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サージスは小さな頃、その身に宿る魔力をコントロール出来ずにいた。
「サージス、怒るのをやめなさい」
「サージス、魔具で何とか抑えなさい」
「サージス、他人と関わらないようにしなさい」
その事を知った両親も、適切な助言が出来ずにサージスを持て余す。
そんな中で生まれたのが、ユリアナだった。
ふわふわの金髪に、ブラウンの瞳を持つユリアナは、赤子としては勿論、誰が見ても可愛い娘だった。
サージスを決して嫌っていた訳ではないが、サージスの魔力の問題でギスギスしていたルクセン家に、ユリアナは笑いと多幸感をもたらした。
ユリアナはサージスになつき、サージスの後をよちよちと歩き回った。
ユリアナが3歳になった頃だろうか。
サージスと遊んでいたユリアナが、庭にある噴水で溺れた事があった。直ぐに気付いたサージスが引き上げ、事なきを得たが、驚くべき事にユリアナは、助けられた後もまた噴水に近寄ろうとしたのだ。
「ユリアナ、何故噴水に近付くの?危ないでしょう?」
サージスが優しく聞けば、ユリアナはサージスの膝を指して
「にーたま、いたい?水であらう、いたいのとんでく?」
と答えた。
サージスの膝には、鬼ごっこの最中に作った大きな擦り傷があり、どうやらサージスが痛がっていると思ったらしかった。
サージスは、「ユリアナは優しいね。ありがとう。でも、私は痛くないよ?」と、全身びしょ濡れのユリアナを温める様に抱き締めた。
ユリアナの傍にいると、心が温かくなった。
そして、ユリアナの4歳の誕生日の事。
ユリアナは、沢山の誕生日プレゼントに囲まれて幸せそうに笑っていた。
中でも、サラに貰った大きな熊のぬいぐるみが気に入ったらしく、ずっと抱き締めて嬉しそうにしている。
しかし、その様子をじっと見ていたサージスに気付くと、トコトコとサージスの隣にやってきて、「はぃ、にーさま。くまさんと遊んで?」と、何故かサージスに熊のぬいぐるみを渡してきたのだ。
「これは、ユリアナの熊さんでしょう?私は要らないよ?」
と答えれば、ユリアナはこてん、と首をかしげて
「にーさま、熊さんずっと見てたよね?熊さん欲しいのかと思ったの」
と答えた。
丁重に誤解を解いてサージスは断ったが、ユリアナの優しさに驚いた。
そして、ユリアナは日頃から果物やお菓子を貰うと、それがどんなに好きなものであっても、サージスと分け合う為に半分取っていた。
分ける時は目に涙を浮かべて(好物との)別れを惜しみ、しかしそれをサージスに「はぃ、これはにーさまの分です」と分け与える時の、無垢な満面の笑みは天使の様だった。
「にーさまが嬉しいと、私も嬉しいの」
が、ユリアナの口癖だった。
☆☆☆
サージスは、ユリアナに癒されてその魔力の暴発が減った。
しかし、サージスに早目の思春期が訪れた時の事。
両親との喧嘩が引き金となり、再び魔力が爆発する。
両親はサージスを部屋に閉じ込め、ユリアナを連れて逃げようとしたが、ユリアナは見つからなかった。
その時、ユリアナは自分でコントロール出来ない力に怯えるサージスに抱き付いていたのだ。
「にいさま、にいさま、だいじょうぶだよ?」
かまいたちで髪や頬を、腕や足を切られていくにも関わらず、ユリアナはサージスから離れない。
「にいさま、いたい?」
「ユリアナ、そばにいるから、つらかったらいってね?」
自分の痛みをよそに、サージスの怯えを敏感に感じ取ったユリアナは、サージスを出来る限りの安心感で包もうとした。
勿論、歳の離れた妹に、安心感で包み込むなんて芸当は無理な話だったが。
それでも、サージスは「ユリアナを傷つける魔力」が許せず、初めて魔力を強い意思によって、コントロールする事に成功した。
台風が過ぎ去った様な瓦礫だらけの部屋の中、美しい兄妹は抱き合って喜んだ。その日から、サージスは魔力を完璧に自分の手中におさめたのだ。
ユリアナが、可愛くて大切な妹、から可愛くて大切な女性、と自覚したのは、サージスが社交界デビューしてからだった。
近寄ってくる男の殆どが、ユリアナの事を聞いてきた。
ユリアナは、素直で愛らしいと、社交界デビューしてもいないのに有名だったのだ。
ユリアナ狙いだと知ったサージスは、近寄ってくる男は全て牽制した。
「ユリアナは、私が基準になっているみたいで。私以上に学業が出来て、魔力もあり、容姿端麗な方が理想らしいですよ?」
万年主席で、随一の魔力の持ち主、更に文句のつけようがない美少年にそう言われては、皆、表向きは諦めた。
「何故、兄妹というだけで、私だけがユリアナの伴侶となり得ないのか」
日増しにサージスのその想いは膨れ上がる。
サージスに精通がくれば、「ユリアナと繋がりたい」と強く思ったし、ユリアナに初潮がくれば、「ユリアナが欲しい、自分のモノを埋めたい」と強く思った。
小さな頃から見守ってきた、可愛い可愛いユリアナ。
他の男なんかにやりたくは、ない。
一緒にお風呂に入っていた時は、立ち上がるペニスをユリアナに見せない努力が必要だったし、またユリアナの全身をサージスが洗うのに、イタズラしたい欲求を抑えるのが大変だった。
どうしたら、ユリアナを手に入れられるのか?
サージスは日々、専らそれだけを考えて生きていた。
「サージス、怒るのをやめなさい」
「サージス、魔具で何とか抑えなさい」
「サージス、他人と関わらないようにしなさい」
その事を知った両親も、適切な助言が出来ずにサージスを持て余す。
そんな中で生まれたのが、ユリアナだった。
ふわふわの金髪に、ブラウンの瞳を持つユリアナは、赤子としては勿論、誰が見ても可愛い娘だった。
サージスを決して嫌っていた訳ではないが、サージスの魔力の問題でギスギスしていたルクセン家に、ユリアナは笑いと多幸感をもたらした。
ユリアナはサージスになつき、サージスの後をよちよちと歩き回った。
ユリアナが3歳になった頃だろうか。
サージスと遊んでいたユリアナが、庭にある噴水で溺れた事があった。直ぐに気付いたサージスが引き上げ、事なきを得たが、驚くべき事にユリアナは、助けられた後もまた噴水に近寄ろうとしたのだ。
「ユリアナ、何故噴水に近付くの?危ないでしょう?」
サージスが優しく聞けば、ユリアナはサージスの膝を指して
「にーたま、いたい?水であらう、いたいのとんでく?」
と答えた。
サージスの膝には、鬼ごっこの最中に作った大きな擦り傷があり、どうやらサージスが痛がっていると思ったらしかった。
サージスは、「ユリアナは優しいね。ありがとう。でも、私は痛くないよ?」と、全身びしょ濡れのユリアナを温める様に抱き締めた。
ユリアナの傍にいると、心が温かくなった。
そして、ユリアナの4歳の誕生日の事。
ユリアナは、沢山の誕生日プレゼントに囲まれて幸せそうに笑っていた。
中でも、サラに貰った大きな熊のぬいぐるみが気に入ったらしく、ずっと抱き締めて嬉しそうにしている。
しかし、その様子をじっと見ていたサージスに気付くと、トコトコとサージスの隣にやってきて、「はぃ、にーさま。くまさんと遊んで?」と、何故かサージスに熊のぬいぐるみを渡してきたのだ。
「これは、ユリアナの熊さんでしょう?私は要らないよ?」
と答えれば、ユリアナはこてん、と首をかしげて
「にーさま、熊さんずっと見てたよね?熊さん欲しいのかと思ったの」
と答えた。
丁重に誤解を解いてサージスは断ったが、ユリアナの優しさに驚いた。
そして、ユリアナは日頃から果物やお菓子を貰うと、それがどんなに好きなものであっても、サージスと分け合う為に半分取っていた。
分ける時は目に涙を浮かべて(好物との)別れを惜しみ、しかしそれをサージスに「はぃ、これはにーさまの分です」と分け与える時の、無垢な満面の笑みは天使の様だった。
「にーさまが嬉しいと、私も嬉しいの」
が、ユリアナの口癖だった。
☆☆☆
サージスは、ユリアナに癒されてその魔力の暴発が減った。
しかし、サージスに早目の思春期が訪れた時の事。
両親との喧嘩が引き金となり、再び魔力が爆発する。
両親はサージスを部屋に閉じ込め、ユリアナを連れて逃げようとしたが、ユリアナは見つからなかった。
その時、ユリアナは自分でコントロール出来ない力に怯えるサージスに抱き付いていたのだ。
「にいさま、にいさま、だいじょうぶだよ?」
かまいたちで髪や頬を、腕や足を切られていくにも関わらず、ユリアナはサージスから離れない。
「にいさま、いたい?」
「ユリアナ、そばにいるから、つらかったらいってね?」
自分の痛みをよそに、サージスの怯えを敏感に感じ取ったユリアナは、サージスを出来る限りの安心感で包もうとした。
勿論、歳の離れた妹に、安心感で包み込むなんて芸当は無理な話だったが。
それでも、サージスは「ユリアナを傷つける魔力」が許せず、初めて魔力を強い意思によって、コントロールする事に成功した。
台風が過ぎ去った様な瓦礫だらけの部屋の中、美しい兄妹は抱き合って喜んだ。その日から、サージスは魔力を完璧に自分の手中におさめたのだ。
ユリアナが、可愛くて大切な妹、から可愛くて大切な女性、と自覚したのは、サージスが社交界デビューしてからだった。
近寄ってくる男の殆どが、ユリアナの事を聞いてきた。
ユリアナは、素直で愛らしいと、社交界デビューしてもいないのに有名だったのだ。
ユリアナ狙いだと知ったサージスは、近寄ってくる男は全て牽制した。
「ユリアナは、私が基準になっているみたいで。私以上に学業が出来て、魔力もあり、容姿端麗な方が理想らしいですよ?」
万年主席で、随一の魔力の持ち主、更に文句のつけようがない美少年にそう言われては、皆、表向きは諦めた。
「何故、兄妹というだけで、私だけがユリアナの伴侶となり得ないのか」
日増しにサージスのその想いは膨れ上がる。
サージスに精通がくれば、「ユリアナと繋がりたい」と強く思ったし、ユリアナに初潮がくれば、「ユリアナが欲しい、自分のモノを埋めたい」と強く思った。
小さな頃から見守ってきた、可愛い可愛いユリアナ。
他の男なんかにやりたくは、ない。
一緒にお風呂に入っていた時は、立ち上がるペニスをユリアナに見せない努力が必要だったし、またユリアナの全身をサージスが洗うのに、イタズラしたい欲求を抑えるのが大変だった。
どうしたら、ユリアナを手に入れられるのか?
サージスは日々、専らそれだけを考えて生きていた。
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