魔拳のデイドリーマー

osho

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第19章 妖怪大戦争と全てを蝕む闇

第434話 天下分け目の戦

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 関ケ原の戦い。
 日本史上でも特に有名な戦いの1つじゃないかと個人的には思っているこの戦いは、東軍と西軍に分かれ、徳川家康とか石田三成とか小早川英明……だっけ? やばい忘れ始めてる知識。
 後は……島津豊久とか宮本武蔵がいたってことはなぜかやけにはっきり覚えてる。なぜか。

 ともかく、たしか別名……『天下分け目の関ケ原』とか呼ばれるくらいに、その当時の日本の行く末を大きく決定づけた一大決戦だった。
 ここで勝利した東軍、その総大将だった徳川家康は、その後、天下人の地位についたのだから。
 ……どんな経緯でそうなったのかまで詳しくは覚えてないけど。

 そして、現在ここで行われている戦いもまた……この『ヤマト皇国』の行く末を左右するレベルの戦いであると言っていい。

 『九尾の狐』率いる西軍と、『酒吞童子』率いる東軍の戦い。
 そこに、人間側の表の権力も混ざってきてるもんだから……どえらい規模になっとる。マジで天下分け目の戦だ。



 今現在、すでに戦いが始まってしばらく経ってるんだが……軽く振り返ってみよう。

 午前9時くらいだったと思う。周囲を山やら森やらに囲まれた戦場で、『九尾軍』と『酒吞童子軍』は相まみえた。
 数の上ではこっちが圧倒的に優勢だが、その多くを占めるのは人間の兵だし……向こうは妖怪の比率が高い上、『百物語』で強化してる個体が多い。油断することは許されない状況である。

 で……よく時代劇とか歴史映画とかである『我こそはうんたらかんたら』という口上は……あるかと思ったが、なかった。いきなりバトル始まった。

 というのも、向こうの軍の中に多数確認された『邪気』を纏った個体が……敵を確認した瞬間、指示を待たずにいきなり突撃してきたのだ。あとはもう、なし崩し的に大乱戦にシフトした。

 主に最初は、妖怪は妖怪と、人間は人間と戦う場面が多く見られた。あるいは、妖怪と戦う力を持つ『陰陽師』を前面に押し出して、人間も上手く妖怪を押し戻し、討ち取っていく。
 会敵している面での戦力は拮抗しているため、一進一退っていう感じで進んでいた。

 戦況に動きが見られたのは、敵の妖怪戦力が集中しだした時だ。
 こっちは比率の関係上、人間のみで陣形を構築している箇所が少なくない数ある。陣形の中央部分もその1つであり……もっとも数が多く、また表の権力が戦果を求めていることも手伝って、ほとんどが人間の兵士で構成されていた。

 そこを狙って、妖怪達が集まってできた集団が大挙して突っ込んでいった。

 歩兵に比べれば圧倒的に少数の『陰陽師』では、その猛攻撃を止めることはできず、徐々に後退していく。それをいいことに、どんどん攻め込んでいく妖怪達の軍勢。周囲にいた他の部隊も、穴ができたと見てここに殺到していった。

 このままなすすべなく陣形は食い破られ……中央突破を許す形になるかと思われた。
 しかしそこで……こちらが張っていた罠が発動する。

 中央の前面を守っていたのは確かに人間の軍なんだが……それは前半分だけ。
 後ろの半分は……実は、人間に扮した、僕の『CPUM』の軍団が構えていた。
 足軽用の傘とか鎧で、武装という名のカモフラージュをしていたため、気付かなかっただろうが……中身はランクにしてA相当の強さを持つ『デストルーパー』の軍団だ。
 装備も、足軽装備の下にはアーマーがついてるし、粗末なものに偽装しているが、剣とか槍も一瞬で元の性能に戻せる。高い攻撃力を持つ光の刃に変化させ、エネルギー弾も放てる。

 中央をもう少しで食い破れる……と思わせて、さっきまでの数倍硬い陣形がそれを阻む。というか、普通にそこらの妖怪を凌駕するスペックなので、完全に止められる。

 『デストルーパー』はこちらからの指示一つで統率の取れた集団行動をとらせることもできる。というかそういう戦い方前提で作ってあるので、まるで集団で一つの生き物みたいに動かすこともできるのだ。個々の戦闘能力は高くても、統率の『と』の字もない、集団行動が絶望的なごろつき妖怪連中を相手取るくらい、簡単である。そう――


 ――こんな風に、陣形全体を一気に動かして、またたく間にU字の形で半包囲に持っていくことくらい、朝飯前なのだ。


(うろ覚えだけど……ハンニバルの『カンナエの戦い』の真似、提案して試してみて正解だったな。さすが、現代でも『戦争芸術』と呼ばれるだけのことはあるか)

 食い破るはずだった中央が破れず、そのまま突出しすぎて左右から挟まれることになった妖怪の軍勢。続々と後ろから後続がやってくるため、後退することもままならない。

 しかも最悪なことに……わずかずつでも後退できれば、という希望すら摘み取られる出来事がその後に待っていた。

 ところで、さっき言った『カンナエの戦い』って知ってるかな? 知らない人はまあ、検索すれば出てくるとは思うけど……世界最高の軍師の1人として知られる『ハンニバル・バルカ』が用いた戦術で、さっき言った通り、その完成度から、現代でも『戦争芸術』とまで呼ばれ、戦術研究の対象として挙げられることがあるほどのそれである。
 細かい部分は長くなるので省くけど、この戦術は、兵科ごとの特性や兵の錬度、地形なんかを計算した上で、実に鮮やかに敵を包囲殲滅に持ち込むために練り上げた戦術だ。

 わざと錬度的に脆い傭兵を中央に配置し、両サイドは重装備の兵士で固める配置をとる。
 結果……敵の攻撃を受け止めていると、両サイドはしっかりしていて押されることはないまま、徐々に中央の兵士達だけが押されて陣形が後ろに伸び、U字になる。
 その中に埋め込むように突出していく敵軍。そこに……背後から、機動力を生かして騎兵が回り込み、包囲陣形は完成……そのまま全方位から攻め立てられ、ローマ軍は壊滅した。

 同じことを今やっているわけだが……今回僕らは、背後から逃げ道を塞いで包囲を完成させるのに、機動力で回り込む騎兵の代わりに、その場で発生させるアンデッドを使った。

 例によってミシェル兄さんに、死んだ敵兵をアンデッドにしてもらい……そこにさらに術式を重ねがけしして、アンデッド兵に『デストルーパー』の装甲を纏わせ、強化する。
 もともと『デストルーパー』は、スケルトンをひな形に使い、人工筋肉と装甲を取り付ける形で組み上げたCPUMだ。後付けで強化するくらい、わけはない。

 突如として背後にまで現れた兵士に追い立てられ、完全包囲の陣形に持っていかれた妖怪の軍勢は……あえなくそのまま壊滅させられた。

 これにより、軍全体の3割近い妖怪兵力を失った鬼の軍。
 人間の兵士との比率が徐々に変わって来ている中、こちらは畳みかけるように、伏兵として用意していた軍を投入。

 それには、ミシェル兄さんが召喚したアンデッドや、僕のCPUMも含まれていて、動揺して動きが鈍くなっている反乱軍を次々に追い立てて打倒していく。

 完全に流れがこっちに傾いたところで……っと、ここまでが、戦争らしい戦争のハイライトだな。


 ああ、今更ながら僕ら……今、本陣に設営された天幕の中で、立体映像で映し出される戦場を見ながら、作戦とか色々指示を出してる状況なんだけど……そこに、1人の兵士が駆け込んできた。

「報告です! 戦場の複数個所にて、非常に高い戦闘能力を持つ妖怪、およびそれからなる部隊が出現! 現在展開中の戦力では止められません! ご指示を!」

「……来たわね」

 ぼそっとそう短く呟いたタマモさんは、目を細めて、いよいよその時が来たことを告げる。

「間違いなく『鬼』の幹部クラス、あるいはその直属クラスの連中よ。敵にとっては切り札、しかし同時に弱点でもある……後がない戦い、追い込まれれば否応なしに出てくることになるとは思っていたけど……ようやく出てきてくれたわね」

「だとすればタマモ様、人間の兵士はもちろん、式神や『あんでっど』、その他雑兵の類では、応戦は難しいかと。やはりここは……」

「ええ……総員、戦闘用意! 出るわよ!」

「「「了解!」」」

 タマモさんの号令と共に……とうとう回ってきた出番に、僕ら『九尾軍』の戦闘要員は、声をそろえて返事をした。

 敵が『幹部クラス』の強敵を投入してきて、それが一山いくらの兵士たちじゃ止められないなら、こっちもそれ相応の精鋭をぶつければいい。
 というか、そうするしかない。このままじゃ、いたずらに兵士を殺されるだけだ。

 姿を見せた、敵のトップ戦力を各個撃破して、キリツナを含む敵軍の『柱』を残さず折る。その後、あらためてこちらの『数』によって敵軍を飲み込み、戦を終結させる。
 言うほど楽でも簡単でもないだろうが……これが一番手っ取り早いのも事実だ。

 相手は……四代目酒吞童子・キリツナを始め、幹部のタキとリグン(と、その直属の精鋭たち)、そして……リュウベエと、カムロ。
 楽な相手は1人もいない。気を引き締めていかないとな。


 ☆☆☆


 一方その頃、『セキガハラ』より遠く離れた北の大地……『エゾ』にて。

 ―――ドォォオオォオォン!!

 白雪に覆われた冬山に、空気を震わせて轟音が鳴り響く。
 爆音と振動に耐えきれず……山の斜面に積もった雪が崩れ、雪崩が起こった。周囲のものを、動物も妖怪も巻き込みながら、すさまじい勢いで斜面を流れ下っていく。

 ちっぽけな人間の命など、たちまち奪ってしまえるであろう、そんな大自然の猛威は……

 ―――ズバァァン!!

 白装束に無精ひげの男……リュウベエが降りぬいた刀の一撃で、いともたやすく真っ二つに切り裂かれ、散らされてしまった。

 それをやってのけたリュウベエは、雪崩が割れてできた隙間を猛スピードで駆け抜け、雪煙の中を突っ切って上に飛び出す。
 踏めば足が沈みそうな新雪の上を、軽やかな足取りで走りぬける。

 一瞬たりとも足を止めることはない。
 止めればその瞬間……やられるとわかっているからだ。

「……! 流石だな、『白雪太夫』……雪山では侮れん実力だ」

 直後、リュウベエの動きを先読みして飛んできた、何本もの氷の矢。
 当たれば『痛い』『冷たい』では済まない。こめられている氷の妖力が爆発的に放出され、たちまち氷漬けにされてしまうだろう。

 リュウベエはそれらを全て切り払い、同時に妖力や冷気をも散らしてしまう。
 だがその背後に、雪の中をモグラのように潜行して進んできた『白雪太夫』……ミスズが現れ、氷でできた刀を振るう。

 背後を見ずに刃だけをそちらにやって、氷の刃の一撃を防いだリュウベエだが……刃と刃が触れた瞬間、なんとミスズの刀の刃部分がひび割れて爆散。周囲に強烈な冷気と暴風と振りまき……あたり一帯を真っ白な世界に塗りつぶしてしまった。

 何でもないようにそこから飛んで出てくるミスズ。

 それから一拍遅れて、リュウベエもすたすたと歩いて出て来た。
 だがこちらは、ミスズと違って体の各部を凍らされており、動きは鈍かった。冷気の爆弾は、殺しても死なない人斬りの体に、確かな痛打を刻んでいた。

 ……しかしそれも、ぱんぱん、と埃を払うような動きだけで、リュウベエに散らされ、消されてしまったのだが。ダメージも通っている……というより、残っているように見えない。

「相変わらず、この国の妖怪という連中は何をしてくるかわからんな。だからこそ面白い」

「郷愁にでも駆られたのかしら? だとしたら、そのまま大人しくしていれば、故郷に骨をうずめさせてあげるわよ……人斬りリュウベエ。……ああ、今は『骸刃』と名乗っているらしいわね」

「別に俺が名乗り始めたわけではないがな……しかし、よく知っているものだ。誰に聞いた?」

「ミナト君よ。『酒呑童子軍』の要注意者についての情報は、『九尾軍』の同盟者全体で共有され、常に更新されているのよ。……死んだと思っていたあなたが生きていて、しかもまさか大陸に渡っていたと知った時は、流石に驚いたけれど」

 ミスズの言葉は、目の前の男が……数か月前は海の向こうの大陸でミナト達と戦っていたリュウベエが、この国『ヤマト皇国』の出身であるということを意味するものだった。
 そしてそれを、リュウベエも否定しない。事実ゆえに、否定する必要がない。

 ミナト達は、事前に連絡を取った際、ミスズなど、リュウベエについて知る者達からそのことを聞いているが……それでもやはり驚いていた。
 ミナトは、名前の語感などから『もしかしたら』程度には思っていたが、それでもやはり全く驚かなかったわけではなかった。

 言ってみれば、リュウベエの境遇はタマモの逆だ。
 恐らくは、タマモと同じ、あるいは似たような事故によって、『ヤマト皇国』から遠く離れた『アルマンド大陸』に飛ばされ……しかし、今回こうして『帰ってきた』形になる。
 他ならぬ、カムロの導きによって。

 もっとも、別段リュウベエの心に、望郷の念などという殊勝なものがあったわけではない。

 大陸だろうが『ヤマト皇国』だろうが、生きる場所が変わった程度……戸惑いこそしたものの、リュウベエは気にしなかった。手ごたえのある戦いが、血が流れて悲鳴が響く戦場さえあればよかったのだ。

 大陸に来た時点で、『百物語』とはまた別な『蟲毒』系の術式により、既にリュウベエの体は人の領域を逸脱していた。そこでもその刃を振るい、数えきれないほどの人を血の海に沈めてきた。

 目の前の男が、どこで何をしていたのか……ミスズは知らない。ミナトにも、断片的にしか……彼がわかっている範囲でしか聞かされていない。

 しかしこうして相対したことで、リュウベエは昔と何も変わっていないことを、ミスズは悟った。

 かつて、ヤマト皇国に居た彼が……まだ人間であった頃から、戦時も平時も問わず、人間も妖怪も問わず、余りに多くの命を奪ったことで、『人斬り』の異名で知られるまでになり、

 積み重ねた命が、魂が、怨念が、彼が人間のままでいることを許さないまでに至り……人間ではないが、『妖怪』とも違う『何か』に変容してしまうまでになり、

 殺しすぎたリュウベエを危険視し、あるいは目障りに思い、妖怪達がその命を奪わんとして……しかし次々に返り討ちに遭い、かえってリュウベエの殺戮衝動に火をつける結果となった。
 ついには当時の『八妖星』までもが彼を討ち取らんと動いたことまであった。

 当時、リュウベエを討ち取るために自らも出陣し……しかし、結局殺しきれずに取り逃がしてしまった1人であるミスズは、今度こそは、という思いを密かに胸に抱くが……同時に、脳裏に響く大音量の警鐘を無視できずにいた。

「聞けば、大陸でも相当やらかしていたようね……本当に、他人に迷惑をかけずに生きるということができない男。今まで討伐されずに生きてこれたのが不思議だわ」

「俺が死ににくい体なのは知っているだろう。まあ……何度か死にかけたがな。大陸では、世は実に広いものだということを、何度も思い知らされたものだ」

「そう……ならそれをどうして教訓として生かせないまま、ここに立っているのかしらね」

「生かしているとも……こんな風にな」

 その瞬間、リュウベエの体から、悍ましいまでの『邪気』が立ち上る。
 同時に、手にしている刀が、血のように赤い光を放ち始めた。
 光の強さは一定ではなく、まるで脈動するように強まったり弱まったりしている。

 光っている。たったそれだけのはずだというのに、その光景を見ているミスズの目には、酷く不気味で恐ろしい、得体のしれないものに映った。周囲の空気が、戦場のそれをさらに何倍にも濃縮したかのように、押しつぶされそうなほどに張り詰めていく。

(……やはり、以前戦った時よりも強く……!)

「この所お預け続きで、『飢骨うえぼね』もそろそろ我慢の限界にきているようでな。『八妖星』の一角ともなれば、さぞかし……」


「おいおい待てってリュウベエ。お前に斬れっつったのはそれじゃねーだろう?」


 唐突に戦場に響く軽口。
 敵も味方も、空気が非常に張り詰めた状態で、何の前触れもなくかけられた声に、その場にいたリュウベエもミスズも、はっとして振り向く。

 その視線が向けられた先には……丁度、空間から滲み出すようにして、カムロが現れるところだった。スーツに身を包み、相も変わらず、へらへらと笑っている。他者を見下すかのような、精神を逆なでするような笑みだと、ミスズは思った。

 そんな彼女の心の内を知ってか知らずか、ため息をつきながら、無警戒にこちらに近づいてくる。
 そして、ちょうど空中の、リュウベエを見下ろす形になる位置に立った。

「遊ぶのも結構だが、ちゃんとやることやってからにしてもらわねーと困るぜ、『骸刃』。お前さんに斬ってもらわなきゃいけねーのは…………あっちなんだからよ」

 親指を立てて『くいっ』と背後を示すようにするカムロ。
 その指の先にあるのは……当然ながら、隣の山である。
 いや、正確には……その山に建てられた、みすぼらしい、しかしいかにも何かありそうな『祠』を指しているように……ミスズには感じられた。

 カムロの纏っている、『スーツ』という大陸の装束と、カムロが手に巻いているテーピングに、真新しい赤い返り血が付着しているのも、それを手伝っていただろう。
 果たして、その血が誰の、あるいは何の血なのか、わかりはしなかったが。


 ☆☆☆


 一方その頃、『セキガハラ』の戦いは佳境に突入していた。

 両陣営、軍勢同士のぶつかり合いに加えて、『強力な個』……すなわち、幹部クラス同士のぶつかり合いが始まったからだ。

 その『強力な個』の『数』だけを見るならば、事前の予想通り、『百物語』を使っている鬼が勝っている。
 しかし、1人1人の『質』を見れば、圧倒的に九尾の軍が上だった。

 シェリーの振るう炎の剣が、鬼を鎧ごと、紙切れのように切り捨てて焼き尽くす。

 ナナの放つ水の弾丸が鬼の眉間を貫いて絶命させる。
 その背中を守るクロエが機関銃を乱れ撃ち、かかってくる鬼を片っ端から蜂の巣にする。

 戦場を目にも留まらぬ速さで駆け抜け、ザリーは暗殺者のようにその刃で敵の喉元を掻き斬り、命を刈り取っていく。時折砂嵐が巻き起こり、追尾して彼の姿を捕らえることを許さない。

 鬼の精鋭達を引き連れて集団戦術で襲い来るリグンを、同じように『CPUM』の兵士達を引き連れたセレナが、軍仕込みの用兵術で迎え撃つ。

 およそ人の形から外れた鬼側の戦力……獣や不死者、その他、何とも言い難い様相の妖怪達が大挙して襲いくれば、召喚獣を大量に呼び寄せたミュウが迎え撃ち、他の者達の邪魔をさせない。
 そのミュウに攻撃が届かないように彼女を守るのは、防御に特化した召喚獣達に加え、曲剣を手にして、『マーマン』の力で体を変異させたシェーンである。皮膚の一部が鱗に覆われ、水――高圧水流を纏った一撃は、鬼の鎧を容易く切り裂いて敵を両断する。

 召喚したしもべを引き連れ、自らも大薙刀を持って切り込んでくるタキに対しては、サクヤとギーナのコンビが、ミュウから借り受けた召喚獣やCPUMを連れて応戦する。

 それらの場所に戦闘が集中する中、戦域の拡大を防ぎ、人間側の消耗を抑えるため、ミシェルは戦域全体にアンデッドの兵士たちを散らせ、あちこちで活躍させる。
 さらに、あちこちに神出鬼没に飛来するアルバが、まるで爆撃機のように魔法攻撃を雨あられと降らせ、鬼の戦力をまとまった数削っていく。

 そして、それら全ての司令塔を担っているのが、後方の『オルトヘイム号』の中で待機し、司令塔を担っているエルクだ。ネリドラとリュドネラはその補佐をし……リュドネラはさらに、戦闘用の体を用意していつでも戦場に出られるようにしていた。

 八面六臂の活躍を見せる『邪香猫』の面々。
 その中でも、最も戦果をたたき出し、そして激しい戦いに身を置いているのは……そのリーダーの座に立っている少年。


 ―――ドッゴォォオオン!!


 襲い掛かってきて、そして返り討ちにした無数の鬼達の屍……その中心で、敵の大将・キリツナと、刃と拳を衝突させる、ミナトだった。



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