの感じを直で見てるこちらとしては……アレが大陸中に広まるのかと思うと、背筋が寒くなるな……。
せめてもの救いは、それなりに当時の『獣』あるいは『龍』の遺伝子や本能を残している種族でなければ発生しない、ってことだけど……古代種って結構ヤバいの多いからな……
龍が暴れ出すのに合わせて、各地で普段は大人しくしてる伝説級の魔物が狂暴化したりする可能性にも注意しないといけないわけだ。……頭が痛いな。
まとめ。『龍』と『獣』の中でも、龍神文明の時代にルーツを持つ特定の古代種は、『初代龍王』ないし、強力な『神域の龍』の力に充てられると、はるか昔の本能を呼び覚まされて、それぞれを敵視し始め、暴れ出す、と。
ちなみに……やはりというか、『ディアボロス』もその1つだった。
ゼットの奴も、めっちゃ獣……『アバドン』とか『アポカリプス』のこと敵視してたからなあ……コトが始まったらあいつも暴れ出すのかな? 面倒な……
「でもまあ、王女様の話だと、今んとこ最悪の方向に話は進んではいるけど、すぐに事態が動くってこともないんでしょ? 向こう……チラノース側も、色々準備があるからって」
と、横で会議を聞いていたエルクが言う。
うん、王女様はそう言ってた。
あの国は間違いなくバカなことやるだろうけど、それでも考えなしに『よしやってみよーぜ!』みたいな真似はしないだろうって。
強力な兵器として運用するならば、最低限それが使えることの確認、どの程度のことができるかの確認は必要不可欠。また、運用するための最低限の研究とか下準備もするだろうから、時間ならある程度はあるだろう、と。
もっとも、こっちはこっちで色々やることがあるらしいから、時間に余裕があるという意味では必ずしもないそうだ。色々暗躍とかするつもりでいたもんな、第一王女様も。
しかしそうなると、僕らにとっても今は『多少時間がある』ということになる。急いで何かしなきゃいけないような用事も、今のところ特にない。
なら、これからほぼ確定で起こる災厄に対して備えておかなければならないと思うのは自明の理なわけだけど……
「……やっぱ、修行でもする? 強くなっておくに越したことはないし」
「エルクさんの言う通り、地力を上げて有事に備えておくのがいいかもしれませんね」
「そうね。……私としても、このままやられっぱなしってのは面白くないしぃ……次に会う時には、あの鎧巨人の防御も貫通してやりたいし……」
エルクに続き、ナナ、シェリーもそんなことを。
見れば、どうやらそれ以外も全員が賛成のようだ。うんうん、と頷いたり、見るからにやる気満々、って感じに目が燃えていたりする。
うん、それならいっそ……ここからは皆でパワーアップパートと行きますか、久々に。
けどそこで、クロエがちょっと言いづらそうに言った。
「でもさ、修行って言っても……具体的には何やるの? 水を差すようだけど……時間はあるって言っても、そんな何ヶ月もあるわけじゃないでしょ? 短期間で劇的に強くなる方法なんて、そうあるもんじゃないと思うけど……」
確かに。第一王女様の見立てだと、コトは動き出すまで、最短で3週間、長くて1ヶ月半から2ヶ月、ってところらしいからな。それまでに、となると……色々限られる。
「まあ、確かにそこは考えなきゃいけないわよね。私達、一応普段の訓練も欠かさずやってるわけだし……それをちょっとハードにしたり、新しくメニューを組んだくらいじゃ、大して変わらないわね」
続けて、シェリーも肯定するように言う。
確かに僕ら、普段からきちんとトレーニングしてるもんね。さぼらず。
しかも、僕と師匠が共同開発したハイテクトレーニング器具めっちゃ贅沢に使って、室内なのに高地トレーニング並みの負荷かけたりとか当然のようにしてるし。
これを多少ハードにしたところで……っていうのはある。
多少なりうぬぼれや自画自賛が入るのを承知で言うけども……僕も含めて、割と僕らの戦闘能力って、今現在既に、限りなく最高効率で鍛え続けてるんだよなあ……それをこれ以上強化するのであれば、普通じゃない方法、ないし観点が必要になるだろう。
うーん、と皆で悩んでいる中、思いついた人から次々に挙手して案を出していく。
「何か新技でも覚えてみる?」
「手札が増えるのはいいけど……絶対値的な実力としてはどうなのかしら? そこまで大きな差にはならないんじゃない?」
「覚えるにしても、それ自体も中途半端な……付け焼刃みたいな感じにならないようにしないといけませんし……それだったら、今ある手札を鍛えてみる方がいいのでは?」
「でも、今の水準から鍛えるのも難しいんですよねー、体にしろ技にしろ。さっき話になった通り」
「それならもう、安直に……武器かなあ、やっぱり? うちのリーダーの十八番でもあるしね」
「それはまあ、当然やるつもりだよ。皆の武器も防具も、この機会にアップグレードする」
装備については、『ヤマト皇国』での妖怪大戦争の時に、出来得る限りのパワーアップをすでにしている。
しかしあの時は、超長期の遠征中だったから、使える設備にも資材にも限りがあった。
そのため、『オルトヘイム号』の中にあるラボで、今ある資材(持ってきていたもの+現地調達)でできる範囲での強化にとどまっていた。もちろんその当時できる最善を尽くしはしたけど、物足りないものを感じていたのも事実だ。
今はこうして、拠点にいるわけなので、僕のホームである『D2ラボ』の設備と、保管してある素材も全て使って、さらにあの時よりも習熟・理解の進んだ各種技術等を生かして、あの時以上のスペックを誇る武器防具やアイテムを作れるはずだ。
アルマンド大陸式の魔法はもちろん、アドリアナ母さん由来の『霊媒師』の能力、ヤマト皇国で学んだ『陰陽術』や、そこで手に入れた素材各種……使えそうなものはたくさんある。
それを考えれば、ある程度のパワーアップの目途は立っているわけだけど……でもやっぱり……
「でも、やっぱり武器や道具だけに頼りっぱなしっていうのもなんだかなー……や、ミナト君の作ってくれる武器に文句があるわけじゃなくてね?」
と、シェリー。大丈夫大丈夫、わかるわかる。ていうか、僕も同じこと考えてたし。
作る立場でこんなこと言うのもなんだけど……武器だけ更新して強くなる、ないし、なった気になるっていうのもあまりいい気分じゃないよね。パワーアップした分は、武器が変わった分だけだ、みたいな感じに思えてさ。
きちんと自分もパワーアップして、パワーアップした武器と合わせて、相互に高め合う形になりました、っていうのがベストなわけだけど……それ考えると、結局最初に戻るんだよなあ。
既に出ている結論としては、普通のやり方じゃパワーアップの幅が足りないってことで……けどそれなら『普通じゃないやり方』って何だって話になって……そこで止まって、装備とアイテムの方に流れたんだっけね。
うーん……普通じゃないやり方か……。
まさかドーピングするわけにもいかないし、そんな簡単にみんなの強化なんて…………まてよ?
(……そうだ、『アレ』なら……うん、やってみる価値はあるかも)
「あのさ、提案なんだけど」
そういうと、全員の視線が僕に集中した。
「あら、何かいい方法でも思いついた?」
「うーん……多分、いい方法の部類には入ると思うんだけど……ちょっと邪道でもある。ただ、やり方はすごく簡単だしすぐ済むから、試しにやってみるくらいはいいんじゃないかな?」
そう言って僕は、軽く握った手をすっと前に出し……直後、その手に魔力を……否、『魔粒子』を集中させる。集中した魔力が張り詰めたような空気を作り出し、漏れ出た波動、ないしプレッシャーを皆も感じ取っていることだろう。
しかしそんな中で、僕の光る手を見て……エルクをはじめ、何人かはハッとしたような表情になった。おや、わかった……いや、『思い出した』かな?
まあ、別に引っ張ってもいいことがあるわけでもなし。さっさと答え言っちゃおう。
「でね、皆。提案なんだけど……もっかいやってみない? 『他者強化』」
0
お気に入りに追加
8,526
あなたにおすすめの小説
もふもふ転生!~猫獣人に転生したら、最強種のお友達に愛でられすぎて困ってます~
大福金
ファンタジー
旧題:【もふもふ転生】病弱で何も出来なかった僕。森で猫カフェをオープンすると大好評♪最強種のお客様ばかり遊びに来ます
生まれた時から奇病を患い、病院から一歩も出たことなかった主人公(大和ひいろ)夢は外を走り回る事だったが、叶う事なく十二歳で他界したのだが……。
気がつくと見たこともない場所に立っていた。
そこには創造神様と女神様がいて、前世でいっぱい頑張ったご褒美に、好きなスキルや見た目にしてくれると言ってくれる。
「ご褒美を決めろって……急に言われてもっ」
ヒイロは慌てて猫獣人の姿、鑑定やアイテムボックス等のチート能力をお願いし、転生を果たすが。
どうやら上手く説明出来て無かったらしく。何もない謎の森に、見た目普通の猫の姿で生まれ変わっていた。
「これって二足歩行する普通の猫!?」
その謎の森でドラゴンの親子に出会い、料理を作ってあげる事になったり。
さらには猫獣人の村で、忌み子と虐げられていた猫獣人の子供を助けたり。
家を作ったら、いい匂いにつられて最強種ばかりが度々遊びにきたり。
だがそれだけではなかった。ヒイロには隠された力が……!?
このお話は、ヒイロが毎日を楽しく生きている内に、良きせぬハプニングに巻き込まれたりするお話。
※ハプニングのせいで、なかなかカフェはオープンしません。
※二章カフェ編がやっとスタートしました。
※毎日更新がんばります!
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
【R18】両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が性魔法の自習をする話
みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。
「両想いでいつもいちゃいちゃしてる幼馴染の勇者と魔王が初めてのエッチをする話」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/575414884/episode/3378453
の続きです。
ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。