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場違い感、王子の即答
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「玉井さん!!無事で良かった……!!」
「由良先輩~!!」
私達は、玉井さんの無事を喜んで場所を選ばずにその場で抱き合った。
良かった!何事もなくて本当に良かった……!!
「たまい様、ゆら様。応接間へご案内致します」
ひとしきり喜びを分かち合う私達を待ってくれた後でグザヴィエさんはそう言い、私達はそれに従った。
「あれっ、何で私は名字で由良先輩は名前なの?」
玉井さんが少しむくれて言い、私はお互いの呼び方が関係しているのではないかと伝えた。私は玉井さんを名字で呼び、玉井さんは私を名前で呼んでいるから。
「グザヴィエさん、私も彩那って呼んで下さい!」
「あやな様、ですね」
「はい♪」
グザヴィエさんが応じると、玉井さんは素直に喜んだ。こうしたところが、彼女は本当に可愛いと思う。
応接間には、ヴィル様が座る予定と思われるお誕生日席があり、グザヴィエさんは右側の席に玉井さんと横並びで座った。向かいには貴族っぽい人が三人既に待機していて、グザヴィエさんが座る前に互いに握手する。私はついてきたものの身の置き場がなくて、お茶ののったワゴンの横に立っていた侍女の方の横にそっと並ぶ。
玉井さんはそんな私を気にして自分の席の横の席をトントン叩き、ここに席が空いてますよ~とアピールしてくれたが、私は空気になりたくて身振り手振りで断った。
一人場違い感が半端ない。
玉井さんがグザヴィエさんに何か話し掛けたところで扉が開き、「殿下の来室です」と挨拶があったため、慌てて全員が席を立ちお辞儀をする。私と玉井さんもそれに合わせてお辞儀したところで、開いた扉からヴィル様が入室された。
「よい。皆、座れ」
ヴィル様は歩きながらそう言い、グザヴィエさんが座ったのを見て全員が着席をする。横に立っている侍女の方が顔を上げたタイミングで私も顔を上げたのだが、その瞬間にバッチリとヴィル様と視線が合い、一人焦った。
……え?何か不敬な事しちゃったりしました!?
背中を冷や汗がダラダラ流れた気がするが、ヴィル様は後ろに侍らせていた秘書官の様な人に何か指示すると、こちらを見たまま手をグーパーした。
……何だろう?あのグーパー??誰か殴る前の準備運動じゃないよね?
私がひきつった笑いを浮かべたまま微動だに出来ないでいると、ヴィル様の横に椅子が1脚置かれ、グザヴィエさんが「ゆら様、こちらに」と言った。どうやらグーパーの動きは、こちらでは手招きだったらしい。その場にいた全員の視線が私に注がれ、私は玉井さんの横に座らなかった事を物凄く後悔する羽目になったのだった。
***
「たまいは城ではなく、神殿の保護下希望と聞いているが」
「は、はい!私はグザヴィエさんのご指導の下、生活させて頂きたく思います!」
ヴィル様が端的に話し、玉井さんは緊張しながらも自分の希望を述べる。
「わかった、許可しよう」
「ありがとうございますっ」
玉井さんはようやくこわばっていた顔を綻ばせた。自分が殺される預言を視たのだから、よっぽど怖かったんだろうな。
安心し、嬉しそうな玉井さんを見て私もホッとした。
「それで、あの……出来たら由良先輩も」
「それは駄目だ」
ええーっ!!
なんか今、玉井さんが勇気を振り絞ってこの世界に私の居場所も作ってくれそうな話をし出してくれたのに、最後まで言わせる事もなくヴィル様がピシャリと拒否した気がして私の気は遠退く。
何で……私達はお互いだけが異世界人でわかりあえるのに、何で離ればなれにさせるのさ……
私が横に座るヴィル様を思わず恨みがましい目で見てしまったのだろうか、私の視線に気付いた彼は咳払いをして、
「だよな、グザヴィエ?」
とグザヴィエさんに合意を求めた。
「由良先輩~!!」
私達は、玉井さんの無事を喜んで場所を選ばずにその場で抱き合った。
良かった!何事もなくて本当に良かった……!!
「たまい様、ゆら様。応接間へご案内致します」
ひとしきり喜びを分かち合う私達を待ってくれた後でグザヴィエさんはそう言い、私達はそれに従った。
「あれっ、何で私は名字で由良先輩は名前なの?」
玉井さんが少しむくれて言い、私はお互いの呼び方が関係しているのではないかと伝えた。私は玉井さんを名字で呼び、玉井さんは私を名前で呼んでいるから。
「グザヴィエさん、私も彩那って呼んで下さい!」
「あやな様、ですね」
「はい♪」
グザヴィエさんが応じると、玉井さんは素直に喜んだ。こうしたところが、彼女は本当に可愛いと思う。
応接間には、ヴィル様が座る予定と思われるお誕生日席があり、グザヴィエさんは右側の席に玉井さんと横並びで座った。向かいには貴族っぽい人が三人既に待機していて、グザヴィエさんが座る前に互いに握手する。私はついてきたものの身の置き場がなくて、お茶ののったワゴンの横に立っていた侍女の方の横にそっと並ぶ。
玉井さんはそんな私を気にして自分の席の横の席をトントン叩き、ここに席が空いてますよ~とアピールしてくれたが、私は空気になりたくて身振り手振りで断った。
一人場違い感が半端ない。
玉井さんがグザヴィエさんに何か話し掛けたところで扉が開き、「殿下の来室です」と挨拶があったため、慌てて全員が席を立ちお辞儀をする。私と玉井さんもそれに合わせてお辞儀したところで、開いた扉からヴィル様が入室された。
「よい。皆、座れ」
ヴィル様は歩きながらそう言い、グザヴィエさんが座ったのを見て全員が着席をする。横に立っている侍女の方が顔を上げたタイミングで私も顔を上げたのだが、その瞬間にバッチリとヴィル様と視線が合い、一人焦った。
……え?何か不敬な事しちゃったりしました!?
背中を冷や汗がダラダラ流れた気がするが、ヴィル様は後ろに侍らせていた秘書官の様な人に何か指示すると、こちらを見たまま手をグーパーした。
……何だろう?あのグーパー??誰か殴る前の準備運動じゃないよね?
私がひきつった笑いを浮かべたまま微動だに出来ないでいると、ヴィル様の横に椅子が1脚置かれ、グザヴィエさんが「ゆら様、こちらに」と言った。どうやらグーパーの動きは、こちらでは手招きだったらしい。その場にいた全員の視線が私に注がれ、私は玉井さんの横に座らなかった事を物凄く後悔する羽目になったのだった。
***
「たまいは城ではなく、神殿の保護下希望と聞いているが」
「は、はい!私はグザヴィエさんのご指導の下、生活させて頂きたく思います!」
ヴィル様が端的に話し、玉井さんは緊張しながらも自分の希望を述べる。
「わかった、許可しよう」
「ありがとうございますっ」
玉井さんはようやくこわばっていた顔を綻ばせた。自分が殺される預言を視たのだから、よっぽど怖かったんだろうな。
安心し、嬉しそうな玉井さんを見て私もホッとした。
「それで、あの……出来たら由良先輩も」
「それは駄目だ」
ええーっ!!
なんか今、玉井さんが勇気を振り絞ってこの世界に私の居場所も作ってくれそうな話をし出してくれたのに、最後まで言わせる事もなくヴィル様がピシャリと拒否した気がして私の気は遠退く。
何で……私達はお互いだけが異世界人でわかりあえるのに、何で離ればなれにさせるのさ……
私が横に座るヴィル様を思わず恨みがましい目で見てしまったのだろうか、私の視線に気付いた彼は咳払いをして、
「だよな、グザヴィエ?」
とグザヴィエさんに合意を求めた。
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