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「うーん……」
「メティルさん、どうしました?何か難しいお顔をされていますが」
「あっと……すみません、仕事のことじゃないんです」
それなら良かったです、と笑顔で答えてくれるのは、雑務や掃除や簡単なアシスタントとしてもこなしてくれる、何でも屋のフィーユさんだ。
普段は魔導師達の職場である「魔導の塔」を担当しているが、たまたまヘルプで魔導士の職場に来てくれたらしい。
「メティルさんの作成される魔剣は超一流だ、と人気らしいですよ」
と、嬉しいお世辞まで言ってくれる。
「ありがとうございます。魔力の少ない八級でも役に立てると思えば、この仕事は本当に楽しいです」
「魔剣は、魔力の多い少ないよりも、剣と付与する能力と魔石の相性だったりを見極める力だったりするらしいですね。メティルさんの見極める力は、天性のものだとお聞きしました」
そこまで褒めて貰えると、流石に照れた。
「ありがとうございます、フィーユさんもよくご存知ですね」
何でも屋は、魔導士ではない。だから純粋に、その情報量に驚くことも多いのだが。ふと、彼女は一級魔導師の部屋にも出入りをする立場であることを思い出した。
「……例えば、毒を盛られたとするじゃないですか」
「はい!?毒、ですか!?」
「はい。それって、例えば証拠や手掛かりがなくても、魔導師の方々レベルだったら……時間が経っていても、犯人ってわかると思いますか?」
ダメもとで、軽く聞いてみただけだった。そして、フィーユさんからも軽く返って来た。
「間違いなくわかると思いますね」
「え?」
「え?」
フィーユさんは、仕事の手を止めて、私を見た。
「……ほ、本当に?」
「多分、一級魔導師のマーギアー様でしたら、可能だと思いますよ?なんで、かはお答えできないのですが……」
フィーユさんは申し訳なさそうな顔をする。
一級魔術師か。会ったことも、見たこともない。無理だ。無理だぁーー!!
と、私が嘆いているところに、やたら前髪が長い魔導服を着た男性がひょっこり顔を覗かせた。
「フィーユさん……」
「あれっ?今日はお仕事お休みだと伺っていたのでこちらのヘルプに入ったのですが、どうかされましたか?」
その男性が声を掛けると、フィーユさんは嬉しさを隠し切れない様子でとことことその男性の傍に寄る。
「あ、いいえ、あの……てっきり……フィーユさんも、お休みだと……思っていて……」
随分とのんびりした話し方をする方で、何だか和む。
「そうだったんですね。申し訳ありません」
慌てたように頭を下げたフィーユさんに、相手の男性は両手をぱたぱたと振った。それもゆっくりだ。
「い、いいえ……、それで、私も、城に呼ばれてしまって……」
もしかして、フィーユさんの彼氏だろうか?私は興味深くなり、仕事中だというのに思わずその彼氏さんをこっそり観察してしまった。
彼氏さんもローブを着ているから、魔導師だ。ただ、ローブには金糸で見たこともない凝った模様が細部まで施されていた。やたら上質そうな質感も見たことないし、魔導士への仕事は普通所属先に直接依頼されるから、魔導士が城に呼ばれるなんて聞いたこともない。
……??誰なんだろうか??
「メティルさん、どうしました?何か難しいお顔をされていますが」
「あっと……すみません、仕事のことじゃないんです」
それなら良かったです、と笑顔で答えてくれるのは、雑務や掃除や簡単なアシスタントとしてもこなしてくれる、何でも屋のフィーユさんだ。
普段は魔導師達の職場である「魔導の塔」を担当しているが、たまたまヘルプで魔導士の職場に来てくれたらしい。
「メティルさんの作成される魔剣は超一流だ、と人気らしいですよ」
と、嬉しいお世辞まで言ってくれる。
「ありがとうございます。魔力の少ない八級でも役に立てると思えば、この仕事は本当に楽しいです」
「魔剣は、魔力の多い少ないよりも、剣と付与する能力と魔石の相性だったりを見極める力だったりするらしいですね。メティルさんの見極める力は、天性のものだとお聞きしました」
そこまで褒めて貰えると、流石に照れた。
「ありがとうございます、フィーユさんもよくご存知ですね」
何でも屋は、魔導士ではない。だから純粋に、その情報量に驚くことも多いのだが。ふと、彼女は一級魔導師の部屋にも出入りをする立場であることを思い出した。
「……例えば、毒を盛られたとするじゃないですか」
「はい!?毒、ですか!?」
「はい。それって、例えば証拠や手掛かりがなくても、魔導師の方々レベルだったら……時間が経っていても、犯人ってわかると思いますか?」
ダメもとで、軽く聞いてみただけだった。そして、フィーユさんからも軽く返って来た。
「間違いなくわかると思いますね」
「え?」
「え?」
フィーユさんは、仕事の手を止めて、私を見た。
「……ほ、本当に?」
「多分、一級魔導師のマーギアー様でしたら、可能だと思いますよ?なんで、かはお答えできないのですが……」
フィーユさんは申し訳なさそうな顔をする。
一級魔術師か。会ったことも、見たこともない。無理だ。無理だぁーー!!
と、私が嘆いているところに、やたら前髪が長い魔導服を着た男性がひょっこり顔を覗かせた。
「フィーユさん……」
「あれっ?今日はお仕事お休みだと伺っていたのでこちらのヘルプに入ったのですが、どうかされましたか?」
その男性が声を掛けると、フィーユさんは嬉しさを隠し切れない様子でとことことその男性の傍に寄る。
「あ、いいえ、あの……てっきり……フィーユさんも、お休みだと……思っていて……」
随分とのんびりした話し方をする方で、何だか和む。
「そうだったんですね。申し訳ありません」
慌てたように頭を下げたフィーユさんに、相手の男性は両手をぱたぱたと振った。それもゆっくりだ。
「い、いいえ……、それで、私も、城に呼ばれてしまって……」
もしかして、フィーユさんの彼氏だろうか?私は興味深くなり、仕事中だというのに思わずその彼氏さんをこっそり観察してしまった。
彼氏さんもローブを着ているから、魔導師だ。ただ、ローブには金糸で見たこともない凝った模様が細部まで施されていた。やたら上質そうな質感も見たことないし、魔導士への仕事は普通所属先に直接依頼されるから、魔導士が城に呼ばれるなんて聞いたこともない。
……??誰なんだろうか??
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