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第二章 デビューに向けて!

【2】ランチのパセリは、甘やかな使い回しパスタ!

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 レシピ小説とゆう前代未聞、BLファン未踏の領域に足を踏み入れてしまった花園乱華とゆう新進気鋭のJKのBL作家見習いとわ?

 それは、何を隠そうこの私、花園乱華だ。

 週末に初めての処女作『きゅうりとヨーグルトの甘やかBL冷製スープ』をいろんな小説投稿サイトに投稿させていただいたけど、読者さまの反応がまったくの無反応だったので、名誉挽回しようとこの週末は傾向と対策とネタ探しに集中したのだ。

 そして、今、かったるい現国の授業の真っ最中である。夏目漱石の『こころ』なんだけど、ちょっと先生、分かってないかも。これって文学者の夏目漱石が書いたBLなんだよ? 冒頭の私と先生の関係とか、完全にBLだってのに、遺書みたいな手紙を永遠と読まされて、私、花園乱華は、おこおこプンプン丸で遠洋漁業に旅立って、授業そっちのけでマグロ釣りの真っ只中なのだ。

 私、決めた! BL作家になって芥川賞と直木賞をダブル受賞して、現国の教科書に花園乱華の名前を載せて、現国の教材にする! そしたら定期テストとか入試とかで、満点取れるもんね。
 問いの一。下線部の受けちゃんの気持ちを八百一字で述べなさい。
 問いの二。ここで攻め様が行うプレイとして正しいものを、左の選択肢の中から選びなさい(ただし、プレイはひとつとは限らない)。
 何なら私が出題者だ。

 そしてゆくゆくわ、世界各国で翻訳されてノーベル賞とか、素敵じゃない? そうなったら谷屋アガサ先生もきっと喜んでくださると思う。一番弟子の大活躍なんだもん。こうゆうのって、出藍の誉れ、ってゆうんだよね?

 チャイムがなった。お昼のランチの時間だ。今日は久しぶりに学食に行って、ぬるい女たちのメニューを観察しに行こう。何かレシピのヒントになるかも知れないし、リサーチって必要だよね。

 カフェテリアとは名ばかりの学食は、腹ペコのJKの吹きだまりだった。今日の日替わりランチは、ミニハンバーグ定食が今日の日替わりメニューだった。
 よく見ると、どのテーブルも付け合わせのパスタが、誰も食べてなくて、お皿の上に余ってて、勿体無いんだけど、でもこれってやっぱり、多分なんだけど、きっとパセリと同じで使い回しなんだろうな、と名探偵の私は睨んで、いる。

   ♡  ♡  ♡
 また追い返されてしまった……。
 りゅうさきたつは、深いため息をディープについた。真珠のように美しく輝く涙の粒が長いまつげを甘やかに濡らし、頬を伝わって、握りこぶしに落ちた。
 辰美の目の前にはうず高く積みあげられたパスタのパッケージが、ワゴン車のトランクの中で山のように積まれて、いる。

 『甘やかパスタ♡カレー味』

 ダンボール箱に書かれた甘やかパスタの商品名が泣きじゃくる辰美のつぶらな瞳の中で甘やかに潤んで滲む。大手食品メーカーの営業は楽ではないのだ。
「どうしたんだい、泣き虫さん?」
夢小路ゆめのこうじ先輩……?」
 声をかけてきたのは営業部の先輩で、営業成績トップの誰もが憧れるエリート営業マンの夢小路ゆめのこうじ優馬ゆうまであった。
「な、泣いてなんかいませんってば!」
「嘘つきさん♡」
「先輩のイジワル。ぼく、泣いてなんか……んんっ……」
 夢小路は突然、辰美の唇を肉厚の唇でふさいだ。辰美のやわらかな唇を肉厚の舌先が、隙間を溶かすように甘やかに撫でると、春に桜の花が蕾を開くように、辰美の唇が可憐な花びらをふっくらと咲き誇らせて、夢小路の舌を受け入れた。辰美はその甘やかな感触に、腰が砕けてしまう。
「おっと危ない。可愛い後輩クン」
 崩れ落ちそうな辰美を夢小路がたくましい腕でしっかりと抱きとめた。
「君に営業のコツを教えてあげるよ」
 夢小路は辰美のネクタイを甘やかにほどくとシャツのボタンを巧みに外し、胸のクルトンにむしゃぶりついた。
「ああん! 先輩!」
 甘やかな営業レッスンが始まった。
   ♡  ♡  ♡

 レシピじゃなくなったけど、ま、いいか。
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