上 下
82 / 82
第六章 親分はボディガード

突入! ※【絡み:小川健悟x柳川健人】

しおりを挟む
 健悟は両肘をついて、その巨軀をほんの少しだけかせた。さっきまでぴったりと重なっていた肌と肌が、ゆっくりと離れてゆく。貼りついた救急絆創膏を剥がすときのような、いや、そういったヒリヒリとする痛みではない。それよりも、ねっとりとした感覚。ちょうど水飴のような、とろりとした粘度を健悟は感じた。
 裸かの肌と肌のあいだには隙間がある。しかし健悟は、まだ柳川と触れあっているような心持がした。上半身をびっしりと覆いつくす健悟の剛毛が、まだ柳川の肌の表面にその先を残しているのだった。
「親分……ああっ……」
 健悟の真下で柳川が苦しそうに身を捩らせる。しっぽりと濡れた無数の筆先で愛撫されているような気分なのだろう。
「おう。くすぐってえのか?」
 健悟がドスを利かせたが、柳川からの返事はない。ただ小刻みに全身を揺らしつづけるばかりだ。そこで健悟はからだの位置を下にずらし、互いの乳首と乳首が触れあうようにした。
「ふぅ……くぅ……ん、おやぶ……」柳川が胸を左右に揺らして乳首同士を擦りあわせる。「ああ……親分……」
「ここも擦りっこしねえとな」健悟は一度だけ腰を軽く前後に動かした。「消防士になりてえんだろ? ほら、動けよ」
 云われるままに柳川が腰を動かしはじめた。最初はおずおずと、もどかし気に。しかしその動きは次第に大きくなっていった。
 相棒同士のぶつかりあいを股間に感じながら、健悟は柳川のようすを凝っと眺めた。
 ——くそったれ。可愛いじゃねえか。なあ、相棒。
 ——まったくだ。で、俺の出番はいつだ?
 ——せっかくだから、もうちょっと楽しんでからだな。
 ——ああん?
 ——おっと、前言撤回。柳川に楽しんでもらわねえとな。
 健悟の目の前で人気絶頂の若手イケメン俳優が眉根を寄せ、唇を半開きにして喘ぎながら快楽に酔いしれている。健悟はもう一度、その唇に顔を近づけた。こんどは柳川の上下の唇を、その肉厚の舌で一周舐めまわしてから舌を深く差しいれた。柳川がくぐもった声をあげる。いい反応だ。それでいい。健悟はその舌で柳川の舌を捕らえ、たっぷりと揉みくちゃにしてから解放してやった。
「柳川、おめえキスシーンはやったことあんのか?」低い声で柳川の耳許に声を送りこむ。
「な……ないっす……」喘ぎ喘ぎ柳川が応えた。
「だろうな。相手役の女が炎上するに決まってる」健悟はひと呼吸おいて、核心に迫った。「プライベートでもか?」
 柳川が無言になった。
 健悟は揶揄からかうように云った。「童貞なのは仕方ねえが、キスぐらいは経験あんだろ。ああん?」
「……」
 柳川は顔をそっと背けた。目をぎゅっと閉じ、やはり何も云わない。長い睫毛が小刻みに震えている。
 おいおい。セックスどころか、キスも俺が初めてなのか?
 最高じゃねえか。
 健悟はつぎの行動に移った。
 舌を顎から咽喉へと辷らせ、柳川の咽喉仏の周囲を円を描くようにじっくりと舐めまわし、それからそこに唇をすっぽりと被せた。飴玉をしゃるぶように舌で咽喉仏を愛撫すると、柳川が、ああ、と掠れた声を洩らす。その官能的な響きに健悟はますますたかぶった。
「おう。我慢しねえで声出しな」
 云いながら健悟はつぎの場所へと舌を運んだ。
 左右の鎖骨の窪みを叮嚀に舌で愛撫し、それからまずは左の乳首の周りを念入りに舐めまわす。右肘に体重をかけて巨軀の左側を心持ち泛かせると左手で右の胸を荒々しくまさぐり、指の腹で乳首を捏ねまわした。
「お、親分……」柳川が声をあげた。やめてほしいのか、続けてほしいのか。健悟にはどっちでもいいことだ。「ああっ……」
「声を出せと云っただろ」乳首から唇を離して健悟がえた。「出火元を探してんだ。どうやら、おめえの軀のどっかにあるらしい」もっともらしいことを云いながら、左手を乳首から離し、わき腹を手のひらで腰のほうから撫であげる。
「あっ、あっ、ああっ……」柳川が身もだえしながら両腕をあげ、両手で顔を覆った。「親分……親分……」
 健悟は柳川の両手を顔から引きはがし、枕のしたに潜りこませた。暗がりのなかで柳川の腋窩が顕わになる。その黒さは影なのか体毛なのかよくわからない。ただ若い青年の、すがすがしい、若草のようなすっきりとした匂いが立ちこめるだけだ。そしてそれは明らかにまだ女を識らぬ無垢な青年のものだった。健悟の放つ雄のフェロモン——これのおかげで健悟は今まで遊び相手に困ったことはなかった——とはまったく違うものだった。
 この俺が初めての相手ってわけか……。
 健悟が感慨にふけりながら柳川の乳首を愛撫していると、柳川が腰を大きく揺らしはじめた。健悟の胸の谷間に何かが当たっている。柳川が自分の相棒を健悟の分厚い胸に擦りつけているのだった。剛毛にくすぐられるのが心地よいのか、柳川の腰の動きは止まらない。
 そうか。そういうことなら……。
 健悟は身を起こして柳川の相棒を握った。その柔らかな皮をほぐすように手筒をゆるゆると上下させる。しばらくそうしてから、手筒を相棒の根元までひと息に引きおろした。
「あああっ——!」
「剥いておけといったはずだ」とドスを利かせ、健悟は柳川から離れた。そして柳川をうつ伏せに転がすと、脚を割って両膝を入れ、両手で腰を掴んで持ち上げた。それからそのまま両手を這わせ、尻の谷間に沿って親指を差しいれると、リンゴを素手で割るかのように尻肉を左右に割り開いた。
「おう。柳川——」相棒の先端を谷間の中心にある窪みに押しつける。そこは泥濘むかるみのように柔らかくなっていて、腰を軽く押しだすだけで先端の三分の一ほどが内部に侵入した。「どうやらこの奥が出火元らしいぜ」
 柳川がびくりと全身を震わせた。それに呼応して、健吾の相棒がさらに奥へと進む。
 ——相棒、準備はいいか?
 ——ああ、そのままドスンとな。
 相棒はすでによだれを垂らしている。健悟はその粘液が柳川の腰の奥へ流れこんでゆくのを感じて興奮した。相棒がそれに応えるように、よりいっそう太く硬くなる。
 柳川も自分のなかに健悟の体液が流れこむのを感じているようだ。言葉にならない声をあげながら小刻みに腰を揺らす。それは健悟の侵入を拒んでいるのではなく、これから起こることを予想して武者震いしているかのようだだった。
 健悟はゆっくりと柳川に覆いかぶさった。左手で柳川の口許を覆い、右手で柳川の腰をしっかりと抱く。無精ひげの生えた頬を柳川の柔らかな頬に擦りつけ、焦らすようにしばらくのあいだそうした。
 ここまで来たら、もう引き返すことはできない。いや、引き返すものか。
 頬ずりをやめて、健吾が柳川の耳許で囁いた。
「おう。突入すっぞ!」
 つぎの瞬間——健悟は体重をかけて埋没した……。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

taka
2023.10.30 taka

思わぬ展開に、なってる来ましたね。
健吾があんなに、小さくなるなんて、  今後の展開、益々面白くなりそう。目が離せませんね👍😀
続き、早くよみたいよ〜‼️‼️‼️

山葉らわん
2023.10.31 山葉らわん

感想、ありがとうございます。

柳川くんの不在中にいろんな災難が降りかかってきたら面白そうかな、と思いながら書いています。

柳川くんが北海道から帰ってきたらどうなるかも期待していてください。

解除
taka
2023.10.26 taka

健吾さんも柳川君も小雪ちゃんも
皆、天然ボケ⁉️ キャラ爆発💥だね😀
毎回笑えるね‼️‼️‼️

山葉らわん
2023.10.27 山葉らわん

感想、ありがとうございます。

この作品の出だしはシリアス路線(のつもり)だったのですが、書きすすめていくうちに、コメディーっぽいものに変容していきました。

健悟は本厄という設定になっていますが、案外、天然な小雪ちゃんがいちばんの災難ではないかと書いていながら思っています。

解除
taka
2023.10.16 taka

今晩わ!毎回、健吾の会話には笑わせて頂いてます。柳川君と健吾のギャップも楽しいですね。こう言う小説もありですね。
次回も楽しみにしています。

山葉らわん
2023.10.17 山葉らわん

感想ありがとうございます。

健悟の会話を笑ってくださっているとのこと。
実は会話を考えるのに毎回苦労しているので、大変励みになります!

WEB小説ではメインではない、地の文と会話文がびっちり詰まった作品ですが、今後ともご笑読くださいませ。



解除

あなたにおすすめの小説

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

鈴蘭の魔女の代替り

拝詩ルルー
ファンタジー
⭐︎旧タイトル:レイの異世界管理者生活 〜チート魔女になったので、この世界を思いっきり堪能する所存です〜 「あなたには私の世界に来て、私の代わりに管理者をやってもらいたいの」 鈴蘭の魔女リリスに誘われ、レイが召喚された異世界は、不思議で美しい世界だった。 大樹ユグドラを世界の中心に抱き、人間だけでなく、エルフやドワーフ、妖精や精霊、魔物など不思議な生き物たちが生きる世界。 この世界は、個人が人生を思い思いに自由に過ごして全うする「プレイヤー」と、愛をもって世界システムを管理・運営していく「管理者」の二つに分かれた世界だった。 リリスに子供の姿に戻されたレイは、管理者の一員となって、世界の運営に携わっていく。 おとぎ話のような世界の中で、時に旅しては世界の美しさに感動し、世界の不思議に触れては驚かされ、時に任務や管理者の不条理に悩み、周りの優しさに助けられる……レイと仲間達が少しずつ成長してく物語。 ※ストーリーはコツコツ、マイペース進行です。 ※主人公成長中のため、恋愛パートは気長にお待ちくださいm(_ _)m

私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。 彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。 それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。 そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。 公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。 そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。 「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」 こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。 彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。 同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。

2回目チート人生、まじですか

ゆめ
ファンタジー
☆☆☆☆☆ ある普通の田舎に住んでいる一之瀬 蒼涼はある日異世界に勇者として召喚された!!!しかもクラスで! わっは!!!テンプレ!!!! じゃない!!!!なんで〝また!?〟 実は蒼涼は前世にも1回勇者として全く同じ世界へと召喚されていたのだ。 その時はしっかり魔王退治? しましたよ!! でもね 辛かった!!チートあったけどいろんな意味で辛かった!大変だったんだぞ!! ということで2回目のチート人生。 勇者じゃなく自由に生きます?

Sな白衣様と俺様芸能人【BLR18】完結

綺羅 メキ
BL
ある日、入院病棟のテレビで患者さん達が騒いでいた今超有名なreiya。 見た目は爽やかイケメンなのだが……怪我をし、君沢音也が働いている病院に入院し、しかも音也の担当となる。 音也はあの時から、ずっとreiyaの事を追いかけ続けていた。テレビも録画し見ていた位なのだから。 担当になった日。音也がreiyaの病室へと訪れると、reiyaから、 「抜いてよ……」 と言われる。 その場はいきなりな事過ぎて、そこ場から逃げてしまった音也なのだが、数日後には何か策を練って再びreiyaの部屋へと訪れる。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

私はあなたの母ではありませんよ

れもんぴーる
恋愛
クラリスの夫アルマンには結婚する前からの愛人がいた。アルマンは、その愛人は恩人の娘であり切り捨てることはできないが、今後は決して関係を持つことなく支援のみすると約束した。クラリスに娘が生まれて幸せに暮らしていたが、アルマンには約束を違えたどころか隠し子がいた。おまけに娘のユマまでが愛人に懐いていることが判明し絶望する。そんなある日、クラリスは殺される。 クラリスがいなくなった屋敷には愛人と隠し子がやってくる。母を失い悲しみに打ちのめされていたユマは、使用人たちの冷ややかな視線に気づきもせず父の愛人をお母さまと縋り、アルマンは子供を任せられると愛人を屋敷に滞在させた。 アルマンと愛人はクラリス殺しを疑われ、人がどんどん離れて行っていた。そんな時、クラリスそっくりの夫人が社交界に現れた。 ユマもアルマンもクラリスの両親も彼女にクラリスを重ねるが、彼女は辺境の地にある次期ルロワ侯爵夫人オフェリーであった。アルマンやクラリスの両親は他人だとあきらめたがユマはあきらめがつかず、オフェリーに執着し続ける。 クラリスの関係者はこの先どのような未来を歩むのか。 *恋愛ジャンルですが親子関係もキーワード……というかそちらの要素が強いかも。 *めずらしく全編通してシリアスです。 *今後ほかのサイトにも投稿する予定です。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~

さとう
ファンタジー
 町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。  結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。  そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!  これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。