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サージスは、ユリアナと一緒に他国に行き、誰も知る人のいないところで静かに過ごす事を夢見る様になった。

しかし、ユリアナを両親と引き離せば、ユリアナは悲しむ。
悲しまない様に記憶を操作すれば、ユリアナの中の残したい思い出さえも消えるリスクを伴う。
そのリスクに目を瞑って記憶操作したとしても、言語の通じない他国ではユリアナにいらぬ苦労をかけさせる可能性もある。

他国への駆け落ち逃亡案はあまりにも現実的ではなかった。


次に考えたのは、ユリアナと結ばれる事を間違いなく嫌悪し反対するであろう、両親をどうにかする事であった。

両親は、ユリアナを当然、良い縁談で嫁に出すつもりでいる。
一生ルクセン家に縛る事など、考えていない。

いっそ、ユリアナを辱しめて嫁に行けない体にするか…
女を抱けない男の元に一旦嫁に出し、離縁させるか…

サージスの想いは、暗く淀んでいく。
しかし、実際にはユリアナを肉体的にも精神的にも傷つける事は躊躇われて実践するまでには至らなかった。


サージスにとっての転機が訪れたのは、ユリアナが社交界デビューし、沢山の縁談が舞い込む様になってからだった。




☆☆☆




「サージス様、ユリアナ様にまたご縁談が」
「今度は誰だ!?」

ぬぷ、と女の身体から楔を抜き、問い質した。
聞けば、両親にとって非常に断りにくい公爵家の者であった。

「…確かあそこの息子は色狂いだった筈だ。証拠を集めろ。集めたら公爵家に内密で断りを入れる」
「畏まりました」

女は、心得た様に萎えたペニスを綺麗に舐めとり、部屋を辞した。


ルクセン家の使用人の中で、5人の女中と3人の小間使いをサージスが握っていた。
女と男では、入ってくる情報が違えば働き方も違う。

以前、勘違いした一人の女がサージスに夢中になり、ユリアナに嫉妬し、害そうとした事があった。
最悪の事態には陥らなかったもののそれを教訓にし、逆に人数を増やし、互いに牽制しあわせて『ユリアナに良くした者がサージスに気に入られる』という図を作り上げた。

今のところ上手くいっており、のめり込ませずに忠誠だけをサージスに誓う様、コントロールしている。
サージス自身は、ユリアナを犯す危険が高まった時に女と繋がる事で、人一倍強い性欲をコントロールしていた。


サージスは、そろそろ自分が根回しする事でユリアナの縁談を潰す事が難しくなってきたと感じていた。
それほどまでに、ユリアナは人気があり、引く手あまたなのだ。

早急に、サージスにとって、都合の良い人物に嫁がせる必要がある。



そんな事を考えていた頃の事だった。
幼なじみとはいえ全く興味も交流もなく、仕事上の付き合いだけだったカダルの悩みに触れたのは。
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