21 / 99
-21-
しおりを挟む
魔具が緑色に点滅しているのを確認したカダルは、サージスに声を掛けた。
「予定通り、姉さんがユリアナに通信したみたいですよ」
「あぁ。流石サラだな。起きて直ぐにユリアナの事まで気が回るとは」
サージスが答える。
「姉さん一人でしたら、確実に修道院か何かに逃げ込んでいるでしょうからね。ユリアナがいてくれて、助かります」
「こちらもサラのお陰で、ユリアナが心を病まずに済む。ユリアナには、お前は悪くない、と言い続けてくれる存在が必要だからな。それがサラであるなら、申し分ない」
サージスは満足げにクツクツと笑った。
「ところで、カダルの魔具の方はどんな様子だ?明日からお互い一週間休みを貰っているが、無事に予定通り休めそうか?」
「はい。こちらの魔具は、もうすぐ完成致します。サージス様はどうですか?今日中に帰宅出来そうですかね?」
「勿論。早くユリアナを抱きたい」
「その気持ちはわかりますけど。今日はどんなに夜遅く帰っても、姉さんは寝ずに待ってサージス様に詰め寄ると思いますよ?」
「…面倒だな」
「触らないで下さいよ?お互い相手に触ったらわかる様になってますし、要らない心配はしたくないんで」
「気を付けよう。サラに殴られるのは、私ではなくお前だしな、カダル」
「私としては、姉さんの性格上『聞きたい事は山ほどあるが、まずは一発殴らせろ』とか言ってくるかと思います」
カダルは、そんなサラの様子を思い浮かべながら、微笑んだ。
「…その内容を、笑って話さないで貰いたいな。生憎、喧嘩でサラに勝てる自信はないぞ?」
「私もです。仕込んでおいた、眠りの魔具を使って良いですよ」
「良いのか?あれ、何かのプレイに使う予定だったんだろう?」
「全く問題ありません。眠っている間に、やりたい事もあるので…あぁ、本当に犯りたい放題の一週間が、楽しみです」
「そうだな。ただし、覚えておけよ?今日帰宅したら、屋敷の者への周知徹底をして貰わないと、私が困るからな?」
「今朝出てくる時に、手配済みですが…そうですね、帰宅したらまた言っておきます」
「ああ、そうしてくれ。一週間、夫婦の寝所と部屋への出入り禁止。朝7時、昼12時、夜6時に部屋へは入らず、配膳口から食事を運ぶ、あと…」
「毎日、シーツも配膳口に新しいものを用意させる、ですよね?」
「そうだ…一組でなく、三組にしておいてくれ。何かあったら、魔具鏡で連絡を。…頼むから、携帯しろよ?」
「はは、魔具鏡の携帯なんて、初めてですから忘れそうですね」
「何の為に必死になって、研究してきたと思っているんだ」
「試験は上手くいきましたし。使えそうなら、改良して市場におろしましょう」
「個人対個人でやり取りできる魔具鏡は絶対需要あるだろうから任せるよ」
「はい。…と、もうこんな時間ですよ、サージス様。お互いそろそろ戻りませんと」
「そうだな。今日は、24時に転移で。戻るのは、一週間後の仕事始めの…」
「5時でもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな。それで良い。…さて、帰るか」
「そうですね、さっさと帰りましょう」
サージスとカダルは、黙々と帰宅準備をし、それぞれの新居へと向かった。
「予定通り、姉さんがユリアナに通信したみたいですよ」
「あぁ。流石サラだな。起きて直ぐにユリアナの事まで気が回るとは」
サージスが答える。
「姉さん一人でしたら、確実に修道院か何かに逃げ込んでいるでしょうからね。ユリアナがいてくれて、助かります」
「こちらもサラのお陰で、ユリアナが心を病まずに済む。ユリアナには、お前は悪くない、と言い続けてくれる存在が必要だからな。それがサラであるなら、申し分ない」
サージスは満足げにクツクツと笑った。
「ところで、カダルの魔具の方はどんな様子だ?明日からお互い一週間休みを貰っているが、無事に予定通り休めそうか?」
「はい。こちらの魔具は、もうすぐ完成致します。サージス様はどうですか?今日中に帰宅出来そうですかね?」
「勿論。早くユリアナを抱きたい」
「その気持ちはわかりますけど。今日はどんなに夜遅く帰っても、姉さんは寝ずに待ってサージス様に詰め寄ると思いますよ?」
「…面倒だな」
「触らないで下さいよ?お互い相手に触ったらわかる様になってますし、要らない心配はしたくないんで」
「気を付けよう。サラに殴られるのは、私ではなくお前だしな、カダル」
「私としては、姉さんの性格上『聞きたい事は山ほどあるが、まずは一発殴らせろ』とか言ってくるかと思います」
カダルは、そんなサラの様子を思い浮かべながら、微笑んだ。
「…その内容を、笑って話さないで貰いたいな。生憎、喧嘩でサラに勝てる自信はないぞ?」
「私もです。仕込んでおいた、眠りの魔具を使って良いですよ」
「良いのか?あれ、何かのプレイに使う予定だったんだろう?」
「全く問題ありません。眠っている間に、やりたい事もあるので…あぁ、本当に犯りたい放題の一週間が、楽しみです」
「そうだな。ただし、覚えておけよ?今日帰宅したら、屋敷の者への周知徹底をして貰わないと、私が困るからな?」
「今朝出てくる時に、手配済みですが…そうですね、帰宅したらまた言っておきます」
「ああ、そうしてくれ。一週間、夫婦の寝所と部屋への出入り禁止。朝7時、昼12時、夜6時に部屋へは入らず、配膳口から食事を運ぶ、あと…」
「毎日、シーツも配膳口に新しいものを用意させる、ですよね?」
「そうだ…一組でなく、三組にしておいてくれ。何かあったら、魔具鏡で連絡を。…頼むから、携帯しろよ?」
「はは、魔具鏡の携帯なんて、初めてですから忘れそうですね」
「何の為に必死になって、研究してきたと思っているんだ」
「試験は上手くいきましたし。使えそうなら、改良して市場におろしましょう」
「個人対個人でやり取りできる魔具鏡は絶対需要あるだろうから任せるよ」
「はい。…と、もうこんな時間ですよ、サージス様。お互いそろそろ戻りませんと」
「そうだな。今日は、24時に転移で。戻るのは、一週間後の仕事始めの…」
「5時でもよろしいでしょうか?」
「ああ、そうだな。それで良い。…さて、帰るか」
「そうですね、さっさと帰りましょう」
サージスとカダルは、黙々と帰宅準備をし、それぞれの新居へと向かった。
3
お気に入りに追加
2,012
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
平凡地味子ですが『魔性の女』と呼ばれています。
ねがえり太郎
恋愛
江島七海はごく平凡な普通のOL。取り立てて目立つ美貌でも無く、さりとて不細工でも無い。仕事もバリバリ出来るという言う訳でも無いがさりとて愚鈍と言う訳でも無い。しかし陰で彼女は『魔性の女』と噂されるようになって―――
生まれてこのかた四半世紀モテた事が無い、男性と付き合ったのも高一の二週間だけ―――という彼女にモテ期が来た、とか来ないとかそんなお話
※2018.1.27~別作として掲載していたこのお話の前日譚『太っちょのポンちゃん』も合わせて収録しました。
※本編は全年齢対象ですが『平凡~』後日談以降はR15指定内容が含まれております。
※なろうにも掲載中ですが、なろう版と少し表現を変更しています(変更のある話は★表示とします)
義妹がすぐに被害者面をしてくるので、本当に被害者にしてあげましょう!
新野乃花(大舟)
恋愛
「フランツお兄様ぁ〜、またソフィアお姉様が私の事を…」「大丈夫だよエリーゼ、僕がちゃんと注意しておくからね」…これまでにこのような会話が、幾千回も繰り返されれきた。その度にソフィアは夫であるフランツから「エリーゼは繊細なんだから、言葉や態度には気をつけてくれと、何度も言っているだろう!!」と責められていた…。そしてついにソフィアが鬱気味になっていたある日の事、ソフィアの脳裏にあるアイディアが浮かんだのだった…!
※過去に投稿していた「孤独で虐げられる気弱令嬢は次期皇帝と出会い、溺愛を受け妃となる」のIFストーリーになります!
※カクヨムにも投稿しています!
【完結】婚約者の母が「息子の子供を妊娠した」と血相変えてやって来た〜私の子供として育てて欲しい?絶対に無理なので婚約破棄させてください!
冬月光輝
恋愛
イースロン伯爵家の令嬢であるシェリルは王族とも懇意にしている公爵家の嫡男であるナッシュから熱烈なアプローチを受けて求婚される。
見た目もよく、王立学園を次席で卒業するほど頭も良い彼は貴族の令嬢たちの憧れの的であったが、何故か浮ついた話は無く縁談も全て断っていたらしいので、シェリルは自分で良いのか不思議に思うが彼の婚約者となることを了承した。
「君のような女性を待っていた。その泣きぼくろも、鼻筋も全て理想だよ」
やたらとシェリルの容姿を褒めるナッシュ。
褒められて悪い気がしなかったが、両家の顔合わせの日、ナッシュの母親デイジーと自分の容姿が似ていることに気付き少しだけ彼女は嫌な予感を抱く。
さらに婚約してひと月が経過した頃……デイジーが血相を変えてシェリルの元を訪ねた。
「ナッシュの子を妊娠した。あなたの子として育ててくれない?」
シェリルは一瞬で婚約破棄して逃げ出すことを決意する。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
貴方の事を愛していました
ハルン
恋愛
幼い頃から側に居る少し年上の彼が大好きだった。
家の繋がりの為だとしても、婚約した時は部屋に戻ってから一人で泣いてしまう程に嬉しかった。
彼は、婚約者として私を大切にしてくれた。
毎週のお茶会も
誕生日以外のプレゼントも
成人してからのパーティーのエスコートも
私をとても大切にしてくれている。
ーーけれど。
大切だからといって、愛しているとは限らない。
いつからだろう。
彼の視線の先に、一人の綺麗な女性の姿がある事に気が付いたのは。
誠実な彼は、この家同士の婚約の意味をきちんと理解している。だから、その女性と二人きりになる事も噂になる様な事は絶対にしなかった。
このままいけば、数ヶ月後には私達は結婚する。
ーーけれど、本当にそれでいいの?
だから私は決めたのだ。
「貴方の事を愛してました」
貴方を忘れる事を。
死を回避したい悪役令嬢は、ヒロインを破滅へと導く
miniko
恋愛
お茶会の参加中に魔獣に襲われたオフィーリアは前世を思い出し、自分が乙女ゲームの2番手悪役令嬢に転生してしまった事を悟った。
ゲームの結末によっては、断罪されて火あぶりの刑に処されてしまうかもしれない立場のキャラクターだ。
断罪を回避したい彼女は、攻略対象者である公爵令息との縁談を丁重に断ったのだが、何故か婚約する代わりに彼と友人になるはめに。
ゲームのキャラとは距離を取りたいのに、メインの悪役令嬢にも妙に懐かれてしまう。
更に、ヒロインや王子はなにかと因縁をつけてきて……。
平和的に悪役の座を降りたかっただけなのに、どうやらそれは無理みたいだ。
しかし、オフィーリアが人助けと自分の断罪回避の為に行っていた地道な根回しは、徐々に実を結び始める。
それがヒロインにとってのハッピーエンドを阻む結果になったとしても、仕方の無い事だよね?
だって本来、悪役って主役を邪魔するものでしょう?
※主人公以外の視点が入る事があります。主人公視点は一人称、他者視点は三人称で書いています。
※連載開始早々、タイトル変更しました。(なかなかピンと来ないので、また変わるかも……)
※感想欄は、ネタバレ有り/無しの分類を一切おこなっておりません。ご了承下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる