魔拳のデイドリーマー

osho

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第19章 妖怪大戦争と全てを蝕む闇

第430話 土蜘蛛の選択

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(くそっ……ふざけるな! 何が手薄だ!)

 夜の闇の中、『鎧河童軍』の拠点を夜襲しに来た『鬼』の軍の1人は、1人、また1人と仲間たちが減っていく今の状況に、話が違うと悪態をついていた。

 『鬼』の拠点に襲撃をかけて来たことで、拠点の守りが手薄になっている所を狙う。
 全く警備が空、というわけではないにせよ、連中にとってその襲撃は負けられない戦い。相応に強力な手勢をそろえて送り込んでいるはずである。

 加えて、こちらが最大の脅威として想定していた1つ、『八妖星』の一角である『鎧河童』については、リュウベエに切り刻まれて満身創痍のはずである。油断していい相手ではないのは変わりないが、脅威度は確実に下がっている。千載一遇の好機と言ってもいい。

 ゆえに、潜入・暗殺に向いた、それでいて素の戦闘能力も低くないメンバーが選抜され、送り出された。

 あとは、襲撃に対応できない敵を、あの手この手で翻弄しながら命を刈り取っていく。それだけの仕事だったはずだ。

 しかしふたを開けてみれば、最初からして追い詰められているのは自分達の方。
 屋敷の敷地内に入ることすらできず、夜の森の中で必死に逃げ回っている。しかも、逃げ切れずにどんどん味方の命を刈り取られている始末だ。

「いったいどこにいる!? 俺達『土蜘蛛』の目でも見えないなんて……」

「……ああ、やはり貴様ら『土蜘蛛』だったのだな」

 ――ザシュッ!!

 水音の混じった斬撃音と共に、また1人切り捨てられる。
 はっとして残りの者達が振り向くと、そこには、体が縦に真っ二つになった同僚と……その向こうに、刀を振り向いた姿勢の女が1人見えた。

 その姿を……自分達と同じように、腕が6本ある、しかも女であるという点を認識して、襲撃者たる『土蜘蛛』の一団は、複眼になっている目を見開いて驚いていた。

「その姿……まさか、貴様は!?」

「なるほど、その反応……話くらいは聞いているらしいな」

「……『キョウ』の土蜘蛛の生き残り。『女王個体』の雌だな」

「貴様……本当にキョウの狐共に寝返ったのか!」
 
 襲撃者たちは、いずれも目が複眼であり、腕が6本ある……サクヤの同族『土蜘蛛』だった。
 ほぼ無音で行動でき、闇を障害としない目を持つ。種族的に、最も『隠密』に向いた存在であると言える彼らがこの任務に抜擢されたのは、必然だった。

 当然、1人1人の戦闘技能も決して低くはない。むしろ、精兵に数えられるレベルだと言えた。
 ……しかし、いかんせん相手が悪かったと言わざるを得ない。

「貴様っ……サカマタ様から話は聞いているぞ! 古の約定を破り、『鬼』の一族と敵対したと! それでも誇り高き『土蜘蛛』の一族の末裔か! 恥を知れ!」

「そうだ! 貴様には女として、我らの『女王』足りうる存在として、なすべき使命があるはずだ!」

「それについての返事はすでにサカマタとやらにしてあるはずだ。同じ質問ならするな、同じ答えを返すだけ時間の無駄だ」

 同族たちの言い分もわからないではない。実際、一族に生まれた『女王個体』として……強い子を産める体を持った者として、やるべき使命があったのは事実だし、一時期は彼女はそれをはっきりと自負して動いてもいた。その後ミナトに出会い、自分の命を彼のために使おうと心に決め……役目を放棄することを決めたのは、自分自身だ。

 ゆえに、責められるのは仕方ないだろう。こちらに非がないわけではないのだから。

 だがだからといって、サクヤには、その部分で譲歩する気は全くない。
 自分の命の、人生の使い方は自分で決める。それはもう、彼女が心に決めたことだからだ。無論……その使い方や、捧げる相手も含めて。

「……もう一度問おう。我らに合流するつもりはないのか、サクヤとやら。今ならまだ間に合うぞ……それだけの力ならば、我らの軍の中でも幹部か、それに近い位置に立つこともできようし、我ら『土蜘蛛』にとってはお前は長たる資格を持っている。であれば、生来持った務めを果たし、我らの子を産んで一族の繁栄を取り戻すことこそ……」

「話を聞いていなかったのか? 何度問われようと私の答えは変わらん」

「……そうか、ならば仕方がない……無理やりにでも連れて帰る。最悪、子を産める力さえ残っていれば、他は問題にしなくともいいからな……」

 言葉を交わすうちに、連続して襲い掛かる奇襲に対しての不安や恐怖心は薄れたらしく、『土蜘蛛』達の目には、仄暗い殺気の光が灯っていた。

 少数だが、中には情欲をそこに混ぜ込ませている者もいる。同族であり、そして『強い子を産む』という使命があるとして知られているサクヤを前にして、敵ないし裏切り者として見る以外にも、思う所があるようだった。
 大方捕まえた後に『すること』について考えているのだろうが、そんな視線を鋭敏に感じ取っているサクヤは、嫌悪感が浮き出た鋭い目つきになって、ちっと舌打ちした。

「どいつもこいつも同じようなことばかり言う……まあ、今更ではあるが、やはり貴様らの子など産む気にはならんな。むしろここで、その血脈絶ってくれよう」

「ほざけ……男になびいた色狂いの雌風情が!」

 ある者は誇りを、ある者は怒りを、ある者は情欲をその目に宿し、土蜘蛛たちは合図もなく一斉に散開して……しかし、糸や暗器を、そして何よりその身体能力を駆使して、木々の間を縦横無尽に飛び回り、あっという間にサクヤを取り囲んだ。

 しかしその数は、先程までよりも明らかに多い。
 幻影や分身の類でないことは、サクヤの目が見切っていた。全て本物の『土蜘蛛』だ。

「間抜けが。我々がなぜああも貴様の軽口に付き合ってやっていたと思う? この森に散っている同胞たちを呼び寄せるためだ。これだけの数、貴様1人ではさばききれまい!」

 あの会話は時間稼ぎであり、罠だったと、そのいずれかが告げる。
 そしてその言葉通り、数で攻めればいいとばかりに、残後左右、そして上方からも一斉に『土蜘蛛』達が凶器を手に襲い掛かってきて――


 ――空中に設置されていた、不可視の魔力機雷に激突して、その大半が爆散した。


「間抜けはそっちだ。貴様らがそうしていたように、あれだけの時間があって罠の1つも仕掛けないと思うか? 先程まで私の姿を視認できていなかっただろうに……警戒が甘すぎるな。」

 半分ほどの『土蜘蛛』が爆死した中、生き残った者達の目の前で……サクヤの姿が、すぅっ……と、夜の闇に溶けるように消えた。
 暗くて見えないのとは違う。『複眼』を駆使しても見抜くこと叶わず、驚き戸惑う土蜘蛛たち。

 ここでも猛威を振るう、ミナト特製の隠密装備。ミナトのテクノロジーと『陰陽術』を組み合わせて作られた『光学迷彩』は、視覚、音、体温、赤外線、電磁波、さらには魔力や妖力、魂に至るまで、様々な探知項目を無効化することができ、もともと隠密技能が高いサクヤがこれを身に着けると、恐ろしいほどの暗殺兵が出来上がるのだ。

 それこそ……強力な隠密兵であるはずの『土蜘蛛』達が、手も足も出ずにやられていくほどに。

 前後左右、さらに時に上方向から襲い来る刃、あるいは矢。
 音もなく、しかし確実に1人1人葬り去っていく、サクヤという脅威を前に、土蜘蛛たちは恐慌状態になる一歩手前だ。隠密の意地なのか、その状態に陥ってなお、声を上げて騒ぐような真似はしていないのは流石かもしれないが。

 その中で数人、周囲で仲間たちが倒れていきながらも、冷静に状況を見ている者達がいた。周囲の仲間たちが立っている位置、受けた傷の形や角度などを常に把握し、攻撃の瞬間サクヤがどこにいるのか、次にどう動くかを順次予測しつつ動いている。

 そして、自分のすぐ横に立つ者が、向かって左側からの逆袈裟の一撃で切り伏せられた直後、その男は自分の斜め前方に向かって糸を飛ばした。
 その瞬間、切り払われる糸。しかし、確かに一瞬……とも呼べないほどの間だが、それを斬った者――サクヤの足が止まる。いや、止まってはいない、速度が落ちただけだ。

 だが、それだけあれば十分ではあった。土蜘蛛たちの中で、この男と同様に冷静さを保っていた者達は、サクヤの居場所を察知してそこに殺到し、自慢の糸や様々な暗器、そして何よりの武器である手数で持って襲い掛かる。見えなくてもそこに居る。それさえわかればよかった。
 
 無論、シェリーやギーナと正面から戦えるほどの戦闘技能を持つサクヤは、単純な白兵戦能力においても、他の土蜘蛛達よりも大きく上を行く。
 ましてや自分の姿が見えない者を相手。圧倒的なアドバンテージがあるはずだが、そこは流石に敵もプロと言うべきか、フレンドリーファイアを恐れず、とにかく逃がさないことだけを考えて包囲を崩さず、物量に物を言わせて苛烈に攻め立てる。

 そして、実際はわずかな時間であれ、壮絶かつ濃密な攻防が繰り広げられた後、ふいに、消えていたサクヤがその姿を見せ……その瞬間、これを好機と見て殺到した者が半数、何かの罠かと勘繰って踏みとどまった者が半数いた。

 その疑問の答えを言えば、それは……後者だった。
 そして、その『罠』に引っかかってしまったのは……冷静でなかったがゆえに包囲に加われなかった、つまりは包囲陣の外側にいた者達が主だった。

 つまり、今現在の状況は、サクヤを中心に、冷静だった者達がそれを囲み、それをさらに冷静でない者達がそこに殺到して囲んでいる、という状態であり……瞬間、サクヤはその場にかがんだ。
 ほとんど体の前面全てをぺたんと地面につけるほどに、可能な限り地面に密着した。

 そしてその次の瞬間、土蜘蛛たちのほとんどが密集してしまった・・・・・、その一瞬の隙を見逃さず――


「『ジャイアントインパクト』ォッ!!」


 ――ドッゴォォオオン!!


 同じく『光学迷彩』でギリギリまで隠れていたギーナが、ミナト直伝の巨大な衝撃波を放つ。
 突き出した拳の先から放たれたそれは、手甲の機能でさらに威力を強化され……地面ギリギリまでを効果範囲に収めてその場を席巻した。
 結果、伏せていたサクヤを除く、その場にいたほぼ全員を吹き飛ばした。

 突如として姿を現した2人目の敵に困惑しつつも、体勢を立て直そうと身構える土蜘蛛たちだが……その一瞬の隙を見逃さず、サクヤは包囲を離脱してまた隠れてしまう。

 しかし、今の衝撃はで大半の土蜘蛛を吹き飛ばした下手人……ギーナは、そのまま消えようとせずにその場に居続け、手甲脚甲で武装した拳足を向けて抗戦の意思を示す。

 何人かの土蜘蛛は、隠れる気がないなら都合がいいとみて、先程と同じように散開してギーナを取り囲み……しかし先程のような罠を警戒してか、くないや手裏剣などを投げつけて攻撃する。
 それらを容易く撃ち落とすギーナには全く通用しないが、それで罠がないと判断した彼らは、今度は糸を飛ばして4方向から彼女をがんじがらめにして動きを封じる作戦に出る。

 ギーナが拳を振りぬいた隙を見て、両腕を蜘蛛の糸で拘束することに成功。後はそのままがんじがらめにして動きを封じ、近づいて首を掻き切るだけだ。

 しかし次の瞬間、ギーナはそんな拘束などものともしないとばかりに、逆に糸をつかんでぐいっと引っ張り、『はァッ!』という掛け声とともに、土蜘蛛4人を振り回して地面に叩きつけた。

 ギーナにとって、『土蜘蛛』の戦い方は、親友であるサクヤとの手合わせを無数にこなす中でよく理解している。手を読んで逆利用するくらいは造作もないことだった。

 衝撃で肺の中の空気が抜け、あるいは骨の1本や2本折れたかもしれない土蜘蛛たちは、悶絶し動くことができず……そして、動けないうちに全ては終わった。
 ギーナが再び、糸を引っ張ってその4人を引っ張り寄せ……飛び蹴りでその全員の延髄を蹴り折って絶命させた。再び地面に落下するより先に、その4人の命は尽きていた。

 そして、そのギーナの荒業に気を取られ、わずかでも警戒を疎かにしてしまった者は……再び不可視の暗殺者と化したサクヤによって、命を刈り取られる結末を招いた。

 その2人の手から辛くも逃れ、作戦は最早失敗したと判断し、この場から離脱しようとした土蜘蛛たちが何人かいた。
 この暗闇で足場もよくない中、逃げの一手に出る『土蜘蛛』を追いかけるのは、サクヤはともかくギーナには難しいだろう。足場の悪さは、『諸国行脚』で培った技でどうにでもなるとはいえ、暗視魔法越しでもこの森の中を逃げる身軽な集団を追うのは至難だ。
 
 …………だからこそ、『逃がさない』ための手がいくつも用意されていた。


 ――ザシュッ!!

 木の上で待機していたイヅナが、飛び降りると同時に隙だらけな土蜘蛛を切り捨て、


 ――ドォン!!

 光学迷彩で隠れていたクロエが、魔力式ショットガンを打ち放って蜂の巣にし、


 ―――パシュッッ!!

 遠く離れた高所にて、じっと時を待っていたナナが放った狙撃が、一番最初の犠牲者と同じように、一番最後に残った1人の胸を撃ち抜いた。

 夜襲のためにこの森に踏み入った『鬼』の軍の手の者達……古の約定と、一族の復興を胸に野心に燃えていた『土蜘蛛』達は、1人たりとも、森を生きて出ることはできなかった。

「……エルクさんから連絡入りました。アルバちゃんと協力してこのあたり一帯をサーチしたそうですが、これ以上の敵勢力は確認できません」

「じゃ、これで任務完了ね……ふー、お疲れ様」

 通信の内容を報告するナナと、息をついて暗視ゴーグルを外すクロエ。

「言うほど疲れてないでござるよ。というか、ほとんどサクヤ殿とギーナ殿が持って行ってしまって、拙者たちの出番なかったでござるな……」

「申し訳ない、イヅナ殿。『土蜘蛛』の戦い方を学んで見つめ直すには絶好の場かと思いまして……私の我が儘を聞いていただいてしまい」

「いやいや、サクヤ殿の成長につながったのならそれでよしでござるよ。にしても、よかったのでござるか、全員殺してしまって。情けをかけるわけではないが……『土蜘蛛』って今、ほぼ絶滅寸前なのでござろう? サクヤ殿が受け入れるのはないにしても……」

「構わないでしょう。同族とはいえ敵に変わりありませんし……元々この者達は、かつて土蜘蛛の一族から袂を分かった者達です。自分達に『女王』の血筋がなく、遠からず子供を残せず絶えるしかないと覚悟して出ていった……それが、都合のいいところに雌がいるという理由で手を伸ばすようでは、その当時の覚悟も擦り切れて残っているか、というところでしょうしね」

「なるほど。サクヤちゃんがいないと『絶滅』は間違いなし、けどもともとそれを承知の上で出ていったんなら、今更何か言うのもそれはそれで筋違いってことね。それに……」

「? それに?」

「サクヤちゃんが心に決めてる人って、ミナトでしょ? だったら、絶滅とかの心配はしなくていいんじゃないかなーって。サクヤちゃんさえ頑張れればいいわけだし」

「「――ぶっ!?」」

 ニヤニヤしながらクロエが言った言葉に噴き出すサクヤ……と、ギーナ。

 その様子を、『あらあら』という視線で見るナナとイヅナだが、イヅナは今の言葉に何か疑問のようなものを抱いたようで、

「クロエ殿、今のどういう意味でござるか? 子作りの相手がミナト殿なら問題ない、と……」

「こ、子づっ……くっ……」

 真っ赤になって言葉に詰まるサクヤと、同じく真っ赤であぅあぅ、と何もしゃべれないでいるギーナに構わず、クロエは『あーそういえば』と話す。

「この国には『夢魔』いないんだったわね。ミナト君の種族……人間だけど突然変異で『夢魔』の力を持ってるのは知ってるでしょ? で、大陸における『夢魔』っていう種族の特徴ってさ、女しかいないってことの他に、他種族と子をなした場合、子供が男なら確実に父親の種族、女なら父親か母親の種族に半々の確率で生まれるっていう生態があるのよ。ハーフ……混血児が生まれないの」

「なるほど、ミナト殿が『雄の夢魔』ならば……仮にサクヤ殿と子をなした場合、純潔の土蜘蛛が生まれるかもしれないでござるな」

「そういうこと。同じ要領で、ギーナちゃんとなら『エクシア』の子ね」

 和気あいあいと猥談をする2人に対し、話題にされている2人は、変わらず赤い顔で『ちょ、ちょっとそのへんで……』と慌てることしかできない。

 そんな様子を、やはり『やれやれ』と言った感じで見ているナナは、とりあえず戦果をミナトとエルクに報告すべく、手元の通信アイテムを操作し始めた。


 ☆☆☆


「へっきし! あー……何か噂されてんのかな?」

「……この状況で余裕だな、『災王』……!」

「まあ、実際余裕だからね。自画自賛になっちゃうけど……この程度の連中で僕を止められると思っちゃダメでしょ。ところで……」

 ところ変わって……『鬼』の軍の拠点。
 炎上する屋敷の敷地内、中庭になっている場所で……ミナトは、傷一つない姿で悠々と立っていた。
 目の前にいる『鬼』の軍の指揮官・タキは、得物の大薙刀を構えてはいるものの、肩で息をしている。

 しかしミナトは、そのタキではなく……彼女の周囲にある、いくつもの死体を――今しがた自分で仕留めたそれらを、じーっと見渡して、言う。
 
「『滝夜叉姫』のタキさんだっけ? まんまだね名前……まあ別にいいけどさ……1つ教えてくんないかな?」

「…………」

「あんたが使役してた、この『魔物』共…………どこで、どうやって手に入れた?」

 周囲に転がる、いくつもの魔物の死体。
 ……そう……『妖怪』ではなく『魔物』の死体だ。

 炎を操る赤い毛皮のトラ『ソレイユタイガー』、
 ヤギの頭と人の体、獣の下半身にコウモリの翼を持つ悪魔『ミクトランデーモン』、
 牛頭人身、しかし『牛頭』とは明らかに違う大陸の鬼『ミノタウロス』、
 龍に匹敵するとさえ言われる強さを持ち、炎の息すら吐く巨大ワニ『ドラゴンアリゲーター』、

 その他様々、紛れもなく……『アルマンド大陸』に生息する『魔物』にカテゴライズされ、妖力ではなく魔力を行使するモンスター達が、息絶えて転がっている。
 先程まで……間違いなく、タキによって使役されていた者達だ。

「それとあんた、さっきから僕のこと『災王』って呼ぶよね? その呼称、大陸ではともかく……この国じゃ僕、ほぼ裏方だから、全然知られてないなんだけど、何で知ってんの? はよ吐け」

 口調は軽いが、ミナトは『言い逃れは許さない』という凄みを帯びた眼光を放っていた。



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