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本編
艶めく竜が愛すは猫人伴侶・1
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「ああ、ようやく見えてきましたね。あれが砂漠国です」
細かい砂の粒子が風に舞い、目に入りそうになるのを細目にしてやり過ごしながら、クロシュはシルフィが指す方角を見た。
砂丘の一番遠くに、城壁と緑が見える。
砂漠国は、オアシスの国。
砂漠にぽつんと残された大きな大きな湖を中心に、王城や城下町が整備され、その周りをぐるりと城壁が取り囲んでいるのだ。
「思っていたより、大きいな……」
城壁は、縦にはさほど大きくないが、横に2キロほどは伸びているように見える。
直線ではなく円形を描いているから、正確には測れないが。
南国からアシクルルに乗り、丸2日。
砂漠の昼は溶ける様に暑く、夜は凍りそうなほどに寒い。
クロシュも今までだったら昼夜それぞれ辛かったと思うが、シルフィの番になった事により、さほど寒さも暑さも問題なくなっていた。
鱗紋の完成で身体が作り替えられたと聞いてはいたが、こんな事で実感するとは思わなかった。
「……長かったですね」
シルフィがそう呟いたのに、クロシュ以外が頷いた。
護衛である熊人のガッシュが昼間にへばりすぎていてなかなか可哀想ではあったが、クロシュは首を傾げる。
ガッシュが長かったと感じるのはわかる。
が、シルフィにとっては苦でない道のりだったのでは?
本来、南国から砂漠国への道程は、一週間程掛かるらしい。
途中の給水ポイントでアシクルルの体力回復を待つのだが、それが半日以上も掛かるからである。
しかし、シルフィは自らの万能薬を与えてまで先を急いだ。
シルフィの血を数滴垂らしただけの飲み水をアシクルルが飲めば、アシクルルの瞳にはみるみる生気が満ち溢れ、すっくと立ち上がり「俺はやるぜ!」とばかり地面を力強く踏んだのには驚いた。
すっかり、ガッシュや他の護衛の体調を気にした為だと思っていたのだが……
「この二日間、まさか野宿でクロシュを抱けないとは」
「「「………」」」
ん?空耳だろうか、稀有で気高いと言われる竜人の発言にまさかという思いが過る。
が、現実だったらしい。
「シルフイージス、心の声が駄々漏れだぞ。頼むからそろそろ余所行きの仮面を貼り付けてくれ」
ガッシュがしっかりきっちり、お目付け役として突っ込みを入れた。
暑さで意識が朦朧としていそうなのに、ご苦労な事である。
「それもそうですね。クロシュ、野宿はしないと言っていたのに、申し訳ありませんでした」
「あ、ああ……」
ジリジリ焼ける様な暑さもなんのその、涼しげにニッコリ笑うシルフィに、まさかそんな事が理由で旅の始めに野宿はしない宣言をしたのではあるまいな、とクロシュは顔が引きつるのを止められなかった。
☆☆☆
砂漠国の門を通過する。
城壁の中には水路が張り巡り、一見砂漠のど真ん中だという事を忘れそうな程だ。
緑がそこかしこに生い茂り、地面は砂でなくレンガで舗装されている。
門を潜って直ぐに「お待ちしておりました」と要人らしき者の出迎えがあり、迎賓館への案内を申し出てくれた。
国王へ挨拶をする為の建物が迎賓館であるというのに、嫌だ嫌だ休む休む(=クロシュとシたい)、と駄々をこねるシルフィを、要人にバレぬ様クロシュとガッシュが左右からズルズル引きずりながらついていく。
クロシュも以前はシルフィへの不敬にならないか、とびくびくしていたものだが、良くも悪くも最近ではほぼ素でお付き合い出来る様になっていた。
大きな一枚岩が何層にも重ねられて作られた大広間の真ん中にレッドカーペットが敷かれ、その中心にはこれまた大きな一枚の美しい大理石で出来たテーブルが鎮座している。
荘厳な彫刻を施した両開きドアから入り、向かって左側には明らかに一目で質が良いとわかる装飾品を身につけた上級貴族らしき者達がずらりと立ったまま並んでいた。
シルフィを先頭に、クロシュ達は右側の席に案内される。
ガッシュだけは帯刀したまま、両開きドアの外で緊急時に備えて待機していた。
向かい合って一礼し、全員が着席する。
「竜人国から、わざわざよく足をお運びになられました、シルフイージス様」
座って直ぐに、左側の一番奥、中でも一際目を惹く美しさを備えた男女が、右側一番奥に座ったシルフィに声を掛ける。
美しい男女──にこやかに笑う砂漠国の国王夫妻は、なんとシルフィと同じ竜人であった。
額の鱗の色は、それぞれ緑と青。
褐色の肌に艶やかな黒髪が似合う、美男美女の組み合わせであり、実に似合いのカップルではあるが、それでも番ではないらしい。
「久しぶりですね、エ・クレール国王夫妻。こちらが私の番であり妻のクロシュです」
挨拶もそこそこに、心の準備をする間もなくシルフィに急に紹介され、クロシュの尻尾と耳は僅かにピン!と跳ねあがった。
「お相手は猫人の方でしたか。この度は番との巡り合い、誠におめでとうございます」
クロシュが口を開く前に、キラキラと瞳を輝かせた国王夫妻にニコリと笑い掛けられ、クロシュは張り詰めていた緊張の糸がホロリとほどけていくのを感じる。
不可抗力とは言え、クロシュがシルフィを奪った形になるのだ。
娘の元婚約者が恋人を連れてやって来るなんて気分は複雑だろうに、そんな様子は微塵も感じられない。
どうやら、番との邂逅というのは、それほど竜人にとって特別であり、祝福の言葉を贈るべき出来事であるらしかった。
クロシュにはさっぱりわからないが。
何と返事をしていいのかわからないクロシュに代わり、シルフィが美しい笑みを浮かべながら「ありがとうございます」と返事をする。
そのタイミングでクロシュも慌ててペコリと頭を下げた。
するとそこへ、鈴が転がる様な凛とした愛らしい声が頭上へ降ってきた。
「私からも、元婚約者様へお祝いの言葉をお送り致しますわ。この度は、おめでとうございます」
国王夫妻の横には、青い鱗をした夫妻にそっくりの、見た目年齢18歳位の若い女性が座っている。
その女性の声かと思ったが、クロシュは首をひねった。
……もっと、若い声……な気がする?
そう、小さな女の子が頑張って背伸びをして畏まった様な声。
つつ、と更にその横に目を向ければ。
「初めまして、ルベライトと申します。後で色々お話を伺いたいわ、シルフイージス様、クロシュ様」
同じく褐色の肌に黒髪の、炎の様に赤い鱗をした気の強そうな女の子がこちらを見ていた。
見た目年齢……どう見ても、10歳程だった。
☆☆☆
「シルフィ……政略結婚とは言え……あれは犯罪ではないか……?」
迎賓館から貴賓室へと場所を変えたクロシュは、開口一番にシルフィに問うた。
いささか非難めいた口調になるのは許して欲しい。
「竜人は、見た目と実際の年齢が違う事も多いのですよ」
「では、彼女は成人しているのか」
「いえ、ルベライト王女はまだ見た目通りの年齢です。確かもうすぐ10歳でしたかね」
「おい」
思っていたより更に下だった。
「まぁ、竜人同士の政略結婚なんて、そんなものですよ」
「国王夫妻と、ルベライト王女の間に座っていた女性は?」
「彼女は砂漠国の跡継ぎですので、竜人国に迎えられないのです」
「……そうか。そんなものか。………いや、やはりそれにしても……」
「私との結婚は、私からでも国王夫妻からでもなくご本人が希望されたので」
「え?あんな年齢で??」
クロシュはもっとシルフィの元婚約者であるルベライトの話を掘り下げたかったが、シルフィはクロシュの尻尾をすりと撫であげ、耳元で囁いた。
「……クロシュ。やっと、貴女と二人きりになれました。もう、お預けしないで頂けますか?」
たったそれだけで、シルフィの身体に慣れきったクロシュの膣が、ジュン、と潤う。
シルフィに色々弱味?を握られ、気付けば単なる護衛がいつの間にか嫁という立場にまで変わってしまった。
まだ結婚すらしてないのに、妻と紹介された事を面映ゆく感じる。
和やかに歓談を終え、旅の疲れもあるだろうと、今日は会食のみでお開きとなった。
そして明日からは国王夫妻や元婚約者自ら砂漠国を案内しますと言われ、滞在期間も一週間の予定が二週間に延びた。
自国であるハスラー王国ですら、国王を遠目でチラリとしか見た事のないクロシュにとって、食事の味も良くわからない程の経験をさせて貰った。
何故自分の様な単なる黒猫人Aが国王夫妻と同じテーブルで食事なんぞする羽目になるのか。
恐れ多くて、ビクビクしながらの食事は出来ればあまり今後もしたいと思わない。
しかも、後から考えればクロシュが着ていたのは完全に旅装だ。
いくらシルフィが立ち寄る街々で仕立ての良いものを新調してくれるとは言え、不敬ではないかと心配でならない。
自分一人が不敬と思われるならまだしも、クロシュを妻と紹介したシルフィが悪く言われるのは嫌だった。
けれども、美しく着飾ったクロシュではなく、素であるクロシュを堂々と紹介したシルフィに対して、嬉しく思う気持ちもある。
「クロシュ、何をお考えですか?……腕を上げて?」
「ん……」
色々今日の出来事に想いを馳せていれば、待ちきれないシルフィがするりと丁寧にクロシュの旅装を解いていった。
クロシュのほっそりした上腕に舌を滑らしたシルフィの瞳には情欲が浮かぶ。
「……んっ………」
上腕の内側を強く吸って赤い華を付けクロシュの気を引くことに成功したシルフィは、おもむろに自らの上衣をバサリと頭から抜いた。
陶器の様な滑らかな肌に、均整のとれた薄目の胸板。
初めて出会った時にはすっかりその立ち振舞いとピンク色をした鱗で女性と勘違いしたが、今ではシルフィが雄である事を散々身体に刻まれたクロシュはその色気にあてられて、くらりとする。
クロシュの背中上部にある鱗紋が完成してから、シルフィとの営みは更に濃いものとなった。
発情時期でもないのに、身体をあわせる度に勝手に発情させられる事は何故か始めからあったが、今となってはシルフィの舌も指先も声ですら、クロシュに甘い痺れをもたらす麻薬の様だ。
シルフィは絶倫だ。
ガスター王国を出立してから、毎晩求められ、クロシュがクタクタになり、旅が進まない事も一晩や二晩ではなかった。
砂漠国に向かうための砂漠の野宿で初めて、「万が一にも行為中のクロシュを見られたり声を聞かれるのが我慢できない」というシルフィが苦渋の決断をして、二人は二晩寝たのだ。健全に。
以前のクロシュであれば、これ幸いにと眠りを貪ったであろう。
だがしかし、今は麻薬の切れた中毒者の様に、その身体はシルフィを求めていた。
裸になったシルフィが、視線を絡ませながら、クロシュの胸の先端にも舌を絡ませる。
「ふぅ……ん……」
気持ち良くて、鼻から抜けた様な声が出た。
クロシュの猫耳が、ピクピクと震える。
シルフィは舌で器用に先端を押し込んで左右に素早く弾いた後、勃ち上がった乳首を咥えて軽く引っ張った。
「すぐに勃つ、可愛い乳首ですね」
整った顔に艶かしい笑みを浮かべながら、シルフィは呟く。
クロシュは、そっとシルフィの両肩を軽く押してベッドへと横たえさせ、自ら覆い被さる様に口付けをした。
「ふ、ぁ……」
シルフィは直ぐ様口付けを深くし、クロシュの口腔内を貪る様に舌をこじ入れる。
舌を絡ませられ、歯列をなぞられると、クロシュの尻尾は酔ったかの様にゆらゆらと揺らいだ。
「シルフィ……」
二日も身体を繋げなかったから、普段より性急に求められるかと思えば、シルフィはクロシュを焦らすかの様に、秘部へと手を伸ばす様子はない。
いつもは何も言わなくても触れてくれるのに……
「触って」と自分から言い出す事も出来ず、クロシュは思わずシルフィの屹立に自らの花びらを擦り付ける。
クロシュは顔を朱に染め、自らを浅ましい、と思いながらもシルフィの竿の凹凸に肉芽があたる快感がやめられず、はぁ、はぁ、と息を切らしながら腰を揺らした。
「……私を求めて下さるクロシュも、なんて可愛らしいのでしょうね」
「シル、フィ……」
早く、早く埋めて欲しい。
二日間繋がらなかった反動で、シルフィの肉棒に対する飢えの様な思いがクロシュの頭を占領する。
シルフィに捩じ込まれ、突かれ、引っ掻き回され、最奥を叩かれた時の気持ち良さを、クロシュは知っている。
他では味わえない、二本のぺニスが膣と後穴を蹂躙していく、あの圧倒的な質量も。
クロシュの膣が、シルフィを求めて蠢き、蜜をこぽりと溢れさせた。
「……も、焦らさ、ないで……」
自然と潤む瞳に、シルフィへの懇願を乗せれば。
「クロシュ……!!」
シルフィは、自分の上に乗っていたクロシュを素早くうつ伏せにひっくり返すと、蜜のしたたる肉びらとヒクヒクと誘う後ろの蕾に二本のぺニスをあてがい、一気に貫いた。
「ひゃぁん………っっっ!!」
クロシュが焦がれた衝撃が下半身を襲い、尻尾を立たせて全身を反らせ、その快楽を受け止める。
じゅぶっ じゅぶっ じゅぶっ じゅぶっ
ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅん!
「にゃあ!にゃあん!!」
「クロシュ……!!」
後ろから二本の剛直が、クロシュの気持ち良いポイントをゴリゴリと擦り上げていく。
シルフィはパンパンとリズミカルに腰を叩き付けながら、クロシュの尻尾の付け根をぎゅ、と握り締めた。
「ふにゃあん!」
弱点を的確に突かれ、クロシュは崩れ落ちる。
シルフィはそうなる事を予測していたかの様に、クロシュの腹に腕を回して身体を引き上げていた。
クロシュの腰を両手で抱えなおして、抽送を速める。
シルフィは、自分が与える快感がクロシュをぐずぐずに溶かしているのを承知で、あえて聞く。
「クロシュ、どこが、良いですか?」
「じぇ、じぇんぶ!!みんな、気持ち、良いにゃあん!!」
あまりの快楽に、呂律は回らず流れる涎を止める事すらかなわない。
クロシュの乱れ様にシルフィは笑みを深くして、更に問う。
「クロシュ、どうして欲しい?」
「こ、このまま……!」
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ
ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ
「このまま?」
「……いやぁ、とめ、にゃいでぇ……っっ!!」
「どうして欲しいのかな?」
「た、沢山ちょうだぁいにゃ………」
「何を?」
「シルフィの、あっついの……クロシュの中、たくさんたくさん、可愛がって欲しいにゃぁん………」
「ふふふ、良いですよ」
うつ伏せていたクロシュの膝うらに手を入れ、シルフィの太ももの上に座る様に抱え込む。
ずん、とクロシュの全体重がシルフィの肉槍に掛かり、その槍は目一杯広がって受け入れていた膣道と後穴を押し広げながら更に奥まで到達した。
「ふにゃあああんっっ!!」
クロシュは白目を剥きながら、それでもシルフィの男根を歓迎する。
ずちょっ!!ずちょ!!ずちょ!!ずちょ!!
ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!
「~~~……」
クロシュは既に艶声を上げる事すら叶わず、はくはくと喘ぐ事しか出来ない。
「はぁ、はぁ、はぁ………ではクロシュ、そろそろ……」
逝きましょう。
そう、猫耳に囁いて。
「………っ!!~~~~~っっ!!」
ぷしゃあ、とクロシュが潮を吹いて二本のぺニスを扱き上げたと同時に、シルフィは大量の白濁液をクロシュに注ぎ込んだ。
☆☆☆
「本日は私がこの国をご案内致しますわ、よろしくお願い致します」
「よろしく、ルベライト王女」
ハワードザードに到着して三日目。
早々に可愛らしい元婚約者が少しツンと澄まして二人の貴賓室までやってきた。
クロシュは何時も通りにシルフィの護衛を兼ねて、軽装に身を包んで帯刀していた為、ガッシュと並んでルベライトに対し最敬礼(左膝を突き、右膝の上に右手拳を乗せ、左手拳は地面に付け、頭を下げる)をする。
それがクロシュだとは思わなかったルベライトは、「あら?番の方は??」と言いながらキョロキョロと見回した。
そんな様子は、子供そのもので。
仕方なく、クロシュは「こちらに、ルベライト王女様」と顔だけ上げて声を掛ける。
「まぁ!女性なのに、剣を扱われるの!?」
「女の癖に」という嫌味からではなく、ルベライトは本当に驚いたらしい。
「はい」
「……凄い。あの、砂漠国では女が剣を握ってはいけない事になっているの。女が血を流すと、大地が水よりもその血を欲する様になって、雨が降らなくなるからって」
「そうでしたか」
「けどね、……ですが、国外の方なら問題ないわ。格好良いと思うし……その、……」
ルベライトがその先の言葉を紡ぐ事はなかったが、チラ、チラ、とクロシュの剣を興味深々に見ている様子からすると、触ってみたいのだろうな、とは想像がついた。
──もし一緒に国外へ行く様な事があれば、触らせてあげたい。
ふと胸にそんな思いが湧き上がったが、クロシュは軽く頭を振ってその思いを消す。
まさか一国の王女が、国賓として招かれない限り国外に出る訳がない。
ましてや自分と。
クロシュは、自らの勘が当たりやすい事を、その時失念していた。
クロシュの剣をチラチラ見ていたルベライトが、ついとその視線を頭垂れたままのガッシュで止めた。
「……あら?……貴方、昨日いらっしゃった……?」
そう聞きながら、ガッシュに近付いていく。
「いえ、私は昨日廊下で待機させて頂きましたので、本日が初めてのお目通りでございま……」
「……あの、貴方……私の番かしら??」
ルベライトの衝撃発言に、ピシリと空間が固まる。
一番初めに金縛りを解いたのはシルフィだった。
「失礼ながらルベライト王女、違うと思われますよ。貴女の鱗は赤いままですし、何より番だったら疑問を持つ余地などありませんから」
ガッシュがシルフィの援護を得て、慌てて首を振りながら叫んだ。
「めめめ滅相もございませんっ!!違うと思いますっ!!俺には妻と息子が国にいてっっ!!」
へぇ、ガッシュは既婚者だったのか。
初めて知ったクロシュはその事実に驚く。
ルベライトは取り乱す様子もなく、淡々と受け止めた。
「そう。……そうよね。……けど、なんでしょう、貴方を見ていると胸騒ぎがするのよね……」
「熊人が珍しいとか?熊人が好みのタイプだとかですか?」
シルフィが聞くと、ルベライトは首を傾げた。
「どうだったかしら……確かに、熊人は初めてお目に掛かるかもしれないけど……」
ルベライトの反応に、胸をホッと撫で下ろしたガッシュは余裕を取り戻したらしい。
「お……私は、シルフイージス様とクロシュ様、二人の護衛をさせて頂いておりますガッシュと申します。砂漠国滞在中、お世話になります。どうぞお見知り置きを」
☆☆☆
「……でですね、この水路の設計は400年前にされたものですが、まだ他国から視察に来られる程の見事なものですのよ」
「そうなんですね。実にこの水路で街並みも美しく映えますし、実用性も素晴らしいですね」
「砂漠国は、砂漠に国を築いておきながら水を枯らした事のない、唯一の国なのです。それも、今はお父様とお母様のお力が大きいですけど」
「民に慕われる、素晴らしいご夫妻ですね」
砂漠国を紹介するルベライトは、その瞳をキラキラさせて精一杯シルフィ一行に国の素晴らしさを案内していた。
よく国の事を勉強しているし、聞いていて「本当にこの国を愛しているんだなぁ」と伝わってくる。
まだこの歳なのに、国王夫妻に対する尊敬の念も凄かった。
一生懸命説明するルベライトとシルフィの会話を聞いていて、クロシュは疑問に思う。
何故、この国が大好きな王女が、国を出ようとしたのだろう?それも、結婚という方法を用いて。
ルベライトが街を歩けば、方々から声が掛かる。
ルベライト自身も、国民から慕われているのだ。
少し強気そうではあるが、恐らく「王女」という立場から人に弱味を見せられないという思いからなのだろうと思う。
決して尊大な訳ではない。
くるくる表情が変わり、朗らかで可愛くて、勉強家で。
クロシュは、少しの間であるが、ルベライトを非常に好ましく感じていた。
そしてそれは、シルフィにとっても同じだった様だ。
ルベライトは、シルフィに対してもクロシュに対しても同じ国賓として平等に扱った。
竜人であるシルフィにしか敬意を払わない国が多い中、妻として紹介したクロシュが大事に扱われる事に満足している。
そして、同じ竜人という事で気兼ねする事もないのも良かった。
二週間も滞在していれば、自然と打ち解け合う。
ルベライトに「ルベラと呼んで下さい」と言われ、「ルベラ様」と呼べば、「違います、ルベラです」と、頬っぺたを膨らませてツンとした。
ルベライトは、シルフィ一行に王女としての立ち振舞いよりも、年相応の反応をしてくれる様になっている。
愛称で呼べば、ルベラは兄や姉が増えたかの様に喜んだ。
細かい砂の粒子が風に舞い、目に入りそうになるのを細目にしてやり過ごしながら、クロシュはシルフィが指す方角を見た。
砂丘の一番遠くに、城壁と緑が見える。
砂漠国は、オアシスの国。
砂漠にぽつんと残された大きな大きな湖を中心に、王城や城下町が整備され、その周りをぐるりと城壁が取り囲んでいるのだ。
「思っていたより、大きいな……」
城壁は、縦にはさほど大きくないが、横に2キロほどは伸びているように見える。
直線ではなく円形を描いているから、正確には測れないが。
南国からアシクルルに乗り、丸2日。
砂漠の昼は溶ける様に暑く、夜は凍りそうなほどに寒い。
クロシュも今までだったら昼夜それぞれ辛かったと思うが、シルフィの番になった事により、さほど寒さも暑さも問題なくなっていた。
鱗紋の完成で身体が作り替えられたと聞いてはいたが、こんな事で実感するとは思わなかった。
「……長かったですね」
シルフィがそう呟いたのに、クロシュ以外が頷いた。
護衛である熊人のガッシュが昼間にへばりすぎていてなかなか可哀想ではあったが、クロシュは首を傾げる。
ガッシュが長かったと感じるのはわかる。
が、シルフィにとっては苦でない道のりだったのでは?
本来、南国から砂漠国への道程は、一週間程掛かるらしい。
途中の給水ポイントでアシクルルの体力回復を待つのだが、それが半日以上も掛かるからである。
しかし、シルフィは自らの万能薬を与えてまで先を急いだ。
シルフィの血を数滴垂らしただけの飲み水をアシクルルが飲めば、アシクルルの瞳にはみるみる生気が満ち溢れ、すっくと立ち上がり「俺はやるぜ!」とばかり地面を力強く踏んだのには驚いた。
すっかり、ガッシュや他の護衛の体調を気にした為だと思っていたのだが……
「この二日間、まさか野宿でクロシュを抱けないとは」
「「「………」」」
ん?空耳だろうか、稀有で気高いと言われる竜人の発言にまさかという思いが過る。
が、現実だったらしい。
「シルフイージス、心の声が駄々漏れだぞ。頼むからそろそろ余所行きの仮面を貼り付けてくれ」
ガッシュがしっかりきっちり、お目付け役として突っ込みを入れた。
暑さで意識が朦朧としていそうなのに、ご苦労な事である。
「それもそうですね。クロシュ、野宿はしないと言っていたのに、申し訳ありませんでした」
「あ、ああ……」
ジリジリ焼ける様な暑さもなんのその、涼しげにニッコリ笑うシルフィに、まさかそんな事が理由で旅の始めに野宿はしない宣言をしたのではあるまいな、とクロシュは顔が引きつるのを止められなかった。
☆☆☆
砂漠国の門を通過する。
城壁の中には水路が張り巡り、一見砂漠のど真ん中だという事を忘れそうな程だ。
緑がそこかしこに生い茂り、地面は砂でなくレンガで舗装されている。
門を潜って直ぐに「お待ちしておりました」と要人らしき者の出迎えがあり、迎賓館への案内を申し出てくれた。
国王へ挨拶をする為の建物が迎賓館であるというのに、嫌だ嫌だ休む休む(=クロシュとシたい)、と駄々をこねるシルフィを、要人にバレぬ様クロシュとガッシュが左右からズルズル引きずりながらついていく。
クロシュも以前はシルフィへの不敬にならないか、とびくびくしていたものだが、良くも悪くも最近ではほぼ素でお付き合い出来る様になっていた。
大きな一枚岩が何層にも重ねられて作られた大広間の真ん中にレッドカーペットが敷かれ、その中心にはこれまた大きな一枚の美しい大理石で出来たテーブルが鎮座している。
荘厳な彫刻を施した両開きドアから入り、向かって左側には明らかに一目で質が良いとわかる装飾品を身につけた上級貴族らしき者達がずらりと立ったまま並んでいた。
シルフィを先頭に、クロシュ達は右側の席に案内される。
ガッシュだけは帯刀したまま、両開きドアの外で緊急時に備えて待機していた。
向かい合って一礼し、全員が着席する。
「竜人国から、わざわざよく足をお運びになられました、シルフイージス様」
座って直ぐに、左側の一番奥、中でも一際目を惹く美しさを備えた男女が、右側一番奥に座ったシルフィに声を掛ける。
美しい男女──にこやかに笑う砂漠国の国王夫妻は、なんとシルフィと同じ竜人であった。
額の鱗の色は、それぞれ緑と青。
褐色の肌に艶やかな黒髪が似合う、美男美女の組み合わせであり、実に似合いのカップルではあるが、それでも番ではないらしい。
「久しぶりですね、エ・クレール国王夫妻。こちらが私の番であり妻のクロシュです」
挨拶もそこそこに、心の準備をする間もなくシルフィに急に紹介され、クロシュの尻尾と耳は僅かにピン!と跳ねあがった。
「お相手は猫人の方でしたか。この度は番との巡り合い、誠におめでとうございます」
クロシュが口を開く前に、キラキラと瞳を輝かせた国王夫妻にニコリと笑い掛けられ、クロシュは張り詰めていた緊張の糸がホロリとほどけていくのを感じる。
不可抗力とは言え、クロシュがシルフィを奪った形になるのだ。
娘の元婚約者が恋人を連れてやって来るなんて気分は複雑だろうに、そんな様子は微塵も感じられない。
どうやら、番との邂逅というのは、それほど竜人にとって特別であり、祝福の言葉を贈るべき出来事であるらしかった。
クロシュにはさっぱりわからないが。
何と返事をしていいのかわからないクロシュに代わり、シルフィが美しい笑みを浮かべながら「ありがとうございます」と返事をする。
そのタイミングでクロシュも慌ててペコリと頭を下げた。
するとそこへ、鈴が転がる様な凛とした愛らしい声が頭上へ降ってきた。
「私からも、元婚約者様へお祝いの言葉をお送り致しますわ。この度は、おめでとうございます」
国王夫妻の横には、青い鱗をした夫妻にそっくりの、見た目年齢18歳位の若い女性が座っている。
その女性の声かと思ったが、クロシュは首をひねった。
……もっと、若い声……な気がする?
そう、小さな女の子が頑張って背伸びをして畏まった様な声。
つつ、と更にその横に目を向ければ。
「初めまして、ルベライトと申します。後で色々お話を伺いたいわ、シルフイージス様、クロシュ様」
同じく褐色の肌に黒髪の、炎の様に赤い鱗をした気の強そうな女の子がこちらを見ていた。
見た目年齢……どう見ても、10歳程だった。
☆☆☆
「シルフィ……政略結婚とは言え……あれは犯罪ではないか……?」
迎賓館から貴賓室へと場所を変えたクロシュは、開口一番にシルフィに問うた。
いささか非難めいた口調になるのは許して欲しい。
「竜人は、見た目と実際の年齢が違う事も多いのですよ」
「では、彼女は成人しているのか」
「いえ、ルベライト王女はまだ見た目通りの年齢です。確かもうすぐ10歳でしたかね」
「おい」
思っていたより更に下だった。
「まぁ、竜人同士の政略結婚なんて、そんなものですよ」
「国王夫妻と、ルベライト王女の間に座っていた女性は?」
「彼女は砂漠国の跡継ぎですので、竜人国に迎えられないのです」
「……そうか。そんなものか。………いや、やはりそれにしても……」
「私との結婚は、私からでも国王夫妻からでもなくご本人が希望されたので」
「え?あんな年齢で??」
クロシュはもっとシルフィの元婚約者であるルベライトの話を掘り下げたかったが、シルフィはクロシュの尻尾をすりと撫であげ、耳元で囁いた。
「……クロシュ。やっと、貴女と二人きりになれました。もう、お預けしないで頂けますか?」
たったそれだけで、シルフィの身体に慣れきったクロシュの膣が、ジュン、と潤う。
シルフィに色々弱味?を握られ、気付けば単なる護衛がいつの間にか嫁という立場にまで変わってしまった。
まだ結婚すらしてないのに、妻と紹介された事を面映ゆく感じる。
和やかに歓談を終え、旅の疲れもあるだろうと、今日は会食のみでお開きとなった。
そして明日からは国王夫妻や元婚約者自ら砂漠国を案内しますと言われ、滞在期間も一週間の予定が二週間に延びた。
自国であるハスラー王国ですら、国王を遠目でチラリとしか見た事のないクロシュにとって、食事の味も良くわからない程の経験をさせて貰った。
何故自分の様な単なる黒猫人Aが国王夫妻と同じテーブルで食事なんぞする羽目になるのか。
恐れ多くて、ビクビクしながらの食事は出来ればあまり今後もしたいと思わない。
しかも、後から考えればクロシュが着ていたのは完全に旅装だ。
いくらシルフィが立ち寄る街々で仕立ての良いものを新調してくれるとは言え、不敬ではないかと心配でならない。
自分一人が不敬と思われるならまだしも、クロシュを妻と紹介したシルフィが悪く言われるのは嫌だった。
けれども、美しく着飾ったクロシュではなく、素であるクロシュを堂々と紹介したシルフィに対して、嬉しく思う気持ちもある。
「クロシュ、何をお考えですか?……腕を上げて?」
「ん……」
色々今日の出来事に想いを馳せていれば、待ちきれないシルフィがするりと丁寧にクロシュの旅装を解いていった。
クロシュのほっそりした上腕に舌を滑らしたシルフィの瞳には情欲が浮かぶ。
「……んっ………」
上腕の内側を強く吸って赤い華を付けクロシュの気を引くことに成功したシルフィは、おもむろに自らの上衣をバサリと頭から抜いた。
陶器の様な滑らかな肌に、均整のとれた薄目の胸板。
初めて出会った時にはすっかりその立ち振舞いとピンク色をした鱗で女性と勘違いしたが、今ではシルフィが雄である事を散々身体に刻まれたクロシュはその色気にあてられて、くらりとする。
クロシュの背中上部にある鱗紋が完成してから、シルフィとの営みは更に濃いものとなった。
発情時期でもないのに、身体をあわせる度に勝手に発情させられる事は何故か始めからあったが、今となってはシルフィの舌も指先も声ですら、クロシュに甘い痺れをもたらす麻薬の様だ。
シルフィは絶倫だ。
ガスター王国を出立してから、毎晩求められ、クロシュがクタクタになり、旅が進まない事も一晩や二晩ではなかった。
砂漠国に向かうための砂漠の野宿で初めて、「万が一にも行為中のクロシュを見られたり声を聞かれるのが我慢できない」というシルフィが苦渋の決断をして、二人は二晩寝たのだ。健全に。
以前のクロシュであれば、これ幸いにと眠りを貪ったであろう。
だがしかし、今は麻薬の切れた中毒者の様に、その身体はシルフィを求めていた。
裸になったシルフィが、視線を絡ませながら、クロシュの胸の先端にも舌を絡ませる。
「ふぅ……ん……」
気持ち良くて、鼻から抜けた様な声が出た。
クロシュの猫耳が、ピクピクと震える。
シルフィは舌で器用に先端を押し込んで左右に素早く弾いた後、勃ち上がった乳首を咥えて軽く引っ張った。
「すぐに勃つ、可愛い乳首ですね」
整った顔に艶かしい笑みを浮かべながら、シルフィは呟く。
クロシュは、そっとシルフィの両肩を軽く押してベッドへと横たえさせ、自ら覆い被さる様に口付けをした。
「ふ、ぁ……」
シルフィは直ぐ様口付けを深くし、クロシュの口腔内を貪る様に舌をこじ入れる。
舌を絡ませられ、歯列をなぞられると、クロシュの尻尾は酔ったかの様にゆらゆらと揺らいだ。
「シルフィ……」
二日も身体を繋げなかったから、普段より性急に求められるかと思えば、シルフィはクロシュを焦らすかの様に、秘部へと手を伸ばす様子はない。
いつもは何も言わなくても触れてくれるのに……
「触って」と自分から言い出す事も出来ず、クロシュは思わずシルフィの屹立に自らの花びらを擦り付ける。
クロシュは顔を朱に染め、自らを浅ましい、と思いながらもシルフィの竿の凹凸に肉芽があたる快感がやめられず、はぁ、はぁ、と息を切らしながら腰を揺らした。
「……私を求めて下さるクロシュも、なんて可愛らしいのでしょうね」
「シル、フィ……」
早く、早く埋めて欲しい。
二日間繋がらなかった反動で、シルフィの肉棒に対する飢えの様な思いがクロシュの頭を占領する。
シルフィに捩じ込まれ、突かれ、引っ掻き回され、最奥を叩かれた時の気持ち良さを、クロシュは知っている。
他では味わえない、二本のぺニスが膣と後穴を蹂躙していく、あの圧倒的な質量も。
クロシュの膣が、シルフィを求めて蠢き、蜜をこぽりと溢れさせた。
「……も、焦らさ、ないで……」
自然と潤む瞳に、シルフィへの懇願を乗せれば。
「クロシュ……!!」
シルフィは、自分の上に乗っていたクロシュを素早くうつ伏せにひっくり返すと、蜜のしたたる肉びらとヒクヒクと誘う後ろの蕾に二本のぺニスをあてがい、一気に貫いた。
「ひゃぁん………っっっ!!」
クロシュが焦がれた衝撃が下半身を襲い、尻尾を立たせて全身を反らせ、その快楽を受け止める。
じゅぶっ じゅぶっ じゅぶっ じゅぶっ
ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅん!ぱちゅん!
「にゃあ!にゃあん!!」
「クロシュ……!!」
後ろから二本の剛直が、クロシュの気持ち良いポイントをゴリゴリと擦り上げていく。
シルフィはパンパンとリズミカルに腰を叩き付けながら、クロシュの尻尾の付け根をぎゅ、と握り締めた。
「ふにゃあん!」
弱点を的確に突かれ、クロシュは崩れ落ちる。
シルフィはそうなる事を予測していたかの様に、クロシュの腹に腕を回して身体を引き上げていた。
クロシュの腰を両手で抱えなおして、抽送を速める。
シルフィは、自分が与える快感がクロシュをぐずぐずに溶かしているのを承知で、あえて聞く。
「クロシュ、どこが、良いですか?」
「じぇ、じぇんぶ!!みんな、気持ち、良いにゃあん!!」
あまりの快楽に、呂律は回らず流れる涎を止める事すらかなわない。
クロシュの乱れ様にシルフィは笑みを深くして、更に問う。
「クロシュ、どうして欲しい?」
「こ、このまま……!」
じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ、じゅぶ
ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ
「このまま?」
「……いやぁ、とめ、にゃいでぇ……っっ!!」
「どうして欲しいのかな?」
「た、沢山ちょうだぁいにゃ………」
「何を?」
「シルフィの、あっついの……クロシュの中、たくさんたくさん、可愛がって欲しいにゃぁん………」
「ふふふ、良いですよ」
うつ伏せていたクロシュの膝うらに手を入れ、シルフィの太ももの上に座る様に抱え込む。
ずん、とクロシュの全体重がシルフィの肉槍に掛かり、その槍は目一杯広がって受け入れていた膣道と後穴を押し広げながら更に奥まで到達した。
「ふにゃあああんっっ!!」
クロシュは白目を剥きながら、それでもシルフィの男根を歓迎する。
ずちょっ!!ずちょ!!ずちょ!!ずちょ!!
ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!ばちゅん!
「~~~……」
クロシュは既に艶声を上げる事すら叶わず、はくはくと喘ぐ事しか出来ない。
「はぁ、はぁ、はぁ………ではクロシュ、そろそろ……」
逝きましょう。
そう、猫耳に囁いて。
「………っ!!~~~~~っっ!!」
ぷしゃあ、とクロシュが潮を吹いて二本のぺニスを扱き上げたと同時に、シルフィは大量の白濁液をクロシュに注ぎ込んだ。
☆☆☆
「本日は私がこの国をご案内致しますわ、よろしくお願い致します」
「よろしく、ルベライト王女」
ハワードザードに到着して三日目。
早々に可愛らしい元婚約者が少しツンと澄まして二人の貴賓室までやってきた。
クロシュは何時も通りにシルフィの護衛を兼ねて、軽装に身を包んで帯刀していた為、ガッシュと並んでルベライトに対し最敬礼(左膝を突き、右膝の上に右手拳を乗せ、左手拳は地面に付け、頭を下げる)をする。
それがクロシュだとは思わなかったルベライトは、「あら?番の方は??」と言いながらキョロキョロと見回した。
そんな様子は、子供そのもので。
仕方なく、クロシュは「こちらに、ルベライト王女様」と顔だけ上げて声を掛ける。
「まぁ!女性なのに、剣を扱われるの!?」
「女の癖に」という嫌味からではなく、ルベライトは本当に驚いたらしい。
「はい」
「……凄い。あの、砂漠国では女が剣を握ってはいけない事になっているの。女が血を流すと、大地が水よりもその血を欲する様になって、雨が降らなくなるからって」
「そうでしたか」
「けどね、……ですが、国外の方なら問題ないわ。格好良いと思うし……その、……」
ルベライトがその先の言葉を紡ぐ事はなかったが、チラ、チラ、とクロシュの剣を興味深々に見ている様子からすると、触ってみたいのだろうな、とは想像がついた。
──もし一緒に国外へ行く様な事があれば、触らせてあげたい。
ふと胸にそんな思いが湧き上がったが、クロシュは軽く頭を振ってその思いを消す。
まさか一国の王女が、国賓として招かれない限り国外に出る訳がない。
ましてや自分と。
クロシュは、自らの勘が当たりやすい事を、その時失念していた。
クロシュの剣をチラチラ見ていたルベライトが、ついとその視線を頭垂れたままのガッシュで止めた。
「……あら?……貴方、昨日いらっしゃった……?」
そう聞きながら、ガッシュに近付いていく。
「いえ、私は昨日廊下で待機させて頂きましたので、本日が初めてのお目通りでございま……」
「……あの、貴方……私の番かしら??」
ルベライトの衝撃発言に、ピシリと空間が固まる。
一番初めに金縛りを解いたのはシルフィだった。
「失礼ながらルベライト王女、違うと思われますよ。貴女の鱗は赤いままですし、何より番だったら疑問を持つ余地などありませんから」
ガッシュがシルフィの援護を得て、慌てて首を振りながら叫んだ。
「めめめ滅相もございませんっ!!違うと思いますっ!!俺には妻と息子が国にいてっっ!!」
へぇ、ガッシュは既婚者だったのか。
初めて知ったクロシュはその事実に驚く。
ルベライトは取り乱す様子もなく、淡々と受け止めた。
「そう。……そうよね。……けど、なんでしょう、貴方を見ていると胸騒ぎがするのよね……」
「熊人が珍しいとか?熊人が好みのタイプだとかですか?」
シルフィが聞くと、ルベライトは首を傾げた。
「どうだったかしら……確かに、熊人は初めてお目に掛かるかもしれないけど……」
ルベライトの反応に、胸をホッと撫で下ろしたガッシュは余裕を取り戻したらしい。
「お……私は、シルフイージス様とクロシュ様、二人の護衛をさせて頂いておりますガッシュと申します。砂漠国滞在中、お世話になります。どうぞお見知り置きを」
☆☆☆
「……でですね、この水路の設計は400年前にされたものですが、まだ他国から視察に来られる程の見事なものですのよ」
「そうなんですね。実にこの水路で街並みも美しく映えますし、実用性も素晴らしいですね」
「砂漠国は、砂漠に国を築いておきながら水を枯らした事のない、唯一の国なのです。それも、今はお父様とお母様のお力が大きいですけど」
「民に慕われる、素晴らしいご夫妻ですね」
砂漠国を紹介するルベライトは、その瞳をキラキラさせて精一杯シルフィ一行に国の素晴らしさを案内していた。
よく国の事を勉強しているし、聞いていて「本当にこの国を愛しているんだなぁ」と伝わってくる。
まだこの歳なのに、国王夫妻に対する尊敬の念も凄かった。
一生懸命説明するルベライトとシルフィの会話を聞いていて、クロシュは疑問に思う。
何故、この国が大好きな王女が、国を出ようとしたのだろう?それも、結婚という方法を用いて。
ルベライトが街を歩けば、方々から声が掛かる。
ルベライト自身も、国民から慕われているのだ。
少し強気そうではあるが、恐らく「王女」という立場から人に弱味を見せられないという思いからなのだろうと思う。
決して尊大な訳ではない。
くるくる表情が変わり、朗らかで可愛くて、勉強家で。
クロシュは、少しの間であるが、ルベライトを非常に好ましく感じていた。
そしてそれは、シルフィにとっても同じだった様だ。
ルベライトは、シルフィに対してもクロシュに対しても同じ国賓として平等に扱った。
竜人であるシルフィにしか敬意を払わない国が多い中、妻として紹介したクロシュが大事に扱われる事に満足している。
そして、同じ竜人という事で気兼ねする事もないのも良かった。
二週間も滞在していれば、自然と打ち解け合う。
ルベライトに「ルベラと呼んで下さい」と言われ、「ルベラ様」と呼べば、「違います、ルベラです」と、頬っぺたを膨らませてツンとした。
ルベライトは、シルフィ一行に王女としての立ち振舞いよりも、年相応の反応をしてくれる様になっている。
愛称で呼べば、ルベラは兄や姉が増えたかの様に喜んだ。
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