魔拳のデイドリーマー

osho

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第18章 異世界東方見聞録

第375話 害虫駆除ファイナルステージ

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「貴様! なぜここにいる! なぜ我らがいることが……いや、その居場所までも!」

「この女どもを見張っていたのか!? いやそれよりも、この空間は一体……」

「おのれ下等種族、よくも我らの同胞を……ただで済むと思うなよ!」

「うっさい、1人ずつ喋れ。いや、別に喋んなくてもいいし、これから喋れないようにするんだけど……あ、ギーナちゃんサクヤさん、大丈夫? ケガとかしてない?」

「は、はい……ありがとうございます、ミナト殿」

「で、ですが、どうしてここに……?」

 ギーナちゃんとサクヤさんもきょとんとしていて、僕がここにいることが不思議そうだった。
 まあ、さっき家を出て別れたばかりのはずだもんね。

 僕も別に、こうなることを予想してサクヤさんとかに何か監視をつけてたとか、そういうわけじゃない。別口でこの事態を察知したために、対処しようと動いたら、彼女達が襲われてたのだ。
 もっとも、ギーナちゃんの持ってる『指輪』には救難信号発信機能がついてるから、どっちみち何かあったらそりゃ、駆けつけてたと思うけどね。

 僕がここに来たのは、ハイエルフ共の蠢動を察知したからだ。
 こんなこともあろうかと、念のために作っておいた『ハイエルフ感知センサー』で。

 以前、『リアロストピア』の一件でハイエルフに盛大に喧嘩売った時、お礼参りとかで攻めてくる奴がいないとも限らないから、用意してたんだよね。ハイエルフ独特の魔力パターンを解析して、領域内のそれを感知できるような仕組みを作っておいたわけだ。

 もっとも、結局出番はこなかったんだけど……その時のデータが『タブレット』の中に残ってたので、それを急きょ流用して、こないだ作ったのがこのセンサーだ。
 残党がいるって聞いてたから、そういう連中が現れたらわかるようにね。

 範囲は、『キョウ』の都をすっぽり覆えるくらいに広い。
 あくまでハイエルフの接近と、その大雑把な位置だけがわかるものだけど……『サテライト』と組み合わせればかなり心強い防衛手段になる。

 てか、ホント作っておいてよかったよ……やっぱり来たもん、こいつら。

「ひー、ふー、みー……お、残党のハイエルフ全員居んじゃん! ラッキー、こりゃ1回で駆除作業完了出来ていいね」

「駆除だと!? 貴様……至高の種族たる我らハイエルフを何だと……」

「あーはいはい至高ねわかったわかったすごいすごい。いーよもうそういうの聞き飽きたし」

「……あの、ギーナ殿……前から思っていたんですが、ミナト殿って、何か『はいえるふ』とやらに恨みと言うか、悪い思い出でも……? 扱いがかなり雑と言うか、刺々しいような……」

「ああ、サクヤ殿はご存じなかったのですね。ええ、まあ……過去に色々と。話せば長くなるのですが……」

「ギーナちゃんサクヤさん、そのへんでストップ。積もる話は後にして。えーと、これからバトル始まるけど……2人とも、戦える?」

「もちろんです! ……と、言いたいところですが……」

「……不甲斐ないですが、正直、厳しいかと……実力不足もそうですが、先程までの模擬戦の疲れもあり……仮に武器をお貸しいただいても、自衛すら務まりますかどうか……」

 うん、素直でよろしい。
 無理して『大丈夫です』とか言って、後から大丈夫じゃありませんでした、っていうパターンが一番危険だからね。きちんと無理せず、自分の体調を正直に申告してくれたのはいいことだ。

 そういうわけなら、敵討ちのチャンスでもあるけど……安全第一。今日は見学ってことで。
 収納空間から『CPUM』のカードを1枚取り出し、魔力を込めて、封じている人工モンスターを開放する。

『Aquarius!!』

 みずがめ座のモンスター、『アクエリアス』。
 金色の華美な装飾があちこちについた、透明な水瓶のような姿のモンスターは、その体内にギーナちゃんとサクヤさんをしまい込み、ふわりと空中に浮いた。戦うのに邪魔にならないくらいの位置に。

 アレの防御性能は、戦略級兵器の直撃にも無傷で耐えるレベルである。
 核シェルターみたいなもんだ。これで、2人の心配はほぼしなくてよくなったと言っていい。

 ……『リアロストピア』の時も、こうしてハイエルフ共とバトる時に、エルク達を保護して……そのまま観戦者席として使ったっけな。今日も同じようにするんだけど。

「な、何だアレは? 金魚鉢か? 面妖な……」

「それよりも、一体この空間は何なのだ! くそっ、先程から転移魔法も発動しないし……」

 ああ、ちなみにこの空間は、『ハイパーアームズ』に組み込んである機能、っていうかマジックアイテムの1つである『隔離結界発生装置』で作り出したものだ。

 『時空間魔法』に『精霊魔法』、『虚数魔法』に『陰陽術』の4つを組み合わせて発生させている異空間を、通常の空間を塗りつぶすように構築して展開するもので……簡単に言えば、戦闘による余波で周囲が破壊されたりしないようにする、ある種の安全地帯、即席の闘技場である。

 ここでなら、どれだけ派手な技を使っても、周囲の建物や地面を破壊するようなことはない。
 自画自賛と自虐が入り混じった変な言い方になるけど、僕レベルが戦うと、多少なり周囲に破壊をまき散らすからなあ……必要に迫られて、以前から研究してた魔法がようやく完成した形だ。

 リアロストピアでは怒りとテンションに任せて暴れた結果、地面がクレーターだらけになったり文字通りの焦土と化したり、異常気象までしばらく発生するようになっちゃったし。本気出す、あるいはそれに近いレベルの戦闘をするたびにそんなことになってたらいちいち大変だからね。

 欠点は、『ハイパーアームズ』以上に変身しないと使えないところ、だな。

 『虚数魔法』を使う関係上、それに関してブーストがかかる姿になる必要があるのと……展開・維持に滅茶苦茶魔力を食うので、『魔法式縮退炉』を使わないといけない。ゆえに、この技は『ハイパーアームズ』か『アルティメットジョーカー』にならないと、今の所使えない。
 後者に関しては、普段から電池みたいに魔力を溜めておいて使う、って感じでどうにか解決できそうではあるけど。

 ともあれ、一応は実用に耐えうる形にまでなったのは、喜ぶべきことと言える。
 『陰陽術』、勉強してよかったー。

「さて……そろそろ覚悟はできたか、粗大ゴミ共」

 そう言いながら、手負い7名、無傷8名、計15名のハイエルフ達を見回して僕は言う。
 帰ってきたのは当然のごとく罵詈雑言だったが、これはもう気にしても仕方ない。無視だ。声かけといてなんだけどね。

 ちなみに、手負いの7名は、元奴隷の人たちを保護している施設に襲撃をかけようとしていた別動隊の連中である。ここに来る前に立ち寄って、問答無用でしばき倒して持ってきた。

 さて、これから始めるのはゴミ処理であり、害虫駆除であり……しかし同時に、サクヤさんの仲間達の敵討ちでもある。

 上から、『アクエリアス』の甲殻越しに見ている彼女は、僕に自分の仲間達の敵討ちを託してくれた形になるわけだ……それなら、託された者として、きちんとそれを遂行しなきゃな。
 それも、きちんと彼女の溜飲が下がるような感じで。

 けど、拷問みたいにしていたぶるようなのって、まあ……恨んでる相手に対して、一時はスカッとするかもしれないけど、後から微妙な気分になること多いんだよな。
 例えば、瀕死にするたびに回復させて、何度もそれを繰り返していたぶるとかさ。

 僕の個人的な考え方かもしれないけど、こういう場合って、何も考えずにさくっと終わらせるか、その場で思いっきりやって1回でストレス解消するかのどっちかがいいと思うんだよね。

 で、今回は僕は……後者で行こうと思います。
 久々に自重抜きだ。今まで使う機会があんまりなかった発明品や『フォルムチェンジ』もガッツリ投入してド派手に行くぜ。

 さあ、スーパー否常識タイムだ。覚悟しろ悪役共。


 ☆☆☆


 怒号と共に剣を抜き、斬りかかってくるハイエルフの1人。
 その光景を前にして、全く怯む様子を見せないミナトは、左腕に装備している重厚な腕時計……『エンドカウンター』を操作する。

 その文字盤の『1』を選択し、指を乗せると……電子音声のような声が響きわたる。

『Form Select……Operation……『Diver』!!』

「まずは……水。『ダイバーフォルム』!」

 水のように透明感のある魔力光に包まれ、ミナトの姿が変わる。
 黒装束は青と水色をベースにしたものになり、青いパーカー型の装備『メガロパーカー』を重ね着するように装着し、水属性メインの水中戦用形態『ダイバーフォルム』に変身を遂げた。

 そして斬りかかってくるハイエルフに対し、腕を突き出すと……その手のひらから凄まじい勢いで大量の水が噴き出し、まるで鉄砲水のように押し寄せた。驚きに目を見開くハイエルフ達に対処する暇を与えず、水流でその後ろにハイエルフ達もまとめて全員押し流す。

 その隙に背後からかかってくるハイエルフ達にも同じように、もう片方の手から水流を放って押し返し……

「こっちにはおまけ」

「なっ……ごはぁ!?」

 その中に、握りこぶし大の氷塊をいくつも混じらせた、『氷水』の水流。低温に加え、勢いよく殺到する氷塊で、ハイエルフ達は全身をしたたかに打ち据えられる。

 そんな中、ただ1人その水流を、水の魔法を上手く使って受け流すようにして突破し、斬りかかっていくハイエルフがいたが……

「隙ありだ! この下トッ……!!」

 ――ドスッ!!

「どこが?」

 発生させた水の一部を変形、凝縮して凍結させ、氷でできた巨大な三叉矛を作ったミナト。
 槍投げの要領で、しかしまるで大砲のような速さと勢いで投げつけられたそれに貫かれ、ハイエルフは串刺しになり……さらにその直後、ミナトがパチンと指を鳴らすと、異変が起こる。

 矛の中に込められていた氷の魔力があふれ出し、ハイエルフを体の内側から完全に凍結させ……そのまま砕き割った。

「貴様ッ……よくも同胞を!」

「その罪、死して償えぇ!」

 その背後からさらに迫るハイエルフが2人。
 剣に魔力を纏わせ、鉄製の鎧すら断ち切れるであろう威力を持たせて、さらに魔力による身体強化で加速した脚力で襲い掛かるが……その前に、再びミナトの指が『エンドカウンター』を這う。

 次に選択された文字は……『11』。

『Form Select……Operation……『Hades』!!』

「続きまして、『ハーデスフォルム』!」

 闇色の魔力光が一瞬にしてミナトを包み、眉のような形になる。
 それがどろりと解けるように解けると、そこには……スカルアクセサリーのように、随所に『骨』の意匠が施されたコート『プルートクローク』を纏い、身の丈ほどもある大鎌『ヘルズゲート』を手にしたミナトの姿があった。

 振り向きざまに鎌を一閃させる。
 ハイエルフの1人は飛びのいて回避し、もう1人は剣で防ごうとするが……ミナトの鎌は、その剣ごとハイエルフを真っ二つに切り裂いた。

 同時に注がれる莫大な瘴気――死のエネルギー。
 それに耐えきれず、ハイエルフの体は塵になって消滅した。

 まるで、死神が無慈悲に命を刈り取るがごとき一撃。もたらされた、抗いようのない死。

 あまりにも想定外すぎる死に方をした片割れの最期を目にして、回避した方のハイエルフは唖然としていたが……その一瞬のとまどいが致命的だった。

 またしても、ミナトが指をパチンと鳴らす。
 すると、そのハイエルフの足元、先程の水流で水浸しになっている地面から闇が噴き出し……何体ものスケルトンが湧き出すように現れてハイエルフに絡みつき、動きを封じた。

 動けないハイエルフに、ミナトは今度は鎌を、まるで杖のようにして向け……その先端に、先程注ぎ込んだそれをしのぐ、膨大な瘴気と『闇』の魔力を収束する。
 そして、砲撃のように、スケルトン達もろとも打ち出し、ハイエルフを飲み込んだ。

 後には、何も残らなかった。

 恐らく、少し前までハイエルフだったのであろう、吹き飛ばされて散った後のわずかな塵だけがそこにあった。

「っ……近づくのは……いや、直接戦うのは危険だ! 距離を取って『召喚獣』を使え!」

 そんな誰かの号令に合わせて、ハイエルフ達はミナトを遠巻きに包囲するような形をとる。それとほぼ同時に、彼らの足元にいくつもの魔法陣が現れ……中から何匹もの魔物が出て来た。

 『ミノタウロス』や『グリジェルベア』、『コカトリス』などの大陸の魔物もいれば、どうやら日本に来てから『召喚獣』に加えたらしい、妖怪と思しきモノの姿もある。

 が、ミナトはそれらを見て、やれやれとでも言いたげな表情になる。
 号令一つで自分に一斉に襲い掛かってくるであろう魔物たちを見ても、顔色を変えず、

「そういう問題じゃないってわかんないかなー……っていうか、やっぱり妖怪も召喚できるんだ? まあいいけど……ほいっと」

 そして、三度『エンドカウンター』に指を当てる。
 今度の文字盤は……『6』。

『Form Select……Operation……『Druid』!!』

「『ドルイドフォルム』! んでもって……こいつでいくか」

 緑色の魔力光でできた木の葉のようなエフェクトが、つむじ風に乗ってミナトの体を覆い隠し、それが晴れると……今度は、マントやローブといった衣装を身にまとい、手には杖を持って、魔法使い風の装いになったミナトが現れる。

 同時に、ミナトはまた『収納』から何かを取り出した。

 それは……植物の種か何かのように見えた。とうもろこしの粒のようにも見える。
 というか、まさにその通りなのだが……無論、タダのとうもろこしではない。

 それをミナトは、自分の周囲に広くばらまいて……『ドルイドフォルム』の能力を発動。
 地面に落ちた種達は、急激に成長し……その際に、先程『ダイバーフォルム』の時にまき散らした大量の水を根こそぎ吸い尽くすおまけ付きで成長を遂げ、まるでトウモロコシで林ができたかのような景色を作り出した。その1本1本に、大粒のトウモロコシが実っている。

 だから何だと構わずハイエルフ達が突撃の指令を出す。
 一斉に走り出し、ミナトに食らいつこうと獣たちが距離を詰めてくるが……次の瞬間


 ――バババババァン!!


「「「!?」」」

 耳をつんざく強烈な破裂音と共に、豊かに実っていたトウモロコシが一斉に爆発した。
 そして同時に、そこに結実していた無数の粒を周囲にまき散らす。それらは、まるで散弾銃の弾丸のように召喚獣たちに降り注ぎ、その多くを一瞬にして蜂の巣にして殺した。

 さらに、ハイエルフも2人ほど、巻き込まれて命を落としたようだった。

 唖然としているハイエルフ達は知らなかった、あるいは思い至らなかっただろうが、ミナトが今、成長させて武器に使ったのは『カタストロフコーン』と呼ばれる品種である。

 別名『爆撃もろこし』。熟しきったコーンが爆散し、鉄のように硬い実をまき散らして周囲にいる動物や魔物を殺害、死んだ魔物たちの体に埋め込まれた種は、それを栄養にして次の世代が芽吹くという凶悪極まりない生態を持っている。
 なお、ミナトが品種改良して作ったものではなく、驚きの天然ものである。

 呼び出した魔物の大半が今の一撃で戦闘不能になり、消えていく。
 残った魔物も傷を負っている。無事なのは、『ゴーレム』などの体が頑丈で効かなかった種族だ。

 それらの一部の種族は、爆撃にもひるまずにミナトに突貫していったが……ミナトが再度『ドルイドフォルム』の力を発現させると、残った『カタストロフコーン』の根元から、蔦か根のようなものが伸びてそれらの足をからめとり、転倒させる。

 動きを封じるや、ミナトは今度は『7』の文字盤に指を乗せる。

『Form Select……Operation……『Ground』!!』

 瞬間、ミナトの体を覆い隠すように地面が隆起し、何枚もの巨大な岩がまるで花のつぼみのように重なった形になり……そのさらに直後、地響きが起こったかと思うと、砕け散る。

 その中から、黒と銀で形作られた、重厚な前進鎧に身を包んだミナトが姿を現した。

 その手には、槍のように長い柄の先に、米俵よりも大きな円柱型の金属塊のついた、大金槌のようなものを持っていて……なぜかその金槌は、叩く部分の前後が赤と青に色分けされて染まっているという、奇妙な形状をしていた。

「グランドフォルム! さて……じゃ、さっさと……よっこいしょオ!!」

 そして、ミナトはその大槌を、いかにも重そうに振り上げて……目の前で転倒したままになっているゴーレムの1体に向けて振り下ろす。

 ズガァアン!! と、轟音を立てて直撃した……どころか、あっさりとそのゴーレムの頭部を粉砕して地面にまで届き、めり込み……地震かと思うような特大の振動を引き起こした。
 発生した衝撃波が、同心円状に広がっていき、直接殴ったゴーレム以外もそれに当たって爆散したり、一気に表面がひび割れだらけになるほどの衝撃を受けていた。

 直撃したゴーレムなど、当たった瞬間に特大の衝撃が全身を駆け抜けて、ひとたまりもなかったのだろう、全身が爆散してすでに消滅している。

 離れたところにいた何体かが、結果として他のゴーレムが盾になって消滅を免れ、どうにか食部の根を引きちぎって立ち上がろうとしているが……

「あ、動かないで待っててね?」

 それらに向けてミナトが手をかざした瞬間、突如として発生した巨大な『重力』によって膝をつき、倒れ、再び地面に縫い付けられたように転がった。
 さらに、手招きするように手を動かすと、今度はその状態でガガガガガ……と地面を削りながら、まるで引きずられるように、ミナトのところまで引き寄せられていく。

 重力に加え、単純に重い自重によって地面を引き面れるごとに削られていく体。
 体が石や土でできているゴーレムであるがゆえに、体積が減少する程度で済んでいるが、コレが生身の人間であったなら、凄惨な光景が繰り広げられていたことだろう。

 拘束と誘引を同時に行ったミナトは、射程距離内に入ったところで、大金槌を横にフルスイングしてそれらのゴーレムを爆砕した。
 その際に発生した飛礫がハイエルフを襲い、当たりどころが悪かった数人が死ぬ。

 すぐ横にいた同胞が、飛んできた岩で頭を割られた光景に恐れをなしたハイエルフがいたが……次の瞬間。

「いつまでそんなとこで見てんだよ、ほらお前らもこっち来い」

 ――バチィッ!!

「がぁっ!?」

「なっ、何だ……電撃!?」

 そのさらに横にいた1人と共に、体に強烈な衝撃と痺れが走る。
 命を落としたり、行動不能になったりするレベルの電圧ではなかったが、ミナトが放ったその技の効果は……次の瞬間、別の形で現れた。

 ぐいっと強烈な力で引っ張られるのを感じるハイエルフ2人。
 足を踏ん張って抵抗しようとするも、それも叶わず勢いよく引っ張られる。

「何だこれは!? か、体が……か、風もないのに、飛んでいく!?」

「おのれ、一体何をした……!?」

「『土』と『雷』の魔力を混ぜると『磁力』を作り出せるって知ってた? んで、今やったみたいに、付与魔法の要領で相手に『電磁魔力』を打ち込んで、一時的に磁性を持たせるとね……」

 そこまで聞いたところで、ハイエルフ達は、自分達が『磁力』によってミナトの方に……しかも、より正確には、ミナトが手に持っている大金槌目掛けて吸い寄せられているのだと気づく。
 そして、その金槌をミナトが大きく振りかぶった瞬間、彼らは自らの末路を悟った。

「や、やめ―――」

「消し飛べ」

 先程食らったものとは桁がいくつも違う、超のつく高電圧を、巨岩を粉砕する威力の一撃に乗せて叩き込まれた2人のハイエルフは……飛び散るよりも先に電撃で体の全てを焼き尽くされ、炭化し、砕け散り、灰になって散らばった。

 凶悪なまでの馬力と、『磁力』と『重力』によるトリッキーな戦法を両立した『グランドフォルム』により、ハイエルフ2人を含め、先程の『爆撃』が効かなかったゴーレム達を仕留めたミナトは……離れたところで、性懲りもなくハイエルフ達が追加の召喚獣を呼び出しているのを見た。

 先程よりもさらに多く、しかも中には『ドラゴン』などの強力な魔物も混じっている。
 先程の『爆撃』で死ななかったモンスター達も含めれば、その数はゆうに数十匹はいるだろう。

「ったく、相変わらずスペックだけは高い連中だよ……頭は足りてないけど」

 はぁ、とため息をつきながら、ミナトは今度は文字盤の『10』を選択した。

「この数は流石に『グランドフォルム』じゃめんどいしな……かといって、コレはコレでやりすぎかもだけど……」

 『グランドフォルム』が解除され、黒と銀の鎧が消えると同時に……背後に大きな、直径3mはあろうかという魔法陣が現れ、そこから、1隻の船……黒光りする帆船が姿を現す。
 
『Form Select……Operation……『Neptune』!!』

 その船は、大きさを除けば、ミナト達の旗艦『オルトヘイム号』に似た見た目をしていたが、よく見るとそれよりもさらに機械じみた見た目をしていた。

 その船は、ミナトの背後で突如としていくつものパーツに分かれると、それらは次々にミナトの体に装着され、鎧となって身を覆っていく。

 分散した船体が組み合わさって重厚な鎧となり、船首の衝角は2つに分かれて槍のように両腕に装着された。帆はマントとなって背中に装着され、舵は肩に装着されて噴射口をのぞかせるスラスターになる。マストはマトリョーシカの要領で縮んで右腕に、碇は碇綱をリールに巻き取られた状態で左腕に装着された。

 そして、帆船の内部に格納されていたいくつもの銃火器が全身に装着され……重厚で物々しい、見るからに凶悪そうな姿になる。全身に近代兵器……を模したマジックウェポンを装着したミナトは、大小合わせて3桁に届くかもしれない数の魔物たちに向き直る。

「ネプチューンフォルム……さて、やりすぎないようにしないと……」

 そして、殺到してくる魔物たちに向けて……全身の銃火器類が一斉に火を噴いた。

 ―――――!!!

 両肩のキャノン砲が、一撃で大型の魔物を消し飛ばす威力の魔力砲撃を放つ。
 腰に装着したガトリングが、間断なく秒間数十発の魔力弾を吐き出す。
 背部に背負っているランチャーからミサイルが発射され、雨あられと降り注ぐ。同時に、周囲に無作為に機雷をまき散らす。
 大腿部に仕込まれていた火炎放射器が文字通り火を噴いてあたりを火の海にする。先程まき散らした機雷に引火し、いたるところで爆発が起こる。
 トドメとばかりに、マストが変形した右腕の巨砲から、極大規模のエネルギー砲が放たれて前方を薙ぎ払う。

 時間にしてわずか十数秒ほどの間に、『結界』の中全てを覆いつくすほどの破壊が振りまかれた。

 百匹近くいたであろう魔物たちは、見事に全て消し飛んでいなくなっていた。

「……出力抑えてコレか……こりゃ全滅したかな?」

 元々、数千から数万規模の軍勢を殲滅することを前提として作成された強化変身『ネプチューンフォルム』の火力は、かつてミナトが『リアロストピア』で使った『ジェノサイドアームズ』を遥かに凌ぐ。

 下手をすれば破壊力がありすぎて隔離結界をも破壊しかねないため、出力を抑えて使ったのだが……それでも過剰だったとミナトは反省した。面倒くさがって安易な手を使うものではないと。

「考えてみれば、周囲の被害ガン無視ですべて破壊しつくすつもりで使う『ネプチューンフォルム』と、周囲を破壊しないために使う思いやり技の『隔離結界』……この2つを同時に使うのって、ある意味矛盾してるよな……」

 そうつぶやくように言いながら、ミナトが『ネプチューンフォルム』を解除した瞬間、

 ――ズドゴォオォン!!

 突如としてその背後、地面の中から現れた巨大なミミズ、あるいはヤツメウナギのような見た目の魔物が、ミナトに噛みつき……いや、丸のみにする勢いで食らいついた。周囲の地面ごと。

 その魔物……『サンドワーム』の中にミナトがすっぽり入って消えたのを見て、先程の一斉掃射から運よく生き残った数少ないハイエルフが、歓声を上げた。

「は、ははははっ!! やったぞ! 馬鹿め、油断したな!」

 先程までの劣勢から逆転の一手を成功させたハイエルフは、自分達の勝利を確信して狂喜する。

 それも無理のないことだ。『サンドワーム』の口の中は、無数の牙が奥行きを持って並んでおり、蠕動運動で体の奥へ奥へ、獲物を飲み込みながら、削るようにして獲物を噛み砕き、その血肉を、骨すらも粉々にして飲み込んでいくという生態を持っている。

 その巨体に加え、外皮のみならず体内すらも強靭であるため、体の中で魔法を放っても脱出はほぼ不可能。その前に文字通り牙にかかり、激痛の中で削り殺される。

 一度飲み込まれれば、ドラゴンだろうと助かるすべはない。それが『サンドワーム』という魔物に対する、人間たちはもちろん、ハイエルフ達ですら共通の認識だった。

 もっとも……

「下等種族の分際で我々に逆らうからだ、当然の報いだ! やはり、やはり最後は我々が勝つと運命は決まって――」


『Form Select……Operation……『Burning』!!』


 ―――ドゴォオオォオン!!


 彼らが今戦っている相手が、そんな常識ないし共通認識の枠内に収まるのかと問われれば、否である。

 ミナトを立った今飲み込んだはずの『サンドワーム』の頭部が、突如、爆炎を噴き上げて粉々に爆散した。
 そして中から……全身を燃え盛る火炎に包まれた状態のミナトが飛び出した。

「あーびっくりした。『サンドワーム』か……珍しいもん従えてるな」

 纏っていた炎が収まり、黒煙が晴れると、そこにいたのは……また新たな姿に変わったミナト。
 ロングコート型の装備は、真っ赤だの深紅だのという表現を通り越した、強烈な『熱』と『赤色』を感じ取らせるきらめきと色合いである。まるで、マグマをそのままコートの形にしたような。

 それは、文字盤の『5』を選択することで可能になる変身。

 各部に装着された漆黒の装甲と合わさり、灼熱の権化、といった見た目に変化しているミナトは、手にしている薙刀型のマジックウェポン『焔魔橙皇エンマダイダイオー』を、肩で担ぐようにしていた。

 いや、見た目だけではない。
 実際にその周囲には高熱がまき散らされている。

 先程『ダイバーフォルム』がまき散らした水で濡れ、湿っていた地面は見る見るうちに乾いていき、ひび割れすら起こる。ミナトの周囲の気温はどんどん上がり、近くにある石のいくつかは、かまどにくべられたかのように赤熱し始める。

「さて、それじゃ……あ、言い忘れてた。『バーニングフォルム』ね」

 仕留めたと思ったら生きていた。しかも、また別な、凶悪そうな姿に変わって。

 上げて落とされた形となっているハイエルフは……それ以上、何か言う前に、ミナトが振りぬいた『焔魔橙皇』の刃で縦に両断され、同時に吹き上がった爆炎に焼き尽くされて灰になった。

「――ん、もう一丁!」

 さらに一歩……しかしその一歩で、十数mはあろう距離を一瞬にして詰め、ミナトは生き残ったハイエルフ達のほとんどが密集している場所に踏み込んだ。

 それだけで、ミナトが発している高熱でハイエルフ達は肌を焙られ、悲鳴を上げるが、

「どォ―――らァァアァア!!」

 その場でミナトが一回転しながら、思い切り『焔魔橙皇』を振りぬく。

 その際に発生した爆炎、衝撃波、真空波、そして爆風により、周囲にいたハイエルフ達は残らず消し飛んで、やはり灰になった。

 そして最後に、手首を切り返して薙刀を持ち替えたミナトは、返す刀で……先程、自分が頭部を爆散させて脱出した『サンドワーム』の方に向き直る。
 虫系の魔物の例にもれず、生命力が恐ろしく強いその魔物は、頭を失ってもびたんびたんと体をうねらせて暴れていた。

 最早意識はないだろうが、ミナトにはそれが邪魔だったため……ひと呼吸のうちに6度斬りつけて、衝撃波と爆炎で残りの体も消し飛ばした。

 そうしてふと振り返るミナト。
 『バーニングフォルム』を解除し、『ハイパーアームズ』に戻り……その視線の先には、ただ1人残った最後のハイエルフが、汗と涙、鼻水で酷い顔になって立ち尽くしていた。

「そんな……あり得ない。至高の種族が、我らハイエルフが、こんな……こんなこと、認めるわけには……!」

「……言語中枢に問題があるんじゃないかってくらいに同じことしか言わない奴らだな……」

 こいつらは最後までこうなんだな、と、呆れながらため息をつくミナト。

 今日すでに何度も使った『エンドカウンター』。その、『4』『8』『12』の文字盤をなぞるように触れて……それはすなわち、現時点におけるミナトの最強形態への変身を意味する。

『Walpurgis! Georgius! Uroboros! Operation……Ultimate!!』

「アルティメットジョーカー……!!」

 闇色の3つの魔法陣。そこに封印されたCPUMごとそれらを吸収し、融合。
 ライダースーツを思わせる装束に身を包み、髪の毛の一部を金色に、両目を緑色に変えて……ミナトは、最強形態『アルティメットジョーカー』に変身した。

 そして、最後に残った1人のハイエルフを前に、右足……だけでなく、両手両足全てに、凄まじい魔力を収束させていく。
 まるで、漆黒の台風を両手両足にまとっているかのような光景である。

「ああああ、あってはならない! あるわけがないこんなことが! 夢だ、これはきっと悪い夢だ……でなければ、我々ハイエルフがこんな、こんな形で終わるなど!」

「もうそれでいいよ、いいから……その妄想も世迷言も、全部……地獄に持っていけ!」

 瞬間、ミナトは弾丸のような勢いで前に飛び出し……同時に、ハイエルフは、錯乱したか自棄になったか、明らかに正気ではない様子で、剣を抜いて斬りかかってきた。

 が、両者が接触する直前、ミナトは『虚数跳躍』で異空間に跳び、その場から一瞬消える。

 その直後、驚き困惑するハイエルフの背後に現れたミナトは、背後から足を払い、さらにその腹を蹴り上げて空中に浮かせる。
 この時点で、ハイエルフはその威力とあまりに濃密な『闇』の魔力により、半ば意識は飛んでいる状態だった。

 そこから、ミナトも跳びあがってそれに追いつき……

 空中で飛び膝蹴りを顎に叩き込んで砕き、
 空中後ろ回し蹴りで胸を陥没させ、
 かかと落としで頭蓋骨を割り、
 肘鉄をみぞおちに叩き込んで内臓を潰し、
 二連続の回し蹴りで腰の骨と大腿骨を粉砕し、
 鋭く振り下ろした手刀で袈裟懸けに切り裂き、
 そして最後に『ダークネスキック』の要領で放った飛び蹴りで吹き飛ばした。

 最初の一撃から最後の一発まで、0.5秒とかからずに全てが叩き込まれ……残像でミナトが何人もいて、ほぼ同時に攻撃しているように見えたその攻撃。

 幸か不幸かハイエルフは、痛みを感じる間もなく、自分が敗北したことを認識する時間すらないままに、地面に墜落し……


 ――ドゴォオオォオン!!


 今の連撃で叩き込まれていた衝撃とエネルギーの全てが炸裂したことにより、大爆発が起こり……全身を粉々にして、その爆炎の中に消滅した。

 その爆発を背負う形で着地したミナトは、ふぅ、と一息ついて『アルティメットジョーカー』を解除。
 『ハイパーアームズ』ごと解除したことにより、展開していた『隔離結界』が消滅し、空中にいたギーナとサクヤ共々、元の空間に戻ってきたのだった。



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